2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第265話 おかしな事に向かうところ敵しか居ない

 

 

「──この度は、大変申し訳ございませんでしたっ!」

 

──アラバスタ王国

 

 半強制的に連れてきたクロコダイルことクロさんを横に、私は女狐の格好のまま謁見の間で土下座した。土下座外交とはこのことである。違うけど。

 

「頭をあげなさい、女狐君」

 

 コブラ様の横にはチャカさんとペルーさん。コブラ様が気を利かせてくれたからか退出している。うっ、信頼が厚いよ。プレッシャーだ。

 

「さて、君がここに来たということは最近新聞に載った【麦わらの一味完全崩壊】について、だろう?なぜクロコダイルが居るのかは不明だが」

 

 コブラ様は娘が行方不明になったというのに落ち着いた雰囲気で笑っている。

 え……怖……なんで?

 

「まず、私は女狐君のことを信頼している。表向きは誘拐だが、ビビの意思でルフィ君の船に乗ったこと、そして続け様のニュースでルフィ君が無事であること、女狐君が訪問したことによってビビも無事であると確信している」

「……ありがとうございます」

「君には親子共々、何度救われたか。感謝してもし足りない。謝罪は結構だよ、それより何があったか説明してもらえるかな?」

「もちろんです」

 

 私は掻い摘んだ説明をする。

 

 麦わらの一味完全崩壊はセンゴクさんと私の計画によって進められた事。

 ・麦わらの一味の実力では仲間の『王族』を守るには力不足であるという点

 ・最悪の世代と呼ばれる実力派海賊から出航のタイミングをズラして危険性を下げたかったこと

 ・『頂上戦争』にて義兄弟の契りを交わしているルフィ(及び一味)の参戦が予想された為、巻き込まれないよう物理的に距離を離したこと

 ・ビビ様が帰国出来る最大のチャンスを作ったこと

 

「──以上が、麦わらの一味完全崩壊の裏事情です」

 

 はい、今即興で考えました。

 結論はね、どんなくだらない動機も立派な動機も、出てしまえば同じなんだよ。

 

「……なるほど。理にかなっている。して、今ビビはどこに?」

「はい、それに関して。今回クロコダイルと共に来た理由になります」

「………………ほう。まさかとは思うが、我が愛娘は、我が国を、陥れ、地獄の縁に追いやった、生粋の、変態ロリコンクソ野郎のところにいる。とでも言うつもりか」

「本来であれば革命軍がビビ様を保護する予定でしたが、運悪く保護したのは」

「幼いビビに一目惚れをし、挙句の果てに麦わらの一味の少女を私の目の前でボコボコに叩き潰し、今女狐君に海楼石で拘束されている、性癖捻れの史上最低限界男のことかね?」

 

 

 はいその通りです。

 私よりもヘイトが向くであろうクロさんを連れてきて大正解だった!

 私!ありがとう!ナイス判断!

 

「あ、そういうすれば大丈夫ですコブラ様。彼は私がリィンだと知ってます。そして喜ばしいことにクロさんが好きなのは幼いビビじゃなくて海軍雑用のリィンちゃんですから」

「──それもそれで擁護出来ないんだが?(ど低音)」

 

 コブラ様の厳しい視線がクロさんに降り注ぐ。

 クロさんは私を睨みつけてきた。あ、反撃とか反論はしないんだ。私の胃が痛くなった。

 

「君が、身を、削るんじゃない」

「ありがとうございます」

「あのだな女狐君。君は我が国の恩人で、幼い頃からビビを守ってくれて、今も最前線で戦ってくれている。玉座から中々動けず、後手に回る他ない私の代わりに。とても助かっているんだ──だが」

 

 キッ!と、今度はコブラ様の視線が私に向いた。な、なんでしょうか。

 

「君は一体自分がいくつだと思っているんだ!少しは自重しなさい!大人を頼りなさい!」

「……そういうコブラ様だってアラバスタ出航後に合わせてヴェズネ王国の依頼を斡旋したではなきですか」

「誰が『己を麻薬の囮にして麻薬売人を王国から引き払うように説得しろ』と言った。指示書を読まなかったのか」

 

 いや、はい、言ってないです。

 『麻薬中毒の国民』と『ブローカーと取り引きをする貴族』のふたつ。それを何とかしてするきっかけを作って欲しい、という要望でした。私には。

 革命軍への要望は私とはちょっと違って『(ヴェズネ貴族の)黒幕の特定と捕縛』『顧客リストを手に入れる事』『ブローカーの特定又は捕縛』だった。うーん、やりすぎた?

 

「……お前続け様に国救ったのか」

「(イラッ)」

「痛っっっ!てめぇ、蹴るんじゃねぇよ!」

「七武海が!やらねば!不要の!苦労!」

「お前が麦わらなんざにしっぽ振るからだろうがふざけんなてめぇ!」

「お前がふざけるなぞ!!!」

「っっ!てぇなクソ!」

 

 蹴り2回目である。

 私も成長したな……。過去に行かなきゃ七武海なんて怖くて手出し出来なかったよ。

 

 なんかこう……物事ってなんとかなるんだなって……海賊相手だし。

 こちとら世界的に正義ぞ?お?海の屑が?おお?楯突くんか??みたいなモードで対抗出来る、気がする。

 

 海賊王の一味より怖くない。

 

「……お前っ、ほんとに!」

 

 何があったか、と聞きたいのだろうけど私は速攻飛び跳ねてクロさんの後頭部を掴み地面に叩きつけた。

 

「アラバスタの件も、そして大罪を犯した人間を再び七武海の地位に着かせてしまった事を、改めましてこの場で謝罪します……っ!」

 

 ここで海軍を代表して言わないことがポイント。名ばかり大将にそんな権限無いから。むしろ正式謝罪の場に偽物が来たら舐めとんのかってキレられる。

 

「……後で覚えてろよ」

 

 海賊王一味の方が怖いとか言ってたね。ごめん嘘。クロさんの方が後が怖い。

 

「…………驚いた。女狐君は、随分クロコダイルの手綱を握れているようだ。いや、君のことを舐めていたわけではないのだが」

 

 コブラ様の驚きにチャカさんとペルーさんもウンウンと頷く。

 名ばかり大将だから、地位と実力が釣り合ってないのは重々承知。七武海もリィンが女狐だと知ってる面々には舐められるだろう。

 

 クロさんが大人しいのがあまりにも怖すぎて胃痛してきたんだけど。対価に何要求されるのかな……。

 

「クロコダイルを再び七武海にしたのに、何か理由があるんだね?」

「はい」

 

 まぁないけど。

 強いて言うなら広告塔ってだけだけど。

 

 そんなこと言えるはずもないので真剣な顔して見つめ合う。

 

「……わかった。女狐君のことを信じよう。クロコダイルの件についてアラバスタが政府及び海軍に抗議する事は無い」

「……! え、あ、ありがとうございます」

 

 そこまで説得をするつもりは無かったんだけど。正直私だけが助かればいいと思ってたから。

 

「ただ、ビビの件についてはクレームを入れさせてくれ。ONLYALIVEなのになぜ行方が分からないんだ、と」

「それは構いません」

 

 不自然だもんね、子煩悩の国が何も訴えないの。国民は真実を知ってるけど、世界的には誘拐の形で取ってるから。

 

「コブラ様、ひとつだけ。警告をよろしいですか?」

「警告とは……随分穏やかではないな。言ってみなさい」

「耳をお借りしても?」

 

 クロさんもいるしチャカさんやペルーさんもいるから、あまり知られたくは無いだろう。コブラ様は頷いてくれたので近寄る。

 

 耳に口元を寄せて警告を口に出した。

 

「安易に空白の歴史や歴史の本文(ポーネグリフ)について探らないように気を付けてください」

「……!」

 

 ニコ・ロビンと王の墓で別れた時、コブラ様は歴史にもオハラにも気にかけていた。私と交流がある王族の中で、1番怪しいんだよコブラ様!だってこの人『私はもう老い先が短い、真実を教えてくれないだろうか(意訳)』みたいなことして口封じとして殺されそう……。

 

「君は、『らしく』なったな」

 

 あ、これは嫌味の方だ。

 政府の役人らしく、海兵らしく、余計な首を突っ込むな、と首を刺しにきたと思われたらしい。

 

「今では無いんです。五老星は甘くない。せめてこう……ニコ・ロビンとか革命軍とかをバックにつけて亡命してもいいレベルまで保身をかけてからにしてください」

「物騒だな?」

「ですよ!?だって聞きましたもん直接。にっこり笑顔が返るしますた」

 

 あんだけフレンドリーなじいちゃんの雰囲気醸し出しながら、歴史を探ろうとした一瞬で踏み込むなと言わんばかりに線引きされたんだもの。

 

「……というか君、五老星に会える立場なのか……。もう名ばかりでは無いのでは?」

 

 すっごく嫌です、の顔。

 中間管理職だけは嫌だから地位が高いのはすごくありがたかったけど、それに伴う責任は本当にいらないので名ばかり大将のラフさを気に入ってるんだよ。

 

 

 ==========

 

 

 

──シッケアール王国

 

「ミホさん新しい電伝虫の番号届けに来……あれ?帰ってない?」

「当たり前だろ行動力バカ……!俺らがお前のところに来たのいつだと思ってんだ、昨日だぞ!?たった1日で後半から前半の海に移動できるか!!ドフラミンゴでも無理だわ!」

 

 ミホさんのビブルカードを見たら確かに方角的に違う場所を向いていた。あちゃー。ミホさんの拠点はシッケアール王国だって知ってたし、永久指針(エターナルポース)持ってたから来たんだけど、外れちゃった。

 

「仕方なきですね、伝言だけ置いときますか」

 

 さて、ゾロさんが居場所を嗅ぎつける前に次行きますか。

 

「クロさんここに置いて行くすて良き?」

「せめて俺かお前の拠点まで送れよ」

 

 そこで私の拠点という選択肢が出るのが心底嫌。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「いやなーーーんで場所がわかるんだよい」

 

──スフィンクス村

 

 外壁に囲われた島の中央。

 決して裕福とは言えない島があった。

 

「いやぁ、海軍はちゃんと白ひげさんの出身地の情報くらい掴んでますたよ?まぁ戦争で無茶した白ひげさんが隠れるなれば、戦利品を頻繁に運び込んだことがあるここかな、と」

「怖い怖い怖い怖い」

「それに時々、この島に来る行商船から明らかに不相応な金品が現物で来るとなれば、白ひげさんがこの島に貢ぐすて大事にしてるのは手に取るように分かるじゃなきですか」

「怖い怖い怖い怖い」

 

 クロさんを拠点に置いてきて(ビビ様とは会わないようにした)指針もゲットした私は、その足で直接白ひげ海賊団が居そうな場所を特定して飛んできた。いやー、一人旅最高。後ろへの負担を気にしないで済むし。

 

「確執のありそうなクロさんを置いてくるした私は英断だと褒められて然るべきですぞ」

「また無茶してんねい」

「よいよーい」

 

 真似するな、と叩かれてしまった。

 

「要件は?残念だけどエースは独立したよい。あいつは2番隊隊長じゃなくてスペード海賊団だ」

「あ、それはどうでもいいです」

 

 初耳。驚きはしたけど、まぁ重要事項じゃない。最初は四皇の庇護下にある方がエースのことを海軍からも守れて良いと思っていた。でも今、『海賊王の息子』『死から蘇った者』という肩書きがのしかかった。

 エースの名前は四皇並に大きくなっている。恐らく次期四皇候補じゃないかな?

 同盟相手として白ひげ海賊団の力も借りれるだろうし。

 

「ある程度の情報共有と電伝虫の新しい番号を伝えに来ますた」

 

 ……が。

 

 私は周りの様子を見て、マルコさんに問いかけた。

 

「それより白ひげさんの容態は?」

「……!なんで知って?」

 

 容態が悪化してるのでは。

 そう睨んだ予想は当たった様だ。

 

「戦争直後、海軍を打ち破った四皇白ひげの名前は更に勢いを増す。──筈だと言うのに、当の白ひげさんは表舞台に出てこず息を殺すている。まるで嵐が過ぎ去るのを待つように。そして現状、地方の田舎でゆっくり?療養、と思うしてもおかしく無きですね」

「……。」

「元々医者かかりっきりでいた白ひげさんがあんなに無茶ぞすて、まぁ心配にならぬ方がおかしきですぞ」

 

 他所の海賊団に首を突っ込むのもはばかられるのでどこまで干渉すべきか分からない。

 

「えー!リィンちゃん!?おっきくなったな!」

「おあ!?はっ、そのリーゼント……サッチさん!?」

「おうよ!」

 

 サッチさんだ!久しぶりだなぁ!

 頂上戦争の時は怪我で前線を引いてたから本当に久しぶりな気がする。

 

「元気ですか?」

「おう!もうピンピンしてるぜ!」

 

 握りこぶしをぐっと作るとサッチさんはウインクをした。

 

「親父がよ『リィンが来たんだろ、連れてこい』ってよ」

「見聞色の覇気かよい。ちったあ安静にして欲しいもんなんだがなぁ!」

 

 どうやら伝言係だったらしい。伝言を聞いたマルコさんは怒りを顕にして白ひげさんの場所へ向かう。

 置いてけぼりじゃん私。サッチさんどうすればいい?

 

「一緒に行こうか。お菓子あげるから着いてきてね」

「わーい」

 

 お菓子くれる人はいい人。チョコクッキーを貰ったので万歳しながら追いかけた。

 

 

 

「グラララ……戦争ぶりだな、リィン」

「はい、お久しぶりですぞ」

「久しぶりってほど時間が開いてるわけじゃねぇけどよい」

「あれから1ヶ月くらいしか経ってねぇもん」

「うっそまだそれだけしかたってなき!?」

 

 いやよく考えたら確かにまだ頂上戦争の後始末の書類大量に回ってくるや。

 2週間と1年(過去)と2週間って所かな。働きすぎだよ私。

 

「……女狐は、どうなった?」

 

 ドキーン。

 あんまりつかれたくない所つかれてしまった。でも私は既に回答を持ち合わせている。

 

「……麦わらの一味崩壊から頂上戦争にかけて表にでてきた女狐は、私ではありませぬ」

「だろうねい」

 

 真女狐として対峙したマルコさんが間髪入れずに同意する。

 

「でも、私も未だに女狐です。実際今、私は海軍の雑用として、戦争前と何一つ変わらず女狐としての仕事をこなすてます」

「まだ海軍に居んのか……」

「私の出すた結論はひとつ。『昔から私は真女狐の影武者役だった』です」

 

 まぁ真女狐はみんなも知ってる幻のエース君(つまり私)なんだけどね!えへ!

 

「グラララ!ちゃんと気付いてんならいい。それでリィンは未だに海軍にいて、何を企んでいる?」

「まぁ海軍を盲信する少女を演じて情報掠めとってやろうかと。私の目的は──ルフィを海賊王にする事、ですから」

 

 にっこり笑って宣戦布告。

 

 ごめんね白ひげさん、死にかけの四皇。

 私はもう、あなたのことは怖くない。あなたは家族が欲しかった。そして、ロジャーからラフテルの行き方を教えられても向かう気がない。

 

 白ひげさんの家族が、火拳のエースである限り。私もあなたの中では身内判定。そして同じくルフィも身内判定。これくらい反抗期の子供と同じだろう。

 

 それに私は、最大のカードを切れる。

 

「真女狐の正体に私はうっすらですが予想をつけてるです。予想が合えば真女狐、彼は元は海賊ですぞ」

「海賊……?いやまて、彼と言ったか?」

「はい」

 

 まぁションが男設定だから、っていうのはあるんだけど、そこまで詳しく説明する必要は無いので割愛しよう。

 

「真女狐は、敵じゃなきです。でも私にとっては割と腹立つ存在故に、嫌がらせをしたい!」

 

 表向きの説明をする。

 しかし、真の目的はこう。

 

 『海軍が海賊にやられっぱなしなのはちょっと納得いかないな』

 

 ──ところで2年後、七武海の席が2つ開くんですよね。

 

 

「白ひげさん、生きる気はありますか?」

 

 貴方に生きる意思があるのなら、恩を売りつけるのでよろしくお願いしますね。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「いやなんで分かるんだここが!!!おい誰だこいつに情報漏らしたやつ!」

「誰も漏らしてねぇよ!」

「嘘だ絶対漏らしてるやつが居なきゃ困る!じゃなきゃ怖いだろ!」

 

──後半の海 海上

 

 赤髪の海賊団を見つけたので四皇繋がりでやってきた。

 

「残念なこと言うすてもいいです?──最悪の世代も私の担当」

「くっっっそ、キッドの坊主かよ!」

 

 頂上戦争前にカイドウとバチバチして、さらに最近キッドさん達とバチバチした赤髪海賊団。頂上戦争の影に隠れがちだが、割と大きな出来事を起こしているため特定は容易だった。

 

「四皇はまだしもキッドさんを確保しようと動きたくとも動けなかったのが海軍側の状況ですからねぇ」

 

 あぁ嫌だなぁ。幸いに四皇が私の担当じゃない、ってのが救いだけど。

 ビッグマムとカイドウとの繋がりは嬉しい事に持ち合わせてないから。

 

「シャンクスさん存在する?」

「いるけど、気付いてるけど、気が立ってるから気を付けてな」

「はーい」

 

 私が小さい頃からこの海賊団との関わりがあるけど、改めて不思議だな。

 まぁ、こいつが小さい頃からの関わりがあると言っても過言では無いけど。いやー、歳食ったなぁ!つい最近まであんなに小さかったのに。

 

 

「こんにちは、シャンクスさん!」

「──リィンか。悪いが今、俺は機嫌が悪い。早めに立ち去るん」

「はいドーンッ!!!!!!」

 

 持ちうる暴風で油断しきったシャンクスさんに横風を加え、壁を破り海へ突き落とした。

 

「お、お頭あああああああああ!??!?」

「ちょっ、は、え、今リィンがやったのか!?」

 

 慌ただしくなる船内。ただ一人、ヤソップさんはなぜ私がキレているのか察したので無言で黙祷を捧げている。

 

「リィン……!何しやがる!?」

「──こちらのセリフなんだよ酒カス赤毛のクソ太郎」

 

 危ない危ない。エース君が出てくる所だった。

 笑顔キープしよっか、私。海の中で文句を言うシャンクスさんは、私の表情になにか嫌な予感がしたのか、怒りの表情から引き攣り笑いに変わった。

 生存本能が優れているようで何より。

 

「え、えと、リィン……?さん?」

「ミホさんに、バラしたぞね♡」

「あ゛っ」

 

 おうクソ野郎、忘れたとは言わせねえからな。

 

「どうせ機嫌が悪いって言うのも二日酔いかなにかの自己管理の出来ない甘たれの怠惰で自業自得なのでしょう?」

「うぐっ」

「ハッ、海軍の最高戦力を味方にできると言うのに、わざわざ敵対の原因を作るとか。これが四皇……?世も末」

「グハッ」

「こんなにプリティでキュートな私の秘密を暴露しておいて謝罪も対価も何も無しなのですぅ?──恥を知れおっさん」

「……。」

「あ、お頭死んだ」

 

 魚が死んだみたいにぷかぷかと浮いている。顔?もちろん海の中だ。

 

「よっ海の男(笑)。水葬がお似合いですぞね!」

 

 私は新しい電伝虫の番号をルゥさんに渡した。

 

「これ新しい連絡先ですぞ、よろしくぞり」

「お、おう」

「それではさようなら〜」

 

 

 

 

 

「──ユースタス・キッドですらお頭に近付け無かったのに、あの子はお頭撃沈させたけど、まじで何者?」

「…………新米、よく覚えとけ。女はいつの時代も男を尻に敷くんだよ」

 

 

 ==========

 

 

 

──青い鳥

 

 

「ただいま〜」

「あれ、オーナーおかえりなさい。早かったですね。1、2週間しか経ってないけど」

「うんー。一区切りつきますた故」

 

 移動式の島、グランテゾーロ。箒でVIPルームまで移動して直接窓から入り込む。そこには作業中のテゾーロがいた。

 

 ふぅ、疲れた。いつの間にか後半の海に移動してるんだからびっくりだよ。

 

「珍しい。オーナーツインテール以外もするんですね」

「ついさっきまで女狐すてた故に。ところでシーナは?」

「1時間もすれば上がってきますよ」

「そっか」

 

 ある程度の場所に飛んで最後に辿り着いたのはここだ。

 1日の休みは世界中飛び回ってつぶれてしまい、もう日も暮れた。

 

「ねぇテゾーロ」

「……?なんですか?」

「テゾーロって私の事どう思ってるです?」

「…………そんな片思いを見抜いた言い方みたいにしなくても」

「ため息禁止ぞり!」

 

 テゾーロは胡散臭い笑みを浮かべて私と目を合わせた。目は笑ってないけど。

 

「家族だと思ってますよ」

「嘘くさ〜い!」

「失礼な!本心ですけど」

「知ってる」

「へ?」

 

 嘘に見せ掛けた本当の言葉だ。初対面なら騙せれたかもしれないけど。

 

「私も家族だと思うすてるよ、テゾーロ」

 

 お返しに照れ隠しで胡散臭い笑顔を返した。

 

「……、ずっる」

 

 何年の付き合いだと思ってるの。全く。

 テゾーロが赤い顔で撃沈してるさなか、ドタバタズドンドタバタと、途中で転んだであろう物音が聞こえた。

 

「オーナーいるの!?」

「やっほーシーナ」

「仕事は!?なんか年単位かかるかもとかって言ってたじゃん!?」

「終わらせたぞ」

 

 ピエロの仮面を被った名無しのピエロのシーナ。本名ドンキホーテ・ロシナンテ。

 

 ちょいちょい、とこっちに来るようにジェスチャーで呼び寄せると頭の位置が高いので正座をさせた。

 金髪のふさふさな髪の毛がついた頭を撫で回す。

 そして頭を撫でながら私はシーナの仮面を取った。

 

 テゾーロには伝わりにくい話題をするから、疎外感を感じないように先に断りを入れておく。

 

「オーナー?」

「あのドフィさん相手によく生き延びたなぁ」

「うん?まぁ、兄上なら躊躇いなく心臓を狙うと思ってたし」

「……今回行った任務は、割と人に言えないほどの赤封筒任務だった。だけど、お前になら伝えてもいいと思ってる」

 

 ごめんね、センゴクさん。もうバラしちゃってんだわ。

 

「──なっちゃん(・・・・・)

 

 シーナの表情が揺れた。瞳孔がゆっくりその目に水を溜めていく。

 夢見る幻君を起動させて髪色を金から黒に変える。

 

 

「ごめん、1人にさせて。もう、どっか消えねぇから」

「バッッッッか、ほんっ、おれ、う、うぅ」

「あーあー、泣き虫なっちゃんは変わってねぇなぁ」

 

 耐えきれないとばかりにボロボロとこぼれ始めたのを袖で拭う。珍しいものを見るような目でテゾーロが顔を拝みに来た。性格が悪い。

 シーナはキッとテゾーロを睨みつける。

 

「ウケる、写真撮ろ」

「テゾーロぉ!」

 

 グズグズと鼻を鳴らしているシーナ。オエオエと言葉にもなってない。

 

「おれ、おれは、あんたの名前も知らなかった」

「言ってなかったし」

「勝手に海軍本部に置き去りにされて、手がかりなんて、なくて、いつか出てくる女狐って名前探して、気付いたら中佐になって」

「偉いな」

「そしたらドフィが、ぐすっ、ローが。おれ、あんたに会えなかったのか、こころ残りで、だから、死にものぐるいで、ぐすっ」

「擦るな擦るな」

「今更出てきたって遅いんだよ!!ぶっちゃけもっと後かと思ってた!!」

「早かったのか遅かったのか分かんねぇ言い方やめろ」

 

 身長のせいかな。当時はシークレットブーツ履いてたし、シーナは背が低かったし。シーナの感覚ではもっと背が高いと思っていた可能性がある。

 まァそれはそれとして割と理不尽寄りな罵倒をされてる気が。

 

「遅いよ……俺にはもうリィンってオーナーがいるから、お呼びじゃねぇんだよ……」

「ひでーの。会いに来たってのに」

 

 どっちも私じゃん。穴という穴から液体を大量に流す姿を見て苦笑いを浮かべる。

 

「ねぇ、名前、教えて。あんたの名前を知りたかったんだ」

「呼ばれてる名前はエースだよ」

「………………せんすわるぅ」

 

 ふざけんな。蹴りつけるぞ。

 

「シーナもテゾーロも、私のこと大好きだもんねぇ」

「「いや別に」」

「正座しろお前ら」

 

 夢見る幻君を再度切り替えて髪色を金色に戻す。

 仲良く並んだ2人の捻くれ者達の頭を押さえつけて私は仁王立ちする。

 

「私ってさ。動けるんだよね」

「「……?」」

 

 私は確かにビビりだし、怖いことに関わりたくないよ。

 

 でもさ、動ける人間なんだ。行動に躊躇わない人間なんだ。

 

「小さい頃、切られそうになる兄を背中で庇うすた」

 

 子供の年の差は大きい。だと言うのに、6歳も離れた年の兄を庇った。怖いのに。震えることなく庇った。──動けた。

 

「虎に追われるすた時も、ジジに追われるすた時も」

 

 私は兄に指示を出したし、逃れるために媚びを売った。──喋れた。

 

「七武海を殺すことも、女狐として表舞台に立つのも、ドフィさんからテゾーロを庇う時も、王族相手だろうと、政府相手でも、私は守りたいものや立場のためなら胃を痛めながらも動けるし喋れる」

 

 度胸はある。

 突然過去に飛ばされてもなんとかできるアドリブ力もある。

 

 メンタルと胃が追いついてないだけで、当然の顔をして動ける。躊躇うコンマ1秒は、無い。

 下手なアドリブ力があるから動いた後に理由をこじつけて考えるのも出来る。

 

 

 だから、不思議だった。

 

 なぜ私は頂上戦争で。

 

「私は──なぜ動けなかった?なぜ喋れなかった?」

 

 私はあの瞬間を覚悟していた。カナエに与えられた予知で、あの瞬間を知っていた。

 知っていながら動けないほど、覚悟も行動力もないわけがないだろ。この私が!

 

 

「答えは簡単」

 

──がしり

 

 2人の頭を思いっきり掴み、目を合わせた。

 

「謀ったな、シーナ、テゾーロ」

 

 ニッコリ。

 能力はシーナ。計画はテゾーロと言ったところかな。

 

「ご……」

「ご?」

「「ごめんなさい……」」

 

 お前らしばらく休みはないと思えよ。




クロコダイルは添えるだけ。
過去に向かった1年で大分リィンが変わりましたが、それに気付くのは麦わらの一味と七武海と青い鳥、それと月組くらいじゃないんですかね。海軍は微妙なところ。
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