こんにちは、名も無い死人です。仕方ないじゃないですか名前まだ分かんないんですから。
とりあえず状況を整理しようじゃないか。
自称堕天使のクソジジイ様が死んだ後狭間に迷い込んだ私をレッツ転生させたぜ。まぁ、転生自体に問題は無い。だって死んだらみんな転生するらしいから。
ただ、転生作業が随分と昔の記憶のようで私不安でたまらない。約16億年ですって!!!
私にどうしろと。泣いちゃうぞー泣き喚いちゃうぞー。大声を出しちゃうぞー?
「おぎゃー!おぎゃー!」
実際泣いちゃったよ、畜生。
なんと私今プニプニ赤ん坊になってる様子……。わぁ若返りー………。
って素直に喜べるかボケ!
やめてよほんとー…歳が幾つか覚えてないけども自我は持ち合わせてるんだけどー…羞恥ぷれいですか?そうなんですね?殺したい、この世を。まあ無力な子供なのでその前に死ぬけどねゴラァ。
私の現状は分からないことだらけ。土地や環境は勿論の事ながら、言葉も名前も何も分からない。
必死に頭動かすといきなり眠気が襲って来て意識飛ぶし、排泄も空腹も訴える事は全て泣き声。
世の中のお母様方って大変なんだな、って遠い目をしたよ……。私ならきっとノイローゼになりそう。いや、絶対なる自信しかない。
がんばれ名も知らないお母さん。
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そんな私の暇を持て余してるある日の多分昼下がり。私はこちらに来て1年ほどの年月を重ねた。この1年は何もやることが無くてずーっとだらだらして過ごす日々で、何も無いことは幸せなんだけど赤ん坊の私にとって暇で暇でたまらない。
少しずつ言葉を覚えて単語単語だけど意味がわかり始めた事以外さして変化は無い。
もう少ししたら転生とかにありがちな魔法とか試してみたいなーって思ってるんだけどいい機会無いかな。
そういえばアイテムボックスとかあるのかな?今まで考えなかったけど転生って言うくらいだからあるよね?
大丈夫私は堕天使様を信じてる!!あ、クソジジイとか言ってたろってツッコミは受け付けません。
私は誰に話してるんだ、涙が出てくるぜ。まあ仕方ないけどね、自分以外コミュニケーションとる空いていないんだし。
……そういえば、このお母さん(推定)どこかで見たことある気が──。
──ドォン!
「んにゃ!?」
考え事という名のひとり遊びをしてたら、耳が裂ける様なとても大きな音がした。音に驚いて身体が数センチ飛び上がった様な気がする。
な、何事!?
まるで砲弾のように聞こえる音は何度も何度も響き止まらない、肌がビリビリと震えた。
扉がいきなり開き、女性が私をぎゅっと抱きしめる。いや、それはいいんだけど痛い痛い痛い痛いー!力込めすぎじゃないですか!?
数秒とまたずに大男が現れ何かを叫んでいるけど耳がキーンとして上手く聞き取れないやい。
だれだ、そしてなんだこの音の原因は。
「………っは、………して………か!!」
「…が…い……ン………す……て」
「……ぬ………っ!」
「う………でしょ…!!」
すいません随分と真剣な雰囲気の所邪魔して悪いんですけど人の頭の上で叫ぶのやめてくれませんか?
「っ…な……よ…!」
「………か……い…………ィ……!!」
おいこらいい加減にしろ耳が痛い。
「う…あ、たた…にっ!!」
舌っ足らずの口では訴えたい事を上手く伝えられず余計にイライラする。静かにってどう言うんだっけ?
「だ…ぬぁ……んむぅ!!」
母親と思わしき女性がこちらをじっと見てるけど相手の男は叫び続けるばかりで埒が明かない
出来るかわかんないけど黙らす!!赤ん坊だから多少の無礼は許してよねって可愛く言いたい。言えないけど。
集中集中。羞恥プレイに比べりゃ恥ずかしくもなんともない!
ふと思い出した。最後の言葉。
『せいぜい〝集中力〟を高めて〝想像力〟と〝思い込み〟で何とかせい。人生それで上手くいくわい』
これだなクソジジイ。初めて感謝するよ。
集中力を限界まで高めると眠気が襲って来るけど構うものか。
身体の中にある血が巡る。身体がオーバーヒートしそうなくらいドクンドクン波打ってる。
けど、いけそうな気がする。たぶんきっとこれが魔力なんだ。多分きっとメイビー!
そう信じたいだけかもしれないけどこのまま騒がれるのもとてつもなく不快。
私は持ちうる全ての集中力を使って魔力(仮)を手にかき集めた。ありったけの魔力かき集めレッツゴー!
多分いける!いや絶対やる!
「……ふぁいあ!」
ぐぅぅっ、上手く喋れないけど後は想像力で何とかなるなる!
「っ!!」
男が何かを感じとってその場から飛び退いた。
──ボッ
想像してたのとは少し違う気がするけどとりあえず成功!
小さな火種が飛び退いた男の場所に作られその場の誰もが押し黙った
ふふふふ…はははは!!
一言言おう。眠い!
せっかく静かになったのに酷いリターンだ……まぁ魔法らしきものが使える事に安堵するべきだろう。
明日起きたら何しようかな。
とりあえずおやすみなさい御二方。
どこに向かっているのか私にすら分からない。