第140話 親方!空からお姫様方が!
センゴクさん経由で知ったサカズキさんの指示の元、箒に悪党を括りつけて支部に向かうため空を飛んだ。
サボが眠らせて(物理)くれてるから起きないと思うけどさっさと連れて行きたい。
サボもサボで小難しい性格してるよなぁ。
言わないのが幸せって…。
私がどれだけ泣いたか、悔しかったか。見つけられた時どれだけ嬉しかったか、泣いたか。
言う言わないどちらの選択肢が正解か。もう答えは出てるような物でしょう?私も、エースも、待ってる。
風を体に集めながらどうでもいい事を考える。
麦わらの一味から連絡は未だ来てない、つまりまだ私が自由にしている時間はあるという事だ。
────多分。
「やぁ、これは大将殿。まさか空から現れるとは思っていなかったよ」
通称ハリネズミと言われるここG-8。
「……………釣り?」
空から侵入して悪党を届けに来たはいいが、将校服の男が釣りをしていたので戸惑いながらも悪党を渡した。
ほけほけと笑う髭の人。
「そうそう、どうだ、やってくかい?」
「……………ッ呑気か!」
大将女狐の仮面も忘れて地団駄踏む。
おい、おい。
「これがサカズキさんの子飼い!?嘘でしょ!?」
「おや、そちらが素か」
ジョナサン中将、そう名乗った男はあまりにも赤犬と似ても似つかぬ呑気なおっちゃんだった。
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拝啓、親愛なるサカズキさんへ。
そちらの気候は如何程の模様でしょうか。草木が芽生え始める春?それとも照りつける太陽が身を焦がす夏?将又芳醇な香りを放つ秋、もしや空との距離が近くなる冬でしょうか。近頃、海賊の量も増え、質も悪い意味で良くなっている今、いかがお過ごしでしょう。
私は最近五寸釘片手にお人形遊びをするのがいい暇つぶしになっております。
そう言えば、サカズキさんは昔どのように過ごされていたのでしょう。名ばかりと言えども私とて同じ立場、先輩方の昔が気になる年頃です。
昔から海賊に殲滅的だったのでしょうか、それともクザンさんの様にやる気が無かったのでしょうか。疑問に思います。
センゴクさんと共に潜入に猛反対していた貴方には分からないでしょうが、最近の麦わらの一味の様子に大変な変化が起こっております。言うなればトラブル回収機。どんな星の元に生まれてきたらこんな風になるのか…。
大変ですが、実に、実に充実した毎日(意味深)を送っております。
ところで。貴方の子飼いとして有名なナバロンの中将ですが、どこかリノさんことボルサリーノさんを思い浮かべて仕方ありません。戦いという観点では些か頼りないという印象を受けました。
どうして、どうして。
どうして私、釣りなんかしてるんだろう…。
「いやー、星が綺麗だね〜」
「はぁ、そうですね」
正直悪党を渡したらそこで用は終わりだ。しかし釣りに誘われズルズルと引き止められてしまった。
ジョナサン中将はG-8と書かれたウキを浮かべて釣れるかな、とニコニコ笑っていらっしゃる。
へ、平和だなぁ…。
「……………ナバロン、ここはあまりにも守り過ぎでは?」
「守りの大将殿にそう言われるか」
「まぁ、多少危機感が薄れる気がすて」
物々しい外観ではあるがそれだと海賊は寄ってこない。最近まとめて捕縛する機会があったらしいがそれでも危機感が薄れてしまうらしい。
完璧すぎるとつけ込みにくい。
海賊を誘う何かが無ければ延々と針を突き出したままの動物になるだけだ。
ここは要塞。市民が暮らす島じゃない。
戦いの最前線で兵士が暮らし訓練し海賊を食い止めるための島だ。……やはり寄せ付けないだけでは足りない様な気がする。
「避難訓練の如く、捕縛訓練や襲撃訓練でも起こすなれば良きに。例えば海軍内の『影部隊』に頼むしたなれば…」
海軍の『影部隊』とは世界政府で言うCP9の仕事に加え内部告発とか色々ある。抜き打ちテスト部隊みたいな感じだなって思ったことあるや。
表立った組織じゃないので将の名のつく者以外は存在自体知らなかったり。そして影部隊の名前や姿は
私の立場がいいものか悪いものか判断し難い。
「あぁそうか、キミも大将なら知っていてもおかしくないな。キミは、声からして若いだろう?私の子供が居たらこんな感じなのかね〜」
なんだか気が抜ける。
でも、私知ってる。飄々とした人が2番目に怖いって。
1番は仏や平和みたいに油断してしまいそうな名前を持つ人だけど。
「あの、サカズキさんの子飼、えっと、サカズキさんがよく面倒ぞ見るってまことです?」
「大将には良くしてもらったよ。彼の派閥の中で一番雰囲気が似ていると自信を持って言えるくらいにはね」
「えぇー……」
全くもって正反対です。
失礼極まりない反応を見せるとジョナサンさんが面白そうに口角を上げた。どうでもいいけどジョナサンさんって面倒臭いな。
「ジョナサンさん、ジョナサンさん…ジョナサン中将……。中将、子飼い、赤犬の子飼い…うむ…」
「何を唸っているのかな?」
「女狐の呼び方。普段は通り名ですが」
「無いね」
「そうですか…」
とりあえず似てる似てないの話は遠ざけて別の話題にする。生憎時間はあるんだなこれが。
死んだ殺した等の可能性は捨てきれないけど、麦わらの一味が現れるまでどこかに居ないといけないし。堕天使は麦わらの一味に居る設定だから女狐で居ないといけないし。
「じゃあジョナはどうだい、これをさん付けすればいい」
「女狐のお気に入りまで掻っ攫う気ですか」
「ばれたか」
悪戯っ子の様にジョナさんが笑う。
なるほど、この人は案外知将タイプか。サカズキさんの子飼いという先入観があるせいで武闘派だと思ってたけど想像より違うのかもしれない。
「まぁ、中将なればツテを作るも素を見せるも構いませぬかね…。一応私潜入中故、その船が帰るて来るまでここに滞在すても?」
「その船はどんな船でどこに行っているのかな?」
星が振りそうな夜空の元。
「麦わらの一味、空島に観光旅行中ぞ」
──ドバシャアアンッ!
星の代わりに空から船が降ってきた。
「これも貴様か災厄吸収能力!!」
ドクロが被っていたのは麦わら帽子の様です。
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「誰だ貴様…」
「……………女狐」
空から降ってきた船、メリー号を調べる為にジョナさんが乗り込み、私は基地内で待機しておく。
すると帰ってきたドレイク少佐が訝しげな目を向けてきた。
「女狐…大将!? こ、これは失礼いたしました…!」
「麦わらの一味は彼女の部下の専門なんでね、たまたま立ち寄ってもらったから協力してもらってるんだ」
ジョナさんが設定通りの説明をしてくれるのをありがたく思いながら中の様子を訪ねた。
「……………状況」
「幽霊船、だということにしておいたよ。部屋の中には黄金、まだ暑いコーヒー、医術書や歴史書、更にはサウスバード。これくらいが収穫だろうか」
「……………ふぅん」
歩きながら報告を聞く。
コーヒーの数は8個、私を除いた総員の数だ。
………空から降ってきた癖に良くコーヒー飲めたな。
「む、麦わらの一味の手配書数は現在4つ」
4つ?5つじゃなくて?
「船長〝麦わら〟のルフィ、そして〝海賊狩り〟のゾロ。
なるほど、ニコ・ロビンの存在はまだ広がってない、と。それもそうだ。ニコ・ロビンが船に乗ってから海軍はそれを見かけてない。それなのに麦わらの一味入りしてたら内部に裏切り者がいるという事になってしまう。
……この件を踏み台にニコ・ロビンを麦わらの一味入りさせる報告もありかもしれないな。
「ジャヤから現れた、と考えるのが一番現実的だな」
「ジャヤ、ですか?」
「あのコーヒー、美味かっただろ。あれはジャヤ産の物だ。そしてここ付近のサウスバード生息地はジャヤしかいない」
「……………お見事」
いわゆる『正解』を与えるとジョナさんは嬉しそうに笑顔を見せた。その代わりドレイク少佐は不満そうに顔を歪めている。ま、普通は警戒態勢を敷くのが当たり前なのに幽霊船だなんてふざけている以外考えられないよねぇ。
幽霊船扱いにはこの生温い基地にはいいクッション剤だ。新米海兵、海兵じゃない者、老兵、色々な立場の人間が揃ってるここでは『海賊が攻めてきましたー!』って言われても混乱状態に陥る他無いだろう。個人的にこの扱いは有難いので全面支持しますよ!
さて、これから私はどう動いていこうか。無闇に介入するわけにも行かないが麦わらの一味を逃がさないといけない。
「そうだ女狐大将殿」
顎に手を当てて考えているとジョナさんが声をかけた。
「……………何、ジョナさん」
「釣りで言った言葉。いいかもしれないなぁ」
釣り?
釣りって言うと…。
『避難訓練の如く、捕縛訓練や襲撃訓練でも起こすなれば良きに』
まさか、麦わらの一味を襲撃訓練に当てるつもりか?
「……………許可する」
「ならば少し話を詰めなければならないな。少佐、基地内を調べておいて欲しい」
「は、ぃ?」
「麦わらの一味がもし軍服を着れば…、どうなるだろうか」
「ッ!分かりました!」
「そうだ…食堂ならいいかもしれないねぇ。朝になったら行ってみるといい、人間どんな状況下でもお腹は空くものだ」
分かる、分かる。
特に麦わらの一味船長とかはな。
「さて…手合わせ願うよ」
「……………御手柔らかに」
こっそり呟かざるを得なかった。
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マリージョアより来た船が嵐に遭い、混乱状態に陥ったナバロン。
外部の人間が入り込んだという幸運に恵まれた麦わらの一味は各々の判断でナバロン内をさ迷っていた。
「長鼻くん、腹を括らないとね」
「括りたくねぇよ…」
ロビンとウソップは麦わらの一味の船が幽霊船扱いを受けている情報を手に入れ、メリー号奪還へと。
「テメェっ俺の刀ッ!」
「は、ハイ親方!」
ゾロはそのままの格好でさ迷っていた所をナミの手によって刀を崖に置かれ。ナミは清掃員として道場を掃除する指示を受けている。
「もっ、もうっ!どうなってるんだよぉぉ!」
チョッパーやカルーは別々だが、ただひたすらに逃げ回り。
「アンタらがマーレ兄弟か」
ナミが案内した2人が本物だと知らずに、サンジとルフィがコックに成りすまし厨房に潜入していた。
そしてビビは…──
「……………無い」
「貴女、まさか…っ!」
大将女狐とエンカウントを果たしていた。
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オッスオラリィン!ハリネズミって言われる要塞ナバロンで探索をしている最中だったんだゾ!ジョナさんは海を小舟で優雅に遊ぶとかいって出ていったから手持ち無沙汰でブラブラしていたんだゾ!
シェパード中佐が率いた本部の船がやって来てしまったらしいし、オラ、とても不運なんだ。ルフィ、どんだけ幸運なんだ。とか思っていたところだったんだゾ!
それなのに、それなのに!
「まさか…女狐ッ!?」
女狐の存在を噂だけとはいえ正確に把握しているビビ様とエンカウント!やだ…王族に囚われすぎ…。リィン困っちゃう…。
いや、結構マジで。
「……………キミは」
誰でもいいから助けてください。
アニメオリジナル、ナバロンの要塞。ナバロン編です。アニオリの中で一番好きなので!