「大探索!真夜中の!鳥捕獲大作戦in麦わらの一味!うわぁい!パチパチ!」
「やけくそじゃねーか」
辺りがやけに薄暗く、ジャングルの印象を受ける森の中。
南の方角を示すためのサウスバードをゲットだぜ、する為に虫あみを片手に探索に来ていた。
「私怒る!何故真夜中!?」
「知るかよ!いや知ってる、どんちゃん騒ぎしてたせいだろ!」
「ご存知済みぞこの鼻!」
宴の途中で船の強化とサウスバードの存在を思い出して現在、もう私眠たい。
「よーし、網は3つ!3班に別れて探すぞー!」
「じゃんけんで決めよう」
「えっ、出来るなればロビンさんとルフィは別の班がよろしくと思うですが」
「どうして…?」
サンジ様の提案に異論を唱えるとビビ様が首をかしげて疑問を私にぶつけた。
「サウスバードは鳥です」
「ジョ〜〜〜〜」
「はいどーも」
返事をする様に変な鳴き声が聞こえたが軽く流す。
「ルフィもロビンさんも能力者。しかも手を伸ばすと手を生やすて
「ふんふん、なるほどなるほど」
ルフィが分かったかのように頷くけど絶対分かってないな…?苦渋の選択だけど、私が選ぶ選択肢はこうだ。
「
「よろしくなー!」
「お、おう!」
「任せろ!」
本音は『うるさいやかましいだからとりあえず一つにまとめておけ、迷子になってもチョッパー君の鼻さえあれば帰ってこれるだろうチーム』だけど。
「次、
「ふふ…理にかなっているわ」
「リィンと一緒じゃないだなんて…っ!」
「航海士さん良ければ宝石でもどう?」
「いただくわロビンお姉様ぁんっ!」
「おい。これのどこが上手く立ち回れるって?」
ゾロさんのツッコミは無視する。だって本音は『消えてくれても良心が痛まない出来れば消えて欲しい、心への切れ味抜群チーム』だからね。
「最後、
「俺は…このチームで心から良かった…っ!」
「よ、よろしくお願いします…」
『いてもいなくても不安だったら自分の手の届く範囲にいてもらおう、責任問題生じてしまうので出来るだけ大人しくしてて下さい王族チーム』です。そういえば最近サンジ様がナミさんに好意をぶつけにいかない。何故だ。
消えて欲しいチームには出来れば本気で消えて欲しい。特にナミさん、キミだよ。ニコ・ロビンより脅威的なんだよ…!私限定で鋭くなるスキルがレベルアップしたら私バレちゃう…!
「よし、じゃあ変な鳥をぶっ飛ばすぞ!」
「おー!…じゃねぇよ!捕獲だろ!」
Mr.ツッコミ魂は流石です。
─short1 ルフィ班─
暗い森の中、ルフィ班はサウスバードの探索を。
「見ろよルフィ!ミヤマだ!」
「うほぉっ!すんげぇえ!ここは宝の山かぁ!?」
「ミヤマ?ミヤマって凄いのか?」
否、昆虫探しで盛り上がっていた。
「アトラスも見つけたし…!後はカブトムシだな!」
「世界中の憧れの昆虫なんだぜチョッパー!…──って違うだろ!俺達の探すのは鳥だ鳥!」
「でも見当たんねぇぞ…?」
目的のモノと違うモノしか見つけられない野生な男共。ここで野生を働かせてくれと願う者が居ないのでキョロキョロ見渡すばかりだ。
「蜂?」
「蜂だな」
「そうだな」
ボトリと何かが落ちる音。それに目を向けると全員同じ結論を出した。
「「「逃げろぉぉ〜〜〜っ!」」」
繰り返す事何度目か。
3人の顔は蜂に刺され赤くなっていた。
─shot2 ロビン班─
「きゃぁあっ!ムカデ!ゾロ!」
「うるせぇなっ!」
気持ち悪い系の虫は無理。と申告したナミはゾロを盾にしながらロビンと共に鳥を探す。
「っ!」
しかし突然ゾロが顔を上げると道の先へと走り出した。
「ゾロ?どこに行くの?」
「あら、剣士さん。険しい顔してどうしたの」
「戻る」
「バカ!サウスバードを捕まえなきゃならないのにあんたが居ないと私はどうやって守られればいいのよ!」
「テメェで守りやがれ!」
「でも剣士さん」
「あ?」
「そっちは森の奥よ?」
─shot3 リィン班─
「大丈夫!何があろうと2人は俺が守るぜ!」
「ありがとうサンジさん。でも、大丈夫。私だってやるわ。初めての冒険らしい冒険ですもの、やる気だけは誰にも負けないつもりよ!」
「ハハッ、頼りにしてるぜ」
胸を張るビビとそれに応えるように笑うサンジ。
班長のリィンは緊張で会話に加わるどころでは無かった。彼女の弱点の一つ、お化け。
「(出そうで怖いッス…無理……)」
これならお留守番という手を使えばよかったと後悔したが仕方ない。後悔は基本後からやって来るものだ。
「じょ〜〜〜!」
「クエーーっ!」
「じょ〜〜…じょーーー…」
「クエ?くえぇ…!クエッ!」
「「「…………」」」
鳥の鳴き声とカルーの鳴き声が会話をしているように思われる。
「……クエッ!」
「せ、説得しちゃったの…?」
カルーのドヤ顔と共に黄金と同じ姿をしたサウスバードが現れ、人間3人は死んだような目をしたのだった。
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大捜索とても精神的に疲れた、と思いながら栗頭さんの所へ戻れば現場は無茶苦茶だった。
「ひし形のおっさん!」
倒れた栗頭さんをルフィが介抱し、海に落とされたなり損ないその2をサンジ様とチョッパー君が拾い、なり損ないその1をビビ様が手当する。ウソップさんはボロボロになったメリー号に涙を流して憤慨してる様だ。
「……遠くに、船が見えるぞりん」
「カッコつけたかったのか分からねぇが語尾のせいでクソほどダサくなってるぜ」
「黙るしてゾロさん」
目を細めて呟くと痛い所を指摘された。うるさいな。
あ、島の影に隠れてしまった。
「船は判別出来たか?」
「出来ぬ。ピンクの船のみ把握ぞ…」
誰だか分からないが良くやった。良くぞ、良くぞ空島への道を潰してくれた。
私、今こそ襲撃を感謝した日は無い!
「ルフィ!──金塊が、奪られてる…!」
家の中に入ったナミさんの声。しかし、栗頭さんは特に気にした様子は無い。
「そんなのはってなんだよ!オッサン体がイカレるまで海に潜り続けてやっと手に入った金塊だろ!」
「黙れ…いいんだ…とにかく聞け」
「その前に休むしろ」
「いいから聞け」
「休む」
「誰かこの糞ガキ黙らせろ…!」
栗頭さんは青筋を立てて言い放った。
だって、間に合わせるつもりでしょう?リィン分かるもん。だから嬉々として私を拘束しないでくださいナミさん。うわこの人力強い。
「猿山連合軍総出でかかりゃあ、あんな船の修繕強化は朝までに間に合わせられる。いいか、お前らは必ず俺達が空へ連れていってやる…!」
あ、要りません。
「ルフィ」
「ん」
ゾロさんが示した場所にはドフィさんのマークが描かれてあった。ほほう、よくやったベラミー海賊団、ルフィを馬鹿にした事も笑った事も許してはいないが褒めて遣わす。
「ってまてぇえい!何をするたもりぞルフィ!?」
「つもりじゃないのか?」
「そうだけど、そうでなく!!」
なんで自ら危険に飛び込む様な真似をするのかな!
「海岸に沿っていけば昼間の町につくよなぁ?」
「えぇ、着くわ」
ニコ・ロビンが頷くとルフィはパキッと指の音を鳴らす。
「朝までには戻る」
「ま、まつしてよぉお!」
ど、どうする行動が一番いいんだ!?
──ぷるぷるぷるぷる……
私の懐から電伝虫が鳴いた。
「……ルフィ、手は出さぬが私も行くぞ」
「おう」
行動は決まった。
目立つの上等、ひとまずボコろう。ごめんね。
==========
「た、大変だぁあっっ!」
一人の男が酒場に飛び込んで来ると店の中の客は迷惑そうに片眉を上げたり、関係ないと酒を飲んだり、それぞれの反応を見せた。
「なんだァ夜中に」
「昼間笑った奴は今すぐ逃げ…っ、ベラミー!あんたまだ居たのか…!殺されるぜ!早く逃げた方がいい!」
「俺が…誰に殺されるって?」
ベラミーは不機嫌に聞くと、男は息を飲み震える声で言葉を紡ぐ。嗚呼怖い、と。
「昼間の麦わら帽子の奴…!賞金首だったんだよ!」
「ヘェ…、幾らだ?300万あれば上等だろ」
ベラミーの言葉に周囲は笑う。
賞金首だということには驚いたが恐るるに足りない、なんと言ってもこの場には大型ルーキーと言われたベラミーがいる。余裕の表れだった。
しかし男の言葉で衝撃を与えることになった。
「麦わらの男が1億ベリー…、だったんだ。緑髪の方は6000万…。あんたより高いんだよ、ベラミー……!青髪も金髪も全員が賞金首なんだ!」
言葉を理解できない者達が思わず固まる。
それは昼間にいた者達であり、1億の額を聞いたこと無い者達だった。
「ハハハッ、バカ言うな!オイオイオイ!当の本人らを見ただろう!空島へ行くとか存在してるとか腑抜けたことを抜かす平和ボケしてる様な奴らだぜ…!?」
ベラミーは冷や汗を流しながら自分に言い聞かせる様にそう言い放つ。
彼は1度畏怖していた、金髪の少女に。
「それに大体!1億なんて額なら新聞沙汰になっているはずさ!しかしどうだ!麦わらなんて名は聞いたことねェ!」
そう言って男の持っている手配書の束を奪う。
──ああ、なんだ。一番恐れてしまった少女は高くないじゃないか…!
その時だった。
──ボゴォンッ!
酒場の壁の一部が破壊されたのは。
「どうも、1億の男がご指名ぞ。ベラミーさん?」
少女が破壊したとは思えないが、壁のあった場所に拳を握りしめて微笑む金髪が確かに居た。
==========
ルフィを追うように箒で飛び、目的の場所へと付いたルフィと私は、ひとまずベラミーを外へ呼び寄せる為に私だけで行くことにした。
無機物を操る要領で酒場の壁を破壊し、それに合わせて拳を振るっただけで怪力リィン少女の出来上がり。
ハッタリ、詐欺師、どうとでもいえ。恐れが勝利に繋がるからな。
しかしまぁ、タイミングが心から良かった…!
ルフィは1億になってるみたいだな…、そりゃ仕方ないけどね。センゴクさんもアラバスタ後の電伝虫で『賞金、上げるからな』って堂々と宣言してたし!でも1億にいくとか聞いてないよパパ!元々3000万から1億…振り幅凄っ!
「ひし形のおっさんの金塊、返せよ」
ひゅー!ルフィカッコイイ!うちのお兄ちゃん最高ー!テンション爆上がりしますぜー!
「返すも何も、アレは俺が海賊として奪ったものだ」
ベラミーは足をバネにして屋根の上へと跳躍し、ルフィと睨み合う形になった。
バネバネの実か、なるほど。
ルフィとよく似てる能力だな。
「本当に…手配書の……」
「おじさん、それ、私にも見せるして?」
「あ、あぁ」
おじさんが手配書の束を持ってるみたいなので譲ってもらう。どうやらルフィは崩れる屋根から地面へと場所を移したみたいだ。
「え…?」
変わらない写真のルフィ、そして血を流した険しい顔のゾロさん。ここまではおかしな所が無い。
背景が分からない様にしてあるが雨の中笑っているビビ様。少し低い気もするが船長より高くして変に狙われるよりはいいだろう。これも問題ない。
「〝スプリング
壁を足場に飛び回る音をBGMに最後の1枚を手に取る。
問題は残りの1枚だ。
そこには空を背景に笑う金髪の──つまり、私の姿。
あまりにもおかしい。
私の初頭手配額は2000万。高くて嫌になって二つ名に叫んだ記憶がある。
生け捕りのみに変わったのも、賞金額が下がったのも、おかしすぎる。こんな怪しまれる様なことセンゴクさんは絶対しない。
考えろ…何かある筈だ…。
こんな風に無理矢理額を変えることが出来て、私を生かしておくべきと判断し、海軍を使える…。
「あ、これは死ぬる」
「リー?終わったぞ?行こう!」
「誠に?」
思い当たった人を思考の端に蹴り飛ばすとルフィが顔を覗かせていた。肩から下げてるのは麻袋、恐らく金塊入りだろう。
「あぁ、そうだ」
「どうしたんだ?」
「サーキスさん?」
「………サーキースだ」
最初に絡んで来た、胸にドフィさんのマークを入れてある人に視線を向けると警戒心バリバリ状態で名前を指摘された。ごめん。わざとじゃないんだ。
「ドフィラム…えーっと、天夜叉に伝言」
「は?」
かっこよく決めたいのに名前間違いのせいで決められない、超悔しい。
「『覚悟しとけファッションセンス最悪野郎、おまえ、わに肉でバーベキューの刑な』と」
「言えるかぁあ!?」
「あなたの可愛いダーリンよりっと、よろすくー!」
いくら糸で応急処置されてようが、私はまだ未だに痛めてる内臓と助骨の事許してないからな。
==========
「予定よりも早く現れたぞ!」
「積帝雲!十時の方向!爆発の兆候だ、渦潮をとらえろ!ひくなよ!」
慌ただしい三つの船。
ぼんやりと眺めながら空旅へと向かう仲間を見ていた。
予想より早く現れた積帝雲、しかし目標地点まで辿り着き十分な時間があったので余裕を持って海流に合わせられるそうだ。
やる事、無いよね。
「うわぁっ!」
「波が急に高くなった!」
自然災害だからか、船は大きく揺れる。
船酔い防止の為私は箒に乗ってるから揺れようが割れようが関係ないけど。
「流れに乗れ!中心まで行けばなるようになる!」
船の何百倍もの大きさの渦に向けて船は進む。
海王類が波に喰われてしまおうとも。
………え、怖。自然災害怖っ。
「も、もう勘弁しでぐれぇええ!帰りでぇえ!」
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」
「詐欺よ詐欺…っ!」
「クェエエーーッ!」
騒がしく叫ぶ二人と二匹。
やけにワクワクしているルフィとビビ様が印象的です。
「凄い…夢のまた夢の島への冒険!」
「楽しみだな、ビビ!」
「えぇ!リィンちゃんもそう思わない?」
「………………そう、なのでは?」
この姫様、ルフィと同じタイプだったみたい。
「えっ?」
ナミさんの驚く声。そして大渦は姿を消した。
「なんだなんだ?」
「あんなにデカかったのに!?」
「違う…もう始まって───」
ここからが本番なんだろう。
その時、男の声が聞こえた。
「まてぇええ!ゼハハ!お前の1億の首、貰いに来た!」
「……どういう事だ?」
「ルフィ、1億。ゾロさん、6000万。ビビ様、9000万。これがこの船の賞金首。はい、ナミさんこれ手配書」
「え、あ、ありがと…う?」
「後ろで騒いでるピーチパイ男は無視しましょう!ひとまず、麦わらの一味は空島観光です!」
トン、と私は一足早く空へ飛ぶ。
「行ってらっしゃい、麦わらの一味。帰ってくるしたら、電伝虫ください」
「リー!?」
箒で空中に留まると海は盛り上がって、柱の様に積帝雲に向かって突き上げていった。
「…───視界が、死ぬ」
アレに参加しなくて本当に良かった。
サボから電伝虫がかかって来なければ高所に行くことになってた。
さて、お仕事と行きますか。