「……」
リィンは金色の髪をボサボサにして不機嫌そうに森の中を歩いていた。
隣にいる義兄のエースとサボは呆れた眼差しを向けている。
「(あのくそじじい絶対殺す…)」
訓練を厳しくすると言われはや1週間。3日4日に1度だった訓練も2日に1度は行われた。有言実行、中身もよりハードな訓練になった。
「筋トレが増加しただけだろ…」
「あれくらいなら俺たちだって出来るぞリー」
正直人間離れした兄と比べないで欲しいリィンだった。
「素振り腹筋腕立て背筋ランニング!!多いぞ!」
「全部そんなに多い量じゃないと…」
「解せぬ…」
「(何が剣も持てないひよっこだ。こちとら持つ気は一切無いんじゃ阿呆…腕立ても飽きるし、まずそもそもの話小学校に通ってない歳の女の子に刀をブンブン振り回せる力があるかっての!侍か!私の中での常識が壊れていく気がする!そして刀と剣の違いって何ですか!)」
心の中でグチグチ言うのはもはや口に出す気力が無いのを物語っている。
自分、何でこんな目にあってんだろ…。
思わず遠い目をした。
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ところ変わって森の中、もう1組、不機嫌そうに引きずられる少年がいた。
「じいちゃんヤだよ!!離せぇえ!!」
「うるさいわ!!さっさと歩かんか!」
「誰が山賊の所になんか行くか!俺はマキノの所で海賊にな…いだだだだだだ!」
頬を引っ張られ首を持たれ、傍から見たら虐待だがそれを気にしないのがリィンの祖父であるガープだ。
実孫であるルフィを引きずり目的の場所へ目指す。
「フーシャ村なんぞ生ぬるい所に置いておくのが間違いじゃったわい。お前は海兵になるんじゃ!」
海軍将校がこんな辺境の地に何度も来ていいのか最近疑問に思ってくるリィンだが今現在不貞腐れて別の道を歩いているのでその疑問が解消される事は無いだろう。
もっとも、〝孫に会いたい〟ただその理由で職権乱用してるとはいくら孫である彼女であっても予想つかないだろうが。
「嫌だ嫌だ!!俺は海賊になるんだ!山賊の所になんか絶対行くか!俺は海賊王になるんだ!」
「何が海賊王じゃ!悪魔の実なんぞ食うてしもうた上にそんな巫山戯た口をぬかすか!」
口元を引っ張られ引きずられる。嫌だ嫌だとルフィは拒否してるが敵う筈もなくずるずると森の奥へ進んでいった。
「いででででで、なんで俺ゴムなのになんで痛てぇんだ…」
「お前もエースも
「俺は海賊になるんだぁぁああ!!」
山の奥に古びた小屋を見つけた。目的の場所だ。
ガープはその扉を乱雑にドンドンと空いている右手で叩くと叫んだ。
「ダダン!おるか!開けんか!」
「あぁ!?ここをダダン一家の根城だと理解しての狼藉とはいい度胸じゃないかい!一体誰だい!」
「儂じゃ」
中から出てきたダダンは思わぬ来客にめを見開き一瞬フリーズしてしまった。
「………………………ガ、ガープさんんんん!?!?」
──2人の厄介者が出会うまで後少し──
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フェヒ爺の訓練という名のイジメを受けているリィンです。もう、動きたくない。箒…そうだ箒に乗れば少しは楽になるんじゃ無いでしょうか。
「ダダンに見つかるのが嫌なら箒は使うなよリー」
「隠すの勿体ねぇのになんで隠すんだお前は……」
何故私の行動が読めたんだ、サボ。
理解が良くて何よりと言いたいが逃走経路まで読まれてるんじゃ世話ない。何故だ。
「ほら、乗れ」
箒を杖代わりにして歩こうかと思ったらエースがしゃがんで背を向けてくれた。
こ、これはおんぶですか!?エース、キミは私が歩けるようになってから抱っこどころか手も繋いでくれなかったというのに!?
いや、やっぱり手を繋ぐとかは要らん。
そこまでガキじゃない。
けどおんぶはさせていただきます、足がもうそろそろ限界でした。
なんて言ったっけ、5キロ?5キロも走れるかバーロー。そんなのランニングと言わないよ。マラソンだよ。
「……」
無言で乗るとまた歩き出した。あー、おんぶっていつぶりだったかなー…とりあえず第1回虎に遭遇事件のおんぶは思い出したくないなー……怖かった。
もう二度と会いたくない人ナンバーワンに見事取得していらっしゃるからね、あの虎さん。
「眠いのか?」
「ん…」
「……寝ていいぞ」
「ん……」
私の頭を撫でるのはサボ。揺りかご形式って凄く眠たくなるよね…。あー、疲れた。眠い。
橋を渡ると家まであと少しなんだがもう限界です。
お言葉に甘えて寝ようとしたその時──
「あーーー!!リィンー!!!」
なんか
「リー……知り合いか?」
いいえ知りません。
「お前もここに居たんだな!」
寝させてください。
「そいつら誰だ?」
キミと違って良識のある人達です。
「いや〜!元気してたか?」
今現状死にそうなくらいヘトヘトです。
「探険してたらここまで来たんだ!なぁなぁリィン──」
崖をよじ登って私達の元へ来ようとする
私は無言でエースの背を降りた。
「ルフィ…」
「なんだ?」
私はキミと違って疲れてるんだ。
「ん?なんで掴むんだ?そっちは橋だぞ?家とは逆方こ…」
1度くらい黙れ。
「ぎゃぁぁぁああああああ!!!」
私はルフィを掴んで丁度渡ってきた橋の下に落とした。
「…」
そしてその上から集中して崖の側面を大きな岩サイズで削りそのまま下に落とした。満足。
「うわ、おま、えげつな……」
「い、生きてるかアレ!?」
ふふふ、私の睡眠を邪魔するものは赤ん坊の時から鉄槌を下してたんだ。
いくら顔見知りであろうとも許さん。
「えーしゅ、ねむ…い…」
あ、電源切れる。私はロボットか。
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「リーの本性を垣間見た気がする」
「あぁ」
布団でスヤスヤと眠るリーを見て俺はサボと話してた。
「そう言えば眠るの邪魔するとすっごい不機嫌だよな…コイツ」
「うん。あの麦わら帽子の奴も可哀想だ…」
流石にあれは同情する。あの下には狼が住んでいて生身の人間が落ちるとただでは済まないんだが……。いや、そもそも転落死するよな。
「大丈夫かな……」
「サボ、お前随分優しいんだな」
「ん?そうか?……ただ、リーと過ごしてて他人も良いなって思ったんだ。お前ら以外の人にも興味くらい湧くさ」
「そっか」
リーといると不思議な気持ちになる。もっと希望を持ってもいい様な気にさせられる。鬼の血を引く俺を、ただ1人の人間として見てくれるから。
嬉しいんだな。きっと。
「こいつみたいな奴が世界中の人間だったら良いのに……」
「まぁ、年上の男を投げ飛ばせるっていうのを除けばな」
「あの麦わら帽子の?」
「お前もだろ」
確かに投げ飛ばされた経験はあるがあれはノーカウントだ。意識をシャンクスさんに向けていたせいだ。
「あの麦わら、誰なんだろうな……」
「シャンクスさんの帽子だったから関係者だと思うけど」
え、シャンクスさんの帽子?
「!?!?!?」
「エース…ひょっとして気付いて無かったのか?」
「ゔ……」
帽子よりあの赤い髪の方が印象深かったからあんまり覚えてなかったや……。
「リーに害をなすようなら俺は始末する。例えシャンクスさんやリーに関わりがあろうともな…」
「うん……勿論だ…」
「でも始末ってどうやってだ?殺すのか?」
「した事ねぇ」
「だよな」
「ぷぎゃふっ!!」
何だか不思議な声が聞こえた。
「……今の声ってリーだよな…?」
「俺にはそうとしか思えなかったけど…」
「どんな夢見てんだよ…」
俺たちは眠っているリーを尻目に笑いあった。