2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第181話 正解の鍵はどこに

 

「いやー……まさかこんな簡単にここまで来れるとは……」

「リィン怖い」

「リィンちゃんが怖い」

「ホントなんでアイツ海軍に居たんだよ」

 

 麦わらの一味+パウリーは裁判所の屋上まで無傷でやって来ていた。

 

「ほんと怖い……」

 

 ウソップが震える。

 彼らの纏った服は真っ黒の役人服。

 

 リィンの案だ。

 曰く、『政府の役人も海軍の兵も合同であれば自分の部隊以外の顔なぞ分からぬぞ。…──全員で剥ぎ取るしろ』と。

 

 リィンの案なのだから安全性はそれなりに高い筈。それなのに何故本人は来ないのだろうか。実際無傷で裁判所まで辿り着けた。

 そこまで考えてウソップは思い付く。

 

「(いやアイツなら自分の黒歴史知ってる海兵と顔突合せたく無いだろうな)」

 

 ……残念ながら正解である。ウソップはリィンの事をよく分かっている。

 

 それに反して残念なナミは考えた。

 

「(作戦の主体が政府だから協力体制にある海兵に不信感を持たせる為にわざわざ役人服を勧めたのね……)」

 

 ……非常に現状の的を射ているが、彼女の愛するリィンは案外そこまで考えていない。

 スパイをしている海兵として海軍の失態を作りたくないだけである。

 

「(仲間に怪我させたくないだなんてリィンらしいわ……)」

 

 王族に怪我させたくないの間違いである。

 

「でもウソップ、お前も案外言えた物じゃねェからな」

「なんでだよ」

「巨人の門番になんて言ったか、もう一度この場にいる人間相手に言ってみろ」

 

 嫌そうな顔をしてゾロはウソップを見る。

 ウソップはふむ、と少し思い出してから口を開いた。

 

「『お前らの船長、捕まってないって役人が影で言ってたけど。そんな簡単に捕まる程弱いのか?違うよな?』だな」

「うわぁ……」

 

 思わず素でサンジが呟いてしまった。

 セリフを聞く限りあたかも門番2人のエルバフを海賊として気遣う様に聞こえる。

 

 しかし実際は誰かに罪を押し付けたし捏造しているし煽っていた。

 

「根拠は、あったのか?」

「あるわけねーだろ。エルバフの2人が呟いてたのを聞いて捏造した」

「うわぁ……」

 

 引いた声、本日2度目である。

 

「まぁリィンにエルバフの船長クラスは捕まってないって昔聞いた様な聞いてない様な……」

「曖昧かよ」

「まぁいいじゃねェか、なァルフィ」

「おう!」

 

 何も考えてないルフィに話題を振る事で強制的に会話を終わらせるウソップ。流石リィンという鬼畜外道にツッコミを入れているだけある。奴がやりそうな事を見事してのけた。

 味方は現地調達。ある意味賭けだ。

 

「……ここから司法の塔に行くまで方法が無い」

 

 構造を知っている。という事で陽動の連合軍から別行動し麦わらの一味に着いてきたパウリーが口を開いた。

 裁判所から司法の塔まで跳ね橋がある。

 しかし操作する人間も方法も何も無いので跳ね橋は開かない。

 

「なんか聞いてないか?」

「なるほど、これじゃ前に進めないって事か」

「私とリィンの関係みたいね」

「……理解してるんだなァ、お前」

 

 ウソップの冷たい視線を無視してナミは懐からリィンの発言メモを取り出した。

 

「『飛べ』」

「つまり丸投げか!」

 

 そうしているとビビは屋上から下を眺め、底無しの滝つぼに身震いした。そしてその視線を上に移動させる。

 

「あの、パウリーさん」

「ん?」

「ここから……そうね、向こう岸の窓までの長さのロープって作れる?」

「持っている奴全部使えば辛うじて出来るが…」

 

 ビビは頭の中で距離を計算する。

 風はやや右の追い風。

 

「行けるわ」

 

 教養の高さが、突破する打開策を作り出す。

 その声に一味は目を輝かせた。

 

「ウソップさん、ロープの先端を下へ。引っ掛けて欲しいの。傾斜はなるべく緩やかに」

 

 ウソップはその言葉を聞いて作戦を悟る。

 そして目星を付けた。窓枠がある。

 

「いけるな」

 

 裁判所の柱とあの窓枠に縄を繋げれば、その縄を伝り滑る事が出来る。

 ハンガーなどで滑るのもいいが、チョッパーのバランス感覚なら余裕だろう。

 

 ナバロンで険しい山肌を駆け上がる経験をしたビビはそう考えた。

 

「この作戦は正面突破。多分ここから隠れる必要なんてなくなるわ」

「何してもいいのか?」

「ええ。下に到着すれば格好なんて意味がなくなるわ、ド派手に戦いましょう!」

 

「出来たぜ。狙撃手、ロープを飛ばしてくれ」

 

 パウリーの言葉にウソップは頷いて取り付けたフックを大きなパチンコで飛ばした。

 

──カチャリ…

 

 狙撃の腕は進化している。ここに来る前に、リィンに頼み風貝(ブレスダイアル)に風を貯めている。

 届かないかと思われたが風の後押しもあり見事窓枠に引っかかった。

 

「よし、縄を縛り付けたぞ!」

 

 純粋なパワーで言えば1番の怪力であるチョッパーが反対側の縄を柱に縛り終えた。

 

「じゃあ乗り込むか?」

「剣士の俺が壁を斬り破れば良いか」

 

 縄の先は石壁。物理的に開けるしか無い。

 チョッパーに乗れるのは2人だ──もちろんサンジの意見でレディ2人が乗る事になった。残る人間は縄で滑らなければならない。

 

「じゃあよ、ウソップ」

 

 ルフィはイタズラを企む少年の笑顔で言った。

 

「喧嘩、売るか!あの旗に!」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 バサバサとはためいていた筈の世界政府の旗。

 

 ……なんで燃えてるん?ちょっとリィンさんに説明してもらおうか?

 

 スパンダムに呼ばれたのでニコ・ロビンが居る部屋に戻り窓側に行くと裁判所の屋上で一味+パウリーさんがこちらを見ていた。

 

 ……だからお前ら何してるん???

 

「いいかお前らーーーーーッ!」

 

 ルフィの大きな叫び声が聞こえた。

 

「俺の仲間に手を出した事!後悔してももう遅いからなーーッ!俺は!世界を!敵に回すッ!」

 

 ……(リィン)抜きでそんな重要事項決めないで欲しかったんだけど。

 

「ロビーーーンッ!安心して待ってろーーッ!」

 

 助け出せる事を微塵も疑っていないルフィの声が聞こえたニコ・ロビンは、海楼石に繋がれた状態でも余裕な様子でうっすら笑った。

 

「……ごめんなさいね、待ってるだけの性分じゃ無いの。信じてるわ、()()()

 

 その声は絶対に届かない筈なのにルフィはニヤリと笑った。

 

 

 その時スパンダムは大笑いをし始めた。

 

「正気か貴様らァ!あのマークは4つの海と偉大なる航路(グランドライン)にある170国以上もの加盟国の象徴!もう終わりだ!世界を敵に回して生きていられると思うなよ!」

 

 始末書、やばいよね、コレ。

 

 というか加盟国の王女が加盟国連合に喧嘩売って良いのか……?

 うん、胃が痛いからこれ以上考えない事にしよう。女狐はドジっ子。

 

「ワハハハ!ゲームをしよう、麦わらの一味!」

 

 CP9は顔を出さずに部屋の中でスパンダムの発言を聞いている。なんでお前らがベランダに出ないで私とスパンダムだけが出てるの?謎。

 

「ニコ・ロビンの海楼石の鍵をCP9から奪って見せろ。ただし俺たちはニコ・ロビンを連れて行くし偽物の鍵も用意する」

 

 鍵取り合戦か。

 ……いや、正直リィンが居れば平気なんだけどね、律儀に守らないと思う。

 

 それだけ言うとスパンダムは部屋の中に戻って行った。

 

 私に注がれるサンジ様の視線がとても嫌だ。

 

 

「正解の鍵は1。さーて鍵分けじゃ鍵分け」

 

 ()()の声をBGMに麦わらの一味の行動を見守る。どうやらロープを使ってこちら側に滑り込むらしい。

 私が氷を張るなりしなくても平気だったか。

 

「ん…」

 

 窓辺でぼんやり眺めていた私にルッチが握り締めた手を差し出した。

 

 何してんだコイツ。

 ……って、思わせてください。多分、いや絶対その手のひらにはロクな物入ってないから。

 

「チッ」

 

 舌打ちと共に無理矢理渡してきやがった。

 渋々受け取ってそれを見てみる。

 

「……………おい」

「なんじゃあ女狐、不服か?」

 

 私の手には鍵があった。

 しかも数字は1。ニコ・ロビンの鍵だ。

 

「お前の行動はわしと一緒じゃ。何をしでかすかわからんからのォ?」

 

 カクの煽りに何も反応せずに腕を組む。

 同時に下の方でドゴンッと壁が破壊される音と振動が伝わってきた。乗り込んで来たか。

 

 戦闘狂というか、殺人癖持ちのCP9は鍵を片手に敵の登場を喜びニヤリと笑う。

 

 

 ただ1人、カクだけは私の態度が不服だったようだ。

 

「ルッチ。お前は俺とニコ・ロビンに桟橋まで着いて来い」

「……アァ」

 

 積極的に戦えない、しかし確実に鉢合わせる立ち位置に微妙な顔をして返事をしている。

 スパンダムはそんな事気付かずにニコ・ロビンの鎖を持って立たせた。

 

 その時ニコ・ロビンは背を向けているルッチに向かって、どこからか取り出したナイフで刺そうとした。

 

──カラン……

 

 袖に隠し持っておけるタイプのナイフが私に阻まれて地面に落ちる。

 海楼石に繋がれた後ろ手だから、ニコ・ロビンは力が入りにくい。手首を握り締めた私にキッと睨み付けた。

 

「余計な真似を……」

 

 私の背中からルッチの小さい声が聞こえた。

 

 傷一つ付けたなら御の字だけど、ニコ・ロビンは絶対にそれが出来ない。

 実力体格が自分より上の人間に、更に自分が万全で無い状況で、傷が付けれたら私は今頃ミホさんを打ち破ってるわ馬鹿。

 

 見聞色の覇気使いに、生身での攻撃は相性が悪い。多分ルッチは手首を掴んで折ってた。

 

「生意気なッ!」

 

 スパンダムがバキッとニコ・ロビンを殴る。

 その衝撃で彼女は地面に転がった。

 

 私はその隙に風で指先を切り付ける。

 

「ッ!」

 

 痛みに顔を歪めるニコ・ロビン。

 恐らくピンポイントで出来た小さな傷にも気付いてる。打撲と切り傷の痛みは違うから。

 ……経験則ですが何か?私別に泣いてない、ぐすん。

 

「女狐、わしらも持ち場に付くぞ。グズグズしとる暇は無い」

 

 どうやら心配に思ったジャブラや、拷問がまだのフランキーさんも一緒に行動するみたいだ。

 お互い監視出来るのはこちらとしても好都合だからカクについて行く。立ち上がるニコ・ロビンの隣を通る時、小さく呟いた。

 

「……血の跡位残せ」

 

 一緒にナイフの隠し場所を考えた私は助言が出来る。もう片方の袖口に隠されたナイフで血を流せば追ってくるルフィ達の目印になる。

 

 

 どうやら息を呑む音も何も聞こえないので余計なお世話だった様だけど。

 

「俺たちも適当な場所につくチャパパパ」

「あやァい!フクロォ〜〜〜ウ、俺と一緒に。あ行かねェ〜〜〜かァ〜あ」

「……ジャブラ、そっちは頼んだ。こっちは頑張るから」

「今の所女狐が大人しいから平気だな」

 

 フクロウ、クマドリ、ブルーノの3人は部屋を出て行った。カクと私が問題児扱いされてるのすごく不服です。私は問題児じゃありません。

 

「私は能力も試したいし1人でいます、長官」

「おう、分かった」

「セクハラです」

「う、受け答えしただけでか……?」

 

 陽動の連合軍は指示通り怪我を最小限に目立っているだろうか。心配。

 でもとりあえずやるべき事はやっておく。

 

「女狐ェッ!」

「……チィッ!」

 

 カクの並ならぬ殺気に晒されながらも、私は歩を進めた。




本格的に奪還が始まる。つまりここからは私の苦手な戦闘描写………ガチシリアスとシリアルで誤魔化す式、く、ここは成長の為に前者を選ぶべきか…!(まだ書けてない)

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