2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第266話 これが漁夫の利ってやつ

 

「ねぇ海蛇さん。女の色気の作り方を教えて?」

 

 海賊狩り組織、三つ巴。

 暇で純粋に飲みに来ていた幹部、海蛇。彼女の武器は女の武器をフル活用して目的の海賊を釣る、という方法だ。

 

 私って最高にキュートでビューティフルじゃん?

 使わない方が勿体ないと思ったんだよね。

 

 昔は幼さにかまけてロリコンしか釣れなかったけど、そろそろステップアップしたいと思ってたんだ。

 

「なんで、うちなん?」

 

 海蛇さんは私の顎に手を当ててニッコリと笑った。

 

 候補はいくつかあった。

 

 海軍ではおつるさん、桃兎ことギオンさんなどなど。女性将校は男らしさではなく女らしさを全面に出している方が多い。

 海賊では海賊女帝やナミさんやロビンさんなど。彼女達は、特に後者は女の力を使って生き延びてきたと言っても過言じゃない。

 

 まず却下したのは麦わらの一味。今、邪魔は出来ない。そして割と対価が怖い。

 次に海賊女帝。彼女はほんの少しだけ心拍数を乱れさせれば石化できるので、恐らく誰よりもピュアだ。参考にならない。能力をフル活用するための美貌。

 

 そして海軍。割りと、めちゃくちゃ、忙しい。そんな余裕無い。私が潜入任務とは言えど家に帰れる余裕があるのがおかしい。

 

 

 そして何より彼女達を却下した理由がある。それは──

 

 

「──だって海蛇さんあたしと同じく貧乳いったあああああああ!!!!」

 

 

 鉄扇はダメだって。

 

 

 

 

 

「まずは自己分析から始めなあきまへん。うちは唇がチャームポイント、あんさんは……」

「目?」

「あぁ、それええなぁ。色味は平凡やけど、平均よりも大きい瞳や。目に光が当たってキラキラしとる。アイラインもいらへん猫みたいなツリ目がちな形、ほんまにええなぁ」

 

 海蛇さんに時間を取ってもらう事に成功した。

 まぁ、うん、王様に仲裁を頼んで貰ったけど……。

 

「目は口ほどに物を言う。あんさんの瞳には口を開かずとも男達を言い従える素質がある。えぇ素質や」

「ほんと!嬉しい〜〜〜!」

 

 要するに、『磨けば宝石だが磨かなきゃただの石っころ』って事ですね?

 海蛇さんって嫌味も強いなぁ。褒めてる風に見せかけて盛大にバカにしてる。カーネイはモデル戦神なので、そんなことを気付かず能天気に笑います。

 

「まぁ、試してみぃ?うちは男衆がぎょうさんおるさかい。……ほら、あそこに『蛙』と『鶴』がおるわ、目線一つで酒でも奢らせてみなさい」

「聞こえとるのだが???」

「目論見も何もかも分かってる状態なので……意味あるんですか?」

「兄さんらは奢らんかったらええねん」

 

 蛙と呼ばれた小太りの偉そうな男と、鶴と呼ばれた黒髪の平凡な青年が離れた場所で作戦会議をしていた。この会話は2人にも聞こえている。

 

 うーん。

 とりあえず目線だけ向けて念を込めてみるか。

 

「(酒 を 奢 れ)」

「殺気殺気!」

「それは色気ではなくて脅しと言うのだが!?」

 

 さもなくばロリコンにするぞ。

 

「カーネイ、お前に色気は向いてないのだな」

「カッチーン、あったま来ちゃった」

 

 蛙さんに煽られてしまった。おふざけターンは終了である。

 深呼吸して雰囲気を直そう。

 

 目が合うと人はそれだけで好感を寄せることが出来る。でも、両目はダメだ。睨みつけているようにも取れる。だから少し隠して、少しだけ長く。

 掴みどころは無いように。秘密を暴きたくなるのが人間だもの。

 

「……!」

 

 鶴さんと目が合う。彼の右目を見詰めて、唇に視線を落として、左目。偶然目が合うよりは長い長い時間。いつもより長い余分な6秒間。

 止まった呼吸を再開させてあげるように、視線を伏せて笑うようにして。

 

 カランと空いたグラスの音を立てた。

 

 人はリボンのような微かな掴みどころを手繰り寄せるの。

 

 さぁ、掴む場所はここだよ。

 つー……と結露したグラスの縁を撫でた。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 鶴さんが顔に血を集めて喉から声無き悲鳴が上がったとき。

 

──チャキッ

 

「……どういうつもり、王様」

 

 私の喉元に王様が振るった刀が、ピタリと沿った。

 

「悪いなカーネイ。お前が優秀ならそれでいいんだが、一つ確認したくて」

 

 悪いと思ってなさそうな顔をした王様が私と目線を合わせた。

 長さ3秒弱。思わず呼吸を忘れる時間だ。

 

「諜報機関とかから来た間者じゃねぇだろうな?」

「ははっ、疑いすぎにも程があるって。あたしみたいな日陰者を雇う奴らがどこにいるんだよ」

「ここだな」

「あー、確かに」

 

 あたしはヘラ、と笑った。

 

「そもそもだけど王様。海賊とか海軍ならともかく海賊稼ぎに潜伏?してなんの利点があんの?しかも2年も前から海賊稼ぎの真似事して?2年も前からどこにも属さずに?なんの意味があんの?」

 

 金豹、なんて噂が出たのは2年くらい前だし。三つ巴に入ったのだってごく最近。三つ巴を探るんだったら2年間の空白って必要?って話だよね。

 

「……まぁ、確かにそうだな。悪かった」

 

 王様は素直に刀をしまった。

 

 

 

 あ、あっっっぶねーーー!!!!!めっちゃ怖かった!!!

 心臓のドキドキが止まらないよォ!

 

 まぁ、残念ながら海軍からのスパイです!ごめんね!

 

「あんさん度胸あるんやねぇ。王様の刀見て一瞬も避けへんかった」

 

 避けられなかった、が正解です。

 殺気?みたいなのも感じなかったし……。なんかこう、試されてるなって感じがすると危機感無くなっちゃうよね……。

 

「それよりあんさん、ものごっつうええなぁ……!本格的に人を魅了する魔性、学んでみぃひん?」

「是非とも!あたしも出来る?」

「出来る出来る、うちのお墨付きやさかい。とりあえず今から言う部位のケアを怠るんや無いで。肌、髪、指、唇」

「んげっ、唇は苦手かもぉ……。(空飛ぶから)すぐ乾燥するんだよね……」

「それから人に見られる事に慣れなあきまへんで?常に視線を意識して、肩下げて、姿勢は1番の魅力やさかい」

「猫背はダメ?」

「死ねどす、って感じやな」

「物騒!」

 

 さて、この組織が海軍の害となるか利となるか、本格的に探って行こうか。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 今宵もまた、宴が始まる。咎人の首を掲げ、儚くも愛しい時が。

 

 ──なんてカッコつけたは良いけどいつもの海賊狩りです。

 

 

「というわけで今日のお供は『犬』さんと『猿』さんです」

「どういうわけなんだよ」

 

 猿さんがツッコミを入れる。

 猿さんは男の子か女の子か悩むくらいの美少年で、恐らく私と同い年くらいだろう。

 そして犬さんは王道美青年。銀髪にオッドアイという特徴盛り沢山な人だ。

 

「カーネイもそろそろウチに慣れたんじゃない?」

「どうだろ。でも、あたし元々1人でやってたからチーム戦っていうのが新鮮で楽しい」

「いいねぇ!俺、カーネイみたいな女っ気捨てたような美しい奴好きだから居てよね」

「ディスってる??」

「超褒めてるけど??」

 

 今回の標的はフォクシー海賊団。賞金首は船長の銀狐フォクシー、2400万ベリー。

 お花チアリーダーポルチェ、900万ベリー。

 四足歩行の奇人ハンバーグ、1200万ベリー。

 

 一人一人の金額はそう多くないけど、海賊団の規模が大きく、また船長も悪魔の実の能力者であるため厄介な海賊団だ。

 

「俺さ、可愛いじゃん?」

「え、うん、可愛いね?」

 

 猿さんがきゅるんとポーズを決める。うるうるの唇に肩まで伸ばした青髪ハーフツイン。ショートパンツから除く絶対領域。一般的に見ると可愛いと呼ばれる要素が固まっている。これ、女の子じゃないんだもんな。

 

「可愛いを引き立てるのってブスか美しい存在だと思うんだよね」

「う、うん?」

「で、俺悪魔の実の能力者大っ嫌い。それと同時に可愛い女が大っ嫌いなんだ」

「へ、へぇ」

「特に金髪ツインテールのあざとかわいい感じの悪魔の実の能力者とかいたら最悪だよね……。この世から滅ぼしたくなる」

 

 ゴキリと手から異様な音が聞こえた。

 あ、私がリィンだってバレたら殺されるな(悟り)

 

「だから俺カーネイは好きだよ。悪魔の実の能力者じゃなくて、あざとさが無くて、海蛇に稽古つけて貰ってんだから。俺と系統が違うよねぇ」

「褒められてる?ありがとう?」

「──2人とも、来たぞ」

 

 犬さんの言葉に意識を切り替える。何も考えないことにしておこう。

 

 さて、今回の出陣には『鷲』『猫』『鯉』『牛』『蛇』が参戦した。蛇さんは情報収集寄りだけど、他の4人は超武闘派。

 

 私を除くと7人だ。

 

「船長は能力者、だったっけ。カーネイ、俺に合わせなよ!」

「はいよー!」

「先走るな2人とも」

 

 猿さんはムチを片手に、犬さんは片手剣と盾を構えた。この世界で盾を使う人間は珍しいんだけど、犬さんって珍しい戦い方をするみたいで、あれ一種のハンマーなんだよ。盾で殴るな。

 

「てめぇら賞金稼ぎかぁ!くそっ、せっかくフォクシー海賊団が波に乗り始めたってのに!」

「……服がボロいな」

「どっかの誰かに有り金全部持ってかれたんだよ……言わないけど……あとが怖いから言わないけど……地の果てまで追いかけてきそうで怖いから……」

「いやんオヤビン!泣かないで!」

「ぷぷ」

 

 あ、思い出した。フォクシー海賊団ってナバロンの次に向かった島で出会ったデービーバックファイトのぼろ負け海賊団じゃん。

 なぁんだ、生きてたんだ。わんちゃん野垂れ死にする可能性あるかなって思ってたんだけど。

 

 確か悪魔の実の能力者は三半規管に真っ向から喧嘩を売るような……。

 

「ええいここでくたばってたまるか!〝ノロノロビーム〟」

「い!?」

 

 鏡だったはず!

 

──バリンッ!

 

 窓ガラスを割って咄嗟に壁を作ると、割れた破片にビームが当たってあらぬ方向へ向かった。

 

「カーネイ!無闇矢鱈に掻き回すな!」

「あたしのモットーは『戦場を引っ掻き回す神』だからごめん申し訳ないとは思ってます」

 

 犬さんに怒られて素直に謝った。

 あたしの持ち武器──クナイを投げてフォクシーを地面に縫い付ける。足が少し引っかかるだけでバランスを崩したフォクシーに追い打ちをかけるのは犬さんだ。それを邪魔しないように猿さんが応対している。

 

 

 さて、ここでもう一度振り返りをしよう。

 

 この現場には三つ巴の幹部は7人いる、と言ったね?

 そう、7人。

 

 怪我をしないで完全勝利。そんな彼らの本気の実力をはかるにもってこいのメンツですが、うちにも7人居るんだ。

 

「──〝指銃〟」

 

 私は予め三つ巴が海賊とぶつかる計画を横流ししていた。

 さて、今日はタダ働きになりそうだなぁ。

 

「赤い、海兵……?」

 

 その赤いスカーフそろそろやめようって進言しよう。純粋な海兵じゃない、って印なだけなんだから。うん、ダサい。

 

お前らも海賊か(・・・・・・・)

 

 私が設定した通りのセリフを放ったのは。ロブ・ルッチだった。

 ずるりと指先に刺さったフォクシーが地面に倒れふす。うん、生きてるね。

 

「……っ!撤退だ!」

「言われなくてもこっちにも来てんだよ!」

「割りとやばいなアレ平海兵の服着てるけど将校並だ!」

 

 犬さんが慌てて号令をかけるが、雑魚海賊を無力化する為に散らばっていた鯉さんと鷲さんがやって来た。

 

「殿は俺がやってやる、てめぇらさっさと王様んとこ行け。グルルルル……!」

 

 猫さんはベポさんと同じくミンク族。

 悪魔の実の能力者じゃなくとも身体能力が高いため、1対1のタイマンに向いている。

 

「逃がさないチャパー!」

「はんっ、この程度の海賊に手間取るわけがねぇよなぁ?」

「涙が出てくる仲間意識だな」

「あ、涙がぁ〜〜!よよい!」

「泡だらけにしてしまおうかしら」

 

 もう分かったね。元CP9、空組の出番です。

 殺しのスペシャリストの彼らになら実力的に安心して任せられる。

 

「わしが1匹先に貰うぞ」

 

 カクが私の眼前に向かってきた。

 

「っ!」

 

 やっぱり私に来ると思ったよ!クソッタレ!

 カクの嵐脚を死にものぐるいで避けてクナイを投げるが、ピッと指先で掴まれ投げ返される。

 

「新入り引きなさい!」

「引けると思う!?」

 

 牛さん(オカマの姿)が警告するけどコイツ殺す気いっぱいだもん無理だって!絶対絶対あわよくば殺してやろうとか思ってるもん!

 カクは肉薄し、冷ややかな顔で殴る蹴るの暴行を加えてくる。私はほんとにガチの実力で受け流して食らいついた。攻撃する暇なんて無いんだけど。

 

「弱いのぉ?」

「てっっめぇ……!」

 

 お口が悪くてごめん遊ばして!

 

「この中で1番強いのは誰だァ?てめぇか?いいぜ噛んでやるよ……っ!」

「偽物の狼がイキるんじゃねぇよ」

「悪魔の実の実験台にしようかしら。泡だらけになる覚悟はいい?」

「能力者かよっ!」

「このご時世、能力者じゃない方が珍しい」

 

 ジャブラが狼に変わり、猫さんと退治する。カリファもカクも悪魔の実の能力者としてはまだまだ新米で使い方も模索している所。実戦形式で試すつもりなのだろう。

 悪魔の実嫌いの海賊狩り組織だ。嫌悪感に顔をひそめている。

 

「余所見してる暇なんぞあるんか?」

「うっ!ぐ、……!」

 

 重たい蹴りが鳩尾に刺さる。

 シャボンディ諸島のびちゃびちゃとした気持ち悪い地面が肌にすりつく。

 

「鯉さん!」

「あぁいいぜ、サポートは任せた」

 

 協力しないと隙は生まれない。海賊狩り組織は団結力が命なのだ。ビジネスパートナーの集まりだけど、協力して助け合わなければ後が無いことを察した。

 

「よっ、鯉さんおっとこまえ」

「煽ててる暇あったら隙作れ小娘ぇ!」

「地面に叩きつけてやる!」

 

 ひとまずカク、お前は私怨も兼ねてるから絶対負かす。

 

 

 

 

 

 結論?

 CP9は総合的に見るといい拾い物をしたと思う。カクは鯉さんと猫さんの手によってぶっ潰されたけど、全員収監→翌朝釈放のスピーディー感は事前に予定組んでただけあるね。

 

 

 

「おめでとさん、牢屋デビュー笑笑」

「海蛇……煽るために来たな?」

 

 インペルダウンより海軍支部の方が牢屋が綺麗なんだよなぁ。牢屋マスターの私はそう思った。

 

 

 

 

 

 ……物理的な強さもやっぱり必要、か。

 

 

 ==========

 

 

 

 

──翌日。

 

 

 とある場所で、退屈そうに天井を見上げる男が居た。

 あぁ、暇だ。

 もう二度と入らないと思っていたのに、まさか三度も入ることになるとは思わなかった。

 

「四肢は残り一つ。獅子(しし)の名も形無しだ…………、なんてな」

 

 暇すぎてダジャレしか出てこない。くだらないとばかりに地面に視線を戻すと、目が合った。

 

 

 牢屋の外で、ぱちくりと視線が絡み合う少女。

 しゃがんで膝を抱え、エヘへと悪巧みしたような無邪気な笑顔で言い放った。

 

「来ちゃった♡」

「──ここインペルダウンだぞ!!!???」

 

 金獅子は、下位互換のクレイジーさを思い出したのだった。




たのしーーーーー!!!執筆楽しぃーーーーーー!!!!!!!
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