2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第136話 恩は着せるもの

 

 

 探索隊のチョッパー、そして同じくカルー。

 2匹は迷いながら森を抜けると、雲に隠れた遺跡を発見し、入っていった。

 

「クエー…」

「どこだろなー…ここ…」

 

「クエッ」

「で、誰だろな。こいつ」

 

 うんうん、と頷くカルーを尻目にチョッパーが遠い目をして腕をクロスさせる白目の男を見る。

 

「姿が…見えない!」

「見えるわけねぇだろ!白目なんだから!!」

「(ここは沼の試練…。そして俺の名は〝空番長・ゲダツ〟全能なる神に従える神官の一人)」

「ゲダツ様!声に出して喋らないと伝わりませんよ!」

 

「クエ……」

 

 なんだこのグダグダな男は、とカルーが呆れた声を上げるもゲダツは気にしなかった。むしろ聞こえやしないが。

 

「フン!せいぜいこのエリアは足元に注意しろ」

「クエ」

「親切だなって」

「……沼は全てを飲み込み自力での脱出は不可能」

「クエーッ、クエッ」

「そりゃ大変だ!捕まらないようにしなきゃ!って」

「ここは生存率50%」

「クエックエーーッ!」

「絶対うっかりのせいだろ!って」

 

 お付の部下らしい人物までもが黙ってしまった。辺りは静寂に包まれる。

 

「お前達は神を怒らせた…」

 

 取り繕う様に咳き込むとそう告げる。

 

「グェエエエエエ!!!」

 

 その瞬間、奇声を発しながら何かがゲダツに向けて突撃していった。獣のような塊が。

 

「クエックエックエックエックエックエッ」

「ちょ、な、たん、ま、ごふ、まっ」

 

 反撃される前に、と頭を執拗に狙う。何度も何度もその硬いクチバシで。喋れない程、何度も。

 

「え、えぇ〜……」

 

 その容赦の無さにチョッパーが引いたのは言うまでもない。

 このカルガモは一体誰に似たのだろうか。クチバシを赤く染めたカルーが『やったぞ!』と喜んでいても、遣る瀬無い気持ちになり、素直に喜べなかった。

 

 ──とりあえず、俺も強くなろう。一味の強いヤツらが頼れるくらい。カルーには負けられない……。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 リィンの大変身!

 

 はい、と言うことで今回は町娘に化けよう!ました!過去形です!今回も協力者はコアラさん!

 お化粧、大事。顔の見分けがつかない私にとって第三者の目線って大事。

 

「服装はオッケー。あとは化粧だけど実年齢より幼く化ける場合頬に色つける位が丁度いいと思うんだけど…」

「プラスすて、ホクロ。口と目と頬にお願いするです。ホクロがあるだけで印象はかなり変える可能と思うです」

「あぁ!ナイスアイディア!」

 

 って感じに粉っぽい化粧を我慢して完成したのだ!

 

 

「お兄様見て〜!リアスティーンと印象違う〜?」

「んー…? あぁ、確かに。チャームポイントが違うだけで視線がそこに行くから印象違って見えるな」

「でしょ〜?」

「お下げ髪で髪色を黒く染めたのか」

「うむっ!濡れると一発アウトの安物だけどね」

 

 この世界、髪色を変える染め粉はお高い。安い品質はグッと落ちてしまう。色落ちしないように気を付けながら罠を仕掛けて来ますよー。

 

「でも黒髪に青いリボンは似合わないんじゃないか…?」

「着けたい」

「そのリボン、結構ボロボロだろ。そんなに欲しいなら買ってやろうか…?」

「私はこれがいいのです!」

 

 サボはお下げの先に付けたいつものリボンを見て、眉を下げながら言った。

 

 サボに貰った青いリボン。色褪せてたり解れてたりよれてたり、と結構ボロボロだったりする。でもリボンが切れるまで絶対に使ってやるんだ。『また4人で集まれますように』って願掛けしてるからね。

 

「そっか?」

 

 サボは乙女心分からねぇと呟きながら、この国の地図を書くというなかなかに高度な遊…作業に戻った。

 何が面白いんだか。文系脳の私にはさっぱりわからない。多分サボは理系脳だと思う。

 

 ……残り黒髪2人は間違いなく肉系脳だと確信を持って言えるけどね。脳筋的な。

 

「リーちゃん本当に1人で大丈夫?」

「まぁ…一人というのが不安ではありますけど。お兄様は勿論ハクさんはもってのほか、アラさんは屋敷に入るのでしょう?」

「一人で行くしか手段が無いね」

 

 計画的に誰かがバレると拙いので、今回は心細いけど一人で参るよ。

 

「行くすてくるです!」

「行ってきます、な…」

「行ってきますな!」

 

 サボさん。こいつダメだ、って声。聞こえてますよ。

 

 

 ==========

 

 

 

 先程の元気はどこにいったのやら。

 私は目の前に起こっている現状に呆然としていた。

 

「まさか…工事穴にハマる人ぞ大量に存在す、とは。驚きぞ」

 

 路地裏に有る地面の穴。

 そこに町の男だろう気絶した人間が数人ハマっていた。

 

「えぇ……」

 

 どうしたらいいんだろう。

 

 そう思っていると穴の付近に盲目のおじいちゃんが居ることに気付いた。和服を着て松葉杖っぽいの使ってるから、穴の近くに居たら危ないんじゃ…?

 

「おじいちゃん…そちら危なきですよ?」

「ヘェ…? ありゃ、こりゃ親切にどうも」

「危ない、こちらへ来るのが良きぞ!」

 

 そっと手を取って穴から離すとおじいちゃんは見えないであろう目をまん丸にして……笑い始めた。

 

「え?え?」

「お嬢さんはとてもいいお方だ…!」

 

 ひとしきり笑い終わればしみじみと言われた。

 んん〜…いい子って事だよね?なんだか…慣れない褒め言葉…。私の周囲の人間って鬼畜や外道が褒め言葉だと勘違いしている人が多いから。

 

 あれ、褒められてる、よね?

 ちょっと自信無くなってきた…。

 

「ぷくくっ、そう、お嬢さんがあっしに声をかけてくれなかったら…グフっ、あっしは穴に落っこちて…!」

「笑うのか褒めるのかどちらかにすてくだされ」

 

 本気で自信無くなってきた。

 

「おじいちゃんは、どちらに用です?」

「あっしは…──嗚呼、おじいちゃんは散歩してやした。小春日和でいい気候だァ…」

揶揄(やゆ)するは禁止」

「ハッハッハッハ!」

 

 なんだろう、正統派おじいちゃんって初めて見た気がする。年下の知り合い少なくてむしろ周囲に年上しか居ないのになんでこんな風にまともなおじいちゃんが身の回りに居ないの…?

 リィンはこの海が不思議でならないよ。

 

「おじいちゃん、口はカタキ?」

「仇…?」

「あー、訂正。堅き、鋼鉄、武装色…」

「あぁ、なるほど。あっしは堅い方だ、安心しなせぇ」

「うむ、ではお手伝い願うです!」

「………はい?」

 

 盲目のおじいちゃんとその孫程、怪しまれないものは無い。聞き返した言葉だろうが言質は取ったのでナンパ成功である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やって来たのはモザブーコ家の屋敷。

 わーお。兵士がウロウロしてますねぇ。

 

『こちらエビスダイ。ターゲットは屋敷に向かった。返答願う、どうぞ』

「こちら小狐。目視完了。作戦を決行する。どうぞ」

『了解した、だがこのどうぞと言うのは一体なんの意味があるんだ?電伝虫が盗聴されなくなる合図だったら別にコードネームを使わなくても大丈夫の様な…』

「雰囲気、大事」

 

 電伝虫からの言葉に真顔で返事をする。

 私という存在は気分と想像と雰囲気次第で質が上がるので気にしないでください。でなければ自ら貴族に喧嘩売りに行こうとなんかしない。いくら立場が下であろうともな。

 

 下に見えて実はツテを沢山持ってたりすると酷い目に会うのは私だ。見た目、肩書きに騙されやしない。

 ……いい例が私だからね。見た目に騙されちゃいやん。

 

「また…奇っ怪な事を……」

 

 目的をぼんやり誤魔化して作戦を教えたおじいちゃん:仕掛け人が呟く。

 おじいちゃんには穏やかな老人として頑張って貰うからね。ごめんね!報酬は穴に落ちそうになった所を助けたって事でよろしく!!!

 

「んんっ、あーあー……。声質変化変化ー…んんー…。普段より少し高め……がぁー…あー……」

 

 喉の調子は整えた。ちなみに声の高さで言えば街娘>堕天使>リアスティーン>女狐って所。あと私はおかしな口調を変えるだけで雰囲気がガラリと変わるらしい。

 

 

 ガラガラと貴族を乗せる用の馬車が屋敷の前に止まる。よし、あの出てくるのがターゲットか。

 

 

 視線がおじいちゃんと交わる。

 巻き込んでごめん、でも後悔はしてない。

 

 

「……──あのね、おじいちゃん」

 

 高めの声で貴族様に聞こえるように話す。ちらりと視線を向けてみたが気付いて無いみたい。

 おお、不機嫌そうですな。

 

「アラバスタってどこか知ってる?」

「んん?アラバスタだって…? はて、どこだったか…」

「…………アラバスタ?」

 

 貴族の家を通り過ぎるながら国名を出すと面白い具合に反応した。やったァ入れ食いだァ!

 

「うん、あのね、アラバスタのお姫様みたいなキレーなお姉さんが飴ちゃんくれたの。だーいすきなんだって!」

 

 そのアラバスタのお姫様みたいなキレーなお姉さん、私です。自作自演だから私もうそろそろ女優になっても食べていけると思う。

 

「オホンッ、そこの下み…お嬢ちゃん。その話、私にも聞かせてもらっていいかな?」

 

 マジモンの入れ食いだった。

 えぇ…。もう釣れたの?私もう少しエサを用意してたんだけど…。手応え無さすぎ…。

 

 私の目的は『貴族様にある情報を渡す』事。それは『アラバスタの貴族リアスティーンが飴好き』だということ。

 

「貴族様?キレーなお姉さんのお話聞きたいの?」

「左様。私の知り合いかも知れなくてな、どんな姿であったか?」

「えっと…金色の長ーい髪の毛にね、背は私より大きい!」

「なるほど、服装はどうだったかね?」

「青いお洋服…?ヒラヒラしててサラサラしてたよ。刺繍がされてあってね、太陽みたいなマークだったんだ!」

 

「……一致するな…。それに太陽…間違いなくアラバスタか」

 

 そりゃそうだろ。罠に嵌めてるんだから。

 

「その人と何をしてたんだ?」

「飴ちゃん貰ったの。お姫様ね、一番大好きなんだって。だからいっつも持ち歩いてるって言ってたよ」

「だがアラバスタの姫さんは今行方不明じゃなかったかい?あっしはそう聞きやしたが…」

「いやいやご老人。この子の言ってることは間違いなくアラバスタの使者、喜んでたと伝えておこう」

 

 『しめしめ、アラバスタの貴族が飴好きなら丁度いい。良い情報を聞いた…。これで操り、娘の愚行を無しにするよう仕向ければ…!』みたいな顔してんなぁ。おじいちゃんが盲目で良かった。見えないから!

 でもおじいちゃんは少し眉を顰めてる。……流石に一般人をこれ以上拘束するのも悪いな。

 

「貴族様、行ってもいい?」

「あ、あぁ。良かったら私からも飴をあげよう」

「わぁ!いいの!?」

 

 しめしめ、これで証拠がゲット出来た。思ったより早かったなぁ。でも逃げられない状況にしておかないといつどう出るか分かったもんじゃない。まぁひとまず目的はクリアどころかお釣りが来る…!

 

「特別だ、2個あげよう」

「本当!後でお兄ちゃんにもあげる!ありがとう貴族様!」

 

 1個を口の中に放り込めばモザブーコ家当主はニヤリと笑った。終わったね、モザブーコ家。

 

 本当に、(油断して自滅してくれて)ありがとう。(潰す気満々で貴方にとって敵の)お兄ちゃんにも渡しておくね。

 

 無知を装って情報収集する事程楽なものはない!子供と侮ってくれるから実に楽しい。そしてチョロい。

 

 

 さようなら、と手を振りながら笑う。おじいちゃんの手を引いて角を曲がれば私の顔の笑みは悪い笑みへと変わっていた。

 レベルが低過ぎるぜ…!まぁ子供と老人に警戒しろって方が異常だけど。

 

「おじいちゃん今回は協力ありがとうございますた」

「いやァ、役に立てたのが微妙ですが良かった。お嬢さんの健闘を祈らせてもらいやす」

「体に気をつけるして下され、では私戻るます」

「あぁそうだお嬢さん、お名前は」

 

「秘密です。その方が素敵では無きです?」

 

 私は呆然とするおじいちゃんを尻目に宮殿と逆方向に駆けていく。まるで目的地はそこにあるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……どこで正体バレるか分からないからせめて名前だけでも隠しておきたいんだよ!

 

 




※どうぞと言っても電伝虫に盗聴防止機能は付きません。こいつ純粋なハックさん騙してやがる

巻き込まれたおじいちゃん、嵌められたモブでザコの当主さん。

お仕事してるハックさんとコアラさんに、眉を下げたサボさん。
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