2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第183話 敗北の味をした勝利

 

「……………ゲホッ」

 

 フランキーさんの咳き込む音を聞きながら戦いの傍観中の女狐ことリィン。

 正直言って暇でござる。

 

 女狐が男の娘説じゃないかと疑ってかかって観察している腐女子センサー搭載のビビ様相手に下手に声を出すことも出来ず。

 かと言って麦わらの一味に手を出せばCP9は獲物を取ったと怒り、CP9に手を出すにしても正体をばらされる。

 

 

 うん、紛うことなき無駄骨ですね。

 ここは女狐じゃなくて堕天使で来るべきだったかと今更ながら自分の判断を恨む。

 

 

「ッ゛ぁあ゛ー……クソゲー過ぎる…」

 

 

 好意があれば拗れて病んで、悪意があれば色んな意味で殺しにかかってくる。

 私の前世ホント何したんだよ……辛い……。この世界で生きていくことが辛すぎる。コルボ山から出るんじゃなかった……。でもどっちみち引きこもってたらジジに強制連行されそうだからミスしても許されやすい幼女の内に海軍入って良かった……のか?わからん!

 

 

 さて、現実逃避もそこらにして現状を把握しましょう。私とっても出来る子だから目の前の状況を簡単かつ分かりやすく説明出来るよー。

 

 

 連 合 軍 詰 ん で る 。

 

 

 ……いやいやいやいや、無理でしょ。覇気と六式という戦闘のエキスパートに東と王宮と大工職で育った多少強い人間が勝てるわけないって。

 しかもカクのやる気が殺る気満々すぎて言語中枢破壊される怖い。自分本位な考え方だけどつくづく私が対峙してなくて良かったと思う。私相手なら連合軍より殺意マックスハートだし。

 

 

 それにパウリーさん!あんた手加減してるでしょ!苦悶の表情浮かべてりゃ分からいでか!

 

 情に!絆されるな!キミたちが頼りだ!それ行け頑張れ!私の!代わりに!

 

「ッ、ぐ……。じょ、う……ゲホッ!」

 

 吐血混じりの咳き込む音を必死で抑えながらフランキーさんが私を呼んだ。

 

「……………チッ」

 

 不機嫌な女狐の返事は舌打ちがデフォルトでお願いします、というかホントに素。女狐はキレた時の他人への対応も人と関わりたくない病も面倒くささも本当に素過ぎて……。

 まァたてめぇ厄介事押し付けようとしてくるんだろ私知ってるからな関わるなやド畜生!って心の声を前面に押し出しているから……。不機嫌なら態度で示そうよ!ほぉらぶっ叩けぶっ叩け!

 

「あ゛れ、だい、じょ……!ッ、グッ」

「……………無理」

 

 断言出来る。これは無理。

 親友コンビと義親コンビの差くらいあってもおかしくない。

 

 眼前ではカクの麒麟の能力を使った斬撃の嵐が5人を襲っていた。ちなみにチョッパー君はランブルボール2個目だ。

 カルーの足を持っても避けきれない斬撃に心が削れていく。

 

 カルー…ビビ様をよくぞ守ってくれて…。ありがとうございます。護衛だといいかな、とか言ってごめんなさい。

 

 

 観察して分かるけどやっぱり1番の原因はカクのやる気だろう。これでもかとストレスを発散している癖にジャブラとの呼吸は抜群に合っているからこそ厄介。

 理性の無い獣より知性のある畜生が嫌。

 

「どゔに、がッ、ゲホッゲホ…ッ!」

「……………頭は使えない」

 

 『なんとかしろ』という敵にも味方にもならない立場の人間への訴えに拒否する。

 女狐は暗躍(物理)タイプなんだよ。表に顔が出ないからこそ完全実力派として地位を確立してるって設定なんだから困る。

 

 まぁ中身は状況打破の為に考えるけどね。

 

 

 CP9は己の場所を動かないつもりなのかどれだけ戦闘の音が鳴り響こうとも増員は来ない。見聞色の覇気使いが察しないわけない。

 だから味方が増えるのが先か、ゾロさん達が倒れるのが先か。

 

「〝悪魔風脚(ディアブルジャンブ) 胸肉(ポワトリーヌ)シュート〟!」

「グ…ッ!」

 

「…………は?」

 

 思わずリィンに近い声を出してしまったがどうやら全員視線と注意は()()()()()()()()()()()()()サンジ様に注がれていた。

 

 え、扉は開いてるけど誰かが入ってきた影はなかった、よね?なんで?

 

「ビビちゃん、怪我は?」

「大丈夫よ受けポジ(サンジさん)!でもカルーが……」

「今助けに来たことをすごく後悔しそうだから麦わらの一味のレディは落ち着いて欲しい」

 

 私も思う。

 

「なんじゃお前……能力者か」

「能力者なわけあるかばーか」

 

 カクの警戒に対してサンジ様は罵倒を返す。

 私にも状況が分からないから説明して欲しいんだけど。

 

「………」

 

 サンジ様の蹴りはそう効いてない様で、カクは真顔で何かを考えている様子だった。その隙にチョッパー君はカルーの怪我を見ている。

 サンジ様は大分ボロボロのゾロさんと視線を合わせて協力を決めた様だ。それに興奮するのはもちろんビビ様です。

 

 ちなみにさっきっから大人しいジャブラが地味に怖かったりする。

 

「ん、分からん」

 

 考えるのを放棄したカクは目ですら追えない脚力でご丁寧に武装色の覇気を纏ってゾロさんの刀を思いっきり蹴った様。肉眼で捉える事が出来ない蹴りって刀でさえ切れるんだって思ったね。

 

 ……エグい。

 

「おい……なにしてくれてんだテメェッ」

「それ、海軍の支給品じゃろ。恐らくじゃがリィンの奴に貰ったか……」

「「……!」」

 

 麦わらの一味が、パウリーさんが目を見開く。

 

 お願いだから動揺しないで……!多分動揺させて居場所を掴むつもりだから!

 

「女狐、この室内全体に風」

「断る」

「確実に風を使えると分かって言ってやったわしの気遣いを無駄にするんか?従え女狐、口を割ってもいいんか?」

 

 ……そうだねー。リィンは風の能力者だし、女狐はなんでもありな能力者って設定だもんね。

 せめて使えるやつを、って判断か。

 

「…………………くっ、そがキリン野郎」

 

 七武海と同類の呼び方をして見せれば嫌そうに顔を歪めた。仕方なく風を操る、周囲を洗濯する様に回す。

 

 熱いところも冷たいところも全て混ざる様に。

 

 

「見つけたぞ」

 

 自分の手の平の上で転がるのが楽しいのか知らないが、ニヤリと悪役の様な笑い方をしてカクが姿を表したナミさんに向かって指を刺した。

 人体に刺した、指を。おかしい絶対おかしい。

 

 突然現れたナミさんとウソップさん。空気の歪み具合から蜃気楼で姿を消していたのだと思うけどこんなに綺麗に消える物なのか。

 

「ナミッ!」

 

 刺されたナミさんの安否を気にする声。しかし本人は呻くだけで返事が出来ない様だ。

 

 サンジ様達の参戦に勝機来たか、と思ったけどこれもこれでやばい。王族殺しちゃダメ絶対。

 

 ナミさんは別に気にしてないけど……。

 

「めぎ、づ、ッ、ゴホッ!」

「……………チッ」

 

 とりあえず王族2人居るこの状況は不味いから打開策を考える。

 

 海楼石を取り付けりゃワンチャンあったり、海水で空間を満たせば良いんだけど、悪魔の実の能力者は連合軍側にも居るし私もその設定だから使えない。

 連合軍を煽る事はカクの妨害で不可能に近い。

 

 CP9を黙らせ、且つ一瞬でもいいから動きを阻害出来て、昏倒。

 

 

 

「…………あ」

 

 居るじゃん。とっておきの手駒が。

 えっ、耳の早い()()()()がこの件について掴んだり手を回したりしてないわけが無い。

 

 それに、うん、確実に、いると思う。

 

 だってここには女狐が居る。

 陰で大爆笑したっておかしくないし、見聞色の覇気使い相手でも気配は消せる。

 

 なんと言ってもォ?

 私の影響でスレたらしいですしぃ?

 

 この空間でどこに潜んでいるか、それは恐らくドジしても平気な場所であり、普通は予想出来ない場所。

 

 

 ……大将の後ろ!

 

「出て来い…ッ!」

 

──ダァンッ!

 

 私は後ろに向かって叫ぶと、その声に応えるよう、羽ばたく鳥のように、仮面を被ったピエロが青黒いマントをなびかせて空間に舞い降りた。

 

ㅤ情報屋青い鳥(ブルーバード)、私の手駒のシーナだ。

 

「どこからっ! ──女狐ェ! お前の仕業か!」

 

 身内(政府側)から疑いにかかるのやめろや。シーナの情報入手選択は本人の独断です。

 

「お前!」

 

 その仮面にギョッとゾロさんが目を見開くが身長3mを優に超える偉丈夫は空間を展開した。

 可視化出来ない凪の空間を。

 

 あァ、空間の覇者が仮面の下で勝ったも同然の顔して笑ってるのが想像出来る。

 なんでドンキホーテって色々物騒なの?ドンキホーテの名がつく人間やばい。

 

「ちょっと、大人しくしててくれよ……な…!」

 

 シーナの長い足がいちばん近くに居た私を蹴りつける。咄嗟に後ろへ飛ぶが、地面に足を付けた瞬間首から下が固まった。

 

「──〝無風(ストップ)〟」

「ッ、誰だお前……」

 

 ジャブラの声が背中越しに聞こえる。

 この状態だとCP9と女狐が背中合わせで連合軍と乱入者を警戒して居るように見えるな。

 

 シーナの采配が私に都合良すぎて神。

 

 私も敵認定してくれているお陰で立場は守られている。

 

「情報屋、青い鳥(ブルーバード)の1人。情報を扱う側として麦わらの一味をやられるのはちょっと世界的に不味いわけよ…──なんつって」

「なん、なんでお前」

「え、えぇ、その仮面、え、うそ、なんで」

 

 パウリーがその存在に警戒する中、麦わらの一味はシーナの登場に驚きの声を上げていた。

 

()()()は俺達の事を何も知らない。出来れば秘密にしておいてくれ」

 

 シーナ大好きぃいいいーー!

 良くぞ!良くぞ!リィンが青い鳥(ブルーバード)に無関係だと証明してくれた!愛してる!

 

「ッ、クソ、動かねェ。女狐、体動くか」

「全く」

「なんじゃこの能力……。あの女の透明になる技もそうじゃが面倒いの」

 

 不気味な能力にカクとジャブラは嫌そうな声を出す。ここで簡単に女狐が封じられたら海軍大将の名前が廃るな。

 

 焦りの滲むジャブラと違い、状況打破出来ないと分かっていてもカクは余裕そうだ。空気の流れ自体を止める凪の能力だから、1部例外はあるけど基本動く事は出来無いと思うんだけど。

 2人は動物(ゾオン)系だし。

 

 にしてもシーナが居てくれて良かった……。これで連合軍の負けは無い。

 

 

「お前、なんでこんな所に……!」

「だーかーらー、俺は情報屋なんだって!こんな面白い状況の詳細を入手しないわけないだろ」

「貴方が青い鳥(ブルーバード)だったなんて……」

「助かった!お前の能力でやっつけちゃってくださいお願いします!」

「うおおおんっ!おで、じぬがどおもっだあ!」

「ッ、もしかしてアイツも?」

「そーそー、将来ハゲそうなヤツもな」

「「だからそれやめろって」」

 

「俺らを挟んで和気あいあいと喋るなッ!」

 

 ジャブラの怒りの声に視線が集まる。

 その気持ちはとても分かるけど、耳がキンキンするから音量落として欲しかった。

 

「……女狐に関しての情報は、ほとんど無いんだよなぁ。例えば…──」

 

 シーナの仮面と私の仮面の下で視線がバチッとぶつかる。

 

「──中身、とか」

 

 お前もかブルーバード。

 1歩1歩ゆっくり前に出て私に近付いて来る。

 

「……ハッ、秘密を抱えるからいかんのじゃ」

 

 秘密を暴きたくなるのが人の性。カクの背中越しの『ざまぁ』に改めて考えさせられる。

 ……隠すんじゃなくてオープンにすれば秘密は弱点じゃなくなるのか。頭のいい人なら私と本人に都合のいい解釈をしてくれるかもしれない。

 

「音も気配も姿も消してたってのに見つけられて正直悔しいんだよな」

 

 シーナの能力で首から下が動かせない私は伸びてくる手を見送らざるを得ない。

 

「下衆な輩が」

 

 仮面に手を触れた瞬間、私は1歩足を下げる。

 

「触れるなッ!」

 

 その足の膝を鳩尾に向けて思いっきり上げた。

 

「………は?」

「えっ」

「なんっ!?」

 

 シーナの能力が私限定で解除されたと知らない人達が驚きの声を上げる。問題のシーナは体を浮き上がらせ衝撃から逃れていた。まぁ蹴られた様にしてるけど。

 

「なんで動けるんだよお前……」

 

 腹を押さえ蹲るフリをしたシーナが忌々しそうに睨み付ける。

 私の口元はフードに阻まれ、丁度正面にいるシーナにしか見えない。口パクで『最高』と伝えると、口元まで隠れているから分かりづらいものの確かに笑った気がした。

 

「女狐、俺達も動かせれるか?」

「…………………嫌だ」

 

 イエスともノーとも言わない曖昧な返事。『出来ないけど出来るフリして断る』は青い鳥(ブルーバード)の常套句です。

 

「やめじゃ」

 

 殺気を収めた不機嫌なカクの声が聞こえた。

 

「降参じゃ降参。攻略法が浮かばん」

「女狐が能力解除出来てるだろ」

「何故わしがあんな奴頼らんといかんのじゃ!」

 

 諦めた様子にジャブラがツッコミを入れるがカクは絶対女狐を頼らない。

 それが分かっているので深いため息を吐いた。

 

「第三勢力の乱入により作戦はやむ無く失敗、全ての責任は女狐に有り。これで仕舞いじゃわい」

 

 プツリと空気が動き出す感覚。シーナの能力が解除されたのを感じ取ってカクはその場に胡座をかき、ブスッと顔を歪めた。

 

「……子供かよ」

「あ゙ァ?」

「やめろ」

 

 喧嘩になるかと思われたがジャブラが間に入ったので喧嘩にならなかった。助かった。

 

「お、おい……これ勝ったのか……?」

「多分?」

 

 ウソップさんの困惑した声を聞いて大事な事を思い出した。傷の手当てを終え横になっているナミさんに近付くと、ゾロさんに警戒される。分かり切ってたけど。

 

「…………」

 

 周りの様子を無視して右手を差し出すと、ナミさんは困惑した様子でそろそろ手を伸ばした。

 

「っわ!」

 

 グイッと引っ張り起き上がらせる。その手にこっそり鍵を握らせた。

 

「え?えっ、これって、え?」

 

 よーしよしよし!これでニコ・ロビンの鍵は連合軍に渡った!後はよろしく!

 1番強いの残ってるけど!ルフィが心配だから早く行ってあげてね!

 

 

 私が鍵を渡したことに気付いたカクがギャーギャー喚いているけど、リィンだと知って本物の鍵を渡したお前が悪い。

 

 ナミさんは鍵の数字を見てギョッとしている。

 CP9だけ持っていると思ったんだろう。残念ながら女狐が本命でした。

 

 

 その時、過去最悪の放送が響いた。

 

『よりによって、「バスターコール」をかけちまったァ〜〜〜〜ッ!』

 

 

「「「は?」」」

 

『馬鹿な事…! 今すぐ取り消しなさい!──誰に向かって口利いてんだテメェは!』

 

 ニコ・ロビンの焦った声と開き直るスパンダムの声が聞こえる。

 え、待って、まずなんでバスターコールの権限を政府が持ってんの?あれって大将以上の人間じゃないと無理だよね?約10年海軍大将してる私ですらソレの権限は持ってないんだよ?

 

「何をしてるんだあの男は……」

 

 政府側からため息が零れる。

 しかもこれウッカリってやつだな。

 

『……エニエス・ロビーでさえ焼き尽くすわ。建物も、人も、島そのものも。貴方はそれでもいいと言うの?この島には、これからの未来を担う兵士が沢山いると言うのに?』

 

 落ち着きを取り戻したニコ・ロビンの声に違和感を覚える。オハラはバスターコールで滅んだと言うのに、動揺していないのか。

 

 それとも、放送されている事に気付いている?

 

『古代兵器への手がかりであるお前を取り戻す為に必死こいて翻弄されている馬鹿共をより確実に葬り去る為なら、何千人だろうと犠牲にするさ』

『そう、貴方は、スパンダム長官は海賊を止める事が出来なかった能無し兵士を犠牲にすると言いたいのね』

『そうだ!』

 

 あッ、これ言質取りに行ってるわ。

 

「あーー…政府の信頼が……」

「元々地に等しい癖によく言うな」

「やかましい青い鳥(ブルーバード)

 

 シーナは連合軍連れて去ってくれていいんだけどな。あとフランキーさんの手当てもよろしく。

 

『ッ、大将女狐が知ったらどうなるかしら。彼女は守りの大将、決して許しはしないわ』

『あんな昆虫食いなんざ敵じゃねェ。雑魚なんだよ雑魚! カクにやられる程度の実力でよく最高戦力だって言えるな』

「「あ゙?」」

 

 ですよねー。と心の中で同意していたら何故か怒りの言葉を発した人間が居た。

 

「はァ?なんじゃあいつは? つまり、わしの望む環境はその程度と言いたいんか?あ?喧嘩売っとんのか?女狐の怠慢じゃろう?」

「カクやめろ落ち着け」

「は?なんだあのクズは? 情報屋としてあるまじき情報の少なさに必死こいて探ってんのに、今回でさえ退けたその実力を?雑魚だと?」

「落ち着け」

 

 カクをジャブラが、シーナをサンジ様が落ち着かせようと宥める。あ、うん、私が馬鹿にされたから怒ってるわけじゃなかったんだね。

 

 泣いてない。

 

『バスターコールがかかった島に居たら誰も助からないと知って、出世の為に使うのね』

『何度言わせりゃ分かる!そうだと言ってるだろうが!』

『それにしても地下に通路を作るなんて考えたものね。壁から入るなんて思いもよらなかったけれどルフィが来て驚いたわね。怪我はしてない?』

『お…?おぉ……?』

 

───ブツッ…ツー…ツー…

 

「アッハッハッハッハッ! ニコ・ロビンのヤツ随分面白い真似をしてくれたな!」

 

 カクの大笑いに隠れて何度目かのため息を吐き出す。これは……どう足掻いても……女狐(わたし)の出番ですよね。

 

「デジャブ感あると思ったら、リィンそっくり」

「あっ、確かに」

「エグい方向や相手にとって嫌な事を積極的に攻めていく感じ、確かに似てるな」

 

 ナミさんが思いつき、ウソップさんが同意してシーナも便乗する。シーナ後で覚悟してろよ。

 

「女狐、どこに行くつもりじゃ?」

「……関係無い」

 

 

「お前がこの場から出た瞬間わしは口を開く」

 

 バラすって?

 残念ながらそれは叶わない幻想だと思うよ。

 

「出来るものならご自由に」

 

 そう言い放ち私は靴を浮かせ空を駆け出した。

 殺気まみれの視線が確かに突き刺さる。

 

 まずそもそもの話、シーナが私の正体を守る事を優先して行動したなら、彼はそれを突き通す。

 それに、カクは絶対口を開かない。

 

 

 絶望は希望によりてその輝きを放つ。

 

 『リィン=女狐』という言葉の威力が最大値に達する時にこそ、言うでしょう。

 

 ──それは今じゃない、筈。

 

 

 ==========

 

 

「はー、やってられるか」

 

 ジャブラは大きく愚痴を吐く。完全に敵対心が無くなったと見て、チョッパーとビビはフランキーの元へと急いだ。

 

「能力の相性が悪過ぎるわい、ツテで勝利するなど想定外じゃ」

「……俺はお前らについてやってられるかと思ったんだが」

「聞こえんな!」

 

 ツテや情報でさえもその人間の強さ。リィンの教えだからこそ特に不服な点はなかった。

 カクの寝転がった姿を見て怒りが湧いて来たパウリーを手で制して、ナミは彼らに向いた。

 

「リィンと、知り合いなの……?」

 

「……何故、言わんといかん」

「リィンの仲間だから」

 

 パウリーはふと思い出してナミに声をかけた。

 

「こいつの経歴は海軍雑用だ」

「……リィンと同じ、雑用?」

「反吐が出る。何が同じじゃ。あんなめそめそ泣く様なクソガキと同じなど、侮辱もいい所じゃ」

 

 その顔に浮かぶのは嫌悪。

 

「ッカク!お前ッ、なんでアイスバーグさんに傷を負わせたんだ!」

 

 我慢できずに噛み付くパウリーに、カクは鼻を鳴らした。

 

「そっちはカリファ達じゃ。わしは一切関わってない。わしがしたのは麦わらの一味…──いや堕天使の暗殺」

「「「……っ!」」」

 

 船の侵入者がカクだと判明し、麦わらの一味は目を見開く。しかしそれよりも気になるのは仲間の暗殺未遂の事だった。

 

「昔雑用部屋の暗殺任務に失敗してのォ、そっちの再チャレンジと、私情じゃな」

「月、……組」

 

 恐れと共に呟いたのはサンジだった。

 仲間が、リィンがかつて所属しており、今でも信頼を寄せる心の支え。

 

 答えは、『なぜ知っているのだ』と言いたげなカクの表情の歪みだった。

 

 嫌悪だ。

 

「ッ、テメェ!」

 

──ガツンッ

 

 サンジの渾身の蹴りは、武装色の覇気を纏ったカクの腕に邪魔され、ほぼ未遂に終わる。

 

「5年じゃ」

「は?」

「5年も、無駄な時を過ごした。ウォーターセブンで過ごした5年よりもずっとの」

 

 それほどにまで、カクにとって、女狐がリィンだという真実が(むご)いものだった。

 

「麦わらの一味、去ってくれ。また暴れられたら面倒だ。止める俺が」

 

 確実な敗北、能力の相性。

 ジャブラは潔くこの戦に終わりを告げた。

 

 

「お前らは知らん。あのガキの、本質を」

 

 悪魔の囁きの様な声が聞こえた。




過去最悪の放送は個人的にアラバスタでの嘘はついてない捏造まみれの放送だと思いました(まる)
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