第260話 墓参りなのか墓荒らしなのかは不明
過去から現代に戻ってきた。過去ではいっぱい色々あった。大変だった。思い出したくもない。
「それで、これは保管するか、それとも破壊するか?」
「破壊一択だな!」
センゴクさんの問いかけに即答する。
随分前のことに思えるようだけど、私は悪魔の実を食べた機械の保管と破壊の判断をするために巻き込まれていたのだった。
「リィン、向こうにどれくらい居た?まさか50年とか言うんじゃないだろうな」
「まさか!そりゃ確かに50年前には居たが、途切れ途切れで、合算1年くらいだったか?」
それよりセンゴクさんって、私が『幻』だと睨んだ上で答え合わせのようにこの機械に会わせたんだよね。
こっっっわ。怖すぎ。先読み所の話じゃないって。
常識を疑ってかかって、多角から取り入れた情報を精査して。不可能を排除して行ったらそこに残ってるのはどんだけ滑稽でも真実とかって誰か言ってた気がする。気のせいかもしれないけど。そんな感じ。
そう、シュテレンドゥアーの犬とか言ってたような……。
「…………。ふむ」
「んぁ?どうした?」
「リィン、お前1日有休をとれ。溜まりまくってるだろ」
「あー。海賊船に乗ることを仕事だと言うのなら休みなんざねぇな」
「………………。リィン」
「はい?なんだ、センゴクさん」
センゴクさんはふっかいため息を吐いたあと私の頭をぐちゃぐちゃにした。
「今からリィンの知り合いに会うことを禁止する」
「は!?」
「お前はすぐに医療機関を受診。そして怪我や感染症の確認をして、身体に何も無ければその後の時間と翌日は休暇だ」
「は、はい」
「そしてお前にはまだまだ仕事が残っている。帰還後はすぐに元帥室に来るように。喜べリィン」
センゴクさん、あの、その爽やかな笑顔ってなんか私すごく嫌な予感がするんですけど……。やめて貰えません?
「──お前にはまだ、赤封筒案件を残してるぞ」
「ひぇ……!」
この過去渡航は赤封筒(世界的重要)案件では無かったんですか?あぁ、私たち2人以外に知られてはいけないと、なるほど、それで表立った赤封筒案件が必要だと?要りません。本当に要りません。
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休暇である。
暇だ。
突然降ってわいた休暇に、何もできないで居た。
だって、寮暮らしみたいなもんだったから自宅って無いし?
リィンの知り合いと会うなって言われたから
「どーーーすっかなぁ」
海軍の医療機関で受診したとは言え、私の格好はエースそのもの。
うーんと考えて、思い出した。
「……今日って、ロジャーの命日じゃん」
墓参りには行くって約束したばかりだし、いっその事ローグタウンまで行ってみるか。
──と、言うわけで。
「やって来ましたローグタウン。いやー久しぶりだな」
麦わらの一味として出港して以来だ。
バギーに処刑されかけたルフィが居たり、革命軍と会ったり、ギャバンの情報屋を教えてもらったり、スモさんと月組が一緒に行動してるのを知ったり。……懐かしいな。
ここ最近は短いスパンで色々な事があったから長く少した気でいるけど、海賊になってまだ経過年数は1年未満だったりする。
さて、墓参りと言うが墓の位置は分かるのかって?
ふっふっふっ、私を舐めないでもらいたい。
「
「め、女狐大将!?」
ロジャーの墓は海軍が管理してある。
ローグタウンの海軍支部、その中庭に本物の骨が埋まっており、悪用されないようにコンクリートと海楼石で覆い隠されている。
「あの、自分は戦争の電伝虫を見てました……!」
「……そう」
「やはり本部の将校は凄いですね。結果は残念でしたが、我々も海軍本部に引けを取らないように精進します……!」
案内してくれる海兵の声に無表情で、だけど慕ってくれてるから無下にも出来なくて時々相槌を打つ。パァ!と、表情が明るくなるからコビー君を思い出すよね。
じじに預けてからなんか軍艦1隻と引替えにえげつないほど成長しちゃってまぁ……。その軍艦、ほぼ廃船だったくせにきっちり経費取られてたよ。
女狐隊は潜入し始めてから隊を組んでる様なものだから経費とかまだ全然無いんだ。
大将歴は長いのに歴史が浅い。
「女狐大将が来たって!?」
「あ、モルテ大佐」
「うわーーーっ!まじで大まじで大将だわざわざ
「……あ、ぁ」
その勢いに驚く。
モルテ大佐はスモさんの引き継ぎかな?
「海賊王の墓との事でしたね!すぐにご案内します!」
「大佐ずるいですよ!俺、俺が案内したかったのに!」
「残念だったな軍曹。ここの支部に私より偉い人間は今のところ居ない。上司命令」
「えーーん!」
上下関係が気安いのかポンポンと軽口が交わされる。見事案内役を獲得した大佐はキラキラとした笑顔で案内を開始した。
……そういえば、本部と支部というより
そんな最弱の海で海軍本部の最高戦力……。この反応も致し方ないか。
「こちらです」
野ざらしになったガラス張りの中庭。その中央に石碑があった。
──世界最大の犯罪者ゴールド・ロジャー
石碑に書かれた言葉に思わず笑みが浮かぶ。
なぁロジャー。お前、大悪党だってよ。
名前も間違えられてるし。と言うより、Dがやばいのかな。隠されてる気がする。
D、神の天敵。
神ってのは誰のことを言ってるんだろうな。天竜人?五老星?いや、それよりも……。
「よし、やるか」
「はい?大将?」
アイテムボックス。
何も見えないけど、何も聞こえないけど。墓からロジャーの骨を探す。
「……これか」
「大将、一体何を?」
ロジャーの墓参りの名目を何にしようか悩んだ。だから私はグレンさんの報告を利用することにしたのだ。
とある海兵曰く、『エースの死後復帰したのはロジャーの力によるものである』と。だから私はその調査で亡骸が眠る場所に来たのだ。
ウンウン、生き返ることも無く、ちゃんと骨だな。
ちなみに、ビブルカードって爪から作るんだけど、もしかして骨からでも作れないかなって思って。ちょっと依頼出してみようかな。……まぁ大雑把に言うと爪は皮膚の一種だから無理かもしれないけど。
「……調査は終わった。協力感謝する」
「はい!いいえ!」
「どっちだ」
女狐からツッコミを引き出したことは誇っていいと思う。
「またな、ロジャー」
お前みたいなやつがここにじっと眠っているわけが無いと思うけど。いつか転生した先で会お……いややっぱ今世だけで充分だな。
でも、出来れば。
リィンとして貴方と会ってみたかったな。そして言うんだ。『私の海賊団もなかなかに凄いんだぞ』って。
さて、墓参りが終わった私は処刑台のそばにある人気のなさそうな寂れたラーメン屋に来ていた。
無遠慮にガラッと開ける。
「へい、いらっしゃ……い」
「五つだか六つだか知らねぇが塩のラーメン一丁」
店長、そして情報屋のギャバンがサングラスをずらした。
「て、てめぇエース!?」
「うるせ……」
「……!エース、お前今まで何を」
「おいおいおいおい、ここの海軍にバレたらやべぇ度が上がったじゃねぇかよ」
「おん?」
ラーメン屋の奥。まさかの人物達が座っていた。
「げ……」
「げ、とはなんだ」
冥王シルバーズ・レイリーと剣帝カトラス・フェヒターだった。
うーん。さっきぶり。一気に老けたな。
過去からまだ1日も経ってないんですが。
「久しぶりだな、エース」
「おー。なんだ、同窓会かよここは」
レイリーに肩を取られ、フェヒターに腕を取られ。ギャバンを目の前に配置され。あれよあれよという間にサンドになってしまった。
「……おもれぇから海軍に連絡していいか?」
「何故いいと思ったんだ!」
「面白いって言えば何でも許されると思うなよこの馬鹿」
「冷静に考えてダメに決まってるだろ」
総ツッコミである。ぴえん。
「おはよう寝坊助。いつ起きた?」
「ん?あー、秘密」
フェヒターの質問に簡単に答える。いやぁ、頂上戦争では確定で起きてた事になるけど、それ以前をどうするか決めきれてなくてね。
「つーか覚えてねぇよ。少なくとも、ロジャーはもう死んでたぜ。よって、初墓参り」
「墓参りとは言えど、墓は無いだろう?」
「いや?あるぜ。海軍支部の中に。暇なら行ってこいよ」
「……まさか行ったのか」
「これから行くとこ」
嘘です行ったあとです。
なんかつまみでも出せよ、とギャバンにガンをつけたら枝豆が出てきた。渋々といった様子。
「そういや、俺が抜けてからどうなった?」
すると3人は軽く目を合わせて掻い摘んだ説明をしてくれることになった。
「まずバレットが速攻船を降りた。油断も隙もない」
「
「エースがちまちま遊んでた見習い2人はバギーの方が熱出して渡航しなかったんだよ」
「今やあいつも四皇だからな」
「ロジャー海賊団が解散して、ついこの前ロジャーの息子が処刑されかけ……」
エトセトラ。
大まか私と認識と変わらず、へぇ、と興味無さそうに呟いた。
「カナエは死んだのか」
「……あぁ」
レイリーはギリリと拳を握りしめた。
「レイリー、答え合わせをさせろ。──カナエはこの世界の人間じゃないよな?」
「…………あぁ。この世で、それを知るのはもう私1人だけ、だった」
ほぼ確信していたけれど、必要な情報だった。
「クロコダイルと言う海賊が、死に際に立ち会った。彼がカナエの死体を全て砂にしてくれたようだ。……死体を利用されては敵わないからな」
「へぇ、あの七武海が?」
「あー……あの砂利ガキか……」
レイリーの話にギャバンが意外そうな顔をする。俺としてもクロコダイルとは1度邂逅したことがあるので、なんとなーく話を合わせておく。
「まぁ、砂鰐男はあのアホ女の小娘にお熱だからな」
「おねつっ、て、あ、ちょっと待て、カナエの娘つったら堕天使……!?」
「なんだよグラサン、その小娘だが?」
「いや幼すぎじゃねぇか!?」
分かるよ。うん、すごくわかる。
だけどごめん。七武海ってわりと海賊の中では例外でクレイジーなんだ。その筆頭はクロさん。
「あ、エースにも説明しとくと。カナエとレイリーに娘が居てな。今年13かそこらだった気がするんだがまぁまだ若い子で」
「──知ってる」
俺は枝豆を口にしてレイリーを横目で見た。
「俺の名付け子だろ。やーい、フェヒターとリィンは名付け子兄妹〜」
「言うと思った!!!」
フェヒターを揶揄うと予想していたのか恨めしそうにこっちを睨みつけてきた。ホッホッホッ、言うが良い。事実は変わらん。
「……。私は、リィンに酷いことを言ってしまった」
ギャーギャー騒いでいると、レイリーがぽつりと零した。
「彼女のせいじゃない。カナエが最期の力を振り絞ったのは、カナエの目的の為でカナエのエゴだ。冷静に考えたらすぐに分かる。カナエは誰かのために犠牲になるタイプではなく、自分本位な存在。……たとえそれが、死に対しても」
分かる。だいぶ自分本位だよね。我が強い。お前ほんとに日本人か?ってレベルで我が強い。一見優しくて遠慮気味に見えるけどわりと我が道突き進んでる。色んな意味で鈍感。
「それだというのに、私は。彼女に対して『何故カナエを殺した』と、言い放った。……私は愛しい人を亡くした。彼女もまた、私と同じく親を亡くしたばかりだと言うのに」
「うん、お前が悪い」
「あぁ、実際見てたけどお前が悪かった。最低だな」
ギャバンが頷き、フェヒターも頷く。レイリーはそんなことは知ってると言わんばかりに苦虫を噛み潰したような顔だ。
「ふーん」
対して私は素知らぬ顔。
あー、そういうこともあったな……?ロジャーの威力が強すぎて忘れてた。
「私は、私の娘を愛していたのでは無かったんだ。カナエの娘だから……気にかけていたんだ……っ」
レイリーの暴露にフェヒターが呆れた顔をする。
「お前、それ死んでも小娘の前で言うなよ」※目の前
「火拳と同じようにあの嬢ちゃんも海賊の子なんだから、味方居ねぇんだぞ。絶対謝れ」※目の前
「んぐぅ……」
小さな唸り声が聞こえた。
「あー、俺は別に謝らなくてもいいと思うぞ?」
「……?」
「リィンなら、知ってるよ。絶対と言っていい」
「エース……お前に彼女の何が分かるんだ」※本人
大丈夫大丈夫、所詮それを口実にして『親にお前はいらないって言われたんですぐすんぐすん』って各所に泣きついて味方増やすだけだから。
「レイリー、お前は父親じゃ無かったんだよ」
「グハッ!」
「リィンは愛されてる。だからお前は無理に親役をしなくてもいいんだよ。荷が大きい」
「グフッ……!」
海賊シルバーズ・レイリーは父親としてはあまりにも小さい。
「いやー、今日はいい酒が飲めそうだ」
「クソサイテーだな」
「サイテー」
「ほんとにサイテー」
せいぜいそうだな、友人がちょうどいいんだよ。お前も、カナエも。
==========
──海軍本部
「……混ざってるな」
センゴクが元帥室で過去から戻ってきたリィンの事を思い返していた。
リィンが『幻』なのではないか。その仮説はセンゴクの中で年々大きくなっていた。
ベガパンクが悪魔の実を食べる無機物の失敗作を生み出したのは数年前。この世界以外のものに反応すると知ったのは3年前。その時点で、ほぼ確信に近かった。
確信したのはシキの件。そして頂上戦争でリィンが『口が悪く女にだらしない黒髪の海兵像』を生み出して、確定した。
センゴクはリィンの、いやこの場合エースと言おう。エースの喋り方を思い出す。
エースとして全力を尽くして過ごしていたのだろう。意識はリィンとして確立しているものの、口から出るのはエースの口調だ。
麦わらの一味に課した2年間の修行期間。
その猶予は幸いなことにまだ始まったばかり。
「すぐに戻るとは思うが」
それよりもこれからリィンの身に起こる赤封筒案件。海軍内部では責任者は『リィンしか居ないだろ』と、結論が速攻出された件。
……まだ。政府に許可が取れてないので。
「帰って早々悪いが、質のいい胃痛でも用意しておくとするか」
パシフィスタの海軍責任者は女狐となった。
まだまだ、仕事は沢山ある。
リィンはこれから先の海軍を引っ張って貰わなければならないのだ。
捨ておく暇も、停滞する暇も、与えない。
「──おかえり、リィン」
今はただ、愛娘の帰還を喜ぶとしよう。
そこにあるのは、確かに父性だった。
前の章を引きづってる話です。
さぁさぁ新章です。ここからはギャグ&胃痛パートがやってくるよ、そりゃもう、ほんとに。