2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第242話 来年のことを言えば鬼が笑う

 

 ザワザワと人の往来が激しいこの島。

 東の海(イーストブルー)の流行の発信地であるミラーボール島。

 

 船旅に吐き気と船旅を重ねて情報の多い島に移動した甲斐がある。海に落ちたあと意識を飛ばす前に漁師に拾われたのは本当に良かった。

 

 とあるカフェで甘ったるいカフェラテを飲みながら、私はニュースクーの毎日新聞を読んでいた。

 

「ええっと、50年前って言うと……」

 

 海軍の組織法律の形態が変わった辺り……だったっけ。海軍内部が荒れてたとか聞いたな。歴史って日常生活じゃあまり使わないし教えを乞うといつでも教えてくれる環境下にあったから過去には詳しくないんだよな……。海賊稼業やり始めて調べなきゃとは思ったけど。

 

 頭をガシガシかいて、もう1回甘い物を飲んだ。

 

 

 視界から入る髪色は黒。

 女狐服を裏返してだるく羽織り、真っ黒のタンクトップを着た私。いや、俺。

 

 髪色変えの夢見る幻くんは無くさないようにアンクレットとして足首に巻いている。針金編み込んだミサンガで巻いてるし上から靴履いてるし多分もう無くさないだろう。海ぽちゃ、ほんと、怖い。

 

「よう兄ちゃん歌おうぜ!」

「絶対流行る! アフロのカツラだよー!! ヅラじゃないze、カツラだyoー!!」

「ねぇ、君、前世で会ったとか無い?」

「アイツだってアイツー!」

「ゲホッゲホッ、ケブラレタムシサレタアブラカタブラ」

 

 ミラーボール島、人間観察するだけで時間潰れそう。あとアフロは流行りません。

 

「なぁ、おい」

 

 とにかく、あの60年くらい前から一気に10年時が進んだ、転移した? ってことは順調に行けばあと5ヶ月くらいで元の時代に戻れるのでは無かろうか。2年以内ならセーフ。

 

「なァ、お前だって」

 

 2年というのもルフィの修行期間という期限だ。

 まあ過去に遡っている以上、時間経過がどう影響するのか分からないけど。元の時代に戻る時、私の重ねた年月共に進むのか、それとも進まないのか。うーん、流石に冷静になると時間遡行は怖いな。

 

「お前だよ……っ!」

 

 いきなり新聞を取り上げられ、新聞の向こう側に居た男と目が合った。

 

「は、誰……」

「やっぱお前似てるな〜!」

「……だ……」

 

 ヒュッと吸い込んだ息を慌てて吐き出す。

 

「げっほ、ゲホッ」

「っと、驚かせちまったか、悪いな」

 

 その男は笑顔が眩しい青年だった。歳は20代の中頃といった風貌。

 見た目の歳よりもずっと子供っぽい表情を作る男は、ニッカリと笑ったままロマンス通りの方向に視線を向けた。

 

「お前ーーーーーーッ! 勝手にフラフラ出ていくなーーーーーー!」

「わっはっはっ!」

 

 男は()()()()()の下で大声を出し笑う。

 

「なァレイリー見ろよ、こいつカナエにそっくりだ!」

「はぁ……。お前、目の前に興味ある物があるとパン食い競走の走者もびっくりする食い付きを見せるよな……」

「あっ、悪ぃ! 俺の名前はゴール・D・ロジャー!」

「ハァハァ……ロジャーもレイリーも……走るの速すぎ……」

「お前も充分速いじゃないかカナエ」

「なァカナエのそっくりさん、お前なんて名前なんだ?」

 

「………………………………通行人A」

 

 胃が、すごい体感的に久しぶりの血反吐がまろびでそうな胃痛が、ただただ私を無言で蝕んだ。キリキリ言ってるけど。

 海難の相、お前こう言うやつは外していいんだよ。悪運というか災厄仕事時過ぎでは。そろそろ休暇取ってくれていいんじゃないかな。

 

「おっもしれー女!」

「あ゛……?」

 

 多分だけど、私の反応の正解はこうだ。

 

「俺は……男だッ!」

「ギャンっ!」

 

 丸い机を挟んだ向こう側に居たので私は海賊王の股間目掛けて椅子を蹴り飛ばした。ヒット! クリティカル! ……ふっ、造作もないことよ。

 

 今までの恨み、色々擦り付けるぞお前。

 

「俺ァタチ専門なんだよ。低俗なナンパなら女になって出直しやがれ」

 

 説明しよう!

 男同士でセックスした際男役をする方がタチ、女役をする方がネコと俗物では言われているんだ! HAHAHA、こんな知識どこから得るんだって? ……私の胃を殺したいの? ビビ様からだよ。

 

 

 

 多分だ、多分だ。

 私はもしかしたらもしかしなくても。

 

 真女狐の正体を現状の自分にできるのでは無いだろうか!

 

 女狐には2人存在がいる。1人は冥王と戦神の娘であるリィン。そしてもう1人は、今ここで誕生日した海賊王のナンパを振った男だ。

 男はリィンを影武者として利用しているし、リィンは男の真似を上司にさせられている。

 

 その男の方! 真女狐!

 その存在はリィンが存在しないこの時代で、植え付けることが出来るのでは無かろうか!

 

「お、」

「お?」

「おもしれー! カナエと似てるのに表情全然違うからめっちゃおもしれぇ! なァ通行人A! お前仲間になれよ! 一緒に海賊やろう!」

「はァ? 低俗なナンパは間違いだと思ったが、間違いでも無かったか?」

 

 不機嫌そうに警戒心を露わにしてガラの悪い態度でロジャー海賊団の古参共にションという男の印象を植え付ける。この3人にリィンの記憶はないから今の状態でバレることなどないのだけれど、違いはあるだけいい。

 

 ……しかし想像してなかった面子が不意打ちで来るとは。過去旅行中は髪色絶対黒髪に固定しておこう。

 

「サヨウナラ、もう二度と会うことがねェように」

 

 必殺☆全力で距離を離す作戦。

 追い掛けようとする海賊王を振り切るように靴の操作を利用して民家の屋根の上に飛び乗った。まるで己の脚力で飛び乗った様に。

 

「べっ」

 

 地面を這う(感覚的な意味で)ロジャー海賊団の古参3人を見下ろして、舌を出した。私、お前ら、嫌い。

 

「は、腹立つ〜!! レイリー! カナエ! 船にいる奴らも呼んで来い! アイツ絶対捕まえて仲間にする!」

「はは、お前が失礼なやつってことはよくわかった」

「あたしドッペルゲンガーとか初めて見たわ……。もしかして生き別れの双子……?」

「「わっはっはっ!」」

「棒読みで笑うなー!」

 

 じゃれつく3人に思わずズッコケながら、鬼ごっこが始まった。

 おりゃあ! 印象つけてくぜぇ!

 

 ……でもゴールド・ロジャー本人ならともかく残りの2人は私が気まずいし、遊んだら普通に本気出して逃げるからね。性別を女に変えるという荒業で。

 

 

 

 

 

 

「「異世界人が何を言ってるんだか」」

「声を揃えるなー!」

 

 

 ==========

 

 

「見つけ──あああああ逃げられた!」

 

「居た──えっ、案山子!?」

 

「あぁ私は君を捕まえる気はな──チッ、煙幕か!」

 

 

「おい、カナエに似た人間見たか?」

「見たけどぴょんぴょんめっちゃ逃げるから無理」

「あの化け物3人から逃げ仰せてるやつが俺たちに捕まるわけがないよな」

「だよなー。俺も無理だと思うわ、お前らは流石に相手になりゃしねぇもん」

「なー!」

 

「……。」

 

「……よォ!」

 

「ろっ、ロジャー!!!!! 小憎たらしい坊主ここにいるーーーーーー!」

「判断が遅せぇよばーか」

 

 時に名も分からぬクルーをからかって逃げていた。

 

 

 というかロジャー海賊団、まだ完成度が低いから東の海で集まったばかりのレベルって感じするなぁ。そりゃまぁ、一般人や名前も知られてないような海賊から見たら化け物レベルなんだろうけど、偉大なる航路(グランドライン)視点から見ると、まだ発展途上。

 だって多分、戦っても私が押し勝つ。特に両親2人は戦い方の相性とかスタイルを知ってるし。

 

 

 屋根の上から地面に降り、路地裏で小休憩する。

 

 ……さっきの考察。よく考えたら私も化け物レベルってならないか。

 

「……なァそこのお前」

「んあ?」

「お前の首に、金額はあるのか」

 

 茶髪の少年。恐らく美少年だったり儚げなイメージが似合う様な少年が私を見て言った。

 

「俺ァ別に悪いことしてないから掛かってねぇけど。まぁ悪いことしてもお姉様方にもみ消してもらえばいいだけだし♡」

 

 ドクズ発言をして次なる刺客を捌く方法を考える。

 

「ならいい。お前は金にならん。僕が動くだけ無駄だ」

 

 小綺麗な格好をした少年は腰に差し込んだカトラスに込めていた力を抜いた。

 

「……ふぅん、お前ホントにアホ面女に似てるんだな」

「誰が女顔だ」

 

 見逃されてる様なので脇を通り抜け、──咄嗟にしゃがんだ。

 

「ヒュウ! いい太刀筋だ」

 

 知らんけど! ロジャー海賊団の関係者なら多分才能はピカイチなんじゃないかな!

 

 そんなことを考えながら頭上を掠める不意打ちの一振を避け、手首を蹴り上げた。私の靴はおっもいぞ。肉体操作は出来ないけど、装飾品で操作イメージするから勢いも付くし。

 カランと音を鳴らし地面に剣が落ちる。私は振り返らずにぴょんぴょんとまた屋根に飛び乗った。

 

 

「いやー、思ってたより楽しいな」

 

 男のフリをするというか、自分とはまっっったく正反対の『性に緩く口も悪く人を傷つけることに忌避感のない最低の上から目線糞野郎』を演じるのは。

 口調はフェヒ爺を意識してるとは言え。

 

 ……こんな男が海軍大将になれるのだろうか。

 

 

「キャーーーーーッ!」

「うわああああ!」

 

 港の方からたくさんの悲鳴が聞こえてきた。

 反射的に視線をそちらに向けると、真っ黒な旗を掲げたドクロ。

 

「くそったれ」

 

 休暇のつもりだったんだけどなぁ!

 悪態を吐き出しながら駆けていく。東の海(イーストブルー)の海賊の質は平均的に低い方だから私でも対処出来ると信じているけれど、時々とんでもない化け物生み出す海域でもあるからな。ロジャー海賊団とか、麦わらの一味とか。

 

「ふはははは! 私はドラルーク! ドラキュラ海賊団の船長であ──」

「くたばれ」

「きょわああああ!?」

 

 変な悲鳴を上げながらだが必殺の飛び蹴りは避けられた。

 

「口上くらいはちゃんと言わせんか馬鹿め!」

「馬鹿はお前だ……。なんで隙だらけの口上を待たなきゃなんねぇんだよ。訓練やら模擬戦やらじゃあるまいし。海に出りゃこの世は殺し合いだろうが」

 

 吸血鬼野郎はホクロウみたいな顔で目を丸くしながら手のひらの上にポンと拳を置いた。

 

「納得ッ!」

「素直でよし。というわけで解散」

「はーい! お疲れ様でした!」

「もう来んなよー」

 

 片足に重心を傾け腕を組み、背を向ける海賊を見送──

 

「──じゃないわ! 私は女を調達しにきたんだ誰が帰るか!」

「チッ、流されねェか」

「ええい野郎には興味がない! 君がさっさと消えないか!」

「「「「きーえーろ! きーえーろー!」」」」

「あ、お前俺の事普通に男だと思うのか」

 

 さっきまでロジャー海賊団相手に女顔だとバカにされまくってた気がするから、ナチュラルな男扱いに感心する。

 

「え、だって君は私のドラルークくんが反応しないから」

「セクハラ撲滅」

「おぎゃーーーーー!?」

 

 それはそれでめちゃくちゃ腹立つから私は全力で蹴りの斬撃を飛ばした。

 

 嵐脚擬き。

 足を振り回すタイミングに合わせて風で切り付けるだけだけど。

 

「よっ、ホッ、よいしょおッ! つーかなんだよ吸血鬼海賊団って。よっこいしょッ! 日光に弱そうな名前しやがって」

「あぁぁぁぁ私の部下を片手間に退治しながら疑問をぶつけるな馬鹿野郎! 馬鹿か!? 君は男のプライドが無いのか!?」

 

 とりあえず一般市民を襲う船員を優先的に潰していく。脳震盪狙いの頭かち割り殴りや鳩尾辺りを狙って殴りかかっているから、1発で倒れ伏していった。

 私、鍛えた男と比べて腕力はそこまで無いから弱点を的確に狙う必要があるんだ。よっと、金的一丁! うーん、悶絶してるね。数多の人体の弱点狙って生きてきたけどソコがやっぱ効く気がする。

 

「ごたーい、ろくたーい」

「ばか、馬鹿ーー! 玉入れで入った玉の数を数えてるわけじゃないんだぞ貴様ーーーーーー!?」

 

 右からの攻撃上半身を下げて避けて不動であれ移動のタイミングで靴の操作、風の発生で嵐脚擬き。10時の方向に市民、5度ほど角度ずらして石投げ、意識逸らしで速攻行ってぶん殴り振り抜きついでに背後の敵角度70蹴り上げ。

 

「はーち、きゅー、じゅー」

 

 というかまだ10人目か!

 涼しい顔して倒しまくってるけど脳みそをフルで動かして最小限の肉体移動に留めている。もし顔面を動かしていいならめちゃくちゃ叫んだし眉間にシワよったから。

 

 視野を広く、そして狭く。考えるな考えろ!

 効率良く海賊を倒すために動きを考え続けろ思考を止めるな。

 

「オラッ!」

 

 私の背後から拳が生え、目の前にいた海賊を勢いよく吹き飛ばした。

 ……心臓縮むかと思った。

 

「捕まえた!」

「……はぁぁぁぁあ〜」

 

 麦わらの男が私の肩に手を置いてニッと笑っていた。

 

「というか通行人A、お前めっちゃ強いなぁ。──ますます仲間に欲しくなった」

 

 口元を手で隠して悪そーな笑みを浮かべる海賊王に、私はひくりと喉が小さな拒絶反応を起こす。

 多分だけどエースと顔面似てる。心臓に悪過ぎる。

 

 というかさ、私も殴ったけど筋力差的な問題で海賊王よりしょぼく見えるから殴らないで欲しい。銃でも使ってろ。

 力の海賊王と技の私。

 筋力ないから脳震盪起きるように殴るタイミングを筋肉が力を抜いた瞬間狙ってるし余裕あるなら微振動を起こしてるから一応、威力的には変わらないんだけど、うーん。

 

 見た目の強さ的な意味ではしょぼいな!

 

「しゃがめロジャー」

「えあっ!?」

 

 ロジャーの肩に手を着いてそこに重心を乗せ、飛び上がり海賊王の背後にいる敵を蹴り飛ばした。

 

「……キリがねぇな」

「カナエが来ない内にカタをつけたいんだけどなぁ」

 

 コイツがいるから身体能力だとごまかせない能力はあまり使いたくないな。

 

「おっ、坊主、これ借りるぜ……ッ!」

 

 自分より確実に年上の人を年下扱いするという年齢詐欺の無駄に手の込んだ無駄な手間を加え、適当な人物から武器を拝借した。ぎょっとした顔をされたけどアイテムボックス使うわけにはいかないんだ。ちゃんと返すから許して。

 私は海賊王が海賊を殴ってる所まで戻り、襟首引っ掴んで自分より後ろに下がらせる。

 

「〝神速(しんそく)〟」

 

 チキッと鯉口を鳴らし刀を鞘に納めるだけの簡単な動作。

 ただし、私は不思議色の覇気で前方の視界に存在する海賊全てを地に伏せさせた。敵の身体には切り傷。風で斬りつけたのだった。

 

「うっわ、凄……」

「飛ぶ斬撃の味はどーだよ」

 

 斬撃じゃないけど! 私がそんな視界に捉えられないほどのスピードで刀振るって斬撃飛ばすだなんて無理ー!

 海賊王に(おれ)の存在を強く印象付けるには矢張り圧倒的な強さが必要だ。己が敵わないと思う敵ほど、恩師ほど、記憶に残るものだ。

 

 正直不思議色の覇気を使っているから『切り傷で倒れ伏す』という結論は変わらないんだけど、能力者か非能力者のどちらが凄いかっていうと非能力者だよね。

 

 しかしまさか海賊王と共闘出来るとは。

 

「ん?」

「あ?」

 

 だけど、海賊王と私が同時に疑問符を浮かべた。

 

「は? あれ食らっときながら起き上がるかフツー」

 

 敵さんたちはゾンビの様に起き上がってきた。

 ひょえ……。威力不足が露見するから勘弁して……。

 

 というか体の動かし方もそうなんだけど、東の海(イーストブルー)の平均から大幅に実力が高い。自分の戦い方に集中力かなり使ったから、感覚的に偉大なる航路(グランドライン)前半の海賊。

 懸賞金2000万くらいかな。

 

「ふはははは! ようやく気付いたか馬鹿共め! 私たち吸血鬼海賊団はあの海の秘宝、悪魔の実の能力者がいるのだ!」

 

 船長の高笑いに私は心の中で納得する。

 よ、良かったー! 私の実力(はったり)不足とかじゃなくて!

 

「な、なんだってー!? あの一生お目にかかれない能力者を手にしてるのかー! なんてこったー、くそー、これじゃあ勝ち目はねー」

「A? A? どうした急に」

「ふはははは! そうだろうそうだろう!」

「諦めるしかないのかー、くそー、最期に聞かせてくれー。お前たちの能力は一体なんなんだー」

「ふはははは! いいだろう! 冥土の土産に教えてやる!」

 

 腹芸なんて出来ませんと顔面に書いてる海賊王がキュッと口を閉じた。

 ただ、敵海賊は普通に馬鹿なので調子に乗って高笑いをし続けた。あっ、むせてるむせてる。

 

「うぇ、ゲホゲホ。……ふはははは、我が海賊船には幻獣種と言われるめっちゃ珍しくって金になる能力者がいるのだ」

「うんうん、能力者がいるのは知ってるからどんな能力か教えて」

 

「見事に失敬だな君は。まぁいい……──ヒトヒトの実、モデル吸血鬼! この雑用の坊主は吸血することで眷属を増やしただの人間では敵わない回復能力と身体能力を兼ね備えた吸血鬼になるのだ!」

「へー」

「ただし日光には弱い」

「弱いならこんな日中に海賊行為をやるなお前……」

「馬鹿か君は! 夜中だといい女が出歩かないだろうが! 家に入ったらそれは最早強盗だぞ!」

 

 人攫いは良くて強盗はダメなのか。

 もうヤダコイツら濃い……。

 

「我ら吸血鬼は首を日輪を吸収した刃で斬らない限り永遠と不死身なのだ!」

「主君、別にお日様いりません」

「カッコつけさせろォヘイヴゥ!」

 

 雑用の少年のツッコミに船長がビシィと指さした。

 全体バフ系の能力者。だけど、まあ、うん、吸血鬼としての長って雑用の少年になるんじゃないかな。船長ただの眷属じゃん。

 

「はーーー、つまり」

「つまり?」

「つまり!」

 

 私が言葉を放つと吸血鬼達は首を傾げ、ロジャーは笑顔で結論を出した。

 

「──この子を気絶させれば海賊団は無力化するだろう」

 

 雑用の少年の後ろに回って手刀を繰り出したレイさんが、そう言葉を繋いだ。

 

「レイリー!」

「やあ通行人A。我らの船長に捕まったわけか」

「まぁな」

「無事カナエが来る前に片付いた様で何よりだ」

 

 さて、近距離にいるロジャー海賊団からどうやって逃げようかな。

 

 逃亡方法を考えながら刀を借りた男を探す。

 キョロキョロと白いフードの男を視界に捕えるために注意が疎かになっていたんだろう。集中力を使い果たして脳みそも上手く働かなかったのだろう。

 

「……!」

「……ッ!」

 

 曲がり角を覗こうとして顔を出すと、目的の人物では無いが見覚えのある男と顔を突き合わせることになった。

 丸い頭。眉間に寄った皺。大きな鼻。への字に固く結ばれた口。

 

 目と目が合うー。

 瞬間。

 

 

「ッッッッッッ!」

 

 回れ右してダッシュした。

 

 

「Aー!? どこに行っ……やべ、海兵か!」

「あ、あっ、ロジャー!! この騒ぎはまた貴様かー! 見つけたぞ!」

 

 追手は4人の下級地位海兵!

 やばいやばいやばいやばい!

 

「野郎共ー! 船に戻れー!」

「うははは! ロジャーのやつまたやらかしたぞ!」

「戻れ戻れー!」

「待たんか貴様らーーーーッ!」

「悪いなセンゴク、そこに残った海賊はよろしく頼むよ」

 

 必死こいて足を動かす。

 レイさんが朗らかに後片付けを押し付けた。

 

「あっ、ロジャー! そういや俺息子が産まれたぜー!」

「マジでか! 今度抱かせろよガープ!」

「「「お前ら敵同士!」」」

 

 海賊王が後ろ向きで走りながらニコニコと笑みを深める。

 

「おつるちゃん! 元気〜!?」

「元気よ、お前が元気じゃなければもっと元気なのにね……ッ!」

 

 先に乗り込んでいたカナエさんが両手を振った。

 

「あ、やべ、ゼファーのやつ力溜めてる」

「飛び付いて来るぞ急げ、出航だ出航!」

「──〝月歩……改〟ッ!」

 

──ドォンッ

 

 足先に爆弾でも込めてるんじゃないかと思うほどの爆発的な跳躍力。普通の月歩のように何回も空を蹴るのではなく超人的な1発の脚力。

 地面を砕き、進み始めた船に軽々と空中で追い付く。

 

「〝武装〟!」

「下士官が一丁前に六式と覇気使ってんじゃねェよ……ッ!」

 

 両腕を黒く染めた武装色で殴り掛かる。

 飛ぶ拳圧。大砲の様に、ルフィの機関銃(ガトリング)の様に降り注ぐ拳を避け。

 

 ゆっくりと足を動かして蹴った。

 

「〝不可避キック〟」

「「「「ネーミングセンス!」」」」

 

 船上の奴らから同時にツッコミが走り、上空にいた海兵を衝撃波で押し返した。

 

「うわぁ、名前はどうかと思うけどすげぇ」

 

 うるせいやい。

 白ひげさんのグラグラを皮膚に触れる場所で再現する衝撃脚。センゴクさん相手にやっても最初は全然効いた試しなかった。今普通に血反吐出させる威力になってるけど。

 

「はぁぁぁぁ逃げきれた……」

「心臓縮んだ」

「どこでも湧いてくるなアイツら」

 

 逃亡成功したことに安堵の息を皆が吐き出す。

 

「船底まで行ってる! おい誰か塞げ塞げ!」

「竜骨は!?」

「そっちは無事!」

「つーかカナエは竜骨知ってるのに塞ぎ方すら知らねぇのかよ!」

「ロジャー入ってきた海水飲み干せ!」

「よしきた」

「「やめんか!」」

 

 若い頃のセンゴクさんとおつるさんとジジと、あの黒腕のゼファー先生。

 まさかまさかの連続で驚きっぱなしだけど、精神的にすごい重症を負った。

 

 

「……アッ! やましいこと何も無いから逃げなくていいじゃねぇか!」

「今気づいたのか通行人A」

「ようこそロジャー海賊団へ!」

「あぁぁぁしくじった流れで乗っちまった……! クソッタレ……!」

 

 思わず頭を抱える。バタバタと船の修繕を急ぐ音も次第になくなり、後悔しまくっていた私に影が差し込んだ。見上げるとニッカリと笑った海賊王がそこに。

 

「改めて、俺は船長のゴール・D・ロジャー! こっちは副船長のシルバーズ・レイリー!」

 

 ええ、存じ上げております。

 

「んであっちがシラヌイ・カナエで、あっちがスコッパー・ギャバン、それとあっちがタロウで、こっちがエリオ」

 

 ええ、半分くらいは存じ上げております。

 

「それとこいつはディグティター・グラッタ」

 

 ええ、存じ上げておりま……。

 

「…………ディグティター?」

 

 名前の羅列に顔を上げる。

 そこに居たのは路地裏で見逃すフリして躊躇なく首狙ってた小綺麗な少年だった。

 

「……ッ、僕に関わるな」

「え、は?」

 

 僕? え、ディグティター・グラッタってフェヒ爺の本名だったよね。

 え、フェヒ爺が、僕とか使ってんの?マジで?

 

 口に手を当てて下を向く。OK、笑うなよ私。

 あまりにも記憶と違いすぎてギャップ半端なくて幸薄そうな僕っ子少年でも笑うなよ私。

 

 下を向くと自然と視線がそれを見た。

 私が借りた刀を。

 

 

 ──鬼徹でした。

 

「………………グラッタ、、これやるよ」

 

 呪われし刀は本来の歴史の持ち主にぶん投げた。果たして鬼徹はフェヒ爺が元から奪ったのか、奪われたものを譲られたのか分からないが、まあ結論としては変わらないからもういい。これ以上深く考えるのは責任とかで胃がひきちぎれるからもういい。

 

「わ、ととと……」

「それで通行人A。ロジャーはお前が欲しいみたいだし、お前は船から降りられないし、どうする?」

 

「……チッ、飽きたら降りるからな」

 

「よっしゃー!」

 

 ガッツポーズをして、心から喜ぶ姿を見せる海賊王。いつ転移の時がやってくるか分からないので、ここに風来坊やら天邪鬼やらの設定も付随させておく。もう一度ため息を吐き出すも、まだ衝撃は終わらなかった。ロジャーは名案だ、と言いたげな表情をして。私に追加ダメージを与えてくるの。さすがは海賊王。殺したい。

 

 

 

「通行人A、お前今日からエースな!」

 

 ガツンと頭を殴られた気分になる。

 フラフラと甲板の縁に手を置き、大きく息を吸う。嗚呼、頭がズキズキと痛む。胃も痛い。吐血をしたい。でもそれは我慢しなくてはならない。

 

 

 

「──あのッックソ野郎ーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

 小さくなっていくミラーボール島に向け、かつてないほどのセンゴクさんへの恨みを思いっきり吐き出した。

 




ロジャー船長お誕生日おめでとうございました(31日)
そしてエースお誕生日おめでとうございます(1日)

アンドハッビーニューイヤー!あけましたおめでとうございます。
はい、というわけでエースくん(古い奴)の誕生です。
バリバリ伏線回収してくぜ〜〜〜〜!
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