「なんでお前は俺たちにひっついて来るんだ」
リィンが海賊に背を毒付きの刀で斬られ眠っている最中、現在…ダダンの家ではうなされているリィンの隣でエースとルフィが正面に座り話していた。
「俺は、山賊が嫌いだ!それにリィンは俺の妹だ!一緒にいたいと思うのは当たり前だろ!」
「……その理由に俺たちは必要無いんじゃないか?」
「ある!友達になりてぇ!リィンがいつも言ってたんだ『頼りになって やさしくて かっこよくて 強くて ツンデレのエース』と『賢くて 理解があって 自分の事ちゃんと考えてくれる サボ』が大好きだって、俺もそれを聞いて、知り合いたいと思った!友達になりたいと思ったんだ!」
エースとサボは無表情を保っているが口元がピクピクしている。シスコンもシスコンで大概だがブラコンもブラコンである。
実際ルフィが喋ったような流暢な言葉では無かったのだが、素直でないリィンからの褒め言葉を聞いて思わずルフィへの警戒心が揺らいでしまった。
かつての2人ならばそう簡単に心を許したりはしないだろう。それは良くも悪くもリィンの影響と言える。
「分かった…なぁお前。お前は俺に生きてて欲しいか?」
エースがそう言えばルフィはポカンとして我に返ると呆れた目をして鼻をほじった。
「何当たり前な事言ってんだ?」
「当たり前……だと?」
「そうだ!当たり前だ!友達になりたいのに死んだらそこまでじゃないか!当たり前に決まってんだろ!」
「…………そうか」
エースがそう呟けば下を向いた。
「生きてて欲しいか……」
「俺も生きてて欲しいぞ、エース。リーも絶対そうだ…」
「ふぎゅう………」
リィンが鳴いた。まるで返事をしたように見えたエースは笑った。サボはエースの目尻にある涙は気付かないフリをして笑い合う。
リィンの夢の中では何があったのか、知らないが…エースは希望を見つけた。
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ルフィは考えていた。
「弱い……」
それは自分の事でもあり、リィンの事でもあった。
「(守られた。弱いリィンに。守るべき者に、守られた)」
それはかつてエースやサボが抱いた感情と似たようなものだった。
「(しかも…2回も………)」
「よぉ小僧」
「あ…」
悩めるルフィの隣に座ったのは1人の老人。ルフィの記憶にある、サボが連れてきてくれたあの強い人だ。
フェヒターは持ってきた酒をあびる様に呑むと一つため息をつき、独り言を言う様に聞いた。
「強く…なりたいか?」
「…!強く、なりたい」
約束したんだ、帽子を返しに行くと。
目標なんだ、海賊王になると。
決めたんだ、リィンを守ると。
「おれ゛は……弱いから…リィンにだって敵わないんだ…っ!海賊王になるって決めたんだっ!」
「ほぉ…海賊王にか」
「ゔん!」
思わず悔しそうに顔を歪め、目からボロボロと涙が零れる。
フェヒターは海賊王を目指す少年を横目で見ると表情を真剣な眼差しに変えた。
「いいか小僧。俺は小娘を守る目的がある…。誰にもあいつの娘を殺させねぇ…。だからな、小僧──」
ㅤ黒曜石の様な瞳に自分の姿が見える。フェヒターは向かい合ってハッキリ言い放った。
「──お前が強くなれ。いや、お前ら全員が強くなるんだ。小娘を守れ」
「……強くなるっ!」
「明日から俺が直々に稽古を付けてやる。それぞれの力量に合った戦闘方法も探し出せ。覇気だって全て教えてやる。阿呆には賭け事を教えれねぇが…戦闘ならいくらでも相手してやる……覚悟はいいな?その言葉に嘘偽りはねぇな?」
「無い!」
真っ直ぐな言葉を受け、フェヒターは笑った。
この眼を知っている。
──よぉ、お前俺の仲間になんねぇか?
──ふむ、彼なら戦闘の力になりそうだ。
──へぇ、面白そう。よろしく!
──お前ら勝手に決めんじゃねぇ!!
「ほんとに、お前らと関わるとろくな事ねぇな……」
「ん?なんだ?」
「………何でもねぇよ〝麦わら〟」
遠くでもいい、これからこいつらを見ていこう。シャンクスが〝希望〟を託した少年の物語を。
それが、人生を変えた大馬鹿者共に出来る唯一の仕返しだ。子供臭い、世界をひっくり返す2代目を見守る仕返しを───
フェヒターはルフィの帽子をシャンクスから受け取った、と気付いてる様ですね。
ルフィは実は結構後悔を考えるタイプだと思うので歳に似合わないかと思いますが色々考えてもらいました。