「目覚めるしたリィンの覇気講座! どーん!」
一味の前で高らかに宣言した私、潜入中の名ばかり大将(覇気未習得)の言葉。
当然首を傾げられた。
「セルフ効果音は置いておき、リィンお前、覇気使えないだろ」
「フッフッフ……! 甘いですねゾロさん!」
芝生の上に座る芝生頭の剣士を仁王立ちで見下ろした。
「ただの八つ当たり講座ですぞりッ!」
「おい」
胃痛から気絶、ふと目覚めると新しい船サウザンド・サニー号の部屋。
分かるか! 分かるな!? どっかで見た光景だと思ったよ! メリー号と同じパターンじゃありませんかコレ!
メリー号が初めて船を家と認識した原因が『私の睡眠』だと言うではありませんか!
私、それで貧乏くじ引かされたんです!
またかよ! って思いますよね!?
「あー、ごめんな、リィンちゃん」
「すみませぬ、こちらの話です。サンジさん恐らく無関係ぞり」
サンジ様の王族問題の件まだ片付いて無かったなぁ……胃が痛いなぁ……。
「覇気って言ってもどうすんだ?」
「この島に待機すている覇気使いの海兵、じじには絶対聞きませぬ」
「おう、じいちゃんだけは絶対ダメだ」
「ですぞ」
理由はルフィの血縁という事で納得して頂きたい。ボロを出して欲しく無いし何より教える側には向かない。無自覚スパルタ殺害予告みたいな人だから。
幼い頃から同じ『鬼ごっこ』を体験しているルフィと頷き合う。この感情を共感出来る人間が居て良かった。
「他の海兵は当然却下。教えるは武装色の覇気」
私は親指で自分を指さした。
「教師は私です」
当然ながら一味は私が覇気を使えない教えれないと認識しているので謎しか生まれなかった。
そこに大きな手が上がる。
「まず覇気って言うのはなんだ?」
フランキーさんだ。
ちなみにこの人、私が眠っている間に仲間になったらしい。リィン、このパターンもどっかで覚えがある。
「覇気、という物は不思議現象。超能力と取るしてもおかしくないですし、鍛えるすれば悪魔の実の能力以上の力ぞある『武術』とでも言うしましょうか」
覇気は3つ種類がある、と言いながらアイテムボックスからホワイトボードを取り出して文字を書いていく。
【見聞色の覇気】
「これは見聞を広める、という表現が合うですがそれだけではなく、相手が『こうする』という行動を予測可能です。と言えどコンマ単位レベル」
しかし、と言葉を続けた。
「達人同士になるとこの覇気は超重要の物となります。私はこれに詳しくないです故にこの一味で使うが可能のゾロさんサンジさんに聞くしてください。ちなみに──」
続けて書かれる言葉は見聞色の覇気の下。
【直感】【聴覚】【視覚】【紙絵(紙一重)】
「これらの延長戦にあるです。最後の言葉はCP9や海兵が良く使うする六式の1つ」
六式についてはまた今度という事にする。
感覚として違いは無いのだろう、ゾロさんサンジさんの2名は納得した表情をしている。
「そして次、こちらは特殊なパターンぞ」
ホワイトボードに書き足す言葉。
【覇王色の覇気】
「これは素質のある者しか使用不可」
覇王色の下に続けられるのは1つ。
【覇気】
「全ての覇気はこれらから派生される為『覇気』と名が付くです。使用者の力量差により効果として気絶や立ちくらみなど差が出てくるですが」
特にルフィとビビ様を見ながら言葉を紡ぐ。
「心臓を威圧する、と同義です。赤子などに使用すれば確実に死を迎えるですよ、コントロールは必要不可欠です。それだけ特殊な覇気です。そして最も謎の多き覇気ぞ」
『覇気のある人』とか『覇気のある声』とか良く言葉として使われる。延長戦にあるのは間違いない。
だからこそ王。
「1つの船に2人または3人と居ることは珍しく無きです。知る範囲、海賊王の船でさえ3人もいますた。──つまり覇王色の覇気の所持者は案外居る、故に優先的に鍛える必要はあるです」
覇王色の覇気の質の高さで先の未来が決まると言っても過言じゃない筈。
士気が違ってくる、押され気味で始まる戦いほど負けが確定している未来はない。
「そして最後、これが今日私の教える覇気」
ホワイトボードに書き込んでいく残りの覇気。
【武装色の覇気】
「…──肌や物を鋼鉄の様に、武装した様に固くする攻守重要の覇気です。なおこれは能力者にも攻撃が通用するという優れもの。これから非能力者が珍しくなる海では弱点を突く以外必須ぞ!」
例えばルフィに打撃でダメージを与える事が出来る物。と説明すれば有用性は伝わる。
導入が終わり疑問を最初に口にしたのはツッコミ担当のウソップさんだった。こういった所で目を付ける才能は賞賛に値する。
「使えなければ教えられない、だったよな。覇気や六式は」
「はいです」
「じゃあリィンって武装色の覇気を?」
私は無言で首を横に振る。
それにますます疑問を抱くのかウソップさんは顔を
まぁ、意味があれば惑わすんだけどね。
「私は一度奇跡的に使う事が出来たのみです。命の危機に瀕するした時。正直、今まで忘れるしていますた……──無意識の内に思い出さぬ様にしていた、の方が正しいでしょうか」
うっすらと顔に笑みを浮かべる。
私はグラッジ討伐の際、1度だけ使えた。でも彼を殺した瞬間を思い出したくなくて、死んだという結果だけを覚えて過程をすっ飛ばして思い出していた。現実逃避とも言う。
偶然とも言える1度だけの覇気。
悟ったような辛そうな表情を浮かべてると細かい事はつっこまれないだろうという無駄に手の込んだ演技をしてます。
「それが武装色です」
ちなみに! と普段の調子を出しながら豆知識を挟む。
「覇気と言えど多くの呼び方があるそうです、空島では見聞色の覇気を
パン、と手を叩いて思考を切り替えさせる。
ここからは実技の時間だ。
「理論的に語るは不可能、全ては感覚。そして固定概念は成長を塞ぐです。それぞれの覇気というのを考え、それを育てるが最良!」
「だけどリィン、私の様に戦闘の才能が無い場合使いづらいんじゃない?」
暗殺特化のニコ・ロビンが戦闘の技について不安を零す。
「私の師からの教えぞあるです」
1つ指を立てて思い返しながら口を開く。
「疑わない事、それが覇気を引き出す上で最も重要な事。なのです」
数多く覇気使いを見てきた上で言える事は『ここからここまでが覇気』という仕切りが無いということ。
武装色だけでも鉄の様な覇気だってあったし雷を発生させる刺々しい覇気だってあった。
「武装色の覇気は1番簡単で難しいという2面性を秘めるしています。例えばゾロさんの飛ぶ斬撃やサンジさんの燃える足は武装色では無いのですか? それが出来ぬと疑いますたか?」
「なるほど、思い込みね」
「はいです! だから私にとって簡単でありますが人により難しいのです」
ナミさんの納得した声に同意する。
ふとルフィに視線を向けると彼は煙を吹き出していた。あぁ、限界か。
「ル、ルフィ大丈夫?」
「リーの話は勉強になる事ばっかりだって分かってんだけど……」
「まぁ、理解力に差があるですよね」
仕方ないよなぁ。
だってルフィだし、言葉で説明と言うより感覚派だろう。
「んー……武装色って硬くするんだろ……? 武器とか技の代わり、だよなぁ」
「広い意味でそうぞ」
唸りながらルフィは言葉を捻り出していた。
「リーの、なんだっけアレ。スッ、て避けてグワッ! て攻撃するやつ。攻撃する? つーか、攻撃を跳ね返す……?」
「あァ、柔術ぞ。私は力が無い故に攻撃をいなす事や相手の攻撃を利用すて反撃するなど」
殴られたら相手の偏った重心を利用して殴ると2倍くらいのダメージを与える事が出来るし、背負い投げをすれば相手の勢いも乗算されて地面に叩き付けられる。
最近『堕天使リィン』のキャラ付けの為にもっぱら箒とかの棍棒術を使っていたから、そちらが出てくるのは予想外だ。
「ぅー、じゃあボーッとする、んー、でも避けたら見聞色の覇気か? でもなぁ……そうじゃなくて相手の攻撃を受ける、って。ううううう」
本格的に唸り始めた。
「……俺、フェヒ爺の方が分かりやすいかも」
「そんな気はすてた」
私は覇気の訓練を受けてないが兄3人は訓練を受けている。今になって思い出してきたのかな。
「……フェヒ爺?」
「私の師匠、認めたく無きですが」
口頭説明は上手いくせに実技訓練になると途端にポンコツになる擬音語祭りの開催者。
ルフィの語彙力が育たなかったのはコイツのせいだと思う。
「とにかく! 意思確認です、2代目海賊王の一味になる予定は?」
「「「「「ある!」」」」」
皆が声を揃えた。
なら頑張ってください、と笑みを浮かべホワイトボードを軽く叩く。
これから先、覇気の習得の有無は超重要になってくる。一味の大多数が賞金首になった以上危険性も増すだろう。
やっぱり『2代目海賊王計画』の為にこの人達に修行期間を備えて、センゴクさんと相談しなければならない。
海賊王にさせる、と言ったがやはりルフィの強化は必要不可欠の条件だ。
「にしても、なんで唐突に? これから先の航海でも時間はあるだろ?」
ウソップさんが引き攣った笑いを浮かべながら聞いた。
「私がこれから……まともに動けぬ故に」
私はとても悔しそうな顔で、というか心底悔しい。船酔いが! 絶対辛い! 白ひげさんのところでは船に酔わなかったのにシャンクスさんのところでは酔ったから船の大きさが関係してると思うんだけど!
中身の無い船酔いの瓶を握り締めた。
「察した」
途端死んだ目に変わったウソップさん、船の動いていない今の内に基礎を教えとかなきゃならないんだよ! まだ出航してすらないのにもうすでに陸に上がりたい!
「……それと、もう1つ残念なお知らせぞ」
アイテムボックスから折れた箒を取り出した。
「おまっ、それ!」
「あんっっの、クソ野郎! ご丁寧に私の箒を折るして、折るしてぇえぇぇ!」
ここまで滞在期間を伸ばして貰っていたのは船の完成の他に箒の探索をしていたのだ。
それがこのザマだ! 絶対カクに決まってる!
アイツが私の喉を絞めようとして失敗した当てつけにやったに決まってる!
まぁ、刀を箒で受け止めたり人を殴ったりと箒にあるまじき無茶させたけどさぁ。
「あー……ダメだね、この箒死んでるよ」
「乗り物語のメリー号の査定が心に来る!」
「お前のネーミングセンスがクソだな」
「シャラップゾロさん」
メリー号が近寄って箒を見たけど、例え生きていたとしても飛行に使えません。
探さなきゃなぁ。
シャボンディ諸島はノーチェックだったからそこで見つけ……長い。ここからの航海が長い!
「リーは怪我してるんだから無理するなよ?」
「皆してますが、特にカルーとか」
「それでもだ! お前が1番酷いんだからな!」
同意するようにカルーが鳴く。
そうか……政府に喧嘩売りに行った一味よりたった1人の小娘相手にした私の方がダメージ酷いのか。自分の弱さがしみじみと実感出来て辛い。
「まぁ、分かりますたよ。絶対安静、サボる口実になる故に大歓迎です」
「よし!」
「いやルフィよしじゃねェだろ」
ビシッと安定したツッコミが入る。
包帯を替えたいので一応チョッパー君を連れてナミさんを締め出して女子部屋に向かった。
「リィンが最近酷いわ」
「当然の反応だと思うけどな」
ウソップさんは一味の中で唯一の良心かもしれない。杞憂だと思うけど。
……うん、頑張ろ。
「じゃ、出航するぞお前ら!」
「おう!」
何に追われるでも無く仲間が1人も欠けること無く、海賊船サウザンド・サニー号は海へと1歩踏み出した。
ルフィの出航の合図で各々が立場に付き帆が張られ舵をとる。
「ふと、思ったんだけどよ」
船酔いで死にかけている仲間の1人を想起しながらサンジは咥えていたタバコを吹いた。
視線は船首にいるルフィ。傍らでメリー号が楽しそうに笑っていた。
呟くサンジの声を拾ったのは偶然そばに居たウソップとゾロだ。
「どうした?」
「くだらねぇ事だったらしばくぞ」
サンジは一度口を噤んだが抱えきれる疑問では無いなと思い、再び口を開いた。
「ルフィってメリー号を燃やした時にぶっ倒れただろ? なのになんで…──」
誰も気にしなかった。
ボロボロだったのはお互い様だった。
エニエス・ロビーに行かなかった1人の仲間の容態。生死の境を彷徨う程の大怪我。
それはウォーターセブンに戻り初めて分かった事実。ロビンが知った後に倒れた事から、同一視していた。
ルフィが目覚めた瞬間口にしたのはリィンの名前だ。そしてその次の言葉。
『──生きてるか!?』
あの時は気付かなかった。
「なんで、ルフィはリィンちゃんが死にかけの怪我してるって知ってたんだ……?」
麦わら帽子の下で口角がひっそり上がった。
ここで覇気に触れておきたかったのにはあんまり理由ないですけどあることにしておいて下さい。
箒も酔い止め麻薬も無いリィン氏、これから無事死亡します。あれれ〜?おかしいぞ〜? ……リィンってお化け無理だったよねぇ〜? もう一度言いましょう。
こ れ か ら 無 事 死 亡 し ま す 。
そして不穏な最後。知るはずの無いことを知っているルフィの思惑とは。
次、海賊船編ラスト+思惑解明!