2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第189話 戦力が高まると死亡率も高まる

 

 混乱の序盤を呼んだ宿の部屋での一幕。

 

 一応助けてくれたブルーノに一味はお礼を言うと彼は誰にも分からないように私を一定時間見ると去っていった。

 多分『絶対来いよ』とか伝えたんだと思う。

 

 さらに言えばメリー号が人間として現れた。それはあまりにも衝撃的過ぎて、私が怪我を負った詳細より皆の意識はそちらに集まった。都合が良かったので指摘しなかったんだけど。

 

 細かい事なんて分からない。ただ見舞いに来たアイスバーグさんによると『クラバウターマン』という付喪神と妖精を混ぜ合わせた存在が変異したものだと推測される。

 彼、ゴーイングメリー号は多分夢を叶えに来たんだと個人的に考えた。

 

 『皆が夢を語った時、僕にも夢が出来た。最期まで仲間と居る、叶う筈も無い夢が』

 

 船としての最期に、私は居なかった。

 叶う筈も無い夢を再び叶える為に。

 

 仲間に見守られながらという『船』として稀有な最期なのに、多分つなぎ止めたのは『リィン』の未練だ。

 それが私の未練なのかメリー号の未練なのか分からないが『メリー号が居る』という事が事実なので、私たちに真実は必要ない。

 

 ルフィとニコ・ロビンが目覚めるまで、メリー号は麦わらの一味と交流を深める。多分仲間になるんだろうけど、翌朝になっても船長が目覚めなかったので断言出来ない。

 

 

 

 そして今、私はブルーノの指示通り、6番ガレージ付近にある血痕が付着した石碑の前に来ていた。

 数通り奥には私の戦闘の爪痕が残っている。

 

「はぁ……」

 

 朝日が昇る頃、宿を抜け出す事に成功したのだ。怪我して約1日、当然痛みは引かないし体を動かす事すら億劫なのだが、女狐だと知っているブルーノだから会わないといけない。

 

「この石碑に何が……──」

 

 そう呟いた途端、石碑が扉の様に1部開いた、

 

「あ、」

「あっ」

 

 ドアドアの実の能力者、ブルーノが扉に変わり地下への入口となる事を瞬時に察した。

 ブルーノを扉にしたのはルッチだった。

 

「め、女狐」

「……やァ?」

 

 どんな反応をするのが正解なのか。

 お互い微妙な反応になる。

 

「見られると不味い、まず中に入ってくれ」

 

 ブルーノの催促に同意見だったので石碑の中に入る。石碑の中と言っても地下に続く階段があるだけだから幅という意味ではほぼ無い。

 

──バタン

 

 能力が解除されたことにより扉は石碑へと戻った…───あれ?これ密室?

 

「ふっ……もう遅いぞ女狐」

 

 まぁ最大限集中して石をぶち破ればいけ、無いな。私はそこに至るまで集中しきれないような気がする。

 

「地下に隠れ家……の様な物があって、潜入していた際はこちらも使用して居た。俺は酒屋の店主だからそちらがホームで、こっちは念の為、という物だな」

 

 アクアラグナでここは浸からない。

 だからコイツらは地下に隠れ家を作れたのか。

 

 コツコツと石階段を降りていくとうっすら光が漏れている空間が現れた。

 前を行くルッチの背中をぼんやり見ながら後ろのブルーノにも気を配る。

 

 言わば敵陣ど真ん中、警戒を解く理由が無い。

 

「ここだ」

 

 ルッチが扉を開けると視界は開けた。

 石で囲まれた地下空間は酸素を確保出来るのか心配になって居たが、それより飛び込んできた光景に歯ぎしりした。

 

「カク……」

「……フン」

 

 CP9が全員居た。

 

「どういうことぞ、何故私を呼ぶした」

「そちらが素の喋り方か」

「説明しろ」

 

 私がブルーノを睨みつけると、誰かに肩をガシッと掴まれ引き寄せられた。

 

「よお、堕天使リィン。まさかお前が女狐だったとはなァ!」

 

 ジャブラが肩を組んでビシバシ叩いてくる。痛い痛い痛い! ちょっと! 怪我してるから本当にやめてください!

 

「や、め、ろ!」

 

 肘で押して止めさせるがジャブラはご機嫌のまま私の近くをうろちょろしていた。

 本当にコイツ最年長か……?

 

「で?」

 

 ジャブラの反応から私=女狐だという事はバレていると見ていいだろう。

 

 私は無造作に置かれている木箱に腰掛けると周囲を見渡した。

 各々個性はあるが、私の言動を見ている事に違いは無い。

 

「私が呼ぶされた理由は?」

 

 全員が居る、ということは恐らくカクは私を殺せない。『リィンが女狐だとバレたらリィンを殺すことに支障をきたす人間』というのがCP9の中に居る以上殺される確率は低い。

 その考えに至っている事を態度から見て取れたのかカクは小さく舌打ちをした。

 

「今回のエニエス・ロビーの件の政府の対応を報告しようと思ってな」

「はァ?」

 

 思わず眉をひそめた。

 

「何故私に言う必要が存在する?」

 

 いつか海軍にも報告されるし、潜入中の私をわざわざ呼び出すというリスクを背負ってまで報告する事じゃない。

 ブルーノは私の反応を予想していたのか特に気にすること無く話を続けた。

 

「政府側の失態は俺達が背負う事になった」

 

 その言葉は予想していたより、いや、予想すらしていなかった。

 

「分からない、政府はCP9という戦闘力を捨てるほど人手に優れるしている? 第一、CP9は有能で切り捨てることにより得るメリットは無に等しいのに?」

「……買い被りすぎやしないか?」

「事実しか言いませぬ。CP9は強い。育成施設などもあると思うですが、その中でも間違いなくトップレベルのあなた達を切り捨てる?」

 

 責任を負う、という事は規模が大きい今回の1件だと間違い無く『解雇』または『大幅な降格』という結果になるだろう。

 スパンダムならまだしもCP9が背負う意味が分からない。

 

 彼らは政府にとって重要な駒。本当に意味が分からない。

 失態は失態かもしれないが、別の失ってもいい人材に責任を押し付けるのが効率の良い選択。

 

 何故、有能な人間が切り捨てられる?

 バスターコールはもちろん、殆どが正義の闇に屠られる出来事なのに?

 

 

 断片的にだが、拙い言葉遣いでそう伝えるとルッチがニヤリとほくそ笑んだ。

 

「あー……女狐、それを可能にする感情が存在するんだ……」

 

 苦笑いを浮かべながらブルーノは呟いた。

 

「怒り」

「子供か」

 

 読めてしまった。読めてしまった!

 私の回転速度の速い頭はその一言で簡単に答えを出してしまった!

 

 スパンダム怒らせて一時的に責任を負う事になったな! そして我に返った政府に『力になってくれ!』と言われる前に話を漕ぎ着けて置こうと私を呼んだんだな!?

 

「つまり、『俺たちを海軍で雇わないか』という提案だ」

 

 嬉しそうにジャブラが笑顔で告げた。

 

「……ブルーノだけでOK」

「なんでだよ」

「ドアドアの実めちゃくちゃ有能説! 私の為に技を作るして欲しい! 案は存在する!」

「俺も使えるぜ!?」

「正直他は要らぬぅ!」

 

 腕でバッテンを作るとカリファ辺りからだよねといった納得の表情を頂いた。

 

「その、誘いは大変嬉しいんだが。……睨むなルッチ、不可抗力だろう」

 

 ブルーノは両手を上げて降伏の仕草をルッチに向けていた。

 彼だけが選ばれた事に嫉妬? それとも海軍に屈するなど、という怒り?

 

 よし、分からないけどルッチはすこぶる面倒くさそうだ。

 

「お前さぁ、断れない立場だっつー事分かってんのか?」

 

 ジャブラの言葉にニッコリと微笑む。

 

「分かってるから悪あがきしてんだよクソ野郎」

 

 ルッチとブルーノの契約だと『政府に捨てられた場合海軍が2人を拾う』条件。

 ただそれは2人だけの場合。今この場には私の秘密(めぎつね)を知っている人間が増えた状態。

 

 断れない秘密。

 手元に置いておくことに監視の意味を含めて異論は無い。

 

 でも個人的な感情ではブルーノ以外全くこれっぽっちも欲しくない。

 

「ぶ……っ、はっはっはっ!俺やっぱりコイツ好きだわ!」

「私は普通に嫌いですけどね!」

 

 政府の武力を削げるのも、戦力を手に入れる事も、多少嫌味を言われるだろうがメリットな事に違いは無いが───。

 

「ん?」

「どうした?」

「貴方達は海軍か政府に居たい、ですよね」

「まぁそうだな」

 

 『殺しの正当化』を求めるには2つの組織のどちらかに所属する必要がある。

 

「殺すことは好き?手柄にならずとも?」

「当然」

「もちろん」

「愚問」

 

 即答だった。

 

「殺しの快感を知らないなんて勿体ねぇよなぁ」

「肉の引き裂かれる音が好きチャパー!この前の革命軍の任務は楽しかったチャパパ」

「あ、もういいです」

 

 その精神は全く理解出来ない。まぁ好きと捉えるか嫌いと捉えるかは個人の自由だから止めろとまでは言わないけど。

 

「賞金稼ぎじゃダメなのです?」

 

 殺しを正当化出来る大義名分が存在する。

 お金も貰えるし罪では無い。

 

 首をかしげて周りを見てみるとピキっと固まっていた。

 

「守りが薄い。それだとどこかしらから声がかかる。『政府に戻らないのか!』みたいにな」

「いやぁ、海軍に居ても同じと思うですが……」

「それに! それにだ! なァブルーノ!」

「あ、あぁ! シャボンディ諸島には手を出しづらいレベルが在中しているのを知らないのか? あの冥王と剣帝が睨みをきかせている」

「彼らは海賊や賞金稼ぎをレベルアップ方式で探すしているだけなので実際手は出しませぬよ」

「なん……」

 

 2年間の海賊(ゴミ)掃除は無理しないレベルを見極めて彼らがターゲットを決めてくれていました。

 

「それに賞金稼ぎなんてシャボンディ諸島だけに拘る必要など存在しませぬし……」

「いやいや、それに殺していい人間の情報を集めるには個人だと限界がある。海軍なら海賊の情報はどんどん集まるだろう」

 

 まぁ確かにそうだ。

 私も海賊や人の情報を探したり隠蔽するために入ったも同然。後者はほとんど無理だったが人は探せた。

 

 でも任務という名目が出てくるから自由では無いと思うんだけどなぁ。軍って規律やら何やら雁字搦めだし。

 

「……何が目的?」

 

 CP9が必死になって海軍に入ろうとする理由が見つからない。

 

「私を売った人間が居るCP9を信用出来る理由が無いですぞ?」

 

 視線は自然とカクに集まる。

 彼は馬鹿にするように鼻で笑った。

 

「売るとは人聞きが悪い、精々──」

「──写真を()()()()、とかです?」

 

 責めるような視線を向けていても全く気にした様子はない。ただ絶対にこちらを見ないようにしているのは確実だ。

 

「私の手配書の写真、雑用時代の物でした。しかも年齢的に5年前」

「カク、お前まさか」

「……わしの私物じゃな。ウォーターセブンでの経歴は海軍雑用から、残っておらんと第1雑用部屋出身として些か不自然じゃろうて」

 

 恐らく一般的に販売されてあるレア度の低い写真なのだろう。というか、初頭手配ではフード被った14歳の私なのに、更新されたら10歳位の頃の写真に変わっていた。

 どう考えても誰か、海軍関係者がリークしたに決まっている。

 

 月組のカクさんだった、というのは流石に予想出来なかった。良く考えれば分かるけれど、私の写真を持っているなら最近の写真、脱軍前の写真を提供するだろうね。

 

「リークした先がONLY ALIVE(生け捕りのみ)で残念ですたね」

「……喧嘩売っとるんか?」

「最初に私に喧嘩売ったのはテメェだろうが」

 

 私は意図的に喉を擦る。

 グラッジの娘が居ないのに負った謎の怪我。

 

 喉に残った人間に締められた様な痣。

 

 そして私を拾ったのはCP9(ブルーノ)だ。

 

 

 多分、ブルーノの前にカクが私を見つけたんだと思う。そして殺そうと企み……失敗した。

 微塵たりとも隠そうともしない殺気が物語っている気がした。

 

 

「はぁ、もう目的を言ってもいいか? カクが居る限り女狐は『うん』と言わない」

「なら張本人が直接言いなさいよ?」

 

 ブルーノとカリファが視線を向けたのはルッチだった。やっぱり本当の目的を言わず取り繕った理由だったか。

 ルッチは少し視線を泳がすと観念したように私を見て口を開いた。

 

「その、俺が『リィン』という人間の、ファンなんだ」

「…………………はい?」

 

 耳がおかしくなったのか? と首を傾げてみると呆れた表情でブルーノが呟いた。

 

「お前の耳がおかしいんじゃ無くて、ルッチがおかしい」

「あっ、聞き間違いでは無きでしたか」

 

 何をどうしてそうなった?

 多分見た目に騙されるタイプじゃないと思うんだけど。

 

「カリスマ性に惚れてます貴女の下で背中を見ながら手足となって働きたいですサインください」

 

 思わずカクに助けを求めるくらいには衝撃的過ぎた。普通に無視された。

 

「ど、どうしても私の下がいいと」

「当然」

「移動をCP9全体で、という意図が分かるした気がする」

「……まぁ、流石にストッパーとしての役割くらいは果たしましょうかと思ってね」

 

 カリファの言葉に納得する。

 コレを海軍……と言うか私の下に放つ事の責任感だったのね。確かにルッチとブルーノだけだと私がしんどいからストッパーは多いだけいいかも知れない。CP9を総合的に見て、1部より全体を取るほうがいいか。

 

「……ちょっと、電伝虫かけても?」

「構わないがどこに…?」

「……………育ての親?」

 

 センゴクさんと言ったら止められる可能性があるのでそう言う。

 CP9のまとめ役はブルーノで決定だな。うん。

 

──ぷるぷるぷるぷる……がちゃ

 

『おかき』

「センゴクさんCP9本当に訳が分からないぞ助けて私の鬱憤を晴らすして愚痴らせて!」

『ちょっとまて何があった……! あと愚痴らなければならないのはこちらの方だ問題児!』

「私は優等生だと思いますたがねぇ!?」

『お前の両親の顔を思い浮かべてみろ、それが答えだ』

「血統に拘るこの世界など大嫌いぞ!」

 

 ぜーぜーと荒い息で呼吸をしながら吐露すると電伝虫の先に居る海兵が誰なのか分かった面子はそれぞれ驚きの表情を見せた。

 

「そう、来たか」

「私は英才教育です」

「ハッ、生かせておらんがのぉ」

「黙るしろうさ耳野郎」

「お前が黙れ言語不自由娘」

「お言葉で理解できないようでございましたらその天狗になった鼻を物理的に見るに堪えない惨状にさせていただきますが?」

『外野がうるさい』

 

 ごめんなさい。でも私のプライドが……!

 あ、はい、電伝虫越しに死んだ目をしているのが分かったので優等生のリィンさんは真面目に連絡させていただきます。

 

「あー、その、センゴクさん。果てしなく限りなく違いなく決定事項の報告がございますて」

『今更な話だな、事前に相談がないのは。今時間が無い、手短に頼む』

「……元CP9、私のモノにしていいですか?」

『……………細かく頼む』

 

 説明を求められたのでCP9の代表としてブルーノと一緒に話をした。

 

 ・政府はCP9に責任を負わせた

 ・責任追及が撤回される前に海軍に吸収したい

 ・そして女狐の正体を知られたから監視も含めて女狐隊が望ましい

 

 ・第1雑用部屋襲撃事件の下手人がCP9だった

 

 ブルーノが口に出した最後の報告には度肝を抜かされたが、それは誠意を見せたと取っていいだろう。

 

 電伝虫は深いため息を吐く表情をした。

 

『お前は、どうしたいんだ』

「正直野放しにする事だけは嫌です。だからといって関わりたいかと言うされれば否です」

『……続けろ』

「ねぇセンゴクさん。あまっちょろいと言うされるかも知れませぬが、私は人を殺すのが怖いです。もう嫌です。殺さず無力化可能なれば上出来ですが、絶対は有り得ない」

 

 あの感覚だけは、無理。がくりと相手の力が抜ける瞬間がダメ。他人の死を背負う行為が嫌。

 

「私は、『最高()()』になれませぬ」

 

 肩書きだけの大将。

 何故五老星が『私』を大将に推薦したのか分からないけど、私が実力を持って大将になる事は絶対にありえない。

 

「だから、私は殺意が欲しい。私の部隊が殺しを出来ると言う評価が欲しい。刃が、欲しい」

 

 良くいえば『指揮官』で、悪くいえば『手柄を横取りする臆病な上官』だ。

 その点CP9は殺しの正当化さえあれば評価など気にしない。

 

 私にとって都合のいい殺害方法だ。

 

 武器の代わりに人を使う。外道だろう、非道だろう。それでも私は人を殺したくない。

 ワガママだと言われようと人を殺したくない。

 

 目の前に迫る死の恐怖、きっと私は刃を振るうだろう。でも振るうだけだ。

 多分、私はもう人を殺せない。

 

 傷付ける事ですら怖いから、私は武器を持たない。刀を習えど、使えど、銃を持てど、使えど。

 

 だからどうしても暗躍を中心とした女狐に殺しの仕事が回ってきたら、誰かを使わなければならない。

 私の今の部下はそれに向かない。

 

 

 それに、命のやり取りは怖い。

 今回私は本当に死んだのかと思った。

 

 体はボロボロだし精神的にも参っただろう、と他人目線で考えていたから。一種の現実逃避だ。

 

『お前は、随分嘘が上手くなったな』

「はい?」

 

 電伝虫の向こうでセンゴクさんが笑っているのが分かった。

 虚をつかれて思わず目を丸くする。

 

『お前は、風の能力者だと言っていたな』

「はい、そうですけど」

『火種』

「……ひだね?」

 

 何の話だと首を傾げた。

 

『お前が初めて使ったであろう能力の事た』

「ぎゃん!?」

『上層部はお前が風の能力者じゃないこと位入隊時から知っている』

 

 嘘マジで?えっ、クザンさんだけじゃなくて?

 

『頭の回るお前が人を傷付ける行為を極限まで避けていた事も分かっていた。それでも1度は経験をと思い討伐任務を組み込んだこともあった』

 

 あ、突発的な任務じゃなくて通過儀礼として組み込まれていた任務だったんですね。

 しかもそれは女狐としての評価にも繋がるチュートリアル。

 

 全部、手のひらの上だった。

 

 電伝虫は未だにくつくつと笑っている。

 

『子供相手に看破される程我らは甘くない。多くの新米海兵を見てきて、成長の仕方というのも経験から分かっている。たった1ヶ月?十分すぎる程の見極め期間だ』

「あー、経験は強かですね」

『想定外の事も多かったが、大雑把に今の状況を予感していた。殺しを忌避する性質もな』

 

 つまり、何が言いたいんだ?

 

 予想されていたのは分かった、私に対して失望したわけじゃ無いことも分かった。

 そして海軍……いや、センゴクさんを舐めていたのも理解した。

 

『CP9の件、了解した。こちらでも手配はしておく。ただし加入はお前が女狐として落ち着いて海軍本部に戻れたら、だ』

「何年越しになるとお思いで?」

『今の麦わらの一味の実力で後半の海を渡れると思うのか? 早死、もしくは鍛錬期間を設ける筈だ。いや、そうなるように操作しろ』

「大分、無茶を言うですね」

 

 なんとかしてみせるか、と思ったけど、センゴクさんが私の嘘とCP9を受け入れる事への繋がりが読めない。

 結局彼は何が言いたかったのだろう?

 

 話と話の間に脈略のない話をする様な人間ではあるまい。

 

『不思議か?』

「とっても」

『……正規の大将の通り名は言えるな?』

「赤犬、青雉、黄猿、です」

『そう、で、お前は?』

「女狐です」

 

 線引きされた実力差の通り名。

 私には色が無い。

 

 機嫌が良さそうに電伝虫越しのセンゴクさんは笑みを浮かべていた。

 

『先読みでは私の勝ちだな』

 

 訳が分からないまま電伝虫が切られた。

 CP9に視線を向けてみても理由が分かる人間は居ない様子。

 

 部外者が居る以上麦わらの一味どうこうという話は出来ない、改めてかけ直すとしよう。

 

 

「絶対、勝てませぬぞ……」

 

 先読み所の話じゃないことに彼は気付いていないのだろうか。

 私が彼に勝てる要素なんて微々たるものだ。

 

「とりあえず、落ち着きたらCP9は正式に女狐の部下です。信用しませんが利用はするです、よろしく」

 

 私の部下には曲者が多すぎる。

 




この後電伝虫をかけ直して麦わらの一味の処遇について果てしなく限りなく違いなく決定事項の提案を持ちかけられるリィンさんの姿はあったけど書きません。

>ドアドアの実めちゃくちゃ有能説! 私の為に技を作るして欲しい! 案は存在する!
リィンの欲しがった人材はブルーノでした。

メタ的な話ですけどメリー号が何故人間になったのかという設定をちゃんと作りましたで。いやぁ……私って凄いなぁ!(自分で褒めていくスタイル)
伏線楽しい……。

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