2度目の人生はワンピースで   作:恋音

239 / 278
頂上戦争編
第223話 想定外VS予想外


 

 海軍本部のある島、マリンフォードには主に海兵達の家族が住む大きな町がある。現在住民には避難勧告が出されており、避難先のシャボンディ諸島からモニターによって人々は公開処刑を見守っていた。

 

 それだけでは無い。

 各所より集まった記者やカメラマンもまた、ここから世界へ情報をいち早く伝えるために身構えていた。

 

 

 

 〝白ひげ〟の目撃情報──皆無。

 

 

 処刑の時まで3時間、マリンフォードに走る緊張は高まるばかりだった。

 世界各地より集められた名のある海兵達、総勢約10万人の精鋭がにじり寄る決戦の刻を待っている。

 

 

 

 三日月形の湾頭及び島全体を50隻の軍艦が取り囲み、湾岸には無数の大砲。

 港から見える海岸の最前列に構えるのは戦局の鍵を握るであろう5名の曲者。三大勢力のひとつ、〝王下七武海〟だ。

 そして広場の最後尾にそびえ立つ高い処刑台には事件の中心人物、〝白ひげ海賊団〟二番隊隊長ポートガス・D・エースが刻を待っている。

 その眼下で処刑台を堅く守るのは海軍本部〝最高戦力〟である大将3名。

 

 

 海軍本部元帥、〝仏〟のセンゴクが処刑台でエースの隣に立ち、拡散用の電伝虫を構えた。

 

 

『諸君らに話しておく事がある。ポートガス・D・エース……この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ…──』

 

 どよどよと、ざわざわと。マリンフォードにピリリと緊張感、そして世界に動揺が走る。

 

『エース、お前の父親の名前を言ってみろ』

 

 何故こんな時にそんな質問をするのか。

 エースの白ひげを慕う叫びをセンゴクは一蹴する。

 

『当時我々は目を皿にして必死に探したのだ。ある島にあの男の子供がいるかもしれない。〝CP〟の僅かな情報を頼りに。生まれたての子供、生まれてくる子供。その母親達を全て隈無く調べたが見つからない』

 

 それもそのはず。

 ポートガス・D・エースの出生には母親の命を懸けた意地とも言えるトリックがあったのだ。

 

『女は実に20ヶ月の間、腹に子を宿した。──父親の死から1年と3ヶ月を経て、世界最大の悪の血を引いて生まれた。それがおまえだ』

 

 ──最悪な真実を。

 

『──お前の父親は!ゴールド・ロジャーだ!』

「……ッ!」

 

 ある人は羽根ペンをボトリと落とした。

 ある人は絶望で膝から崩れた。

 ある人は信じられないと叫んだ。

 

 それほどにまで、世界が驚き嘆く罪の血。

 

『今から6年前。我々()()が諦めず探した末に、ついにポートガス・D・ルージュの隠れ家を発見した。まだその時では確信に至らなかった』

 

『そして2年前、お前が母親の名を名乗りスペード海賊団の船長として卓越した力と速度でこの海を駆け上がっていった時。ようやく確信を得た、ロジャーの血がやはり絶えてなかったことに!』

 

 白ひげ海賊団に守られていた。

 迂闊に手を出せなくなった。

 そんなことを言いながらセンゴクはエースの反抗する言葉を叩き伏した。

 

『──お前を放置すれば必ず海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮し始める。だからこそ今日ここでお前の首を取ることには大きな意味があるッ!』

 

 

 正義の門が開く。

 白ひげ海賊団の傘下の海賊船が続々と正義の門をくぐり姿を見せる。

 

 そこに白ひげ海賊団の船の姿はない。

 

 だがいる。それはもはや誰の頭にも確信している事だった。

 

 

『……──総員、砲撃用意!』

 

 

 センゴクの叫び声。

 海面が変わる。気泡がぶくぶくと溢れ出し、そして4隻が湾内に出現した。

 

『開始!』

 

 三日月形の湾内に現れた4隻に向けて、湾岸の大砲から砲弾が続々と飛んだ。

 

「親父!」

「むぅんッ!」

 

 白ひげが壁を叩くように空気を揺さぶると。バキバキと大気にヒビの入る音が聞こえた。砲弾が……跳ね返る。

 それと同時に海軍本部の左右に大きな海の山が作り上げられた。

 

「──なんで見捨ててくれなかったんだよォッ!俺の身勝手でこうなっちまったのに……!」

「俺は、行けと言ったはずだぜ。そうだろ、テメェら」

「おぉッ!」

「俺も聞いてたぜエース!」

「待ってろ!今助けるから!」

 

 雄叫びと共に地鳴りが。

 〝海震〟が〝津波に〟

 

 

 

 ──攻め入るは白ひげ率いる新世界47隻の海賊艦隊。

 ──迎え撃つは政府の二大戦力、海軍本部と七武海。

 

 

 誰が勝ち、誰が負けても時代が変わる。

 戦いの火蓋が切られた。

 

 

 ==========

 

 

 

 

「──ふむふむ、なるほど。胃が捩れそうな展開だね」

「それでどうだよい?」

 

 私は想定外の展開に胃をひきつらせ電伝虫に向き合った。

 

 左の扉(即席船)に乗る人々は私の集める情報にガヤガヤ注目を寄せる。まぁ、こんな船未満、電伝虫なんて備えられてるわけないもんね。私くらいしか外部と連絡取れる手段は無い。私はマリンフォードにいる月組のノーランさんに連絡を取りながら情報を入手していた。

 

 白ひげさん?ハハッ、繋がらなかったよ。

 

「え、っと。エースが海賊王の子だということが暴露されるし、それで開戦。状況報告、マリンフォード三日月形湾内に白ひげ海賊団4隻、島の周囲に軍艦約50。同じく傘下ほぼ同数」

「予知と同じように親父は動いたってわけかよい」

 

 概ねその通り。展開も予知通り。ただし想定外だったのは初動。

 初動は全体の指揮と展開を左右する。ほんの少しの傷だろうと大きな綻びに変えてしまう。

 

 センゴクさんが思った以上にやる。予知では初動を白ひげに許してしまったが、現実はセンゴクさんが制した。初っ端の砲撃が確実に海底から現れる白ひげにヘイトを向けていたということは奇策といかない、つまり対策が既に取れているということだ。湾内に入り込めた、ではなく、湾内に誘い込まれた。そうとっていいだろう。

 

「あ、津波発生」

「海震の影響か」

「……うん、なるほどね。青キジが海軍本部より巨大なる津波を氷結故に、側面は大きな氷。あ、湾内も?湾内氷結を確認」

 

 電伝虫と盗聴防止の電伝虫を両手に戦争の様子をどんどん伝えていく。

 

 右の扉(即席船)は戦争を目指していることを知って謀反を起こそうとしたのだが、そうは問屋が卸さない。シキが船を操っていることもあり、彼らでは航路を奪いされない。

 

 というわけでハンバーガーみたいに右の扉自体を、私が乗っている左の扉の下に押しやった。視界の邪魔。右の扉の囚人には戦場に投げたら勝手に暴れてもらうんでよろしく。戦争引っ掻き回す程度には出来るでしょ。

 

「あー、ところでわがままガール。ヴァナタ大丈夫?」

「ははは、もう何が何だか」

 

 イワンコフさんの言葉に死んだ目で答える。

 カナエさんの死後約10分経ってからの出来事だ。カナエさんの遺体は光の粒子になって悪魔の実に変わった。何を言ってるのか分からないが私も何を言ってるのか分からない。

 

 ただ、イワンコフさんはカナエさんの能力を説明されているらしいからそのわけのわからない現象を答えてくれた。

 

 チュウチュウの実の能力はメモリを持つ。使用する度に減っていくという話だ。回復はしない。

 カナエさんは延命のために常に若さと体力を吸収していた。それは大分メモリを食う吸収らしい。ルフィ自身はまだ気付いてないが処理のできない毒の吸収もしている。

 カナエさんの能力は吸収出来ても排出が出来ないんだ。それこそ例外は執着する記憶の譲渡とかいう私に渡された記憶。

 

 

 つまり私とルフィの疲労を吸収することで生命力とも言えるメモリに限界が現れたということだ。だから死んだのだろうと。ほっとけば自然と死んだのだろうから効率的な回復方法だった、とフォローは貰った。

 

 もうわけがわからないよ。

 

 とりあえず特異体質だったのか分からないけど肉体が吸収限界で光に変わった後、能力(実)だけが遺品として残ったわけだ。もちろん全員一致で私に渡された。

 厄介な能力として名を残しているから吸収人間の再来はお断りしたいけど、幸か不幸か実がその場にある。私は能力者(設定)だし食べれないから遺品として渡して保管して貰う方がいいもんね。

 

 ……レイさんに渡すに決まってるだろう。見るからに災厄招きそうな遺物なんて。

 

 

 ま、少なくとも悪魔の実がこの世に存在=能力者が死んだ=カナエさんの死。ってことだから、なんか蘇りそうだなって思ってた疑惑は杞憂に終わった。

 

 

『リィンちゃん、鷹の目が動いた。あー、〝ダイヤモンド〟・ジョズに止められたね』

「ふーん、やっぱり最初がミホさんか。鷹の目の攻撃、ダイヤモンド・ジョズが防御」

 

 ノーランさんがシャボンディ諸島で中継として流されるモニターを見ながら戦況報告してくれている。ほぼリアルタイムで情報を得られている分こちらとしてはタイミング的に助かる。

 うーん、シャボンディ諸島在中、便利だな。別に海列車系列街の在中部下っていうのも便利なんだけどね。人の流れはシャボンディ以上だし。

 

「……これマルコさん居なくて平気?」

「俺一人の穴くらい埋められなくて何が白ひげ海賊団だよい」

 

 マルコさんは予知夢でとても活躍した。それこそ白ひげ海賊団の要だった。だからこそ脱獄組と共にいるのは拙いんじゃないか。

 1人だけでも先に行った方がいいんじゃないだろうかと不安に思うも、マルコさんは鼻で笑って私の頭をポンポンと叩いた。

 

「……ん、中将部隊が傘下と交戦開始。黄猿、仕掛ける。防ぐしたはおっ!え!ブラメンコォ!?6番隊の!?あの人能力者なのは知ってるですけどそんなに強い!?」

「ははっ、白ひげ海賊団の隊長は皆強いよい」

「……はっ、よく言うぜ隊長格最強が」

 

 思わず驚いたけど、マルコさんは私の態度を不快に思わず自慢げに笑った。それに対して鼻で笑うのはクロさんだ。

 ビリリと殺気立つ2人。

 

「…………あんたが白ひげ海賊団を語るなよい」

「黒ひげに負けたマルコ君、何か用かね」

「なんか言ったかよい、20もいかねぇ少年に負けたクロコダイルさん?」

 

「2人とも、せめて殺気は消すして。存在から消してやろうか能力者ども」

 

 海水と海楼石どっちがよろしい。それは聞いてやろう。

 私が脅し気味でアイテムボックスから海楼石と海水を取り出すと敗者2人は渋々ながらも殺気を抑えた。

 

「ハー、元白ひげ海賊団だか白ひげさんの元彼だかなんだか知りませんが作業終わったのですか?」

「そんな事実は一切無い。……お前なァ、俺に対して言い草と人使い荒くねェ…?」

「えっ、そんなに可愛い男の子の写真欲しくないのですかぁ、そうなら言うしてよ、ドフィさん辺りにあげる故に」

「………………………単体だと直接的な攻撃力は少ねェが陰湿性はダントツだよなお前」

 

 クロさんの黒歴史(かわいいショタのイル君)をチラつかせると怒りのクロさんは素直に作業に戻った。

 

「……やっぱりこいつショタコンかよい」

 

 ボソッとマルコさんが呟くけどそれ(誤解だけど)本人に聞こえないようにしてね。

 

 私は次々と送られてくる戦争の情報に頭をフル回転させる。ほんとに余計なことは考えられない。カナエさんの真意も、センゴクさんの事も、戦争のバランスも。

 

「──!ダイヤモンド・ジョズが氷塊を投げるした。大きさ的に巨人部隊が数人で抱えれるほど………あ、あぁですよね……赤犬ぞ破壊完了。ッ!?白ひげ海賊団の黒鯨1隻破壊確認。んー、でも、三大将の内2人は戦場ですけど、赤犬俄然と動かず。無理ですね、この人動かすは」

 

 確実に攻めには回らない。

 サカズキさんは守りを堅めている。

 

 うん、本性知った今では分かるんだけど。人を進んで殺すポジションに移動するくらいなら守って置いて歯向かう敵をぶちのめす方が殺害率減るもんね。納得。

 

 まぁ攻撃の範囲はデタラメだけど。

 

「あぁ、うん、その反応はとてもわかるです」

 

 電伝虫の先でノーランさんが抱いた感想に頷くとマルコさんは興味があったのか聞いてきた。

 

「人災ってより自然災害の雨って」

「あァ……だよねい……」

 

 同じ穴の狢ってことだけは忘れないでくれ。

 

 

「なー!リー!まだかな。俺勝手に行ってもいいか?」

「それが出来ないように周囲固めてるでしょうが。ダメ、暴走絶対ダメ。ルフィは確実に何かしらひっくり返す予感しかない故に」

 

 ブーブーと文句を言うルフィ。飄々とした態度をしているが焦りが手に取るようにわかる。ビリビリと緊張の空気が緩まない。

 

「革命軍には付き合ってもらうですからよろしくイワンコフさん」

「……ここまで来たら、最後まで付き合うッチャブル。でもヴァナタねェ……てっきりヴァッターシはドラゴンが来るとばかりおもっていたから」

「んー、多分外れないと思うですけど。エースの身内、革命軍にもいる故に革命軍が無関係とはあながち言い難い。特にドラゴンさんの身近にいる分……あっ、海軍本部負けるわこれ」

 

 思わず口にでてしまったけどこれほんとにサボが革命軍動かしたらエース奪還どころか海軍本部が終わる。

 

 いや、まぁ、革命軍として海軍という仕組みを無くすと『革命』を認識する前提条件が崩れるから終わらせること自体はしないだろうけど、凄まじい大打撃だろうな。

 

「……え?赤犬が居ないって?でかい怪物が現れるした?巨人より大きい……?あっ、もしかして」

「あぁ、オーズか。リトルオーズJrだよい。ウチの傘下にエースに懐いてるオーズが居るんだ」

「……やばいですね。彼、多分集中砲火受けるですよ」

「だろうねい。大方暴走したんだろ。エース君助けるって」

 

 新たな情報が入った。

 

「七武海……動きます!」

 

 乱入するならそろそろだろう。

 

「なぁなぁクロコダイル早く早く」

「だァァァ!うっっっぜェ!」

 

 ちょこまか動いていたルフィをクロさんがぶん投げてジンさんがキャッチした。

 

「オーズ、湾内への突破口開くした。場所は白ひげ側から見て左側の、端。……遠いですね」

「いいか、リィン。合わせろい。オーズが倒れた瞬間だ」

「……!?正気ですか!?それより前でも大丈夫ですよね!?」

「オーズは回復力が優れてる。1回倒れたくらいじゃ死なねェの分かってるだろ。予知で。そのタイミングが1番意表を突ける」

 

 予知夢ではリトルオーズは死んだと思ったけどギリギリで起き上がって戦局をひっくり返した。

 場所的にも、タイミング的にも。

 

 

 うん、わかった。

 

 

「ノーランさん。オーズが倒れた瞬間教えるして」

『わかったよ。……巨人の中将が転倒して、集中砲火。まだ、まだだ。結構ボロボロになってるけど倒れない。でもそろそろ動きが怪しい。……!オーズが湾岸の七武海に攻撃対象を移した。ドフラミンゴが跳躍してオーズの足を切り落とした』

「クロさん準備は」

「出来てる。いつでもいけるぜ。動いてやるよ」

 

 とある作業を終わらせたクロさんは技の発動の為に体を落として手を砂に変えて準備を終わらせる。

 シキはそれに合わせて扉を動かし、ギリギリまで浮かび上がらせた。

 

『倒れそうだ、まだ倒れてない。だけど手を伸ばしている。処刑台に届きそうだ』

「ルフィもやる?クロさんと合わせるなら大丈夫ですぞ」

「ホントか!やる!フゥー……〝ゴムゴムの──〟」

 

「おいシキ。足元の扉、武装色で覆え」

「てめぇも大概人使い荒いじゃねェか」

 

「それじゃあ私、氷、破壊しますね。海水来るです故に気を付けるして」

「おう、能力者がよく海水を耐えたな」

 

 全員が戦闘態勢に入る。

 バキンと氷が扉の下の方から聞こえる。もちろん私が溶かし割った音だ。海水がせり上がらない様に防ぐ必要があったからね。ここは逃げ場が無い。

 

「ジィハッハッハッ、海軍本部の驚く顔が見物だな」

『七武海モリアが黒い物体でオーズを突き刺した……!ここだねリィンちゃん!』

「──全員!乗り込め!」

 

 

 

「〝暴風雨(ストーム)〟ッ!」

「〝侵食輪廻(グラウンド・デス)〟!」

 

 

 私の猛り経つ声に合わせ、ルフィとクロさんが()()()()()()を破壊した…──!

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

 そんな地響きがマリンフォードに響き渡った。戦乱の怒号に紛れ、白ひげの地震の力に混ざり、気付かなかったが細かく聞いみれば音が違う。白ひげ海賊団のどれかの能力だろうが、目立った海賊の情報はやはり集めている。心当たりがない。

 

 センゴクは空を見上げた。

 懸念が1つ、シキの飛ばす脱獄囚共の姿は未だ見当たらない事。時間的にもういてもおかしくない距離だ。海流や風に左右されない分、白ひげ海賊団の到着より早く着くはずだ。

 

 オーズが湾岸の大砲に覆い被さるよう、橋になるように倒れた──

 

 

──ドォン…ッ!

 

 

 ──瞬間。

 

 突風が、瓦礫が、砂が。

 地面を突き破りマリンフォードの広場に穴が空いた。

 

「……ッ、地面だと!?」

 

 格好のつかない扉の姿がその穴から飛び出すように吐き出された。火山が噴火するかのごとく、その穴からは水圧で飛び出す海水が。

 

「エ〜〜〜〜〜ス〜〜〜〜〜ッ!助けに来たぞ〜〜ッ!」

 

 

 最悪のタイミングで最悪の場所に、最低な海賊達が現れてしまった。

 

 

「……ガープ。また貴様の家族だぞ」

「ぶわっはっはっは!これもう笑うしかないのう!」

「笑うな貴様!」

 

 センゴク元帥は胃痛持ち。

 

 

 ==========

 

 

 脱獄組の地面からの戦場乱入場所はなんと広場の真ん中、大将居座る処刑台の真正面。

 シャボンで海に潜り、クロさんの能力使ってモグラのように島に穴を開けながら辿り着いた。

 

 気付かれたら一気に攻撃を向けられるけど、白ひげ海賊団が陽動として(そんな気は無いだろうけど)地上に注目を集め、シキの能力を考えたら普通は空中に目を向ける。それもシキの全盛期を知っている海軍本部なら。だからこその地下だ。海でもなく土を選んだ。

 

 

「ジハハハハ!見ろ!センゴクのあの顔!ひぃー、クレイジーちゃんの策は最高だな!」

「シキさんが居なければ考えなかったですけどね」

 

 いてもいなくても私はこっちを選んだろうけど、さりげなく責任の全てをシキに押し付ける。シキの高笑いに苦い顔をしながら、地面から溢れる海水の傍で周囲を確認した。

 

 海水が壁になって背後からの攻撃は心配要らないし恐らく電伝虫にも映らないだろう。私もノーランさんも元々海軍本部雑用。電伝虫の光景から撮影ポイントと死角はわかる。

 

「チッ、白ひげが遠いな」

 

 クロさんがなぜ白ひげさんに執着しているのか、それはまぁ大体察してるけどぶつかり合わせる訳にはいかないからそこも含め空ではなく地面を選んだよな。白ひげ海賊団が海から来るだろう、もしくはそれ以外で(結局は真正面から)来るだろうと思っていたから。

 

 喰らえ必殺〝驚きの過剰摂取〟

 需要の無い供給はただのフォアグラ。強制的に食わされて太った肝臓です。私もいっぱい食わされてフォアグラったんだから海軍も共感してくれ。

 

「ミス・メリークリスマス。潜れ」

「りょ、だよ」

「Mr.3、Mr.4。てめぇらはミス・メリークリスマスの援護だ。Mr.3、ついでに海楼石ついてる非海軍側が居りゃ外して行ってやれ」

「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん〜「わかったガネ」〜わ〜〜〜か〜〜」

「Mr.1ペアは……まぁ適当に暴れとけ」

「あんたがそう望むなら」

「ん、了解」

 

 バロックワークスがクロさんの指示を受け早速戦場に混ざりに行く。

 ルフィ?はっはっ、知らんな。多分1番激しいところがルフィの居場所でしょ。眼前には巨人部隊がいるんだからどうせ腕を巨人レベルで大きくするはず。

 

「さぁて、どう動こうかなァ」

 

 個人的な目論見、別名死体蹴りがあるからクロさんの側を離れないでいるけどそこからの行動は計画してない。不利な方向に力を貸し、どの陣営にもバレないようにエースを助ける。

 つまり、隠密活動。

 

 ただし、難易度はかなり高い。なんせ海軍も白ひげ海賊団も脱獄組も全て私に視線を注いでくる。

 

 ……センゴクさんと話すべきだよね。

 

 処刑台を見た。

 多分ルフィを見ていたエースが、泣きそうな顔で私を見た。口を動かした。

 

 なんで来たんだ、と。

 

 そういうの、昔から決めていた。

 

「──私のため」

 

 自分本位な人間による私のための行動。私の心が傷付くのが嫌だから来た。ただそれだけだ。

 高度なツンデレとかそういうのじゃない。ないったら無い。




展開をテコ入れして引き伸ばすのに苦労する章が始まりました。
正直戦闘シーンを一人称視点でやると死ぬという経験をアラバスタでこなしたので三人称視点でやりたかったんですけど、三人称視点にすると訓練されてしまった読者が『また騙すんだろう』と勘繰り始めるので泣く泣く一人称(リィン)視点で。

だからといって!絶対!戦闘シーン一人称で書けないので!しかも戦争という大規模!三人称視点とリィン視点をコロコロコロコロ変えます!打開策!
絶望を現実にするために。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。