2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第175話 幸せなアンチテーゼ

 

 夕暮れ時。

 私が船に帰ると私以外の全員が居た。

 

「あ、私遅刻です?」

「いや、全然」

 

 サンジ様が微妙な笑みを浮かべて出迎えてくれる。そして視界の端にチラチラ映り込む上機嫌なルフィに視線を移した。

 

「なぁなぁリー!聞いてくれよぉ〜!」

「……………船の修繕可能でしたか」

「なんで分かったんだ、エスパーか!?」

 

 親が親なら子も子だな。ミンクの子はミンクという事だし。

 私はエスパーじゃない。

 多分、モンキー一家限定の心理学者か何かだと思う。

 

「それで船はどの様にと考えるしてますか?」

 

 よっこいしょ、と椅子に座って机に視線を落としながら聞く。机の上には銃。

 

「……何してるんだ?」

「改造」

 

 ウソップさんの質問に淡々と答え目は決して前を向かない。

 目元だけは見せてたまるか。私に銃の改造技術は無い。

 

「んで、メリーの事なんだけど。もちろん直してもらう、これは船長命令だ!」

「無駄な所で船長命令を使わないでルフィ」

 

 一緒に行ったナミさんがペシッとルフィの後頭部を叩いた。

 初めからナミさんが説明した方が早いが、私にはメリー号を壊すという使命がある。

 その都合のいい展開を作らないと。

 

「アクア・ラグナって高潮が数日後に来るらしいから、その日までアイテムボックスって奴でリィンがメリーを仕舞まっておける?」

 

 おおっとぉ!?私に都合のいい展開が早速来たとか災厄さては私を見限ったなァ!?

 

「あら、でも堕天使ちゃん容量いっぱいじゃなかったかしら」

「ふげっ!?」

「前にメリー号でギリギリだと言ったわよね?」

「はい、です」

 

 自分で自分の首絞めた。

 災厄が居なくなるなんて夢のまた夢の幻想やったんや……。災厄が一途過ぎて笑えない、来世では縁が切れますように。

 

 いや、でも管理を任される以上壊れたら私の責任問題か。

 

「では高潮ぞ経過まで待機という事ですね」

「でも高潮どうしよう……」

「あー、それですたら」

 

 困った声を出すナミさんに1つ提案する。

 

「あらかじめ高潮に呑むされる事前提で船を街に括るしておきませぬか?波に逆らうすると悪化する可能性があるですので、縄か何かで」

 

 縄で結べば波に揺られ激しい抵抗も無い。修理する為に荷物を退かしておく必要があるならもういっその事、という考えだ。

 どうせウォーターセブンの船着場はお金かかりそうだし。

 

「それ、縄が切れればヤバくねぇか?」

「大丈夫ですぞ。そこは本職に任すすればよろしきかと」

 

 縄が切れれば、終わるんだよ。船は。

 荷物を別の場所に置ける理由にもなるし、私の不思議色を使えば繋ぐ縄なんて簡単に千切れる。

 

 カチャカチャと銃を弄り回しながら余裕がある様に言うのがポイント。

 自信がある案だと思われれば、私の意見はすんなり通る。

 

「じゃあそうすっか!」

 

 ルフィは疑うこと無く了承した。

 船長の許可さえ取れれば簡単な話だ。

 

「ナミさん、アクア・ラグナはいつ頃来ると?」

「明日の夜中以降ね」

「では時間があるですね。荷物の運搬は明日にするが最良と思うです」

「えぇ、もうすぐ日も暮れるしね」

 

 太陽は半分以上沈んでいるのか薄暗い。

 窓の外の様子を見ながらナミさんが私の意見に同意した。

 

 ふと、ゾロさんが口を開く。

 

「お前武器換金出来たか?」

「あー…それが店を探す不可能で」

「ヤガラブル借りなかったの?」

「箒でちょいちょい、と」

 

 ヤガラブルというのは道案内可能な移動手段なのだろうか。そう予測を立て、返事をするとツッコミが来なかったので正解だったらしい。

 実際メリー号と話していたから忘れてたんだけど、それっぽい言い訳考えていて良かった。

 

 とりあえず話題転換はしておこう。

 

「ビビ様は本見つかるしますたか?」

「バッチリ!」

「……ロビンさん」

「我ながらナイスチョイスだと思っているわ」

 

 なら安心出来るか。

 チョッパー君は薬研(やげん)で薬をゴリゴリ削ったり本を捲ったりしているから話題を振らない方が良いかもな。

 

「ルフィは?造船所はどのような感じですた?」

「それがよ〜面白いやつが沢山居たんだ!」

 

 あーはいはい船長可愛いな。

 島に着く前のピリピリした雰囲気は薄れていてホッとする。

 

「ウソップみたいな奴とか、ハレンチって言う奴とか」

「全くわからぬ」

「あとアイスのおっさんは天才だし」

 

 話を半分聞き流しながら銃の構造を見ていく。

 反動が大きい銃は打撃用だよな。うん。

 

「あとアイツ面白かった、ハトで話す奴!」

「ルッチって奴だな。親切な奴だったぜ」

 

 ウソップさんの言葉に動きを止める。

 

「るっち?」

「知り合いか?」

 

 残念ながら知らない人だ。

 でも待って、私はこれでも海軍上層部の人間だから聞き覚えはあるんだ。

 雑用以外なら、海軍で知られてる名前。

 

「ロブ・ルッチ……?」

「おー、そいつそいつ」

 

 ケラケラ笑いながら言ったウソップさんの肩をガッと掴む。

 

「それは、造船所の職員ですたか!?」

「お、おう。……あれ?お前目元赤くなって」

 

 悪いと思いながらもウソップさんを弾き飛ばすようにして外に出る。

 

「お、おい!リィン!?」

「望むなれば、出航準備を…ッ!」

 

 街を縫う様に箒で飛ぶ。

 

 時々私を目撃する人間がいるのでマントのフードを深く被り特定を避ける。闇に紛れて造船所まで急いだ。

 

 ロブ・ルッチとは有名な名前だ。海軍にいてもその名前と歴史は伝わってくる程に。

 彼は13歳の時とある国で海賊に人質に取られた兵士500人を皆殺しにした経歴を持つ。

 その時の傷で、背に5つの砲弾の跡がある。

 

 化け物だ。砲弾を5回浴びて死なないとかどう考えても化け物だ。

 

 正直国や国民を危険に晒す羽目になった兵士に同情の余地は無いが、政府がニコ・ロビンを求めて居る噂を手に入れている以上、警戒した方がいい所の話じゃない。

 

「〝ハーフノット エア・ドライブ 〟!」

 

 突然の声と、飛んでいてもなお引き寄せられる不意打ちの攻撃。

 箒には縄が繋がれてあり地面に叩き付けられる様に飛行が阻止された。

 

 とぷっと海に沈む様に光が消え闇が生まれる。

 

「不法侵入でもしようってか……てめぇ?」

 

 そこには縄を片手に男が葉巻を吸っていた。

 子供の姿である私の顔を目撃して訝しげに眉を寄せる。

 

「邪魔するなぞ!」

「どっかで見たか……誰だお前」

「早く、市長に会うしなければならぬ!緊急事態ぞボケェ!」

「なっ…!」

 

 口の悪さにか、会う相手の事を聞いてか、絶句という表現が当てはまる。

 

「アイスの人の部屋ぞどこ!ロブ・ルッチの事で話があるぞり!何故その様な奴が船大工などすてるぞ、ここには、何がある!」

「待て、何の話だ」

 

 聞いた方が手っ取り早いと思い詰め寄った。

 

 その時、潮風に紛れて温かな風が吹く。

 風に紛れて硝煙の……銃撃の匂いと鉄臭い血の匂いが届くいた。

 

「……血の匂いッ!」

「うわぁああんっ!政府などクソ喰らえ!」

 

 この世の残酷さを嘆きながら箒に乗る。風が道案内をしてくれる様に1つの窓から匂いを運んで来てくれていた。

 

「あそこ……!」

 

 なりふり構って居られないのでガラス窓をぶち破ってダイナミックお邪魔しますッ!私の首と海軍の胃の耐久性がピンチですこんにちは!

 

 そこには変な仮面を付けた2人組と煙を吹く拳銃。そして血を流してベットに蹲る男が居た。

 

 ……せやな、政府の人間が1人とは限らへんよな。リィン知ってたで。

 

 遠い目をして空を眺めた。

 空が綺麗だなぁ……曇りだけど。

 

「堕天使リィン……何故ここに」

 

 仮面の1人が私を見て呆然と呟く。

 声色から焦りと警戒が見て取れる。

 

「アイツら望んでいた相手と真逆だったな」

 

 よく分からないが、『アイツら』という事はこの場の2人を除き複数人数別の場所に居るということ。敵さんは最低でもこいつら含めて4人居るんですね絶望。

 

 ベットの上に居るアイスバーグさんであろう人物と目が合う。口が逃げろと動いたが、ここで逃げたらセンゴクさんの胃が死を迎える上に私も全体的にヤバくなるので逃げれません。

 麦わらの一味に関連する事柄は全て私の責任ですので!この部屋の壁にある唯一の手配書ニコ・ロビンとか見たくなかった!

 

 うぉおお逃げてぇええ!でも切り札あるからワンチャンいけるでこれぇぇぇ!かんばれ私!がんばれ私!

 

「……CP9、ですかねェ」

 

 荒ぶる心を沈めながらアイスバーグさんの前で庇うようにベッドに乗る。背後からの奇襲の際はアイスバーグさんが盾という事でよろしく。

 

「……!」

 

 ビュッと風が吹くような速度で仮面の1人が私に詰め寄り喉に指を突き立てる。

 これ、喉に穴開くパターンですね。

 

 恐らく六式使い。私は視界で捉えることが出来ても、超人では無いので体は動かない。

 つーかその速さについていけるか阿呆が。

 

「私を、殺すですか?どうぞご自由に」

 

 ニヤリと不敵に笑ってみせる。

 仮面の2人組はピシッと固まった気がした。固まってくれているのがいいなぁ。

 

「殺せます?無理ですよね?貴方達がCP9である限り、絶対に無理ですよねェ?」

 

 当然ゲス顔である。

 切り札は最初から攻撃に全振りさせてもらう。

 

「私を殺せば、堪忍袋の緒が切れる方がいますもの、ねェ? 分かってます、分かってますよ。私には貴方達の気持ち分かっていますとも……」

 

 うんうんと頷きながら喉に当てられた指をそっとズラす。やめてください死んでしまいます。

 

「天竜人の怒りには、触れたくないですよね」

 

 こんな言い方されてキレて突発的な行動を起こさないとか平常心強すぎかよ。流石だな闇の正義を掲げる人達。

 

 いや、海軍の兵士として『闇』は必ず必要な組織であるということは重々承知してるし、むしろつまらない問答で無駄な時間を過ごす位なら問題事態潰せば良いとは考えているよ?賛成だよ?だけどそれは私が絡まなければね?

 

「私がONLY(オンリー) ALIVE(アライブ)になった理由は天竜人の口添えですよね。私にはこれ以外何も浮かばないのですよ〜……実際その様でしたしね」

 

 会話に集中させる為、あえて慣れない標準語で語りかける。さぁ時間を稼ごうじゃないか。

 下で出会ったロープの人も異様な事態に気付いていたのだから増援は来る。

 

 そして自分が優位に立っている印象は必ず植え付けろ。何が目的なのか探せ。政府の思い通りにさせるな。

 

「もちろんそれは1人ではない」

「……ッ!」

「そうですね、2人、でしょうか」

 

 むしろ2人しか思い当たらないけど。

 

「ふふふ……確かに面白い存在だわ」

 

 仮面の1人が、その仮面を外した。私の背で息を呑む音が聞こえる。

 

「……カリファ」

 

 茨のムチを持った鉄仮面の正体は眼鏡をかけたお姉さんだった。アイスバーグさんの知り合いらしい。

 

「いいわ、どうせもうここには用が無い。去らせてもらうわ」

「おい……!」

「どうせ古代兵器の設計書は数年前訪れた彼が持っているんでしょう?」

 

 古代兵器とか凄い嫌なワードが聞こえた気がするけど気の所為だよね!絶対!

 カリファさんの視線が私の後ろに寄せられる。

 

「カティ・フラム」

「グ…ッ!」

「彼は今名前を変えてフランキーと名乗っていると記憶しています。彼が、設計書を持っていると見て間違いない様ですね」

 

 カリファさんはそのまま私をアイスバーグさんの方へ突き飛ばした。

 

「堕天使リィン、1つ聞かせて欲しい」

 

 もう1人のクマ型の仮面を被った人物が声を出す。声色から男だと言うことが分かった。

 

「何故、海軍を辞めた」

「貴方になんの関係が?」

「俺には無いな……俺には」

「政府には、大有りですたかぁ」

 

 質問の意図が分からないが答えはひとつ。

 

「自己満足の為ぞ」

 

 相手がその言葉に反応する前にカリファさんが電伝虫を取り出した。

 

「行きましょう。向こうは本命を手に入れたわ」

「……本命?」

 

 政府の目的は『古代兵器の復活』で、フランキーという人間がその設計書を持っていて、その男はこの島に居る。

 そして古代兵器という関連性から考え、タイムリーな目的。

 

 世界で唯一読める人間。設計書の入手成功率が100%と確定されない場合、狙うのはただ1人。

 

「ニコ・ロビン…ッ!」

 

 仮面を付けた男は私の反応に対し何も答えずに壁に体を当てる。驚いた事に、カリファさんが男の体を押すと壁がドアに変わった。

 

 多分、ドアドアの実の能力者。

 

「ではアイスバーグさん。さようなら」

 

 瞬く間に姿は無くなる。

 ここに来て1分程度しか経ってない筈なのに長い時間が経っている気分。

 

 1連のやりとりで得た疲れを誤魔化す様に深く息を吐いて緊張を解く。

 

「はァ、若干予感はすていましたが、仕方ないとはいえ。これはこれで面倒臭い。流石に海賊巡るして全面戦争など馬鹿馬鹿しい」

 

 海軍を『海賊奪還』の為に動かす訳にはいかない。もちろん何も無い事が1番だけどニコ・ロビンが向こうの手に渡ってしまった以上、こちらとしてもなんとかしなくちゃならないんで。

 

──プルルルルルル…

 

 アイスバーグさんの意識が朦朧としている事をいい事に、懐から取り出した電伝虫のダイヤルを慣れた手つきで操作する。わりと早く相手に繋がった。

 

「………ニコ・ロビンが政府の手に渡るした。彼女を派遣してください。現在の場所はウォーターセブンで目的地は恐らく、司法の塔」

『…………遂に動いたか』

 

 電伝虫の先でポツリと微かに聞こえる声。

 その声をかき消す様に扉が大きな音を立てて開いた。

 

「アイスバーグさんッ!」

 

 下で会った男だった。

 私の後ろに居るアイスバーグさんを見て顔色を変える。

 

「下手人はCP9です。特定可能者はカリファとロブ・ルッチ、他2名。市長暗殺未遂、古代兵器の設計書を狙いニコ・ロビンの誘拐」

「はァ!?どういう事だ!?」

「………以上」

『了解した。3時間後また連絡を』

 

 マントの下で電伝虫を切る。

 止血中の男に視線を向けて言った。

 

「CP9とは政府の、世界の闇です。少なくとも先程上げた2名はこの方を狙うしたので『仲間』など言い絆されぬ様に」

 

 

 仲間に絆されるな。

 

 私は頭の中で作戦を練り始めた。




ハイハイメリクリクリぼっち!
クリスマス用の話を挟むとでも思ったか?思ったのか?うるせぇクリスマスなんて知るかよ!大体おまえらクリスマス当日に上げても読まねーだろ!?知ってるよ!?この話読んでるのどうせ年明けだろ!?
彼ピッピとデート♡インスタ映えの女子会♡そんな話知らねぇ!聞きたくないんだよバッキャロー!どうせ脳内ハッピーなんだろ!?いやうるせぇ何も言うな聞きたくない!
クリスマス期間限定とか書かれたパッケージに踊らされて無駄にお金を資産したらいいんだ!
無駄にキラキラと派手にしたらなんでもいけるとか鳥がこの日のために沢山絞め殺されるだとかイチゴのヘタ取りとかヘタ取りとか甘い香りに殺されそうじゃ〜〜〜!
いちごとかリア充の赤じゃなくて血なまぐさい赤に染まりやがれこんちくしょうー!!

いいクリスマス過ごせよ!  

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