島に入ると誓った夜。忍ぶ様に
「ヤハハ…黄金探しとは無駄な事を」
「どうされましたか、
「我々をお呼びとは何事でしょう」
「明日、数人の青海人が黄金探しをする」
「なんですと…!?」
日の暮れた肌寒い空島。
神の御前に4人の神官が集められた。
そこでエネルの放った言葉は雷のような衝撃、神の住む島で何とも無謀な事をと呆れる者も居れば憤慨する者もいる。
「試練だよ、諸君」
横になりエネルはニヤリと笑った。
「
ゆらゆらと炎が揺れる。そこに映るエネルはシャリシャリと果実を食べながら4人の神官と目を合わせた。
「なぜ、急にそこまで」
一人の問いに答える。
「もう、ほぼ完成している。『マクシム』が、な。さっさとこの島に決着を付けて旅立とうじゃないか──夢の世界へ」
──無駄な事をする、神の前で人など無力だというのに。
エネルは心から嘲笑う様に口角を上げると、シャリッと果実を齧った。
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「実はですね…──」
そう言って語った真実(笑)に周囲は呆然とした様子で聞いていた。驚くだろう、驚くだろう。
だって過剰表現してるし!!!
『実はクロコダイル様がビビ様に恋焦がれていたご様子で…!』『なんと、愛で国を変えようと!』『私は感動致しました!』『その後クロコダイル様は国民に誠心誠意謝罪を…!』などなど。
あくまでも私は『放送を聞いていたゴシップ好きの貴族様』だから放送より多少過大表現しても問題ない。
誠心誠意謝罪?放送からはそう思えませんでしたけど?
本音を言うと仕掛け人から見れば大爆笑以外何物でもないんだよね!!謝ってすらねぇよばぁぁか!!
私の胃の痛みを思い知れ。個人的な報復があの位で終わると思うなよ?世界中どこにいても偏見の目で見られるがいい!
お前が面倒を起こさなかったら麦わらの一味にビビ王女もニコ・ロビンも来なかったんだよ!!
「悪魔め…」
聞こえてますよーお兄様ー?
「そ、そのような事が…」
「はい!そうなのです!」
『愛に生きた英雄』を素敵に思うキラキラしいお嬢さまを演技する。凄いでしょう?我が国の英雄殿は!
もう、涙が出るほどに!おかしくて!
想像力は時に脅威となる。ひくりと引き攣る貴族様に笑顔を向けると去っていった。是非とも広げてくれたまえ諸君。
にしてもなぁ。
「…………」
「…………」
「…………」
若い女性がサボを狙ってる。
アラバスタという大国の貴族で王族にも一目置かれてる家の継承者。しかも美形と来た。
大きな傷がある事に加え、妹のデビュタントに付き合う様な男だ。婚約者などいないと踏んだのだろう。
そりゃ、狙うよね。私のお兄様はカッコイイぞ。
だがなぁ?妹の目が黒い内に嫁に出すと思うなよ??
し、か、も。本性は敵だ。階級制度に真っ向から喧嘩を売る革命軍の参謀総長様だぞ。腹の中真っ黒で兄妹一性格悪い人だぞ?
……決してNO.1は私じゃない筈だ。
「あの…サン様」
「はい…、貴女は?」
「ワタクシ、はバーレイ・アイラと申します」
「ミス・バーレイ……
「どうぞ、アイラと」
1人の貴族様がサボに声をかけた。お前の猫かぶりも凄いなと思いながら呆れてる。
用事を聞くって、用事なけりゃ会話続かないじゃん。会話続ける気サラサラ無いね。
他の貴族様も次々と名乗り出る。所々敵意というか殺気が漏れてますよ。私が気付くんだ、サボが気付かない訳が無い。
「サン様、婚約者はいらっしゃいますか…?」
「いえ、生憎国内が荒れていましたので」
「好みの女性などは」
「国を変え、守っていける人でしょうか」
知ってるか?これ全部別の人が質問してんだぜ?
まぁ、サボの言う好みは『守っていける(物理)』だと思う。貴族様には悪いけど期待するだけ無駄だと思うよ。
質問攻めにあうも次々と捌いていく。
よっ、モテモテ!
「リアスティーン様、貴女のお兄様は…──」
おっとこっちにも飛び火。
どこかのお嬢様に偽物の笑顔を貼り付けて対応する。
「お兄様がどうかなさいましたか?何か無礼でも?」
「いえっ、その……。な、仲を取り持って頂きたく…」
顔を染めるお嬢様、視線がとてもギラギラしてますよ。こう見えても職業柄『無害な者』と『有害な者』の区別はそれなりに付きましてね、キミはどう考えても『有害な者』だ。敵意や色んな企みが渦巻いてる。
ハッハッハー!『騙し化かし』の象徴たる女狐と不名誉な二つ名を頂いた以上、
「ご自分で頑張ってくださいまし!」
ニッコリ笑って拒否する。
だ〜れ〜が、取り持つかよ〜!
そもそもこんな要件人間と名高いクーデレを紹介してもお嬢様に利点なんて顔面鑑賞程度しかな……──寒気がする。殺気が右からバシバシ飛んでくるよぉ。
「そ、そうですの…」
どこかのご令嬢はぴくぴくと頬を引き攣らせながら私の前から消え、サボの元へ向かう。
そんな時、ピンクのドレスを着たいかにも派手な銅バッチ貴族が私の地雷を土足で踏み抜く事になった。
「サン様ぁ」
「…──ッ、なんで、しょうか」
ピンク(仮名)はサボの左腕に絡み付く。
サボは痛そうに顔を歪めた。
アラバスタで戦闘中、サボって自分で自分の骨折ったよね。
生贄様、ご来店でーす!
「お兄様…、もうそろそろお戯れもお良しになるが良いと」
「リアスティーン」
「優しいですね、お兄様は」
じろっとピンク()を見る。
ケバい。美人かどうか分からないが私みたいに化粧で誤魔化してる感半端ないな。そんなにスッピンに自信が無いか、私は残念ながらあるぞ。
「ご自宅に鏡のない様な残念な方に、わざわざ付き合うのですゆぇ──んんっ、から」
セーフ、標準語セーフ。
少し怪しかった。ちょっとヒヤッとした。
サボ、『それはアウトだろ』みたいな視線だけは止めて。
「な、なんですって!」
「様な、と申しました。あくまでも私の予想です。個人の思考の自由まで奪われるは窮屈でつまらないですよ?」
「生意気ですわ!」
ピンク()は癇癪を起こし私に近付く。
要は『鏡みてみろ、お前の顔面サボに釣り合わないから。あ、もしかして家に鏡ない人?それなら仕方ない…ごめんね?』って意味だからキレはするよな、うん。
でもこれでサボの拘束は外れた、個人的な目的はこれで終わり。後は目立ってから、『賢い』が『少しマヌケな所があり』な所をアピールしなければ…何この面倒臭い面接。
要は私に麻薬売買の話を持ちかけて貰えりゃいいんでしょう?大体この場に黒幕さんいるのかなぁ?
「貴女何様ですの? 社交界の右も左も分からない様な小むす…お嬢様が、随分な態度と思いませんの?」
「お、も、い、ま、せ、ん!」
右も左も分からない小娘がハッキリ言った言葉に頬を引き攣らせる。だって、銅バッチと銀バッチじゃ男爵と言えどこの場の階級制度は私の方が上だよね?
「この…っ!」
頭に血が上ったピンク()は近くにあったワインを手に取ってかけるようなモーションに入った。
よっしゃこれで攻撃してきたのはそっちの方が先だ!私は、あくまでも、自己防衛!
私、最近やる気多めです。
「なっ…!」
ピンク()や周囲は驚いた顔をして固まる。
それもそうだ。
「止まって…!」
かけたはずのワインが空中で停止していたのだから。
「……の、化け物」
堂々とした様子でピンク()に微笑む。
実はこれアラバスタでやった海水を空中に留める方法と同じなんだよねー…。更に言うと気分は紐のない風船。
イメージがしやすいからこそ即座に使えるって所だね。
そう、かつて七武海に居たグラッジさんの技をアラバスタで真似した時に分かったこと。元々そういう現象が作り出された、って私が思い込んでイメージしてるから
つまり『私の不思議色で再現出来る範囲内なら他人の技を再現しやすいしたい放題』って事だ。
「化け物…そう、化け物ですか…」
「悪魔の実の能力者なんて化け物以外何者でも…!」
「はい、お疲れ様です!」
とにかく、ここで言質は取れた。『悪魔の実の能力者は化け物』という。それは他国の貴族(=私)を貶める言葉でもあり、『能力者の他国の王族をも貶める』事になる。
例えば、ドレスローザとか。ちなみに『アラバスタ代表貴族』として来ている私にも喧嘩を売ってるので最早これは個人のお話じゃない。『国家問題』なので貴女は『国家反逆罪』になります!おめでとう!
そう言ってやればピンク()は自分の拙さを理解したのか顔を真っ青にした。
「貴族、王族とは国の為に生き延びることが大事です」
血を守る為、ってのもある。だからこそ王族の血は尊い。ただ守られてるだけじゃ兵にも民にも迷惑をぶっかけるだけだよ。
いや、結構マジで。守る側からすると自己防衛出来る王族がどれほど貴重か…。自己防衛出来ない代表が世界貴族だからこの世界終わってるけど。
「貴族としての任を果たすべく、努力するのは当たり前でしょう?私は、自己防衛程度出来る様に努力しただけです」
「こらリー。もうそろそろやめなさい」
「えへへ…ごめんなさいお兄様」
「危険な綱渡りはしないでくれ…心臓に悪い」
「あらやだ、少しの危機は人生に必要不可欠。私は冒険したい年頃です」
サボに諌められ大人しくする。
ミッションコンプリート。『目立つ』事。そして危険な事に興味がある『牛耳りやすい子』という印象も付けれたことだろう。悪巧みするヤツが目をつけないわけがない。『貴重なツテ』も復興に回せるほどの『財産』だって持ち合わせてる。
さぁ、釣られて下さい?
武力階級より貴族階級の方が向いてたりするんだよなぁ。もちろん、ダントツで嫌だけど。
「妹が失礼をしました。ですが、我々アラバスタが貴女の国を敵に回さないかどうか…分かりませんよ?」
周囲の目がこの兄妹怖いとかって言ってる。目は口ほどに物を言うってこの事だよねぇ。
「ッ、お父様が何とかしてくださいますわ…!」
負け惜しみの様に背中を向ける私に叫ぶ。
一体貴女は何を言ってるの?家ごと潰すつもりでこの場にいるんだけど?殺気に気付かない程無能だと思ってるのかな、ピンクのお父上らしき貴族様?
「……───私、カモになりそう?」
「合格だろ」
私のお兄様はくしゃりと私の頭を撫でた。
「──お前らマジで戦争起こす気かよ…恐ろしい」
後々やって来たリオ様に怒られましたけどね!
ここまででとりあえずひと段落。起承転結の内、起か承辺りが終わった感じでしょうか。
この人たちの発想は『ん?貴族が取引してそうなんだろ?なら夜会で喧嘩売ればもしかして釣れるんじゃないか?よし、リーやってこいお仕事だ』『なんて馬鹿な!だが人前という事で即暗殺はないな!幸いかっこよくてつよーい人がパートナーとして隣にいるし!よっしゃ麻薬来いや!』
……お前らこそ脳筋だ。