2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第255話 秋の鹿は笛に寄る

 

 空島の次の記録指針(ログポース)は麦わらの一味と同じく、ウォーターセブン。

 

 ロジャーやおでんといった冒険好きが上陸する中、私は船に残っていた。

 理由? 船酔いです。

 

 もちろん船酔いだとバレてはならないので必死にポーカーフェイスを保っているが。

 

「ぎゃーー!! 本物だーー!! ありがとう幼少期!! スゥーパァーー!!!!」

 

 ……なんか陸でカナエとかいう女の悲鳴が聞こえた気がするけど気の所為だろう。

 

「なんじゃァ、エースも残っとったがか」

「あー……」

 

 私は一瞬思い返すような顔をして、にっこり笑顔を作った。

 

「……あんたか」

「絶対名前覚えてにゃーわコイツ!」

 

 そう言いながらネコが私を指さしてチクるようにイヌに顔を向けた。

 おでん一家のことについて改めて思い返す。

 

 光月おでん。トラブルメーカーであり侍。

 光月トキ。その嫁。

 光月モモの助。2人の息子。

 光月日和。2人の娘。

 

 モモの助は小僧って感じの歳だけど、日和に関しては赤子からギリギリ抜けたくらいの年頃。

 

 そしてその家臣。

 ネコマムシとイヌアラシ。

 

 これは獣人というかまんま猫と犬。

 

「居ねえのはおでんだけか」

「そうだ、我々はトキ様の護衛だからな」

「おでんは強すぎるから護衛なんざ必要ねぇわな」

 

 イヌアラシの発言に私は納得したように頷いた。

 

──ギィィ

 

 船内から出てきたのはダグラス・バレットだった。バレットは不機嫌そうな顔して起きてきた。うるさかったらしい。

 

「よぉバレット。酒でも飲むか?」

「……お前となんか飲むかよ」

「んな冷てえ事言うなって。そういや碁盤遊びっつーか遊戯はワノ国の独壇場だよな。イヌ、ネコ、教えろ」

「偉そうに」

「偉いんだよ」

 

 そんなこといいながらイヌアラシの説明を聞く。ふんふん。花札ね、花札。

 

「大昔にやった記憶はあんだがな。やっぱり変わってやがる」

 

 なんて大ボラ吹きながらルールを覚える。役が多すぎて一瞬では覚えられないからトキを召喚。手札の補助をしてくれることになった。やったぜ。

 

「バレット、賭け事は好きか?」

 

 我ら初心者同士、秘蔵の酒でも賭けようや。

 

 

 

 ==========

 

 

「ただいまー!……あれ?何やってんだ?」

「バレット君8連敗中」

 

 ロジャー達御一行が船に帰ってきて、ひょっこり顔を覗かせると私とバレットは花札中。点数は私のぼろ勝ちだ。ふっふっふっ、ポーカーフェイスが足りないんだよ。

 

「バレット、今桜の札は手持ちにあるか?」

「……。」

 

 誰が言うか、とかねぇよ、とか下手な駆け引きに乗ってしまえば私に手の内バレるとわかってるので無言になってしまった。場に出してある手札と山場にある手札で計算する。

 

「はいサクッと揃えるぜ、たん」

「ぐ……」

 

 このまま逃げさせてもらうとしよう。

 

「なんもルールわかんないけどエースが勝ってるの?」

「あぁ。20文は流石に何度も出せないがな」

「うーんわからん!わからんけど動物可愛いね」

「一勝も譲らんとは、やるなエース」

 

 十二戦で一試合計算してるから何個か負けてもいいんだけどイカサマ使わなくても勝てちゃうんだよね。きつくなったらイカサマ使お。

 

「おっ、猪鹿蝶。うーん、まだ行けるな。こいこい」

「はぁ!?」

「うっわ追い打ちだぁ……」

 

 花札のルールを知ってる奴らは私の行為にドン引きをしている。勝利は圧倒的じゃないと。たねまで揃えてフィニッシュだ。

 

「……。」

「おいバレット?どうした?」

「…………。」

「シカトしてやがるこいつ」

 

 花札を片付けながら十月の札を拾う。ちょうどカナエが可愛いと言っていた鹿のイラストがかかれた札だ。

 

「そういえばシカトの語源はその札なんだぜ」

 

 おでんがそう言う。

 

「紅葉は十月の札なんだ。(とう)に鹿がそっぽ向いてるだろ。だからシカト」

「ほへー!なんか、可愛いのに可愛くないな。無視されるの嫌い」

 

 おでんの説明で子供のようにむくれるカナエ。私はその言葉に、ふとあの空の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

「じゃあ女狐君とやらに伝言お願いできるかな」

『……ほう、女狐の名がお前の口から出るとはな』

 

「まぁね、あたしの予想が合ってたら、だけど」

 

 

「──『だから紅葉は嫌いだよ、後はよろしく』と」 

 

 女狐への伝言に心当たりが無ければ。

 女狐(わたし)が知らない女狐(だれか)が居る。

 

 

 

 

「……。あぁ、そうか。自分(おまえ)だったのか」

 

 小さく呟いた言葉は誰かに聞かれた気がしたけど、問題ない。もう、何も問題ない。

 

 良かった。女狐(だれか)女狐(わたし)だった。心の底から安堵している。

 これでもう問題ない。私はセンゴクさんと共にこの世界を生きる覚悟を決めた。何も怖くない。

 

 

「カナエ、お前は本当に色んな人間引っ掻き回すよな」

「なんでぇ!?急になんで!?」

 

 このアホ面に悩まされるなんて呆れて物がいえなくなるわ。

 

「未来でお前が困っても俺はシカトするから」

「無視されるの嫌いって言ったばっかじゃん!?」

 

 

 

 ==========

 

 

 バレットとはあれからよく賭け事をするようになった。と言っても賭け事オンリーで馴れ合いはしない。プライドが高いのか分からないが、私に勝てるまで挑み続けるような気がしている。

 

 ジャンルは様々ではあるけど、ある意味懐かれたな。

 

「チィッ!」

 

 嘘です懐かれるにしては殺気の籠った舌打ちすぎます。物騒。

 

「エース、お前気配消すからこれやるよ」

 

 橋の上の国、テキーラウルフという場所で色々起こったんだけどその時気配消しすぎてめちゃくちゃ驚かれた経験があるから鈴を渡されたシャボンディ諸島の宿です。ぐぬぬ。一週間程シャボンコーティングで滞在する予定。

 

 ロジャーは私の不機嫌な視線での訴えを華麗にガン無視して渡してくる。

 

「鈴なぁ」

「おう、絶対着けとけ」

 

 仕方なく身につける。つけるところないから髪の毛でいいか。

 ざっくりと結んだポニーテール。カナエとおそろいにはなるけど仕方ない。

 

「今からシャッキーの所行くんだよね?」

「あぁ、彼女に前回のツケを請求されてるからそろそろ払わないと。匿名で海軍に通報されかねない」

「それもそうだ」

 

 うわ。行きたくない。

 私、子供シーナと一緒にぼったくりバー行ったんだよね……。

 

「エースも一緒に来るか?」

 

 ロジャーがついでとばかりに肩を組んでくる。

 のを、しゃがんで避けた。

 

「ぎゃ!」

「うわあ!?」

 

 小脇に抱えるチビシャンクスさんとチビバギー。うごうごと抗議する二人を無視して窓の縁に足をかけた。

 

 いやぁ、流石に他人がいる中でぼったくりバーは流石になぁ。それに過去のうちに色々集めたい情報あるし。

 

「ぼったくりバーの店主に伝えとけ。たこ焼きのレシピならおでんにでも聞け、ってよ」

 

 さらばだー!

 

「エース酔う酔う!!!降ろして!」

「うぎゃぁぁぁぁああああ!?」

 

 それにしてもこの荷物うるさいなぁ。

 

 

 

 

「酷い、酷い……。シャッキーさんのご飯食べたかった」

 

 チビシャンクスさんがうなだれる。

 ここはシャボンディ諸島でも特に治安がいい場所である。私はまだ指名手配はされてないけど、顔はカナエに似ているからいざとなればカナエのフリする予定だ。

 

 単独行動しても良かったんだけど、怪しまれる要素は減らしておきたいからエース君の気まぐれで一番御しやすい子供を確保した。

 

「さーて。意気込んだはいいが」

 

 使える情報屋の伝手は少ない。

 私は情報屋もしているけど、ほぼ運営を任せているから基本的に収集寄りのポジションだ。だから様々な情報屋……まぁ東の海で言うスコッパーギャバンとか、そういった伝手も持ち合わせている。

 

 この過去の時代に置いて存在するシャボンディ諸島の情報源。ぶっちゃけていい?シャッキーさんです。あるにはあるけどこの時代だと新しすぎる。

 

 怪しまれても困るしね。

 

「つまりやること無いんだよな」

 

 情報はすごく欲しい。特にこれから麦わらの一味は後半の海を渡る以上、事前情報によって生死の確率が激しく操作されると言っても過言じゃない。

 

 ただまぁそこまでの余裕があるかと言われると、正直ボロが出ないように必死ですから、ええ、無いです。余裕。

 

「おーしガキンチョ共。遊ぶぞ。ひとまずバキーは金持ちから金スってこい」

「外道!!」

「畜生!!」

「お前腕だけ切り離したら余裕だろ、行ってこい」

「船長助けて!!」

 

 半泣きになりながらバギーが訴えるけど知らないね。

 

「死か、金か」

「まだ生きたいです」

 

 駆け出して行ったバギーを笑顔で見送って適当なカフェに座りかけた。コーヒー、ミルクと砂糖たっぷりでよろしく。

 

「シャンクス、聞きたいことがあるんだが」

「な、なんだ?」

「お前が知ってる範囲でいいんだが、五老星とカナエに何かあったか?」

「五老星と?」

 

 割とずっと気になっていたことがあって、そんな重要なことじゃないだろうと思って調べるの後回しにしていた事象がある。

 

 それは五老星なんか私に甘くね?問題だ。

 私が入隊した当初だってそう、『カナエの娘ならOK』みたいな軽い感じで海賊の子を許されたし、なんなら大将の地位にまで押し上げられた。

 

 結構謎なんだ。

 解明しなくても問題ないからいいんだけど。

 

「確か副船長が『五老星のじじい共をまたカナエが助けた上に誑かした!』とか血を吐く勢いで言ってたけど」

「…………誑かす、なぁ」

「姐さん褒め殺しが得意だから…。あ!あとベガパンクがどーたらこーたらってのも言ってた。ベガパンクは政府の科学者だろ?影響あるんじゃない?」

 

 又聞きになるから情報の精度は落ちるけど、やっぱカナエはカナエだ。

 カナエって、ちょっとオタク気質っぽいもん。

 

「お前も五老星に会い始めたら言っとけよ」

「えっなになんで会う前提なんだ?俺が?なんで?」

「カナエは海賊の中でも無害な部類だからなぁ海賊に囲われたカナエの如く、あいつの子供は海軍で囲うのがいいだろうなぁ。ありゃ政府のたまじゃねぇし」

「ねぇなに怖い!話が微塵も通じてない!怖い!」

 

 キャンキャンと吠えているけど、お前はどうせ五老星と会います。小さい頃、おたくに後半の海から前半の海まで運搬してもらったことがありますがお前にはレッドラインを超える方法が二種類ありました。魚人島か、マリージョアか。

 

 あの時はどっち選んでも胃は削れたな。きっと。

 

 今のキャパでもマリージョアは限界なのに小さい頃なら尚更海賊INマリージョアはキツいって。

 

「海賊って育児に向かないよな」

「ほんとに!話の!流れが見えねぇんだよ!」

「──ぎゃあああああ!」

「っ!」

 

 遠い目をしていたらチビバギーの叫び声が聞こえた。

 

 咄嗟にそちらを見ると。首を掴まれて宙ずりになっているチビバギー。

 

「……チビシャンクス、行ってこい」

「無理だよ!相手誰だと思ってんだ!?」

 

 分かってるから言ってるんです。

 

「七武海入りは確定している──あのクロコダイルだぞ!?」

 

 大丈夫大丈夫、未来の七武海だろうと未来の四皇には勝てないって。行ける行ける。7と4だもん。4の方が希少だよ。

 

「てめぇ、この俺から財布を抜き取ろうとしたのか?あぁいいぜ殺してやる」

「え、エースぅぅぅぅ!!」

「ちっ!」

 

 バギーの叫び声と共に駆け寄って若クロさんに適当な角材でぶん殴った。

 

──サラッ

 

「あぁ?」

 

 砂になるのは承知の上。そうすれば持っている物は落とす。

 潰れたチビバギーの声を尻目に手から水を噴射した。

 

 ベッチョリと濡れたクロさんは拳を握りしめた。

 

「〝武装〟」

「……!?」

 

 手が黒く染る。

 なんで!?お前覇気使えないんじゃなかったの!?

 

 よし、遊ばず逃げよう。

 

「うぎゃ!」

「エース!」

「……お前らロジャー海賊団か!」

 

 チビバギーとチビシャンクスさんを抱えて屋根の上に飛び上がり、クロさんの拳から逃げた私は心臓がドッドッドッドッと爆走している中、さらにスピードをあげた。全力である。

 

「未来の七武海中々だな」

 

 私が知ってるルフィに敗れたクロさんより強い気がするんですけど!?

 ぐぅぅーーー!!ほんとは心から叫びたい!

 

 

 この世をば!クソ!

 

 

 

 

「……なんで赤いのと青いのが目を回してるんだ?」

「バレットおおおこいつ酷いんだあああ!」

 

 逃げることなく留守番していたバレットの疑問はご最もですが、私も目を回しています。

 うぇえ、全力すぎて酔っちゃった。




お久しぶりです。ほんとはクロコダイル出すつもりなかったけど尺余っちゃったからバレット繋がりで登場させちゃった。
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