2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第144話 忘れ物は自分で気付けない

 

 

「う、うーん…何してるぞ…あの人たち」

 

 メリー号の陰からこんにちは。無事牢屋から脱出したゾロさん達を見送ると、私はマントを脱ぎ女狐から堕天使に変わって気配を消して陰に隠れていた。

 どうやらニコ・ロビンは海楼石の錠を外せてない様でゾロさんに担がれている。

 

 メリー号のある66番ドックに大量の海兵をあらかじめ配置しておいたのか、ジョナさんはなかなかに頭が回る。麦わらの一味はやや不利に陥った様だ。しかしドクターとナースを人質に取ったチョッパー君の機転で海軍側は手も足も出ない状態。…ナミさんはチョッパー君と一緒に行動していたらしいからあのオレンジ髪のナースがナミさんだろう。

 

「はぁ…」

 

 丁度海兵の目は全て麦わらの一味に向いている。つまり海兵の後ろにいる私の姿は、ルフィ達にしか見えない。

 

「(早く、来い)」

 

 甲板に立って『来い』とハンドサインを送ると全員がパッと顔を輝かせた。頼れる助っ人の登場です。

 

「……………道を、開けろ」

 

 ドレイク少佐が悔しそうに呟くのと同時に死角になる位置に隠れる。

 はぁ〜〜…本当に私って何してるんだろうなぁ。

 

「〝ゴムゴムの〜…ロケット〟!」

 

 ルフィの声と一緒に一味がボトボトと降ってきた。なんだか、大量収穫感が否めないけど。

 

 そして船をせき止めていた壁が動き出し、メリー号は無事海へと流れた。

 

「ってコラ!人質まで連れてくるしたの!?」

「リィンッッ!」

「回避…──不可避!?」

「あぁ…久しぶりのリィン…。会いたかったわぁぁ…もう、ほんと、大変で。ルフィを雲の更に上に届ける時何度リィンの力が必要だと思ったか」

「いだだだだだだだ!骨っ、骨折れるする!ナミさんストップ!あだだだだだだ!」

 

 ミシミシ言ってる!ミシミシ言ってるんだよ!お疲れ様なのは分かった!空島に行かない選択肢が当たってた事も分かった!だからとりあえず私の骨が使い物になる内に離れてほしいかな!

 

「サンジさん顔色悪き!大丈夫!?」

「俺は大丈夫だけどリィンちゃんの方が大丈夫か?」

「無理と推定……」

 

 なんでサンジ様はこんなに顔色悪いの!?私が居ない間にお前ら何をした!?

 

「リー!リー!ちょっとロビンの鍵外してくれよ!」

「鍵?あー…海楼石の錠ですか。お待ちくだされぞ、ナミさん邪魔」

 

 ひっつき虫は後ろに移動したので動けるようになったが拘束されている事に違いは無い。

 邪魔だけど一言も喋らず引っ付いているので無視しながら頭に被せたキャスケットのツバに付いている針金を外してニコ・ロビンに近付く。……チッ、言葉で牽制しようと思ったのにナミさんが居るから出来ないか。

 

「後ろ向いてもらうしてもよろしき?」

「えぇ、構わないわ」

 

 後ろ手に付けられている鍵をピッキングするフリして開けると、ガチャンという音と共に金属部分が壊れた感覚が有った。もう錠としては機能しないな。一応アイテムボックスにしまっておこう。

 

「はい、大丈夫ですよ〜」

「ボスの部屋にある牢屋から出れたのは堕天使ちゃんのおかげだったわけね」

「その通りです。ナミさん、指示」

 

 後ろから聞こえる船を動かす指示を流しながら、戸惑う人質を見る。

 

「あ、あの…私どうしたら……」

「私が責任を持つして基地まで送り届けるですよ、安心して人質していてくだされ」

「クソみたいなセリフだな、犯罪者」

ONLY(オンリー) ALIVE(アライブ)の最弱賞金首舐めないでくだされ」

「なんでリーの懸賞金だけあんなに下がっちまったんだろうな〜」

 

 その1件は私の中で解決しているんだ、目立たなければ良し。それでいいじゃない。

 ルフィの疑問を流しつつ深いため息を吐く。

 

「リィン!リィン!」

「何事ですかチョッパー君」

「絶対コバト先生を送り届けてくれよ!」

「拝命いたすましたよ〜」

 

 念を押すチョッパー君を抱えて返事をする。すると今度はビビ様が興奮した様子で私の肩をがっちり掴んだ。

 

「リィンちゃん!」

「はい!!!!」

「貴女の推しカップリングって何!?」

 

「………はい?」

 

 え、推しカップリングって、何?存在自体が何?お姫様の口がどうしたの??

 

「私は色々考えた結果ルフィさん総攻めがいいと思うの!」

「………まさか受けがナミさん?えっ、この後ろにおわす残念美形が受け??」

「受けはゾロさんやサンジさんよ」

 

 真顔でおっしゃるビビ様に、久しぶりにチベスナが出て来たでござる。べべん。

 私知ってる。これ腐ったパターン。

 

「それでね!よく考えたらクロコダイルも受けでいけるんじゃないかなって思っているの!」

「お、おう……せやな……」

「…! 分かってくれた!?それでね、お願いがあるんだけど、私未だに国乗っ取りを水に流せてないの!」

「……とりあえずカップリングと口調教える故に、小説書きましょうね。クロコダイル受けの、腐小説。私の名義で、ですが即販売可能ですよ」

「リィンちゃんが天使だった!」

「とりあえず…落ち着きましょう……」

 

 腐女子パワーがっょぃ。

 どうしよう、ペルさん。これは仕方がないと思うんだ。何が原因でこうなった。あ…だめ…吐血しそう……。

 

「それでね!さっきあったんだけどサンジさん受けも捨て難くて」

「リィン船どこに持っていこう!」

「あの…私本当にどうしたらいいのかしら」

「リィン、聞きたいことがある」

「リー!あのよぉ!」

 

「お前ら一旦口を閉じるしろッッ!私が大好きかッ!」

 

 今世紀最大のモテ期かと思った。

 

 

 

 

 

「さて、脱出の方法ですが」

 

 頭に(王族以外)1発ずつ拳を叩き入れて話を開始する。人質がいる以上撃ちたくとも撃てない様だ。『守り』を掲げる大将がナバロンに居るからとONLY(オンリー) ALIVE(アライブ)が2人も居るから、という事も原因だろう。うっかり殺って逆鱗に触れちゃ人生終わりだもんね。約10年間に渡る情報操作は都合のいい感じに広げられているようで何より。

 

「ナバロンの事、ろくに調べられないで捕まってしまったわ。出口が何処にあるか…」

「ロビンさんは闇で生きるしたわりに、あっさりと捕まるしたのですねぇ。まことに残念ですぞり。まぁ何があったのか分かりませぬが、置いておきましょう」

 

 ニコ・ロビンの発言に噛み付く。彼女に価値は与えてあげない。私がこの船での価値は全て消してみせる。

 ピリッとした空気が船を駆けた。ニコ・ロビンも私も黙ったまま視線を交える。

 

「あら、海賊の船から逃げ出す様な海賊モドキに言えるのかしら。捕まってしまう事は確かに(つたな)い事かもしれないけれど、基地内でその様になったと言うことは海賊らしいと言えるんじゃない?」

「冒険ですか?でも、捕まるすればそこでアウトです」

「実際は逃げ出している」

「本当に海賊モドキの力無しで、です??」

 

 女の冷戦が始まった。

 

「船長や船員を守る不可能、それが頼んで入るした下っ端の役目?」

「海賊の世界は懸賞金で上下関係が決まるんじゃないかしら?」

「上下関係はそうでも、価値は力ですよ?伝に関しては世界一と自負するが可能故に」

「果たしてその伝は本当に伝?ただの口約束なんて人間も居れば、約束は破るものと考える人間だっている」

「ご心配ありがとう丁重にお返ししますね!」

「返してくれてありがとう。それとあなたのしている事は権力という威を借りた狐よ?同じ女狐とは雲泥の差ね」

「その狐が船の上では役に立つが可能ですの。使えるものは全て使ってこそ、が海賊らしく無きですか?」

「ヘェ、海賊モドキは海賊らしくなる気があったのね。驚いたわ」

 

 あ、ウソップさんが倒れた。一旦終了だな。

 とりあえずため息を吐いて気分をリセットし、船長に向き直った。

 

「私は船を持ち運ぶ可能。扉の鍵を破壊する事も、海を動かす事も。さぁ、ルフィどうする?」

「喧嘩売りながら逃げる!」

 

 ポンコツ具合に思わず頭を叩いた。痛くない筈なのに絶対痛いと喚くルフィを無視して周囲を警戒すると、いつでも攻撃出来るように包囲されていた。

 窓辺のジョナさんと思われる目が合う。

 

「ん?」

 

 口の形に注目?

 

 ジョナさんはゆっくり、大きく、分かりやすい様に口を動かした。

 

 『き』『ん』『か』『い』

 

「……金塊?」

「ああああああああッッ!?」

 

 後ろでひっつき虫していたナミさんが耳元で奇声を発して何処かへ駆けていく。

 なるほど、空島で手に入れた金塊か。

 

「無い!無い無い無い!お宝が無いッ!」

 

 押収されてる筈だよなぁ、海軍基地のドッグに入れられていたんだから。

 

「全員注目!」

 

 焦ったナミさんはパンパンと手を叩いて、恐らくジョナさんの思惑通りと行動に移った。

 

「お宝は命の次に大事だからコバト先生を人質にしつつ回収!その後人質を解放して、ルフィの言う通りド派手に喧嘩売りながら逃げる!OK!?」

「…どこの赤っ鼻ですかね」

「おだまりなさい!」

 

 ナミさんは私の指摘にフーッと息を吐いて落ち着きを取り戻す。

 

「とにかくこれ以上バラバラにならない様に全員が…」

「アーーーッッッ!?」

 

 今度はビビ様が叫び声を上げた。

 

「カルーを忘れてたわ!」

「「「「アッッッ!」」」」

 

 聡いカルガモの存在を全員が頭から消し去っていた事に気付く。この流れで行くとまさかニコ・ロビンも叫ぶのか…?

 

「……堕天使ちゃん、期待しているところ悪いけど流石に私まで叫ぶ事は──アッ」

「なんだロビン、お前もか?」

「いえ、特に一味に関連する事じゃ無いんだけれど。そういえばこの支部に脱走した犯罪者が居た、と思ってね」

「ふーん。牢屋を屁で爆発させた時の」

 

 お前らどういう事だ。ちょっとお姉さんとお話しましょう?屁で爆発って言葉にしても文字にしても理解出来ないんだけど。

 

「確か、ポルシェーミ?」

 

 あ、護衛の名前。そうするとイディエットも逃げ出した可能性があるな。ゾロさん達が捕えられていた牢屋の前に捕まっていたんだから爆発した時巻き込まれる確率高いよなぁ。

 まぁ、捕まえるのはジョナさんに任せるか。私は知らん。報復は……本職に任せるさ。

 

「…は?」

 

──ゴオオッ…!

 

 思わずクラクラする程の威圧感と、ルフィを中心に吹き荒れる風に思わず後ずさる。何度か味わったぞこの感じ。リィン、知ってる。覇王色じゃないですかヤダー。

 

「ルフィ覇王色収めるして。人質が倒れるした」

「…悪ぃ、無理」

「なんで!?」

 

 途端ルフィはニッコリと笑みを深めた。

 

「ポルシェーミは……絶対俺がぶっ殺す」

 

 ルフィ総攻め尊い…とか、需要はここにあります…とか、国王が泣くセリフを呟いてる王女様はとりあえず無視させていただきますね。

 




ロビンとリィンの相性はクソみたいに最悪です。でも作者、考えて欲しい。デジャヴって言葉を。

第2のモンペがアップし始めました。

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