2度目の人生はワンピースで   作:恋音

194 / 365
第180話 人を信頼しない理由

「貴方達子供じゃないんだから」

「知ったことか」

「……………知らない」

 

 カリファの言葉に腕を組んでカクさんとは反対側を向く。

 くっそ、口の中切れて血の味がする。

 カクさんの素って想像以上に柄が悪い。

 

 ドッタンバッタン(意訳)したがロブ・ルッチに無理矢理止められて渋々拳を納めた。

 結局1発も殴れなかったし打ち身で体が地味に痛む。

 

 泣きたくて堪らない。よりにもよってこの人が裏切りで。キツイ。

 

「知り合い、か?」

「知りとうもないわ」

「ハッ」

 

 スパンダムの言葉にカクさんが悪態をつき私は鼻で笑う。ニコ・ロビンが居るんだから余計な話はしたくないんだよ。

 

「あー…では衛兵、この2人をとりあえず鎖で繋いでおけ。海楼石は決して外すなよ…。カティ・フラムはインペルダウンへ、ニコ・ロビンはめんどく…海軍本部へ。護送船の準備が出来次第〝正義の門〟をくぐり出航する。CP9は各々部屋で休んでおけ」

「……………協力感謝する」

「なぁにが協力じゃ、無理矢理お前らが海軍本部までの航路を取り付けた癖に」

「あ?」

「図星か?」

「いい加減にしろ」

 

 思わず席を立つがブルーノとクマドリに押さえられ再び席につく。

 政府の手に渡るより先にニコ・ロビンの身柄は一旦海軍本部に預けられる事になっている。

 

 そこで殺す。

 古代兵器などについては口を割らせない。

 

 海軍側の目論見はそうだ。

 

「……………1人にさせてもらう」

「わしがお供してやろうか?昔の様に?」

「居るか」

「アイツらも馬鹿よなァ、ちょっと笑って人間味を出せばコロッと信じる。あの番号などただの茶番劇じゃ……」

「やめろ女狐ッ!カクも口を閉じろ!」

 

 殴りかかってやろうと足に力を入れたがブルーノに今度こそ本気で止められた。

 

「ッ、お前!」

「なんじゃあ?おお、そういやわしの配膳した飯は美味かったか?随分と色んな毒を試したんじゃがなぁ?」

「お前が……ッ!」

「カク!いい加減にしろ!」

「黙れガキ!ホームシックになって部屋の隅に縮こまってろうさ耳野郎!」

「その話はお互い封印したはずじゃろう!」

 

 月組だけが見れるアルバムに今でも保存されてるの知ってるからな!アンタのうさ耳!嫌がるカクさんにうさ耳付けたリックさんほんとナイス!

 

「女狐ってあんな感情的な奴だったのか……?」

「私に聞かないで、ほとんど知らないわ……」

 

 鎖に繋がれて会話してる人達は余裕じゃないのに余裕ぶらないで欲しい。

 

「こっ、の放浪癖持ち!」

「黙れ牛肉で豚肉を食べる肉食系!」

「やめーーーーーーやッ!」

 

 5年間の黒歴史は私の方が把握してるんだよ。

 私は猫被っていたので弱点は晒してない筈。

 

「お前だけは絶対殺す……!」

「……………喚いてろ」

 

 ニコ・ロビンが苦々しい顔をしてるからもうそろそろやめて欲しい。

 この部屋に居たく無いのでブルーノの拘束を振り払って落ち着きを取り戻す。部屋の外に出ようとするとスパンダムが声をかけた。

 

「あ、待てお前ら。忘れていた」

 

 そりゃあんなドタバタがあったら忘れるわな。

 

 そう言ってスパンダムが箱から取り出したのは悪魔の実だった。

 

「よよい!よれァ〜〜〜あ!!」

「悪魔の実じゃねーか!? ヤベェそれをこっちに近付けるな!」

 

 ジャブラが咄嗟に距離を取った。

 曰く、能力者が近付けば体が吹き飛ぶとか。

 

 馬鹿だろ。それは2つ目を口にした場合の惨状だろうに。あ、憎めないアホってこういう事か。

 

「一つ言っておくが俺にもそれが何の実か分からねェ……強くなれCP9…!」

「………………あっ」

 

 カクさんとカリファが手に取った悪魔の実の形状を見て反応してしまった。

 目敏くカクさんが近寄り、腕を掴んだ。脈拍ですね分かります。

 

「これが何の実か、知っとるんじゃな悪魔の実オタク」

「……………」

 

 顔を逸らして廊下に向かう。客室に行かなくてもどっか適当な所で時間潰せばいいか。

 

「女狐よ、食ってみるか?悪魔の実」

「……………食べてもいいなら食べるが?」

「……ッ!」

 

 2つ目を口にした場合体は四散する。

 そうだね、雑用の私も女狐の私も悪魔の実の能力者だとしているからそれは遠回しな殺害宣言。

 

「問う。食べてもいいのか?」

「………チッ」

 

 その実は私に不利益な能力じゃない。

 今まで食べる機会が巡ってこなかっただけでデメリットはカナヅチになるだけ。特に支障は無いから食べてもいい。

 

 堂々と言えばカクさんは舌打ちを何度も繰り返した。

 

「お前は秒針か」

 

 ブルーノの冷静なツッコミを聞きながら外に向かおうとするとロブ・ルッチに腰を掴まれた。

 なんでや。

 

「俺の部屋」

「チッ」

「なぜ私も行く必要が…!」

 

 司法の塔にはCP9それぞれに部屋があるのにロブ・ルッチの部屋に全員揃ってしまう。

 実はお前ら仲良いな。……私にとっての月組と同じ感じか。

 

 ロブ・ルッチの部屋は緑を基調とした落ち着いた雰囲気の大きな部屋だ。広いと言うより大きいという表現が似合う。

 下座の席に放り投げてられてイラッと来るがそれよりも言いたいことはある。

 

「バラす気かお前は!」

「非常に残念ながらバラせん理由があるわい!」

 

 カクさんに噛み付けば少し安心する答えが返ってきた。果たして誰にバレたらいけないのか分からないがカクさんにとって不味いことらしい。

 

「死人に口なしだ……殺す……」

「それはこっちのセリフじゃな……お前も第1雑用部屋の奴らも全員殺す……!」

「させるか!」

「随分執着しとるもんじゃな薄情もんが!」

「薄情なのはどっちだ!」

「わしは仕事じゃ!騙される方が悪い!」

 

 正論だ。

 正論にキレるのはお門違いだけど、分かってるけど感情をコントロール出来ない。

 

「簡単に騙されおって、それで大将なんじゃからレベルの低さがうかがえるわ!」

「グッ、う……!」

「図星か名ばかりの昆虫食い」

 

 顎をあげて煽ってくる。

 

「……お前の黒歴史を私が握っている事を忘れるなよ仮面ヒーロー君」

「……わしの一言でニコ・ロビンに正体がバレるということを忘れるなよ天使殿」

 

「さっさと食え!」

 

 痺れを切らしたブルーノが叱り付けるように言い放つ。多分カクさんが最年少だと思うし、ブルーノが最年長。

 

「最年長はこれでもジャブラだーチャパパー」

「は!?」

「おい待て女狐なんだその『は!?』ってのは」

「声、出しッ」

「よよい!あ心の声がァ〜〜もれてェ〜エ!」

「やかましい!音量!」

 

 椅子の背もたれから身を乗り出したジャブラが私の肩を組む。

 

「見て見てカク、俺ら仲良し」

「まとめて殺すのに便利じゃな」

「巻き込むな!」

 

 距離を詰めるな!馴れ合おうとするな!触れるな!ノットフレンドリー!

 

 私をここに連れてきた張本人のロブ・ルッチは上座に座ってネクタイを緩めていた。

 とりあえずCP9が全員ここに集まっているのは都合がいい。

 ニコ・ロビン達は多分大丈夫だと思うけど。

 

「あんたも飲むか?」

「要らぬ」

「口調が戻ってきとるぞ」

 

 思わず口を押さえ、手のひらの中でこっそり口角を上げる。カクさんが私の正体をバラしたくない理由はこの中にあるという事か。

 

 ロブ・ルッチは髪をまとめてスッキリさせた後度の強い酒をグラスに注いだ。

 

「何故私を連れてきたロブ・ルッチ」

「ん?あぁ、カクがギャーギャー騒ぐのが珍しかったからな」

「子供か……」

「わしより子供のくせに何を言うか」

 

「……は?」

「えっ」

「はぁ!?」

 

 潜入組から驚きの声が零れる。

 ちなみに彼らと同じく聞こえていたであろうジャブラは口をぽかんと空けていた。

 

 ……フクロウに聞かれなかっただけセーフか。

 

「………………肉食系」

「反省はせんがこちらのミスじゃった。だがその呼び方はやめい」

 

 カクさんは反省の色を全く見せないどころかニヤニヤ笑いながら追い打ちをかける。

 

「昔の様に呼んでみたらどうじゃ。『カクお兄ちゃん』と…──」

 

──ズガァンッ!

 

 氷結した水分が巨大な斬馬刀を象ってカクさんの足元に突き刺さった。いや、確実に心臓を狙って落としたはずなのに軌道を逸らされた。

 

「ッ、戯言を一々!」

「そーじゃなぁ……今のお前を見とったらアレが猫を被っとる事くらい容易に想像出来る……」

 

 手のひらで転がされている感じが否めない。腹立つ。腹立つ。

 死ぬほど腹立つ。

 

「ハッ、戯言を一々覚えとるのはどっちじゃ。お互い警戒しとったか?いや、違うな。お前はわしらを手駒にしようと画策した」

「違う!」

「違わん」

 

 月組は手駒じゃない。道具でもない。

 便利な人達だとは思ったけど、信じて頼りにしてる同期。

 背中を見せても安心出来る、衣食住を共にして命の危険性を感じない。

 

 大事な人達。

 

 元々下心ありで近付いたんじゃ無い。

 

「結果論」

「……………そう」

 

 そうだった。

 結果が同じであれば理由も過程もどうでもいいと知っている。

 

「ならお前は紛うことなき敵だと結論を出す」

 

 たとえそれまで歩んできた軌跡があれど──

 

 

 

「──結論に至るまで随分遅かったのォ?」

 

 

 カチリと体が固まる。

 

「訂正させてもらうわい。薄情者じゃなく、公私を分けられんただのお子ちゃまじゃったな」

 

 そう言ってカクさんは悪魔の実をがぶりと食べた。不味そうに頬をふくらませ吐き出すのを我慢している様だった。

 

「ロブ・ルッチ」

「なんだ……?」

「お前達は政府に何を求めた?」

「……殺しの、正当化」

 

 それを聞いて席を立つ。

 煽ってくるカクさんには目もくれずに外へ。

 

 廊下を通り、迷子にならない程度に距離を。

 あの部屋から、CP9から離れる。

 

 

「………」

 

 うっすらと爆発音が聞こえた。あー多分ルフィ達かなぁ。うん、私頑張ってあの部屋に留まったから充分時間稼げたよね。

 

 誰もいない廊下でズルズルと地面に座り込む。

 

「もう、いない……」

 

 私の知っている月組のカクさんは幻想だった。

 グレンさん達になんて言おう…リックさんは前向きに捉えるのかな……ニコラスさん辺りならショック受けて固まりそう……。

 

「………楽しかったんだけどなァ。30人でバタバタと当番を回すして、写真をこっそり撮り集めるして、ただいまって、おかえりって」

 

 口の中、血の味がする。

 これだから。信じられないんだ。

 

「───…─」

 

 音にならない言葉を呟いた。




 一つ、兄に対して肉体的にも名誉的にも危害を加えられる事。
 二つ、自分のモノを使われる事。
 三つ、格下に利用される事。

そして、『四』つ。
最後の地雷は言葉と共に隠された。人を信頼しない理由とは、それである。

リィンには裏設定があるので知っているのと知らないとで文章の見解が違ってきます。つまり、お得意の伏線ですね。

なてなさんが素敵なイラストを描いてくれました。

【挿絵表示】


今まで何人もの方が描いて下さり本当に嬉しくて、保存しています。アナログ形式でも。数が、膨大。好き…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。