2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第154話 「やっぱり今死んどくか」

 

 クザンさんが海を氷に変え、家主のおじさんは村の人達を追いかけて海へ出た。結局彼らはなんだったのか分からないし説明されてないし、正直興味も湧かないのでまぁいいだろう。

 

「ヒエヒエの実の能力者…おっかねぇな」

 

 震えるニコ・ロビンと飄々としたクザンさんの間にさり気なく立ったゾロさんがポツリと呟く。

 初期の一味は『怖くないぜひゃっはー!』って感じだったけど今は『怖いものは怖い、上はいる』って感じの雰囲気を醸し出している。

 

 自分の弱さを認めたと取るのが正解だと思う。

 

 一体誰に?

 ジョナさんか、と考えるがすぐ否定する。彼は仕組んだ事とは言えど負けているから多分違う。

 空島で強敵と戦ったか。勝てずに急いで逃げてきた……は無さそうだな。

 

 一味の共通認識で、強敵で、弱さを認めてしまうような───

 

「………」

 

 考えていた選択肢にそっと蓋をする。

 

 

 知らん。めから始まってねで終わるような存在は知らん。

 

「なんというか、じいさんそっくりだと思ったんだがなぁ…モンキー・D・ルフィ」

「じ、じいちゃん!?」

「自由奔放ってのは似てるが、こっちの方が大分落ち着いてんな…。止めなきゃいけない相手がいるからか?」

 

 クザンさんが唐突に語る。ルフィはジジに押されまくってる記憶しか無いから苦手意識が残っているんだろう。ツボを押さえれば簡単に制圧出来るのに…。

 

「今はまだ政府が軽視している一味。だがな、ここに至る経緯や所業の数々、それに素性を辿れば俺は人生で一番お前らを末恐ろしく思う」

 

 これでも長いこと無法者を相手してたんだけどなぁ、とため息混じりに愚痴られる。

 お前が思っている以上に厄介極まりないわ!

 

「特に政府に危険視される原因はお前だよ、ニコ・ロビン」

 

 くそ政府に及ぼす危険度を示す数値、その意味合いが強いニコ・ロビンは8歳で賞金首になった。

 

「ただ…。それは政府だけ、だ」

 

 クザンさんが肩を竦める。

 その微妙なニュアンスに聡い人は首を傾げ、疑問を生んだ。その政府()()という発言に。

 

「8歳がなんだ。海軍(うち)には5つで将校になった兵器がいる。無論、実力を認められて今の地位に付いている」

 

 海軍にそんな化け物がい……たわ、私だわ。

 

「そんな子供の頃から…!一体誰なの!?」

「お前らもよーく知ってるよ…」

「リーか?」

「私は雑用!アイアム雑用!」

 

 私だったわ。

 ルフィが鋭くて怖い。いや、馬鹿なんだけど。

 

「まさか…女狐?」

 

 ビビ様が震える声で呟くとクザンさんはニヤリと笑う。それはもう正解のポーズだ。やめろ。これは『私=女狐』とバレたらややこしくなるパターンのヤツ。

 

「それに、海軍が危険視している原因は違う。アンタだ、堕天使リィン」

「えっ、私!?政府では無くて!?」

「おーおー。どうやら懸賞金の謎へ自力で辿り着いたみたいだが…お前さんの影響力は海軍に根深く築いてる」

 

 海軍への影響力…?

 清掃や七武海用の雑用+女狐だったから関わる海兵は少ないと思っているけど、潜入捜査を引いてまで危険視される理由ってなんだ?

 

「……??」

 

 首を傾げるが出てこない。

 何が原因だ?他人を誑しこんでいるから?

 

「ちなみに、俺の会員番号はなんと52。2桁だ」

 

『さすが天使愛好会』

『知ってたか』

 

「そいつかぁぁぁぁあ!!!と言うかお前もかぁぁあ!!??」

 

 定期的に所持金が増える謎。

 ファンクラブ『天使愛好会』であり合言葉は『月と太陽』。月組(幹部)の名前の由来で写真を販売してる程度しか知らないけどお前もか!幹部の最後が28番だからかなり凄いな!?

 

「なんの番号?」

 

 ナミさんが首を傾げる。無視した。

 キミがファンクラブ(これ)に関わると私の胃が大変だから。

 

「なんと2桁…?えっ、合計いくつ…?」

「……もう少しで5000」

 

 嘘だろ。

 せいぜい3桁くらいだと思っていたのに…!4桁の折り返し地点かよ!

 

「むしろコチラとしてはなんで本人が知ってるんだって話だけど。その数が影響を受けた海兵の数だ。ただそれが会員ってだけで本部から離れてもどこぞの基地で布教している奴が居るかもしれない。……お前は知らねぇんだ、オタク(ヤツら)の勢いを」

 

 それは怖い。するとクザンさんは頭を掻き毟りながら嘆く。

 

「普通100位の値段設定だが、10000ベリーの金額で限定10枚コピーのレアカードだって目をつけてたのに!ヤツら俺が大将だと分かっていながら奪い去っていきやがって…!お陰で俺も中将も伝説者(レジェンド)から外れちまってよ…!」

 

 よく分からないが購入方法は聞かないでおこう。私の知らぬ間に水面下で苛烈で頭のおかしい戦いが繰り広げられていたのとクザンさんもブーメランって事だけは分かった。

 

 私の周りには極端な人間しか居ない気がする。

 

「何の話なんだよ」

「海軍本部勤務者にしか分からぬあまりにも愚かで馬鹿な話ですぞ」

「お前さん見た目だけは良いの自覚してる!?」

「見た目だけってなによ!大将だからってそこは譲れないわ!見た目はたしかにこの世に舞い降りた天女辺りだと勘違いしそうなレベルで可愛いけど非道外道な思考も生み出す超常現象だって人を雑に扱う所も貶めるために余念が無いのも努力嫌いなのに変な所で努力家なのも全てリィンという天から墜ちこの世の全ての不幸を詰め込んだ様な堕天使を彩る為の…!」

「ナミさんいい加減黙る」

 

 見た目が良いの自覚しているから利用してるのは事実だけどナミさんは一生黙ってて欲しい。

 

「あの、質問いいかしら…」

 

 意外な事にニコ・ロビンがそっと手を上げた。うん?過去に因縁あるんだよね?あ、恩人生きてるって分かったから警戒心解いてるのか?

 

「私にとって政府と海軍は同じ扱いだったのだけど…。お互いどんな風な立場なの?」

 

 本当に深く政府や海軍に関わらないとほとんど同じ扱いになってしまうのはよくわかる。海軍本部の正式名称は『政府直下海上治安維持組織』だから。政府の物、みたいな扱い。

 

「……これを海賊に愚痴って良いのか判断出来ないけどなぁ」

 

 海軍と政府は相容れない存在。下っ端はそうじゃないかも知れないが上に行けば行くほどハッキリしてくる。分かるよ、その葛藤。でもお前は早く本部へ戻って書類しろ。溜まってるだろ絶対。

 

「海軍は政府直下ではあるんだが、俺達は政府を嫌ってる」

「……何故?」

「あいつらが俺達を道具としか見ていないから、だ。金はやるからいつでもアチラのタイミングで軍艦をいくつか寄越せ、危険になってもならなくても天竜人を守れ。テメェでやれって言うんだよあの古狸のジジイ共…」

 

 結構無茶な欲求をする癖に暗殺者仕組んできたり邪魔者は排除しようとしたりするよね。海賊の仕業と見せかけて政府が潰した海兵や海賊は島のようにいる。それこそオハラがいい例だ。

 暗殺者は厄介だぞ〜。指示したのが誰か口を割らない人間が多いもの。

 

 なんにしろ、海軍上層部は世界政府が気に入らない。奴らの思い通りに手足になって動く事は屈辱以外の何物でもない。やるならこちらが手の平の上で踊らせたい。

 ……将来的にそうしてみるのも一興。

 

 兵士の命を軽々しく見ていることだって気に入らないし、制圧するために多大な武力を手に入れようとする危うさも気に入らない。私は一般的な人間なので周りの無害な人間を巻き込むのも遠慮願いたい。もちろん、自分に対して無害だけど。

 聖人君子でやってられるか。自分に対しての利益は最優先!

 

「クエッ、クエー!」

「リィンは何か恨みがあるのか?って言ってるぞ。俺も同じ事考えてた」

 

 難しい顔をしながら視線はクザンさんへと注いでいたので獣2匹が疑問を持った。恨みは脱走だけどそんな事海賊の私には言えない。クザンさんと知り合いなのも面倒臭い。

 だから今作った理由を話す。

 

 ……悪い事を考えながら。

 

「私自身大将と初めて会うしたのですが。実は私、昔から色んな人に命を狙わるしてますて」

「「「は!?」」」

「あっ…」

 

 何故クザンさんが『あっ察した』みたいな顔をしているのか分からないが、今から死ぬのは貴様だからな放浪海兵。

 

「その中で青雉という存在に狙わるすた、とタレコミが…。幸い毒故効かぬですたが」

「「ヘェ…?」」

 

 毒不味いよーと追加すればルフィとナミさんの顔が見せちゃいけないレベルになる。

 

「モンペがアップし始めたぞー」

「ルフィとナミ、ひとまず落ち着け」

「ちょ、ちょっと待って!全く記憶が無いからな!?それ絶対誤解だし嘘に決まってるだろ!」

 

 思わず焦るクザンさん。

 これは全くの嘘だがここで終わると思うなよ。

 

「更には! 白ひげ海賊団の船員にも手を出すという軽さ!いくら海賊だろうと関係無きですたので圧倒的にびっくり仰天見境無し!」

「し、白ひげ海賊団って全員男らしいよな?」

「男も?と言うか男好き…?」

 

 全員男じゃないけど。ナースさんは女性だし、和服美人のイゾウさんも女性だし。

 と言うかイゾウさんをナンパしたのは嘘じゃ無い。ただ性別を言わなかっただけで大災害を起こすよね。うんうん。

 

 そこ、ビビ様。「クザサン来ますか!?サンジさんは総受け気味で…いえ、やっぱり愛のない物はダメよ!」とか叫ばない。クザンさん思わず死んだ目になっているから。キミが王女だって知ってる立場だから胃が痛むから。

 おかしいな…私も痛い。思わずお腹押さえた。

 

「私はこれでもそれなりに伝ぞありその噂を聞いて納得しますた!醜い嫉妬!私が青雉大将の好くした海兵や七武海にチヤホヤされるからと…」

「ちょっとリィンさぁん!? 白ひげの所は若干否定出来ないけど、どう考えても誤解だよな!?」

 

 そのまま殺されれば良かったのに。

 

「噂だけでこれです故…実際がどれだけ酷いかなんて考えるまでもなく」

「海兵最低よ!」

「サイテーだ!」

「誤解だっって言ってるでしょうが!」

 

 ナミさんとルフィの最低コールにクザンさんは肩を落とす。ゾロさんとウソップさんとサンジ様が死んだ目をしてこちらを見てくるので信頼の無さが見え隠れする。あっ、カルーまで冷たい目。もう少し騙されてくれてもいいと思うんだけど。

 まぁ本気は出してないけどさ。

 

 ルフィとナミさんが動かせれたら充分だよね。

 ついでにビビ様に影響を及ぼすと恐怖してくれたら。

 

 この3人は怖いぞぉ、色んな意味で。

 

「まじで止めてくれない?綺麗なおねーちゃんに厳しい目で見られんの趣味じゃ無いんだけど…」

 

 だったら早く仕事に戻れ。

 

「挙句先ほど…『この一味いい素材揃ってんな』と呟くしますたのでビビ様!」

「来たァ!?嘘、本当に!?ホモよ!ホモ!」

「嘘!全部この子の嘘!俺はー!べっぴんのおねーちゃんが好きなのー!」

「……そこでビビ様に手を出すしたらアラバスタが黙るしてませんからね」

「出さねぇよ!?本部にいるどっかの狐のせいで女性恐怖症になりかけてる憐れな俺に同情は無いの!?」

 

 するとニコ・ロビンが慈愛に満ちた目でクザンさんを見て呟いた。

 

「…クロコダイルも普段そんな感じだったからまだ大丈夫よ」

 

 嗚呼…ドフィさんに振り回されてたのかァ。

 

「やっぱり今死んどくか!俺が!」

 

 振り回されるのは辛いって事がよく分かったなら早く帰れそして怒られて仕事をしろ。ついでに溜まってる私の分まで。

 




未だにイゾウさんを女性と勘違いしているただひたすらに仕事をしてほしいマンの企み。SAN値ピンチなのは青雉さんでした。今 回 は 。
死んだ方が楽なんじゃないかって思わせる鬼畜はあくまでも主人公(何度目)
明日、ロリコダイルさんの誕生日だけど何も特別なお話用意してないんだ…。ごめんね。一年前にお祝いの話書いちゃったからネタががが。

だから代わりに明日ロングリング(略)編終わらせるネ☆

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