どっぼーーーん!
擬音語があるならそれ。
私は毎度のことながら海へとダイブした。
「ブハッ」
海面から顔を出して大きく息を吸う。
「ゲホ、ゲホッ」
くっ、そ、海水鼻から飲んじゃった。頭が耐え難い痛みに支配される。
こう、『痛たたた!』じゃなくて『イッッッッ……(数秒溜め込む)……たァ!?!?(ブチ切れ)』みたいな感じの痛み。とりあえず落ち着け私。
しはしはする目を頑張って開けば、目と鼻の先に陸地があった。くっそ、もうちょっと落下地点がズレててくれれば。
いや受け身もなしに陸地に落ちたら骨折れるかな。
そうしてバシャバシャと泳いで(泳ぎなれてない)陸地に体を乗り上げると──そこにいた少年と目が合った。
「えっ」
ちょっとまった。
驚き固まる私に、怪我だらけで頬に泣き跡がある少年は決定的なことを言った。
「今……空中から……現れた……?」
時間転移見られてた──!
やばい。非常にやばい。
何より自分の怪我の手当を早いとこやらないといけないのに。
「…………。」
私は海から上がる。
今更だけど私って本当に能力者じゃないんだなぁ。
さて、どうしてしまおうか。
「あ、あの……」
私はびしょ濡れのまま少年を見下ろす。
冷静保っているが、実は微塵も冷静じゃない。
ここは多分まだ過去だ。
ということは、未来でどんな影響があるか分からないから人殺しは出来ない。そう、口封じが。
空間にいきなり現れた瞬間を見てしまった少年。
私が能力者である、と嘘ついても、海を泳げてしまった以上騙されもしないだろう。いや、この瞬間は騙されるかもしれないけど結局常識外だとバレるのは時間の問題。
どうしよう。
──ガサガサッ
「い゛────!」
動いた瞬間背中がズキンと傷んだ。
その傍らで少年が後ろにきゅうりを置かれた猫の様に驚き跳ねて、身を守る様に体を小さく丸めて蹲った。
「わん」
草むらから出てきたのはただの人面犬だった。
良かった、人間じゃなく……いま何が出てきたって????
2度見しても何も居なかった。怖っ。
「兄上……兄上ぇ……」
「……。」
よく見れば怪我だらけどころか、火傷も刺傷も擦り傷も鬱血も、栄養失調気味でなにかに怯える姿も。
あーーー。虐待の気配を察知。
「よし」
私は少年を小脇に抱え込んだ。
ぶっちゃけ私も身長高いってわけじゃあ無い、いやむしろ低い方だから年下の少年でも抱えるの精一杯だけど。
「???(???)」
「飛ぶか」
とりあえずこの島に居るのはまずいな。一旦でもいいから場所を変える。
「舌噛むなよ」
「え、っ、う! うわあああああああ!?!??!」
暴れてないけど叫ばれるととても迷惑!
==========
「は、母上ぇぇえうえぇん……!」
結構離れていたけど1時間くらいで隣の島に着いたに着いたので適当に人気の無さそうな場所で下ろす。
今更だけど客観的に見たら人攫いみたいなことしてるな……。
「んで、坊主。お前には2つ道が残されている」
「ひっく、ひっく」
「俺のことを黙っておくか、そのまま死ぬか」
一択しか残されていないような質問を『
素直に考えて誘拐犯が急かすと逆効果だしね。
どうせ私には時間があるんだから。
「死にたい……母上も父上もいないなら死んでも良い……」
1時間くらいだろうか。ようやく少年が答えを出した。
これは予想外。
目を見開く私に少年は言葉を続ける。
「でも兄上が、兄上が生きてるから、……生きなきゃ」
「なぜ?」
私が疑問を問いかけると前髪に隠れて見えない瞳が丸くなった気がした。
「なぜ?」
「お前の兄上の為に、なんで生きる? 義務感や依存で生きると、生き方を見失うぞ」
これは私の自論。
他人を想えば想うほど、同時に死にやすい。
この少年の場合死んでもいいと思っているからこの言い方は無意味だけど。
「なんで兄上の為に生きなきゃならないんだ?」
愛してるから? 健やかであれと願っているから?
誰か他人のためになんで生きる? それだけを生きる理由にする?
「とめ、なきゃいけないから? 兄上のことは、好き、だから……兄上が父上を殺したの……許せない。これから兄上が、いっぱい人を殺し始めちゃったら……」
あぁ、義務感か。
唯一の肉親が壊れていく。その肉親を止めるのは同じ唯一の肉親。つまり自分。
ディクティター・グラッタが親殺しをしたように。
その義務感は達成した瞬間行き場を失うよ。多分待ってる先は自殺。
はーーーーめんどくさいな。人間って。
私みたいに生き足掻けばいいのに。
「ま、だろうな」
兄のために生きてはいないけど、兄を人生目標の括りに入れている私が言えたようなもんじゃないか。
「少年、誰かのために生きるのはいい」
「う、うん」
「誰かのために死ぬのも別にいい」
この世界には、命を賭ける人が多すぎるから。
命は、他人にしか賭けられないから。
きっとこの少年も、生粋の住人だから。
「でも生きる理由を失って死ぬのは駄目だ」
「えっ、殺そうとしてるのに?」
「…………。」
凄く純粋そうな顔で言われた。
はい、そうですね、少年に殺す選択肢を提示した人間の言うことじゃないですね。はい。
──ぐぅうう……
「あっ」
お腹の鳴る音。
少年が顔を赤くした。
はーやれやれ。
「仕方ないな」
私はアイテムボックスからポーーンと保存食を取り出した。フゥ、数年持つ保存食くん助かるぜ!
できればこのアイテムボックス、時間停止の機能が付いてたらいいんだけどなぁ。物の腐敗を止めるというイメージが出来ない為か普通に時間経過する。無念。
海軍産保存食を少年に渡すと、前髪で隠れた表情が喜びに染まった気がする。
「あ、ありが、とう」
……所詮私は冷酷にはなり得ないんだろうなぁ。
どっかの星組とかいう存在が『は?????お前何を言ってんだ頭イカれたか????』みたいな感じで脳みそに直接語りかけて来た気がするが多分気の所為だろうね。
もそもそと食べ始める少年を見ながらよっこいせと地面に座る。
「そんで、お前どうする」
私が問いかければ少年が再び顔を上げた。
「親が居ないんだろ」
「…………うん」
「俺がお前をこの島に連れてきたが、別に向こうの島に戻ってもいいんだ。……ま、様子を見る限りその虐待はパパとママじゃなくて兄上か誰か他の大人かもしれねぇがな」
「兄上じゃ、無い」
「へー、そいつは悪かったな」
オロオロと行く末を迷っている様だった。
申し訳ないけれど、私は過去の人間である少年の行動指針をあまり勝手に決められないので。
それで現在改変なんてものが起こったら震える。バタフライエフェクト怖いよぉ。
まぁ、フェヒ爺と違ってガッツリ命に関わるわけじゃないだろうから神経張り巡らせなくていいけど。にしたって海賊王の団体は非常に疲れた。
「お、おれ。どうしたら……いぃ──」
ボソボソと項垂れる少年が語尾を小さくした。最後の方は本当に微かだった。
でも聞こえた。
「──ぇ……」
独特な語尾。
多分聞かせるつもりは無かったんだと思うし、それは癖だったんだと思う。
「天竜、人?」
私が疑問符を浮かべれば少年はハッとなり口を塞いだ。
怯えるようにズザザザと足をもたつかせ転がるように後ろに下がる。
「ちが、違う、おれは誰も傷つけてな……! 違う、違っ」
ふるふる震えながら頭を抱えて身を守る。
のを気にかけず、私はずいっと近付いた。
「名前は」
「えっ、うっ」
「名前は?」
ずいずいと近付けば虚をつかれた少年は観念したように名前を零した。
「ドンキホーテ……ロシナンテ……」
その瞬間私は喜びに任せて抱きついた。
「なんだシーナじゃん!!」
「あばばばばばばばばば」
ビビって損した!!!
ようやく、よーーーーうやく過去で味方らしい味方に会えた!
==========
「えっと、つまりお兄さんはお姉さんで」
「うん」
「お姉さんは未来でおれと知り合いで」
「うんうん」
「お姉さんは未来から過去に時間旅行しちゃった、と」
「うんうんうん」
小さな脳みそのキャパは少ないだろうからざっくりとした説明をすると、言葉自体は分かったらしい。
シーナリリィがそっと目を閉じる。
溢れ出る想いを込めて、彼は言葉を放った。
「分かんない──!」
そりゃそうだ。
「全部分からない。え、おれ、こんな物騒な人と付き合いあるの?そもそも、未来から過去に時間旅行しちゃった、ってなに!?」
私よりシーナの方が何倍も物騒だと思う。
私はとても優しいので言わないでもおいてあげるけど、ドフィさんへの報復、シーナが色々やらかしているせいでとんでもない事になってる。
即席で報復を計画したクロさんの目じゃない。
いや、うん、思わず合掌したよね。ここまで嫌がるポイントポイントを徹底的に踏むかぁ、って。
正直実行犯になるのは私だから勘弁してもらいたかった。
「シーナ今何歳?」
「は、はち……」
シーナの年齢は37だったから現在からみて29年前か……。
エッド・ウォー海戦の少し前辺りだね。ガープ中将が英雄と呼ばれ、そろそろ海軍の組織形態が整ってきた辺り。
「よし、シーナ行くか」
「え……どこに?」
「ぶらり旅」
海軍本部にお届けコース入りまーす!
書き方を忘れてしまっている……!
というか、この話4000文字も行ってなくて、今までの話6000とか余裕でオーバーしてて。1万行く時もあって。いや自分ヤベーなって思っている最中。自分ヤベーな。
あ、前の話のあとがきでお知らせしたなろう作品。
アルファポリスでも連載初めました。『最低ランクの冒険者』『何度目』『恋音』のどれかで検索してもらったらすぐ繋がるかと。