女狐(めぎつね)隊編(たいへん)スタートです。と言っても女狐隊と月組がワチャワチャするだけですが。
時間軸
アラバスタ
ジャヤ&七武海会議 ←ココら辺でのお話
ヴェズネ&空島
ナバロン
ロング
(火拳護送中)
グラン・テゾーロ
第166話 徹夜は思考能力を掻っ攫う
女狐隊。
幻なのでは無いかと
彼らは白い衣装と赤の何かを身につけ、彼女の手足となり戦う。人々は女狐の直属の部下を畏怖を込めてそう呼んだ。
海軍本部の再奥にある元帥室を守るかの如く存在する2つの向かい合った部屋。そこが彼らの住処であり仕事場。
そこを覗いたものは始末される。
流石に『女狐』という名前に喧嘩を売るほど海兵は愚かでも暇でも無いので、誰も中の様子など知らない。
例え、中にいるのが生粋の海兵で無くとも。
「ボム!予算案の書類完成してる!?」
「それなら部屋向かい!大体まとめ終わってたからチェックに回した!後は先輩がしてくれる!」
「はッ!?おい、さっき行ったけど先輩達の部屋もぬけの殻だったぞ!?」
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!また脱走した!」
「えーっと、今日誰が出勤だったっけ?」
「4人じゃ回しきれねぇ!レモンッ、取っ捕まえて来れるか!?」
「いや、あの人たち足速すぎて無理」
発狂していても。
「武器申請書に海楼石使用書に最新版入隊一覧表まとめに被害額計算と請求に潜入報告書に派遣一覧作成……潜入報告書はまだいいとしてなんでウチらはこんなに重要雑務が回ってくるんだい」
「どう考えてもタイショー」
「どう足掻いても大将」
「どうやっても大将!」
「……だよね」
死んだ顔をしながら書類を片付けていても。
──バァンッ!
「皆さん居ますか!?」
「こ、コビー!助かった!先輩が消えて人手が足りない!助けてくれ!」
「すみませんッ、クザン大将が行方不明です!」
「「「「あん…の脱走兵ーーッッ!」」」」
仕事に追われていても。
「ひとまず俺が探してくる!オカンは提出締切を引き伸ばす交渉行ってくれ!元帥に!」
「今元帥は確かマリージョアで七武海達相手にしてたっけ。それ終わってから行ってくるよ…」
「あっ、ナイン!その被害額計算のやつ昨日更に追加されたって元帥が言ってたからちょっと待って!オカン貰ってきて〜ッ!」
「嘘だろ!?もう億越えてるんだが!?」
「叫べるならまだいける叫べるならまだいける叫べるならまだいける」
「もうあと2、3人手が欲しい。大将に提案してみるか、アンラッキーズ戻って来たら伝えよう」
阿鼻叫喚であろうと。
「あっ、そう言えばクロコダイルが捕まりましたよ。皆さん気にされてましたよね」
「捕まったんだ…そっか…良いなぁ監獄」
「なんで俺達軍を選んだんだろう」
「命の危機とかもうどうでもいいや…」
「この選択肢はキツイ…」
「なんか、新聞では幼いビビ王女に恋をして国を乗っ取ろうと貶めたらしいです。なんと言ったらいいのか……凄い人ですね、クロコダイルって」
「「「「軍でよかった!」」」」
これはリィンが船の上で手に入れたものにホクホクと満足をしている数週間前の出来事だった。
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「じゃあスモーカーさん、俺達噂の女狐隊がいるって部屋に行って送り届けてきます」
「聞く限り…元帥室の目の前だぞ?大丈夫か?」
「なら迷子にならねーな〜」
「いや、スモーカーさんが心配してるの絶対そこじゃないだろアホ。……コイツら移動届け提出する為に元帥室に特攻仕掛けた猛者ですよ?心配するだけ無駄だと思います」
「…………そうか」
スモーカーは言いつけは守っても自由奔放過ぎる月組に思わず遠い目をする。暴走して走り出そうとしているリックをにこやかにグレンが絞め落とそうとしていた。
アラバスタの件が終わりスモーカーは1年と持たず本部に戻る事となった。インペルダウン護送の任務とついでに異動となったのだ。
『女狐隊加入』
此度の功績─クロコダイルの野望阻止─という事で名誉ある異動となった訳だが、実際はどうだろうか。女狐本人を知っているスモーカーにとって便利な存在に唾をつけておこうと考えているとしか思えない。
押し付けられた
「名目だけだから俺は特に挨拶とか必要無いと思うし自由にしていいと思うが…あー…お前らは」
「分かってるわよう!あちし達が入るのは監視も含めてるのよねい?」
「……うん、きちんと理解はしてる。忙しいのは嫌だけど」
「さて、久しぶりに本部に戻ってきたわけだが」
「分かってる。言うな会長」
「1週間、多分寝れないな」
「は?」
月組の不穏な会話に思わずスモーカーが首を突っ込む。本部に戻ってきただけで何故寝れないのか謎で堪らない様だ。それもそうだろう。
「あらら〜?月組じゃない」
「あ、クザン大将」
「なんでアンタがコイツらと面識持ってんだ?」
スモーカーの言うアンタはもちろん突然現れたクザン。コイツらとは月組の事だ。元々雑用だった者達と大将とでは階級に圧倒的な差がある。その階級差で10年ほど同じ部屋で暮らしていたアホもいる訳だが、それは例外だろう。
「あー、あの子。名前なんつったっけ…。まぁいいや、792番君?あの子達が暴れてたよ」
「「「あぁ…過激派」」」
「なんだその不穏な会話」
会話に付いていけないスモーカーが思わず首を傾げる。全く分からない。
月組の中でも大人しめな性格をしているジョーダンがその様子を見て説明を始めた。
「月組の名前の由来って知ってますか?」
「いや、特には。お前らがそう呼ばれているのを聞いただけだが」
ふむ、それもそうか。
そんな副音声が聞こえそうな様子だった。
「リィンちゃんのファンクラブです」
「………は?あいつの?」
「リィンちゃんのファンクラブです」
「…あ、見た目か」
『えー、アレにぃ?』と言って引き気味の様子だったが見た目がいい事を思い出してスモーカーはやっとこさ納得する。
確かに月組の執着もそう考えれば普通…なのかどうか分からなくなってきたがまぁいい。
「現在正式なFC会員数は4995、+1です」
「おいちょっと待てジョーダン。お前が今入れた『+1』って俺の事だろ」
「うへぇ…もうそんなに居るのか。俺が前に聞いた時3000位だったんじゃないの?」
「増えれば布教速度は上がるんですよ」
ギブギブと唸っているリックを無視して会員No.0のグレンがツッコミを入れた。しかしそれも呆気なく無視される事となったが。
「まぁ、それこそが僕達元第一雑用部屋『月と太陽』の幹部、通称『月組』って理由です」
「はァ…」
「ちなみに会長のリック曰く目標は一師団作れる人数に布教する事です」
つまりあと2〜4倍という事。海軍本部を乗っ取る人数にはならないだろうが頭はおかしい。
「ヘェ〜、そんなものがあるのねい…」
感心した声が呑気にも響く。その渦中にいる人間の部下になるというのにどこか他人事だ。
「生態には大体三種類ありまして」
「せいたい…」
「ほら、リィンちゃんって性格が…その…猫被ってて分かりにくいじゃないですか」
「あ、あァ、確かにそうだな」
「だから『見た目を知って性格まで夢見てる派』と『性格を知ってしまい見た目だけでも癒されたい派』って感じに分かれるんです」
「あ、ちなみに俺は後者」
「なるほど納得した。それでお前らは?」
「『見た目も性格も受け入れている派』です」
キリッと真面目な顔をされたが内容が内容なので間抜けにしか見えない。とりあえずスモーカーは月組をこのまま部下として置くか真剣に考える事にした。
「まあ、過激派云々は大体分かった。各生態の中でもおかしなヤツらって事が」
「えぇ。禁断症状ですね」
「きんだんしょうじょう…」
海軍はもうダメかもしれない。
スモーカーは空を見上げて嘆いた。
少なくとも、月組が将校─それこそ中将や大将辺り─になれば確実に終わる。もしも彼らがそこまで地位を上り詰めたのなら、その時の元帥は密やかに外道鬼畜と評価をくだされている潜入中の彼女だろう。
まるで震源地に沢山地雷が埋まっている様な威力だ、世界が終わる。
「(アレは大分古参だが…果たして元帥になるつもりでいるのか?)」
大将は次期元帥。
海軍の中ではそれだけの地位という事だ。
例え本人やセンゴク曰く名ばかりだろうと、女狐としての周囲の評価は名ばかりではない。実績と噂が付き纏う。
「(……辞表書いておこう。引退して平和な田舎で用心棒としてゆっくり暮らそう)」
出された結論は極端だった。
「──居たぁぁあ! 青雉ぃいい!」
つまらない現実逃避から一気に現実に引き戻された。少なくとも大将に向かって横暴な態度を取れる海兵が叫んでいる事だけは理解出来た。
「げ、早っ。んじゃそういう事で」
「どういう事だよ」
なんだなんだと月組ですら首を傾げる。
鬼の様な形相で一人の男が走ってくる姿を見てクザンは嫌そうな顔をした。
「そこ!そこの軍団!そこにいる脱走兵を確保してくれ!頼む!」
「じゃあなボム君!俺の書類は未完成のまま机の上に置いてあるからよろしく頼んだ!」
「てっめぇええええ!」
スモーカー達が呆気に取られる間にクザンは逃げる。10年以上リィンから逃げているその逃げ足の速さとスキルは、新人の男に捕まる程レベルが低いわけが無い。
「我らの天使なら追い付いて縛ってるな」
「雑用仕事してたら誰かは週に一度見る光景」
「アレが引き継ぎかもな」
「平和だな…」
常識が少し家出をしている月組の数名がチラホラ懐かしがるように呟く。すると追い掛けてきたチリ毛の海兵が諦めたのか減速した。
「追い掛ける時間があるなら書類さっさと終わらせて今日こそは寝る!」
そして進行方向を本部の方に向けた。
何とも情けない決意表明である。
「「「ちょっと待った!」」」
「ぐえッ!」
リック、ニコラス、ハッシュ。その3名が慌てて海兵を引き止める。
その理由は簡単な話。その海兵の隊服が見慣れた様子と違ったからだ。
隊服というのは数種類存在するが、将校になるとかなり自由が効く。しかし背中に正義の文字を掲げなければならないのは基本だった。
その海兵はベースは普通であり月組となんら違いは無い。腕まくりなど許容範囲内だ。
「なんで赤いスカーフなんだ?」
将校以外は必ず付ける隊服の一部、スカーフが青ではなく赤だったのだ。
「あー…ひょっとして支部から異動してきた海兵達か?」
「戻ってきた、が正しいですが」
「なるほどな」
赤いスカーフの海兵はほんの少し自慢げに笑いながら理由を言った。
「女狐大将が赤モチーフなモンで部下は揃って赤いの着けてんだ」
「お前、噂の女狐隊か」
「おう、そういう事だ。悪い、青雉の後始末付けないと業務回らないんでこれで……」
「「「まてまてまてまて」」」
去ろうとするが再び3人に引き止められる。
「新しく女狐隊に入る人間が2人いるんだ!」
「それを届けに来たんです」
「仲良くしよーなー」
「「リックは口を開くな」」
赤の海兵は目を白黒させる。その手の話が来たのは実はこれで10回目なのだから。
少し部屋の外に出てブラつくとすぐ出てくる。
……それが引きこもって仕事に追われる理由の一つになるのだが。
「あちし達よーう、あちしはベンサム」
「…私は、パレット。ちなみに偽名」
「ちょっとパレットちゃん!?あ、あちしは本名だからねーい!?」
「いやそういう問題じゃない」
赤の海兵とて偽名を使っている。彼らの先輩にも偽名の者はいる。
だから問題はそこでは無いのだ。
「俺はボム。現在女狐隊の…雑用?」
「なんだ、お揃いか」
「おそろいだな」
「同じか〜…」
「地位は一等兵だからな!?」
「尚更お揃い。俺達も一等兵」
「おそろいだねぇ」
「よろしく頼むわ、俺達も女狐隊とは深く関わっておきたいし」
「違う!俺の言いたいことは馴れ合うとかそういうのじゃない!真偽だ!」
こういう仕事はナインなのにとブツブツ愚痴りながらボムは2人を見た。スモーカーという将校が傍に居ながらも態度を変えない所は女狐直属の海兵、と言った所だろう。
「(くっそ…連絡が無いんだよ…。基本事後報告だから真偽が分からねェってのに…)」
ボムこと元Mr.5。
今日も今日とて上に振り回される。
目の前の女狐隊加入予定者が元同僚だと気が付かず、どこまで話していいのか必死に頭を回転させていた。間違いなく苦労人だ。
「……俺が信用云々を口にするわけじゃ無い、誠意を見せろとかそういうのでも無い。問題はアンタ達が『大将の信頼を得ているか』と『大将を理解しているか』だ」
落ち着かせれば出口は自然と見えてくる。
ボムは自分の大将にとって敵か否かを見極めるだけだ。現在全てを把握してリィンと連絡を取れる元帥は居らず、アンラッキーズによる確認も取れない。
「(女狐隊に加入というのならコイツらは本人と会った筈だ。恐らく、中身と)」
キッ、と睨みつけながらきいた。
「大将を一言で表すとどんな感じだ!ちなみに俺は真面目系クズだと思う!」
アラバスタの内務処理に追われていたBW組は現在二徹目だった。
「……鬼畜外道?」
「……うん、鬼畜外道」
「よしっ!合格!アレは性格クッソやばいよな!とりあえず書類がやばいから手伝え!頼む!」
月組で一番耳がいいグレンは後で殴られてしまえと思いながら口を
次回は女狐隊のメンバーや内情などなど。
Mr.5→『海兵達(月組)に大将の正体バラすわけにはいかないしコイツら(ベンサム)が本当に加入予定者なのか見極めないといけない』
Mr.2→『この場の誰もが正体を知ってるから内緒話しなくても良いけど元七武海の部下だとバレない様にしないと』
お互い元BWだと知らない。知っているのはアンラッキーズとリィンだけ。
Mr.5達はガープ中将やコビメッポに、Mr.2達はスモーカー大佐や月組に送ってもらったのでまじですれ違う。
偽名
Mr.5→ボム
ミス・バレンタイン→レモン
Mr.9→ナイン
ミス・マンデー→ツキ(オカン)
Mr.2→ベンサム(本名)
ミス・ゴールデン→パレット