2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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ただの茶番回です。


第212話 最悪の出会い(単数形)

 

「それじゃあ私のビブルカードを渡しておこう。私はこれから君たちの船のシャボンコーティング作業に入る」

「ありがとうおっさん。ビブルカードの使い方は知ってるぞ。リーから教えて貰った!」

 

 ルフィが自信満々に頷くがこいつは1人にしておけない。

 全員が確信した。不安でしかない。

 

 まあルフィだけじゃなくてこの一味1人にしちゃならない部類が多すぎないかな。少なくとも東5人組は単独行動をさせちゃならない。ウソップさんは平気そうだけど彼は威を借る狐タイプの賞金首だから。目をつけられてるという危険視での懸賞金だから実力としてはまだ釣り合ってない。

 

「3日貰う。それが命を預かる作業の最速だ」

「結構時間かかるんだな」

「これに関しては仕方ないとしか言えないな。シャボン液を集める作業も必須だ」

「そういうもんか」

「船は41番GR(グローブ)だったな。私も移動しながら作業をする。くれぐれも、海軍に見つからぬ様に」

 

 レイさんの警戒心を強めるような言い方。

 私(とアダルトリオ)はその言い方に仕方ないなと理解出来るんだけど、お馬鹿さん達はその言葉に首を傾げた。

 

 苦笑いを浮かべたロジャークルーズに代わりシャッキーさんが口をだす。

 

「あのねモンキーちゃん達。海軍は流石に大物ルーキー達がこの諸島に上陸していることくらい当然知っているわ」

「あ、じゃあいつ攻めて来るか分からねェ……って事か」

「その通りよ黒足ちゃん」

 

 サンジ様がハッと気付き、意味と緊張が伝染する。

 シャッキーさんは真剣な顔付きだった。

 

 シャッキーさん、本当にルフィ達を気に入ってるんだな。目の前に海賊寄りの海軍大将がいるという事を知っていながら、しっかりと忠告をするんだから。

 

 まぁ私はこの潜入航海で海賊寄りでは無くなったんだけども。いや、むしろ逆に海賊寄りだからこそ海軍元帥に寄った。彼の策略にのっかった。

 

「はァ、海軍本部がそれどころじゃない事でも起こってくれればいいのに。そんな前兆は微塵もないわ。いつ大将クラスが攻め込んで来るか分からないの。本当に気を付けて、どうか3日間生き延びて。レイさんの作業は他と比べて速いわ、だからお願いよモンキーちゃん達」

「分かった」

 

 ルフィはシャッキーさんの懇願に答えるべく、真剣な顔をして頷いた。

 

「では3日後、その夕刻に集まろう」

「レイさんお願いします。何が起こっても、なるべく速くシャボンのコーティングを」

「分かっているさ」

 

 ……これでレイさんは半分封じた。

 ()()()()()()()、シャボンコーティングが優先だ。

 

 専門技術の必要なコーティング作業というのはそう急げるものでも無い。

 

「よぉーし! 遊園地行くぞ遊園地!」

「コイツことの重要性全然分かってねェわ」

「魚人島航海の為の買い出し! 必須! あとモリアとシキから頂戴したお宝の換金と……」

「待てお前また敵からぶんどってたのか!」

「宝の持ち腐れって言葉、ご存知?」

「知ってるよ!」

 

 ウソップさんは諦めずに1回1回ツッコミを入れていく。

 尊敬するわそのめげない心。

 

「リー、船長命令だー! 皆で遊園地行くぞ!」

「バラバラになった方が目を拡散出来る故に狙われにくいと思うのですけど……」

「うーん、確かにそうなのかもしれねェ。でも俺は皆で一緒に居る」

 

 バラバラになった方が個々の戦力が低下して『麦わらの一味完全崩壊』が狙えるんですけど。と、思わなかった事も無い。

 

 でもルフィは私の予想通り『私の意見』と反対の判断を下した。

 

「まァライバルからの敵襲とかあっても安全ですしね……。納得しますた」

 

 仕方なく渋々納得する、と言う様子を装い、私は心の中で思い通りの結果に運べた事をほくそ笑む。

 それと同時に軽く絶望した。

 ルフィが私と反対の道に進むという事は、もしかしたら野生の勘か何かで私が敵だと思っているのかもしれないという事に。

 

 ……いや、ルフィは最近考える。

 これは野生の勘なんて単純なものじゃなく、理性から来る結論なんだと。

 

 最悪の可能性は私が女狐だとバレている事だ。

 ためらい橋の上でのルフィの勘づいた様な怪しい言動。男説を植え付けたとしても疑惑は根付いてるのかもしれない。

 

 

「じゃあおっさん! 3日後会おう!」

「あァ。どうか、その麦わら帽子を絶やしてくれるなよ」

「……? おう!」

 

 シャンクスさんから預かった帽子はルフィの頭にある。シャンクスさんは元ロジャー海賊団の見習いなので思い入れがあるんだろう。

 レイさんはそう警告すると、ルフィは分かっていないながらも返事をした。

 

 そして流れるように私の手を繋いだ。……嫌な方向に考えると余計なことしないように『捕獲』なんだけど、ダメだな、作戦前で私結構脳内がピリピリしてる。なんでもないような行動でもやけに勘繰ってしまう。

 

「フェヒ爺はどうすんだ?」

「なんもやる事ねェからぶらついてるさ」

「そっかー」

 

 うんうんと頷きながら納得したルフィは前時代の海賊3人に手を振った。

 

「んじゃいってきまーす!」

「えっと、お邪魔しますた」

 

 ルフィの挨拶に続くとシャッキーさんとレイさんは笑顔を、フェヒ爺はぶっきらぼうな返事を返してくれた。

 

「ハチ、ケイミー!お前らは危なくなったらすぐに海に逃げるんだぞ!」

「わ、分かったよルフィちん!」

「ニュー……麦わら、お前すごい慎重な男なんだな……」

 

 海中で魚人族は最強だ。

 それにしても慎重という言葉に違和感しか出てこない。

 

「違うよのハチ。私達過去何度か海軍大将と鉢合わせた事があるの」

「ナミ、それ普通はそうそうないんじゃ無いのか……?」

「うーん……でも実際遭ってるからね……」

 

 ナミさんは故郷をアーロンに支配されてたから魚人が苦手だと思ったんだけど、案外普通に話している。それにお互い顔見知りっぽい……?

 

「俺たち海軍大将相手には負け越しだからな。特に女狐、アイツには負けてばっかだ」

 

 ギュッと握る手が強くなった。

 

「──絶対、俺が女狐を倒す」

 

 ルフィさん、その決意固めるのは私の居ないところでお願いします。可愛い可愛い妹の胃が軽率に死にます。世の中には知らない方がいい事って沢山あるんだよ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 シャボンディパーク。それは夢の国。

 シャボンに光が反射してキラキラと輝く夜さえ味方に付ける遊園地。

 

 海軍駐屯の諸島と真反対に位置する遊園地は、木を隠すなら森の中とも言えるほど一般人も多いのである意味最高に丁度いい逃げ場なのかもしれない。

 

 だがしかし、この遊園地は人攫いが頻繁に起こる。

 人に紛れ込めるから、そして人間の価値が高いから。

 

 誰も貧困街のやせ細ったボロボロの人間なんて欲しくないだろうし。

 

 

「それでこの文法は1行目から持ってきて、意味は大体感覚なの。例えば3文字目と5文字目を入れ替えると意味が全然変わってくるわ」

「えっと……3文字目を先に読むとこの文は……口、えっと、開閉ぞ、だから『その林檎を食べろ』……?」

「ええ、読み方自体は正解」

「それで、5文字目を先に読むと……真っ直ぐ、直接、いや、えっと」

「その考え方こそが私達オハラが解き明かして来た解読方法」

「あ、真実ぞ口に出さず……『真意を口に出すことを封じる』!」

「感覚は掴めてきたみたいね。流石の飲み込み具合だわ……。でも残念、その文は『真意を心に口を閉ざせ』」

 

 

 そんな心躍るシャボンディパークで私は椅子に座りながら古代文字の解読勉強と興じていた。

 

 掴みかけてる、事は確かなんだけど全てにおいて惜しい。

 暗記は得意だ。だから単語とかそういう意味なら覚えられるんだけど、厄介なのは文字一つ一つが更に文になっている事だ。

 

 文字が文に、それが更に文になる。こんなクソめんどくさい言語があってもいいのか。

 

「……リィン、貴女って言語不自由な癖に言語習得能力は高いのね。私の数年を返して欲しいレベルで腹が立つわこのディスコミュニケーション悪運娘」

「お褒め頂き恐悦至極〜ッ」

 

 イラッとしながら笑顔で返事をする。

 なんでこのニコ・ロビンとかいう人間は人が嫌がる的確なツボを突き、人が嫌がる的確な呼称を編み出すのが神業的に上手いんだ。

 

 タチの悪いことに私限定だから困る。

 

「……もう私しか読める人間が居ないの。これを絶やす事は出来ない。いつかの未来、また読めるかもしれない。でもきっと、政府は2度を許すほど甘くないわ」

「私この文字マスターしたらロビンさんに愛情を込めたラブレターぞ贈りますね」

「要らない、呪詛が込められてそう」

 

 ……カツカツとノートに文字を書き込んで行く。

 永遠の眠り、象形文字はこう。それで古代文字の法則と例の勘に従って1文字を書き切る。そしてもう1文字追加。それで2文字。後半の意味は、応用文字。

 

「貴女怒りを原動力にするタイプよね」

 

 書いた文字は『時を止め眠りへと誘おう愚かな者よ』。

 意味は『絶対殺すこの馬鹿野郎』、だ。

 

「……私でも古代文字は書けないっていうのにこのプライドへし折り器……」

「喧嘩販売中???? 今私買取強化期間ぞ???」

「喧嘩は受注生産待ちよ」

「まさかの受注性、コストわっっる」

 

 ルフィ達がキャーキャー遊んでいるから私とニコ・ロビン2人だと互いに口が悪くなる。

 

「とりあえずこの本あげるわ。寝る間も惜しんで勉強して頂戴。ポーネグリフの古代文字とは違うけど、歴史的には親戚みたいな文字よ。それを覚えたら大体雰囲気だけでも読めてくる筈だから」

 

 ぽんと膝の上に本が乗せられた。私はアイテムボックスに仕舞うと集中力を高めるためにも背筋を伸ばす。

 

「なぁリー! 一緒にジェットコースター乗ろう! おもしれーぞ!」

「私は普段からジェットコースターより速くて怖いものぞ乗るした故に結構ぞ」

「ええー!」

 

 絶叫系に乗ってきたのかルフィはウキウキとした表情ではっちゃん達を引き連れ戻ってきた。

 

 まぁジェットコースターみたいな海流に進んで乗るくらいだから好きだろうなとは思った。

 ジェットコースターとかこういった遊具の乗り物って結構ノロノロとしてて遅いから地上との高さを自覚して怖いんだよね。

 

「んじゃ次はなー、コーヒーカップとかってやつに……──」

 

 ルフィがそう言葉を続けた時だ。

 ──最低最悪な出来事が起こったのは。

 

「……お! リィン! ()()()()じゃなあ!」

 

 遊園地の中で、一味が勢揃いしている中で、1人の男が声をかけたのだ。

 オレンジの短髪に四角く長い鼻。

 爽やかな笑顔を浮かべながら、ルフィの背後から。

 

 心臓がドクリと嫌な音を立てる。

 

 表情を崩すな、ルフィの後ろにいるということは、私の顔をルフィに見られているという事だ。

 最悪な方向。最悪なタイミング。

 

『誰か知らねェが監視されてるぞ』

 

 フェヒ爺の言葉が頭の中をリフレインして、ギリッと歯を噛み砕きそうになるがそれを利用して顔に思いっきり笑顔を作る。すごく、嬉しそうに。

 

 

「──カクさん!」

 

 頭の中がパニックになる中、私は顔を隠す意味でもカクに駆け寄って抱き着いた。

 カクはそれを軽々しく受け止め、その勢いを使ってグルグルと子供と遊ぶように遠心力で回る。

 

「おーおー! おっきくなったのぉ!」

「元気そうでなによりですぞカクさん!」

 

 落ち着け、落ち着け。

 

 まずリィンの設定から考え直そう。

 

 リィンはカクがCP9だと言うことを知らないし、麦わらの一味と敵対した事も知らない。『月組で交流したお兄さん』との再会に喜ぶのが当たり前だ。ここまでは咄嗟の行動だったけど矛盾点を生み出さずちゃんと出来ている。

 次に『カクさん』の来歴について。『月組の後ウォーターセブンに就職、その後退職』がリィンの知る来歴。

 そして月組。『私が唯一の信頼を捧げる同期』だ。

 

 結論、『久しぶりに会えた月組に心底喜ぶ私』を作り出すということ。

 

「リィンもシャボンディ諸島に来とったんじゃなァ、にしてもまさかリィンが海賊になるとはのぉ……」

「えへへ……。それはごめんです。でもまた会えてホントに嬉しいですぞ!」

「わしもじゃー!」

 

 ぎゅうぎゅうくっ付き合う。

 ただしお互い全力で締めあってる為体の節々が悲鳴をあげてるし私も血管締めて落とす為にしている。クソ、筋肉の厚みが邪魔……!

 

 えーっと、それでカクについてだ。

 カクは恐らく麦わらの一味が私へ信頼を落とすとかそういった嫌がらせを込めてこうして現れた。むしろ私の不利になる事以外考えてないと思う。

 

「…………おまえなにゆえいる」

「…………ハッ、何やら企んでおるようじゃなぁ、め、ぎ、つ、ね、ど、の」

「…………ホントぶち殺したい…っ」

 

 おでこを引っ付けると、他人から互いの顔は見えない。

 私とカクは互いに喧嘩を売る為に、そしてその顔を見られない様にする為に。私たちは額を合わせて周囲に聞こえないよう本性をさらけ出した。

 

 くっっっっそイラッてする! ナニコイツ本当に腹が立つ! 他の! CP9はどこにいるんだよ! ちゃんと制御しろ!

 

「なんじゃなんじゃ! そんな照れることを言うな!」

 

 わざと大きな声で()()()アピールするカク。

 あーーーーなにこいつ、なにこいつ!!!!

 

 とにかく、私はカクが敵だと気付かなければならない。

 カクをCP9だと知ってる麦わらの一味の様子のおかしさに気付いて指摘して、それを教えて貰わなければきっと気付けない。

 

 『第1雑用部屋所属のリィン』は若干月組に盲目的だ。

 ルフィ辺りがズバッと切り込んでくれないと困る! 私に気を遣わなくていいから真実を教えてくれ! むしろ私がそう誘導してやる!

 

「ルフィ、紹介するぞ! この人カクさん! 海軍は()()の襲撃事件以来辞めるしてるけど、元月組の人ぞ」

「初めまして、…………いや、久しぶりじゃのォ、麦わらの一味」

「え? え? 知り合いですか?」

 

 あからさまに何かありますよといった雰囲気を醸し出したカクに嫌な予感を抱きながら、さぁ答えてくれと期待を込めて一味を見るという器用な事をしてみる。すると僕知ってるよ! とメリー号が元気よく手を上げた。

 

「僕のさ、もごっ」

()()()()の査定をしてくれた職人だったんだよ! なァルフィ!」

 

 ナミさんがメリー号の口を咄嗟に塞いで誤魔化すようにウソップさんが説明をして最終判断をルフィに仰ぐ。

 ナミさん、今だけはナイス。敵にメリー号の摩訶不思議擬人化を教えるわけにはいかない。

 

「……ルフィ? 皆さん様子がおかしいですよ? 何か、ありますた? カクさんが失礼したとか」

 

 私は更に切り込む。私の背後で、私の右手を強く、本当に折れるんじゃないかと思うほど強く握り締めながらカクが立っている。絶対ニヤニヤしてる。

 それと折れるんじゃないか、は偽り。絶対折るつもりで力込めてる。マントで隠れるからと言えどさ! 跡は残るんだけど!

 

 頼む、早く敵だと言ってくれ。ニコ・ロビン、貴女でいいから早く!

 

「…………いや、ウソップの言う通りだ!」

 

 ルフィは数秒葛藤したように思えたが笑顔で答えた。

 

「いやリィン、わしはとんでも無いことを麦わらの一味にしてしもうたんじゃ……。実はわしは」

「いやあカク!ウォーターセブンぶりじゃ、ねェ、か!」

 

 バシンとかなりの力でフランキーさんがカクの肩を叩いた。

 

「いったいのぉ、──カティ・フラム」

「その名前教えたからって呼びまくるんじゃねェよ!」

 

 バシバシとまるで攻撃する様にフランキーさんが笑顔で叩く。

 うん、イラついてたカクに思いっきり拷問されたの、フランキーさんだったもんね。『私』は残念ながらそんな事知らないけど。

 

「ふふ、実は彼、麦わらの一味をアイスバーグ市長を襲った賊だと思って牙を向いてきたそうなの」

「……へー! そうだったのですか。カクさん、正義のヒーローぞ好きなのは知ってますが事実確認は必須ですよ!」

「……あァ、そうじゃった。そうじゃった。なァ?」

 

 そろそろ感覚無くなってきた右手を解放すべく体の方向を変えて叱るように向き合うと、確認を取るようにカクは麦わらの一味に目を向けた。

 

「お、おうそうだ。その時は大変だったんだぜ」

「そりゃ強くてよー、全然手足も出なくて」

「え? カクさん、雑用でしたから私並に弱い筈ですよね? 武闘派のルフィが手足も出ないって……まさか……!」

「そう、そのまさかだリィン! カクの奴な、ウォーターセブンに来てからめちゃくちゃ身体鍛えてんだよ! な!」

 

 フランキーさんが私の疑惑を全力で逸らしてくる。

 

 

 

 なんだこの茶番!!

 

 『カクを怪しみたい私』としてはクソめんどくさいフォローだぞ麦わらの一味! 無駄な演技力を発揮しようとするなよ麦わらの一味! 『裏切りを自白しようとするカク』と『それを阻止して誤魔化そうとしている麦わらの一味』、『違和感はあるけど決定打が無いから気付けない私』の図。

 

 多分麦わらの一味が阻止する理由は『月組を信頼する私』がショックを受けないようにだろう。そんな心遣い本当に要らないからカミングアウトして! メリー号、キミなら私が女狐って知ってるよね! お願いだから! 『無知な堕天使リィン』に! 真実を教えて!

 

 

 感覚的に言うとこうだろう。

 

 カク『バラしちゃおっかなー、そうなるとリィンはショックを受けるだろうなー(棒読み)』

 麦わらの一味『そんな事させてたまるか!リィンの精神は守る!』

 私『知ってるから!さっさと事実確認させろよ!』

 

 

 

 麦わらの一味を手のひらで操るカクは私のこの葛藤というか進みそうで進まないこのモヤモヤを理解してるのに。

 麦わらの一味と私にそれぞれ別の嫌がらせを仕掛けてる。

 

 

 二兎追うものは……ってあるだろ! しくじれよ!

 

 茶番なんだけど茶番! 私もカクも麦わらの一味の話が演技で捏造だってのは分かってんの! 素人の嘘見抜けるとかそういうレベルの話じゃないの!

 私女狐だから当事者だったの! お願いだから早く情報共有して! 傷付くフリはするけど傷付かないから!

 

 ……センゴクさん助けてこれどうしたらいいの。

 

「どーしたんじゃリィン。不安そうな顔をして」

 

 憤慨しとんじゃいクソ野郎。

 

 カクは私の顔を覗き込んだ。ズキリと嫌な音が心臓から聴こえてくる。まぁ幻聴だろうけど! はっはっはっ!

 

「赤ん坊みたいじゃ」

「ばぶ〜〜〜!(憤怒)」

「わっはっはっ!」

 

 大笑いするカク。私はこれが演技だと知っているしもう理解している。カクも私が演技であることを知っている。

 

 誰に見せつける訳でもない茶番。無意味だ。

 

「リィン」

 

 カクは気持ちが悪いほど優しい声色で、気味が悪いほど優しい笑みで、体調を疑うほど優しい手つきで、私を撫でた。

 

「無理はするんじゃないぞ」

 

 ぐわりと内側から何かが溢れ出してくる。

 やめて。止まって、お願いだから感情を制御して。

 

 カッと目の奥が熱くなって、火のような熱が顔に集まる。ボロりと熱い涙が零れ落ちた。

 

「な、何を泣いとるんじゃリィン」

「うる、さい、です」

 

 吐き気がする! 吐き気がする!

 その顔で笑うな!

 

 心の底から湧き上がる感情は嫌悪だ! 月組の、私の5年間を汚された嫌悪! 悔しい、死ぬほど悔しい!

 

 懐かしさじゃないの!

 安心感じゃないの!

 

 そういう正の感情じゃない!

 

「……いい弱点を知った」

 

 泣く私を抱き締める過程でカクが耳元でボソリと呟いた。

 その体の行動も全て『カクさん』と同じ。

 

 これ以上、カクさんにならないで。

 私の思い出を汚さないで。

 

「そぉんなに、月組が大事じゃったか、女狐」

 

 正の感情じゃないけれど、私は現状こう答えるしか無い。

 悔しいけど、口に出したくないけど。

 

 言い訳を、麦わらの一味に『私』の不信感を植え付けない為にも演技をしないといけない。

 

 

 月組のカクさんと再会して喜ぶ私を。

 

「会えて、良かったぁ」

 

 もう一生会えない同期(まぼろし)に向かって、私はそう言った。

 

 

 

 

 悲痛そうな顔をした麦わらの一味は、きっと私に真実を教えてくれないだろう。そう確信してしまった。

 

 多分、それこそがカクの狙いだったんだろうなと。涙を頬にへばりつかせたままの私は、耐えきれない悲しみと突き上げてくる怒りをカクにとって都合のいい方向へ勘違いさせていった。

 

 二度と払拭出来ない屈辱と敗北に体を震わせながら。

 




ロリコダイルさんに続き人気があるカク。カクっていうか最早トゲだよね。この改変具合。リィンの悪影響。

久しぶりに日間ランキングに載ったってことを教えてもらったのでテンションアゲアゲで更新してしまいました。内容どす黒いけど。
えるしってるか、2度目の世界で1番仲悪い2人だぜこれ!
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