2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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(前話の展開に対して)やっぱり、やはり、分かってた。

感想欄!!!お前ら仲良しか!!!楽しそうでなによりです!訓練されたコメント欄って言葉を実感する日が来るとは思わなかった。


第153話 一番怖い大将

 

 

「ッ、はァッ!」

 

 テントに現れた背の高い男に、ニコ・ロビンが動揺して息を荒くした。

 

「あらら、いい女になったじゃないの。ニコ・ロビン」

 

 その姿はモッサリとした天然パーマの上に大分ボロくなったアイマスクを付けていて、きちんとノリのついた青いシャツの上に白いベスト。

 

「青雉…ッ!」

 

 海軍本部の最高戦力(真)大将青雉。

 私が捕獲用労力的な意味で関わりたくなかった海兵No.2。

 

 青くなった顔で彼女がそう告げると、皆が一斉に殺気立った。

 おお…女狐の風評被害と引き換えに大将の危険性を何度も説いた甲斐があった。と、内心ほくそ笑む。彼の実力は本物だ。女狐と違って偽物なんかじゃない。

 

「そう殺気立つなよ兄ちゃん達…」

 

 そんな事を言われても警戒するのが人という者。ある者は拳を構え、ある者は武器を手に取り、またある者は……最大限集中した。

 

「別に指令を受けたわけじゃないし天気が良いんで散歩がてら──ウオッ!?」

 

 ぼぉん!ぼぉん!と爆発する音と共に地面を爆発させる。摩擦熱で発生させた炎は空から次々クザンさんに降り掛かっていた。オラァ!なんで指令じゃないのにこんな辺境に放浪してるんだ脱走常習犯!!

 

 直接体に当てるのに抵抗があるのなら、足元の爆発で動きを誘導させ降る炎に向かわせばいい。

 しかしクザンさんは綺麗に全て避けていた。

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっと待っ、おい、おい待て!は、おい絶対お前だろ!話、話せばわかる!分かるから無表情と無言で攻撃しかけるのはやめ…ぶつかるって!」

 

 〝火拳〟〝火拳〟〝火拳〟〝火拳〟そしてもう1回〝火拳〟

 軽々と避けられるのが悔しいから段々大きくなっている気がするが、まぁいいか。

 

 私は海軍で『風系の能力者』だと伝えてあるけどクザンさんには『不思議色の覇気(仮)使い』とバレてるから───手加減無用だな。

 

「待て待て待て待て!待て!ちょっと、そこのえーっと、ほら、なんだ」

「リーは堕天使だぞ?」

「そう、堕天使!堕天使ちょっとま──なんで威力上がったァ!?」

 

 〝大炎戒 炎帝〟

 

 エースが火の能力者で初めて感謝した。

 完璧にパクってやるぜ。

 

「わざわざ炎使っちゃって…!」

 

 そんな事を言いながらも避けるので若干イラッとする。

 大きな火球は物理的な重さがないので芝生を焼いただけで終わる。

 

「「「ビビ/ちゃん!止めろ/て!」」」

「リ、リィンちゃんストップ。……知り合い?」

 

 ゾロさんウソップさんサンジ様の指示によってビビ様が動き、私は渋々火で炙ろうとする考えを止めた。

 私が王族には逆らえないって何故分かってんだ一味の男達よ。人選がピッタリ過ぎて笑えない。

 

「知りませぬ。ですが、圧倒的に敵故」

 

 理由を述べ、箒を取り出して武器にする。

 さぁここで能力者の大将を潰す為の武器を作るよ!用意するものは媒体となる箒、そして加工されてない安い海楼石の塊が所々に付いている縄!縄を箒に巻き付けるだけで完成です!

 低コストでなかなかに使える武器になる。

 加工済みの石は高いし、加工しようと思ったけど海楼石使用申請書の記入事項が面倒臭かったし。だって、アレ、加工者とか書かないといけないんだもん。

 

 海楼石は実に有能。海だと能力者の力は削げるけど、完璧無効にはならない。水も同じく。しかし海楼石は海を凝縮させているから力は海より削げきれないけど無効出来る。

 

「げ…。か、海楼石…」

 

 クザンさんは何度も見た事のある武器に顔を引き攣らせた。

 

「クザン大将。私は雑用として海軍に務めるしていますたリィンと申します。ですが、今は海賊故に………沈め」

「ちょっとこの子の船長さん止めて!?」

 

 思わずといった様子でルフィに助けを求めた放浪海兵。私は箒をブンブン振り回しながら彼と広い土地を追いかけっこ(優しい表現)する。アハハー!おかしいなぁー!デービーバックファイトで疲れているのかなー!?何だかお腹がチクチクするんだ!!

 

「クソッ。ほんと海楼石って、厄介だな!」

 

 しかしルフィ達から10m離れた辺りでクザンさんが反撃に出る。

 氷の刃を武器にし、海楼石に触れないように私の動きを止めてきた。

 

「…………何怒ってんのよ、リィンちゃん」

 

 石と氷がぶつかるギャリギャリとした不快な音に紛れて、小さな声が耳に入った。何を怒っているか、だと?

 

 この氷の塊は何を抜かしてるの?脳みそ働いてる?ひょっとして氷みたいにツルツルなの?

 

「……仏の胃は死んだ」

「………いつの間に連絡回ってんの。胃痛親子の連携が怖い」

「ならサボるなかれ」

 

 胃痛親子などという不名誉な例えを出され思わず睨む。

 私が居なくなって放浪癖復活したよな、絶対。

 

 (つば)迫り合いの様な事をしている箒に力の限り押すと、怒り度合いを察したのかクザンさんは頬を引き攣らせた。

 

「ガチかよ」

 

 軽くあしらうつもりなのか足払いされる。

 ………この場に及んで悪足掻きか!食らってたまるか!

 

「…へあ!?」

 

 頑張って避けて反撃を加えようとするとクザンさんは素っ頓狂な声を出す、

 が、流石は現役大将。物凄い勢いでルフィ達の元へと吹き飛ばされた。

 

「ッ、いててて…」

「大丈夫かリー…!」

 

 抱きとめてくれたルフィの声を聞きながら噎せる。

 

「だから…こういう事やるために来たんじゃ無いっての」

 

 うるせぇ!私が海兵だとバレないように言っているかどうか知らないが、クザンさんはただサボってるだけだろ!私よぉおおおおく知ってるからな常習犯!さっさと仕事に戻れ!尻拭いするおつるさんやセンゴクさんや特に私の事を考えて欲しい!

 

「リィンちゃんどうしたんだい、今までこんな風に突っかかる事無かっただろ…」

「ゲホッ、サンジさん…」

 

 頭をかきながらクザンさんが近付く。

 それに対してゾロさんとサンジ様が最前線にいるルフィと私の前に立ち、他の一味は後ろでそれぞれ武器を手に取っていた。

 

 ただ、ゾロさんは武器を腰に差したままだしサンジ様はポケットに手を突っ込んだままで構えてない。警戒している、と言った様子だと思う。

 ルフィはいつでも戦えるようにしているけど2人だけ。

 

 正確に言うと見聞色を使える2人だけ、だ。

 

「青雉の言った通り今のところ敵対心は無さそうだ」

「アホ剣士と同じく」

「黙れ2番目」

「カッチーン…方向音痴の癖に一番最初に手に入れやがって」

「方向音痴関係無ェだろ!」

 

「ゾロとサンジが言うなら信じる!ほら、お前らも武器しまっておけよ。んで、リーも落ち着け」

 

 ル、ルフィに諭された、だと!?

 

「この一味しっかりしてんなぁ…。前の2人、見聞色を使ってるんじゃないの?」

 

 船長としての自覚と責任で成長してくれたのは喜ばないといけないんだけどなんだか謎のショックを受けて肩を落とす。

 初対面の時兄ってより弟だな、とか思ってたのに!精神年齢は確実に私の方が上だったのに!なんか悔しい!

 

「やりずれぇな…大将って奴は」

「これがあと2人いるんだろ…?」

「大丈夫だろ、生まれた頃は皆同じ赤ん坊だ!」

 

「んぐぅ…三強がすき……」

 

 ビビさまが萌えの過剰摂取で心臓を押さえたけどなんら問題あるまい。

 三強、の様子でクザンさんが眉を顰めた。

 

「後、2人? 俺以外のどの大将に会ったんだ…?」

 

 まぁそうなるよね!

 

「女狐だが…」

「げ…。なんでアイツと会ってんのこの一味。そんな気軽に会えてんの?俺でも数回しか会った事無いのに?」

 

 凄く嫌そうな顔をされた。

 対する麦わらの一味も苦笑いを浮かべる。

 

「ど、どんな感じだったのよ…」

「いや〜、怖かったな〜! 存在してんのに気配がしねぇもん! 戦わなくて良かったなんて初めて思ったな!」

「うわぁ…」

「青雉も会ったことあんのか?」

「…そりゃ、同じ大将だしィ? まー…あれだ…予想外の存在だからな…。ただ無口なイメージしか無かったけど…ガチモードはそんな感じなのか…」

 

 何故ルフィとクザンさんはそんなに女狐の悪口言ってて楽しんでいるのか?何馴れ合ってんだ海兵と海賊。何故ルフィは私を膝の上に乗せて「おーよしよし落ち着けー」ってお兄ちゃんしてるの?

 ゾロさんがクザンさんの発言に首を傾げた。

 

「ガチモード? いや、違うだろ」

「はい?」

「俺達が…と言うより俺が出会った時牢屋に別の犯罪者が居てよ。そいつが逆鱗に触れたのか知らねぇが、女狐の殺気が膨れ上がった。その時初めて気配を感じとったな」

「ひぇ…女狐ナニソレ」

 

 クザンさんが失礼な事を呟いたが、数秒たって疑問を叫んだ。

 

「は!?牢屋!?まって、女狐も疑問だけどお前ら一味も何してんの!?」

「冒険してた!」

「モンキー一家って奴は…!」

 

 そこだけは同意します。

 

「時に青雉さんよぉ、お前──」

 

 サンジ様が煙草の煙を吹き出して真剣な顔で質問する。

 

「──個人的に思う一番怖い大将誰だ」

「溜め込んで言う言葉がそれですたか!?」

 

 手で顔を隠して嘆く。

 自由過ぎる海兵と自由過ぎる海賊に精神がやられそうです。

 

「やっぱりサカズキ…あー…赤犬じゃね?」

 

 そんな嘆きをガン無視してクザンさんが答える。サカズキさんとクザンさんはタイプが真反対だもんね。馬が合わない、苦手意識、が畏怖に変わっても仕方ないと思う。恐怖じゃ無くて畏怖ね。偉大な人間に対して畏まって敬う事。

 本人が恐怖だって言っても認めてやるものか、テメェの怖いはただの畏怖だ!

 

「俺に突っかかってきた堕天使ちゃんは?同じ海軍関係者、思う所があるんじゃねーの?」

 

 怪しまれない範囲で聞いてくる。私は警戒している状態で数秒考え、答えた。

 

「黄猿大将」

 

 私が一番怖いと感じている将校はセンゴクさんだが、一番怖いと感じる大将は黄猿さんだ。

 その回答を意外だと思ったのかクザンさんは興味深げな表情をする。一味は若干不服そうだ。まぁ、一味の共通認識として初エンカウント大将が女狐だからイメージが強いんだろう。勘違いするな、私は怖がっているだけだ。

 

「サ、赤犬と青雉と女狐は決定的な特徴がある故に頑張るすれば抑え込むが可能に…。しかし黄猿は掴みづらく謎が多き」

「なんで自分がなんとかすること前提なんだよ…」

 

 いや、普通そうじゃない?

 

「一番謎が多いのは女狐じゃないの?」

 

 なんでそこで女狐の話に繋がるのか知らないがビビ様の疑問に答える。

 

「女狐は生態が謎のみで、目的はハッキリすているのですよ」

「せ、せいたい」

「彼女は守る大将でしょう?守るモノにさえ手を出さねば基本無害。ナバロン脱出で後半手を出さぬ事が答えでは無いですか?」

「あー…確かにそうね。リィンちゃんが来た辺りから姿を見てないわ」

 

 心の中で冷や汗をかきながら地面に頭を打ち付ける自分の分身が現れて思わず止める。その焦った気持ちはよく分かるから落ち着いてほしい。

 

「それは麦わらの一味が女狐の許容範囲内だったという事。関わりの無き私でも簡単に予想つくです。だから、怖くないのですよ」

 

 あくまでも私はね。

 無理に一味へ『女狐イメージアップ大作戦』を開催しても『なんでこいつこんなに庇うんだ?』ってなるだけだ。バラすバラさないを決めてない今相手側から察させるのは愚かな話。

 

「どうでもいいけどよ…俺の家の前で俺を除いた話をせんでくれ」

 

 あ…。という声が揃えられた。

 完璧家主を忘れていた。




それでは誰かさん。
S A N 値 チ ェ ッ ク の お 時 間 で す 。

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