2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第22話 3度目でも4度目でもやはり前途多難

 

「さてと……金のありかを教えてもらおうかお嬢ちゃん」

「こちらも殺されたくないんでね…返してもらうぞ」

 

 

 えー、こちらリィンでございます。

 ルフィをキレた拍子に狼の谷へ吹き飛ばしてはや1週間。彼は帰らぬものとなりました。いや、生存確認出来てないだけですけど。

 

 正直ルフィより私の方がピンチかもしれない。

 

 さてそれでは私の状況を十文字以内で説明しましょう!

 

 海 賊 に 捕 ま っ て い ま す

 

 

 

 

 ……………どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 凶暴な狼が巣食う谷に落とされたルフィはやっとの思いで這い上がった。

 

『お嬢ちゃん…ちょっといいかな』

『は…むぐっ!!んーー!!』

『兄貴!こいつあのクソガキと一緒にいた奴で間違いありません!拷問しましょう!』

『あぁ…船長に殺されるのは勘弁だ……吐いてもらうぞ。金のありか。海賊の金に手を出したあいつらを恨め』

 

 

 

 見慣れた金色の髪が目に入り思わず声をかけようとすると彼女は攫われた。ルフィは一瞬の出来事でどうすることも出来ずただ突っ立ったままだったが意識が覚醒して思わず叫んだ。

 

「リィン!」

 

 何も考えずに叫びながらリィンが消えていった方向へひたすら走って追った。

 

「リィン!!っ、リィン!!!」 

 

 嫌いな山賊の家、頼れるのは妹のみ。

 

「おい、そこの麦わら帽子」

「あ、エース…とサボ…?」

 

 声をかけられてふと我に返ったルフィは声の方を向くとリィンと一緒にいた2人の少年が目に入る。

 エースとサボだ。

 

「さっきリーの事言ってたよな。何があった」

 

 話しかけるのは不服だ、と言わんばかりに眉を顰めるが流石はシスコン。きちんと聞いた。

 

「リー?」

「チッ…リィンの事だよ!」

 

「あ!そ、そうだ!大変なんだ!」

「「?」」

 

 エースとサボは思わず首を傾げる。そしてルフィの発した言葉に思わず手に持っていた獲物を落とした。

 

 

「リィンが海賊に攫われたんだよ!」

 

 今空気が一瞬にして変わった。警戒から殺気へと。

 

「俺達の妹に手を出すとは…いい度胸じゃねぇか…」

「それ、嘘じゃないよなぁ?えっと…ルフィ」

 

「こんなつまらねぇ嘘なんかつくか!リィンを助けてくれ!頼む!リィンを助けたい」

「麦わら帽子…お前に言われなくとも俺たちは動く。リーを助ける」

「リーはどこへ消えた」

 

 エースの言葉に続きサボが質問を重ねた。真剣な2人の視線にルフィはゴクリと息をのみ釣られて真剣な目に変わった。

 

「あっち…」

 

 そっと指でリィンが連れ去られた先を示す。

 

不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)か……」

「行くぞ、サボ」

 

「ま、待ってくれ!俺も行くぞ!!」

「足でまといだ!」

「それでも行くんだ!今行かなきゃ後悔する!」

 

 思わず涙が零れそうになるのを必死で我慢して、エースを睨む。サボはこのままでは時間が勿体ないと考え一つ提案した。

 

「エースルフィ。2人はリーを追ってくれ」

「サボ…お前は?」

 

「ルフィ、相手は確実に海賊だったんだな?」

「うんっ、刀持っていっぱいいた!」

「なら、俺の行く所は決まった。2人とも…リーを頼んだ」

 

 そう言うとサボは一直線で別の道を走った。

 

「(フェヒ爺……っ)」

 

 あの強い彼ならきっと助けてくれる。エースの力を疑うわけじゃない、でも念には念を入れておいた方が確実だ。フェヒ爺本人は大した海賊じゃないとは言っていたけど絶対違う……。

 

「(頼む、居てくれっ!!)」

 

 過去見せたことのないスピードで慣れた山道を行く。

 

 

 

 

「麦わら帽子、行くぞ」

「…!!」

 

 エースのその言葉にルフィは嬉しそうに顔を上げた。それを確認すればエースはサボと同様、森をかけた。

 

「(うわっ、早いっ!)」

 

 ルフィは足をもたつかせながら必死にエースの後ろをついて行った。後ろなどお構い無しにグングンスピードを上げて走るエースに少し距離を離されているが一生懸命足を動かした。

 

 

「………リーっ!」

 

 

 ==========

 

 

「ご不明ぞます!」

 

 縄にくくられぶら下がっているからもうそろそろお腹当たりがきついです…。太ったかな…マキノさんのごはん食べ過ぎか。

 

「ぞます?」

 

「ご存命行方不明ぞりでます!」

「??」

 

 何故分かってくれない。私は知らないんだ。エースとサボがお金を持ってることは知ってるけどその隠し場所までは知らないんだ。

 癪に障る事したくないので敬語にしようとしてるのがいけないのか?ですます、つければ敬語になるんじゃないのか?

 

「兄貴…俺には解読出来ません…」

「俺もだ、安心しろ」

「良かった…読めないからって殺されるんじゃないかと心配しました…」

「バカ野郎。こんな言葉理解しろって言う方が無茶難題だろうが」

「ポルシェーミさん……っ!」

「兄貴心広ぇ!」

「ポルシェーミさんっ!」

 

「おいおいよせ、照れるじゃねぇか」

 

 感動している所悪いんですけどお前ら全員ぶち殺してやろうか。誰の言葉が無茶難題だバカ野郎。

 

「じゃあどうしやすか…」

「仕方ねぇ、こいつを囮にエースとサボをおびき寄せるか」

「そうッスね…例え拷問しても言葉が分からないんじゃ話にならねぇ……」

 

 やばい。生まれて初めてこのへっぽこスキルに感謝しそうだ。

 

「ぺぴちっ」

 

 あー、この空気ホントに嫌い。くしゃみが止まらなくなるんだよな…。

 

「…?」

 

 どうでもいいけどエースとサボをおびき寄せるんなら何処かで情報を漏らさないといけないんじゃないですかね。なんでこちらを見たまま誰も動かないんでしょうか…。

 グレイ・ターミナルの他人への無頓着さ舐めるなよ。噂が広がるとかホント無いからな。

 

「金にはなりそうなのにな…」

「変態に売りつければ高値で売れますね」

「「「「残念語さえ無ければ…」」」」

 

 よぉし、覚悟は決まったかお前ら。現世とのお別れの時間だ。

 アイテムボックスからナイフと鬼徹くんぶん投げてやろうか。ちゃんと手入れしてるからスッパリいくぞこの海賊共。

 

 なんで私の人生賊に関わりがあるだろう…。悲しくなりそうだ。

 

「リーー!!」

 

──ドカァ!

 

 馴染みある声が聞こえたと思ったら壁が破壊された。

 

 扉から入りましょうよ……。

 

 

「リー!無事か!」

「リィンっ!助けに来たぞ!」

 

 エースとルフィ?なんでこの2人が来たんだ?サボは?それにこの場所はどうやって判明した?なんで壁を破壊した?

 

「ふふふ、囮作戦成功か…」

 

 いや、成功してないです。

 

「んー…」

 

 アイテムボックスからナイフを取り出して後ろ手に縄を切ってみる。あ、難しい。結構難しい。

 

「お前ら…俺の金をどこにやった。海賊の金だぞ」

「俺が奪った金だ!俺達の方が有効に使える…!」

 

 待てよ…これってどう考えても悪役エースじゃない?金奪ったのもエースですよね?元々持ってたのはこの人らなんだし。

 

「……」

「なんでリーは死んだ目をしてるんだ…」

 

「何事も存在しにーぞり」

「何でもない、だろうが」

 

 あ、縄切れた…あぁ!?

 

「どべふっ!」

 

 いきなり落ちたからバランス取れずに顔面から地面にキスしちゃった。ジャリジャリする。鼻痛い。

 

「このガキっ!殺してやる!生かすのはエースお前1人でいいんだ!」

「そうはさせるか!」

 

 エースは向けられた剣を鉄パイプで防ごうと必死になる。

 エースが相手するのはこのグループのボス、ポルシェーミだけで精一杯だ。

 

 つまり、残りの海賊らはと言うと…

 

「ぴぎゃぁぁあ!!」

「うわぁぁぁあ!!」

 

 足でまとい2人に当たるわけですよね

 

「リ、リィン!」

「ふぎゃぁぁあ!!」

 

 ルフィが私の手を引いて上から降り注ぐ刃を避けている。辛うじて、だけど。

 

「うぎゃ!」

「ひぃ!」

 

 まともに戦ってるエースが羨ましい。

 起死回生起死回生!この前山賊に使った死霊使い説を使わないと

 

「ゆ、幽霊ぞそちらに存在するしてるぞ!」

 

 ピキンと地面の一部が凍る。よし、上手くいった。

 

「なんて言ったか分かるか?」

「いや、知らない」

 

 なんだと!?

 

 まさかの理解力低すぎてこの手が使えないとかなんだよ!もっと言語勉強しておけよ海賊共!

 私もしろってか…うるせいやい。

 

「リー!さっさと逃げろ!」

「む、無茶無理無謀ぞ!」

 

 三、四人相手に逃げれるわけが無い。しかも箒はエース達が蹴破った壁の真反対。飛べもしない。

 

 エースの体に少しづつ赤い線が 傷が増えていく。どうしよう。

 サボはどこ、助けて。

 

「エースぞ助けて!」

 

 

 

 

 

 

「冷静な態度を保てと何度も言っただろうが…小娘」

 

 こっちに迫ってくる刀を素手で受け止めた。

 その後ろ姿はあまりにも頼もしく見えた。

 

 

 

 ん?素手で受け止めた?何で?

 

 

「フェヒ爺!?」

「よぉバカ共。頼もしい助っ人参上だ」

 

 とりあえず今土下座して今までの無礼を詫びたい気分だ。でもなんで腕そんなに黒いんですか?

 

「エース!リー!ルフィ!大丈夫か!?」

 

「サボ!お前が呼んできたのか!」

「あぁ!念には念をってな!」

 

「舐め腐りやがって………っ!」

 

「おいおい、最弱の海でのさばってる雑魚が俺に敵うと思ってるのか?引退したとは言えど……俺は強いぞ?」

「フェヒ爺!鬼徹くん…」

「要らないな。素手で充分だ。むしろ鬼徹を持つと血が騒ぐ……この島がただじゃ済まない」

 

 え、厨二病なの?その年で厨二病はイタイよ?

 

「絶対失礼な事考えたろ小娘」

「気のせいぞ」

 

 ホントに勘が鋭すぎるぞこのじいさん。

 

「死ねやぁぁあ!!」

 

 海賊が刀をブンブン振り回す、がフェヒ爺はそれを予測しているかのように避けていく。傷はもちろん一つも付いていない。

 

「す、すげぇ……」

「う、うん……」

 

 流れた血を拭いながらエースが感嘆の声を漏らす。

 

「ぐわぁっ!」

「げふっ!」

「ぎゃあっ!」

 

 刀を拳で砕くとフェヒ爺はそのまま跳躍し、手下を沈めた。

 

「造作もない………」

 

「このまま死んでたまるか…っ!船長に殺される前に1人でもガキを殺すっ!」

 

 懐から液体を取り出しその手にもつ刀に振りかけた。

 

「っ!毒!」

 

 毒ぅ!?待て待てそれって一発当たるとそくアウトの奴じゃ無いですか!

 

──ガシッ

 

「…!!」

 

 フェヒ爺の足が沈んだと思った手下に掴まれ、一瞬行動を止める。

 

「死ねぇえええ!!」

 

 ポルシェーミが刀を振りかぶる先にはルフィがいる。ルフィはゴムで打撃は効かないけど斬撃は効いてしまう。

 

「くっ!」

 

 エースとサボは間に合わない。私の能力で…!

 相手に爆発を生む!!!

 

──ポシュ…

 

「っ!?」

 

 なんで使えない!?どうして!?いつもと変わらないやり方できちんと集中したのに!どうして!?

 

「うわぁぁぁあ!!」

「間に…あえっ!」

 

「小娘ェっ!」

 

 

──ザシュッ

 

 

 肩から腰にかけて今まで感じたことのない激痛が走った。

 

「リィイイイ!!!」

「リィン!!!」

 

 

 なんで庇っちゃったのかな…いつもの私なら犠牲にしてでも逃げるのに……。

 

 

 

 ──あぁ、ほんとに人生なんてクソッタレ──

 

 

 

 ==========

 

 

 

「覚悟、出来てんだろうな……カナエの娘に手ぇだしてんじゃねぇよ…外道が」

「ひっ!」

 

 ビリビリと殺気を纏った視線が海賊につきささる。海賊達が放っていた殺気と比べ物にならないくらいの殺気だ。

 

「剣帝の名………舐めるなよ。刀無くてもお前らくらい一捻りで殺せるんだよ……!」

「フェヒ爺!」

「あ?」

 

「頼む!急いでくれ!何だか分からないけど段々リーの気配が小さくなってるんだ!」

「……声が聞こえやがんのか?」

「急いでくれ!ここから出る!少しでも空気の良くて薬がある所に行かないと!」

 

 サボが必死に叫ぶとフェヒターはリィンを背負いサボに叫んだ。

 

「お前はその海賊縄でぐるぐる巻にしてろ!エース!お前はお前らの家まで案内しろ!」

 

「「わかった!」」

 

 今はただ…死ぬなと願うばかり。

 




エースが原作と違いルフィの話を聞いたのはリィンの性格や考えに触れたから少しだけ変わりました。
フェヒ爺は皆さんご存知の覇気を使えることが出来るのでサボに呼ばれ見聞色で声を探りやって来ました。ハイスペックって素晴らしいですよね!

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