2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第18話 叫び声は耳と喉が痛い

 

 

 

 半年以上も前、初めてシャンクスさんと会った日。遅くなった理由を2人に説明した私は今日もまた性懲りも無くフーシャ村に来ていた。目的はマキノさんの手料理だ。

 

 美味しいんだよな、マジで。とにかく甘い物食べられるし宝払いで食べられるしで大好きです。

 

 

 まぁそんな理由でやっと着いたぞ酒場!

 

 やっぱり山道は長いよ……時々心折れそうにならほど長い。疲れたらスピード減速と引き換えに箒に乗って体力温存してるから倒れるって程じゃ無い。精神的に疲れるだけでだいぶ楽になった方だ。食べ物とは誠に恐ろしいものだとしみじみ思────。

 

 

「「「「「ああああああああ!?!?」」」」」

 

「っ!?!?」

 

 なんか、叫び声聞こえた。どう考えてもこの中からですよね?

 

 

 

 厄 介 事 の 予 感 し か し な い 。

 

 

「ルフィー、シャンクスさん、海賊さん。本日は一体何事ぞ……」

 

 酒場の扉を開けるとほぼ全員が視線をこちらに向けた。

 その騒ぎの中心にいる彼らを見て今度はこちらが驚く番だった。

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁああああ!?!?!?」

 

 

 

 

  ルフィの腕が伸びていた。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 

「悪魔の実ぞ誤って食した、と」

「……」

「その実はこちらに連行していた、と」

「……」

「無断で人の食料を食した、と」

「……」

「入ってた箱ぞ鍵皆無、と」

「……」

「更に目の下傷ぞ作成するした、と」

「……」

「その理由も海賊への決意表明だ、と」

 

 

 

「発言したきことは」

「「ごめんなさい」」

 

 シャンクスさんとルフィが揃って謝る。

 私は椅子に座り2人は正座だ。『厄介事招くぞ禁止!正座!』と言えばルフィがブツブツ文句を言ったのでドンと足踏みすると素直に正座した。

 

 大事なものならば鍵を掛けておくか厳重に保管しておくのが私にとって当たり前。適当に子供の手が届くところに置いてあったのはシャンクスさんとこの赤髪の海賊団の不備。しかし勝手に何も考えずに人のものを取るルフィもルフィ、自業自得だ。

 

 

 

「海にぞ嫌われる意味、ご存知?ルフィ、お前海ぞ投入不可能よろカナヅチぞ!カ ナ ヅ チ !」

「で…、でもよぉ……」

「言い訳不可!!」

「はいっ!」

 

「リィン、ルフィもこう言ってるんだ。許してやっちゃくれねぇか?」

「管理責任問題!!」

「うっ………」

 

 なにさり気なくルフィにだけ罪があるように見せかけているんだ。

 

「………………シャンクスさん、ご存知?そちらの髪型、実年齢より少々年老いて閲覧出来るとぞ思われるぞ」

 

「老け顔に見えるってか!お前実は俺のこと嫌いだろう!なんだ!なんの恨みだ!本気で泣かす気満々だろ!」

 

「ルフィ、ゴムゴムの実、とやら。弱そう…」

 

「なんだよ!俺のパンチはピストルみたいに強いんだぞ!」

 

 

「私なる人物は岩ぞ砕く拳をご存知ぞり」

 

「「「「「「あぁ……」」」」」」

 

 

 私の発した言葉で事情と姿を想定出来た海賊の人達がとても納得した声をあげた。それと同時に呆れた声が混じってる気がするのは気のせいだろうか。

 とにかくピストルの如き拳はひょっとしたら可能かもしれないが今更驚きもし無い。鬼ごっこと称した本気の逃走劇で痛感した岩を砕く人間の拳の威力の片鱗を見てしまってる以上そちらの方が恐怖というものだ。

 

 結果的に現役中将怖いって言うことだな。

 

 

 

「そもそも!山賊とぞトラブル発生させる事態とは何事じょーしょ!」

「いーじゃん別に……」

「否定最良!!トラブルぞ出現回避が基礎ぞり!何事も穏便ぞ最適と!!」

 

「もう知らん!俺は帰る!」

 

 ルフィに限界が来たのか帰ろうと立ち上がった。

 

「あ!ルフィ!───」

「知らん!」

 

「───長らくの正座により足より痺れ存在ぞ」

 

「ぐぁっ!し、痺れて………っ!!」

「ぐぉぉおぉ……お、俺も足が……っ!」

 

「「「「「………」」」」」

 

 足の痺れに立っていられなくなったルフィは思わず尻をついて悶えた。ついでにシャンクスさんも唸りながらぴくぴくしている。ビリビリくるもんね、あれ。私も大嫌い。海賊の人達は同情の眼差しを向けているだけで自分達の船長を助けようとしないのが印象的だ。

 

「あ…、お肉が切れた…」

「マキノさん、私お使い活動致す?」

「えっと……」

 

「お使いしようか?だってよ」

 

 ヤソップさんが私の言葉を訂正してマキノさんに伝えてくれた。

 

「翻訳機感謝!」

「お前とことん失礼!」

「謝罪!」

「お、おぉ……」

 

「そうね…じゃあお願いできるかしら?」

「美味しいご飯のお礼ぞ!任される!」

 

「お、俺も行くぞ!!」

 

 ルフィが痺れながら手を上げてお使いの助力を願い出た。正直な話邪魔。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 お肉、とついでに味醂……それとカレールー!カレー早く食べたいなぁ…とりあえず食べ物は間違い無し。あとはトラブルを起こす前に帰るのみ!

 

 まぁそうそう簡単にトラブルなんて起こってたまるか!

 あ、箒忘れた…さっそくトラブルですか?こんちくしょう。

 

「リィン帰るのか?」

「帰還するぞ!マキノさんの手料理ぞろーーー!!」

「しっしっしっ!リィンはマキノの料理大好きだな!」

「肯定ぞ!」

 

 どうやらルフィの機嫌もお肉によって直った様で怒られた事もなんのその。上機嫌に笑みを浮かべている。

 

 

 

 

 

 

「あ………、──っ!さっきの山賊……っ!!」

 

 つい数秒前の気配と打って変わって、ルフィがいきなり警戒心を露わにして目の前にいる山賊を睨みつけた。お酒を探しているのかマキノさんが良く酒を仕入れてる店から出てきた。

 

「チッ、ここにも無ェのか…これだから田舎ってやつは」

 

 

 

「面倒回避ぞ…すぐさま立ち去る事オスス…──」

「おいお前!」

「──ルフィさんんん!?!?」

 

 止めようとした私の言葉を遮りルフィがいかにもガラの悪い山賊に声を掛けた。

 

 トラブル回避不可能ですか!?トラブルの回避はしないくせにフラグの回収はするんですか!?

 

 ダダンとは違うんだからさ!いや、ルフィはダダン知らなかったね!むしろ知らないならもっと注意しようよ己の行動の意味を!

 

「あぁ?なんだぁこのガキ共……おっと…そっちの黒髪の坊主はあの腰抜け海賊共と一緒にいたガキじゃねぇか…──金髪の嬢ちゃんは知らねぇがな」

 

 どうでも良いけど記憶力いいんですね。あなた。

 

 それよりもこの状況どうするよぉぉ…トラブルを起こす賊にいい賊は居ないと思うんですけどぉぉ……。

 そもそも賊にいい賊もへったくへもないやい!

 

 

 

 やっぱり私ルフィ苦手だ。鉄砲玉みたいにすっ飛んで迷惑ばかりかけてくる…。うん、情はあるが未練は無い。見捨てよう。

 安心して、君の事は忘れないから。

 

 

  ──多分…1時間くらいは。

 

 

「おっと…どこ行くつもりだ嬢ちゃん…」

 

 ▼ リィン は 逃亡 に 失敗 した 。

 

 チィィッ!

 肩をつかむな!私を逃がせ!

 残念なことに私は少女。相手は大の大人だ。力で敵う筈も無く簡単に逃げ出す事は不可能なのは目に見えて分かりきった事だ。

 

「ほぉ…こいつは上玉だな。金になりそうだ………売るか」

「リィンを離せ!」

 

 売ると!?私の人権はガン無視ですか!?

 

「おいおい……まさか…、俺様に楯突くつもりか?もう1度言おうか糞ガキ……俺は56人を殺した。俺の首には800万ベリーの賞金がかかってるんだ……舐めるなよ?」

「そんなの知るか!俺のパンチはピストルみたいに強いんだぞ!」

「ほぉ…─」

 

──ゲシッ!

 

「─そんなに強いのか…」

 

「ぐわっ!」

 

「よし、お前1度死ぬか。57人目にしてやるさ」

 

 あ、ルフィが蹴飛ばされた。

 

「そう睨みつけるな…人間1度くらい死んでみたら案外面白い体験できるかもしれないぞ?」

 

 うん!ほんとに!面白いくらいふざけてる体験が出来るよ!

 もう体験したくないので私は死ぬこと無く生き抜いてやりたい。あの地味に腹が立つおじいちゃんに会いたく無いもので…。いや、うん、まぁ、狭間に落ちなければ良いだけなんですけどね…。

 

 

 そして山賊は剣を抜いて切りかかろうとした。

 

 

 

 800万ベリーがどれくらいのお金か分からないが確実にご飯と甘い物沢山食べれる!私はまだマキノさんのご飯をお腹いっぱい食べてないんだー!!

 

 まだ売られるわけにはいかないんだ!

 まだ死んでたまるか!

「誰が死んでたまるか!」

 

 ルフィと偶然言葉が被る。何としてでも生き残ってやる。そして世界中の美味しいご飯を食べるんだ!…なんだか悲しくなる目標ね!

 

「ふふっ…ふふふふっ……。あーっはっはっはっは!!」

「どうした…恐怖で頭がおかしくなったか?」

 

 山賊達がいきなり笑い出した私に動きを止め可哀想にと目を向けて来た。

 ふっ…悪いな。生まれる前からずっと可哀想に決まってんだろ。泣きたい。

 

「それで………納得」

「は?」

 

「そちらの56体なる人魂……お主にぞ怨み持つ者か………」

 

「何が言いたい…」

 

「ふふふふふふ……くくくくく………哀れ…哀れぞ!!」

 

 下を向いて狂った様に笑う。さり気なくこのタイミングで山賊達から距離を取るのを忘れない。近くにいて剣を振り回されたらひとたまりもありませんからね。

 

「お、おいこのガキ本気で頭おかしくなったんじゃないか?」

「大丈夫か?」

「それに喋り方変だ…」

 

 うるさいぞ山賊ABC

 

「山賊共…背後……………霊体 存在 確認…」

 

 ゆっくりと山賊達の背後を指差すとその先で地面がパキン、と凍る。よし、成功。

 

「ひっ!!」

「な、なんだこれ!」

 

「おいガキ…お前何した…」

 

「私?何事も?……ふっ、只霊体ぞ拝見可能のみぞ……」

 

 嘘です霊体なんか見えるわけがありません。むしろ怖いです。見えたら私が発狂しますから。

 

 

「お、おい…まさかこいつ死霊使いか!?」

「それって偉大なる航路にいるとかって言う幽霊と対話できる能力を持ってる奴って噂の!?」

「確か幽霊と会話ばかりするから人と会話が難しい奴だって……や、ヤベェって…この氷も絶対そうだって…っ!」

 

 そんな記憶は一切無いがその言葉で周りが青ざめたからナイスだ、山賊ABC。グッジョブ。

 

「そんなのまやかしに決まってんだろ!!腑抜け共が!」

 

「ふっ…」

 

「何がおかしい糞ガキ!──頭にきた……お前も殺してやる…────っ!?」

 

 山賊の顔のすぐ横の髪を指差すとパキン、と山賊の髪の毛が1部凍った。よし、細かい対象だけど脅すのには充分。

 

「海賊王…くらいご存知?」

 

「………それがどうした…」

 

「そこ。存在してるぞ」

 

──ボオンッ!

 

 

 指の先。山賊のトップのすぐ後ろで小規模な爆発が起こり山賊全体に動揺が走った。

 

 ちなみに私は指差し確認の要領で細かい調節をしているだけだ。集中力が必要なので1点しか見ません。山賊が怖いとか…い、一切有りませんからね??

 

「海賊に喧嘩ぞ売ったその意味…理解可能か?」

 

 

 

 

「まさか…海賊王の幽霊が海賊に喧嘩売ったから怨みでここに来てるのか!?」

「手を出しちゃならねぇ奴らだったんだ!こいつは海賊王の加護でもあるのか!?」

「恐ろしい…殺されちまう!に、逃げようぜ!俺はまだ死にたくない!!」

 

 山賊ABC…お前ら何?私の手先だったりするの?ねぇ……君たちのお陰でなんかそんな感じの雰囲気になってるけど私君たちにしろとは言ってないよね?ありがたいけど。

 

「雰囲気って大事ぞりね…」

 

 思わずボソリと呟いた言葉は運のいいことに誰にも拾われずに済んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「────使いが遅いと思ったら…お前らこんな所で一体何をしてるんだ?」

 

「え…しゃ、シャンクスさん!?」

 

「やぁ、先ほどぶりだな山賊。うちのガキ共がどうかしたか?」

 

 

「へっ、こいつらが俺に喧嘩を売ったんだ。よって、殺すことにした」

 

 まて私は喧嘩を売ったりなんかしていないぞ。

 

「そりゃ悪かった…謝るよ。けどな…そこにいる死霊使いがそれを許すとでも思っているのか?」

「!?!?」

 

 シャンクスさん!?まてまて何ノッて来てんの!?

 もうそろそろ終わらせようかと思っていたんだけど!?

 

「ソの通りぞ。さっさと失せよ。我を怒らすことなかれ」

 

 ちょっと動揺して声上ずった。

 

「お、俺は腑抜けじゃねぇんだ!舐めるなよ!!」

 

「ならばお相手願うぞ。────こちらの海賊が」

「いや俺らかよ」

 

 ヤソップさんが素晴らしいタイミングでツッコミを入れてくれる。最近彼で遊ぶのが好きなようだ。

 

「ん?ご不満?────億超え賞金首」

「……!!」

 

 ハッタリ以外のなにものでも無いだが…一応シャンクスさん達がノッてくれるとありがたい。

 

「そういう事だ。さて、山賊。ルフィ達から手を引いてもらおう……」

 

 いえーい!ノッてきてくれましたぁぁ!死霊使い(笑)を出した時点でちょっと期待してたけどぉぉ!テンション高いね私!

 

「お、億超えだって!?か、敵うはず無ェよ!」

「くっ、無理だ!引こう!」

「こんなの聞いてねぇ!!嫌だ!」

 

 山賊ABCよ……お前らほんとに何なんだ。

 

「どうした?逃げろ、と言ってるんだ……逃げてはどうだ?」

 

「チッ…」

 

 

 山賊達は恨みを込めた視線を向けてくるけど私と億超えを相手するのは嫌のようで去っていった。

 

「ルフィ…お前のパンチはピストルみたいに強いんじゃ無かったのか?」

「うるせぇ!シャンクスのバカ野郎!」

 

 

 んー……一件落着…なのか?

 

 

 

 

 とどめを刺してない山賊が不安だがひとまずマキノさんの手料理だ!

 


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