2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第268話 海兵だって大変なんです

 

 

「ただいまセンゴクさん!セラフィムとシキは島に置いてきますた!ところで島の名前って正式名称は存在するですか?」

 

 マリンフォード。エッグヘッドからの帰りである。

 

 ちなみにシキは首に海楼石の錠をつけてきた。手八丁口八丁でセラフィム達が丸め込まれないか心配ではあるけど、海賊の話は真に受けないようにねって注意してるから大丈夫だろう。

 命令をした訳では無いけど、威権チップを持ってないシキとじゃ話にならないだろう。

 

「他に言うことは?」

「他?……あっ、海賊捕らえたよ」

「それはついでか?いらないおまけか?」

「人生に不必要な存在であることは確かですぞね」

 

 正確に言うとセラフィムが捕らえた。戦闘方法をシキに見せたかったし、制圧にはちょうど良かったんだ。

 ……ビームで目を輝かせるのって男のロマンなのだろうか。空組(元CP9)も星組(元BW)も、そして今回のシキも、咽び泣くほど感動していた。理解が出来ない。

 

「それとですねセンゴクさんセラフィム達の悪魔の実の能力のオリジナル達と交流が欲しいのですけど、あとですね海賊狩りの報告もありますてあいつら悪魔の実嫌い故に……」

「──ちょっと待てリィン」

 

 センゴクさんは顎に手を当てて私をじっと見た。

 

「お前の癖はわかってるぞ。報告を重ねるな、重要項目のみを優先してひとつずつ伝えろ」

 

「……。私、実は悪魔の実の能力者じゃなきです」

「はぁ!!!????!(クソデカボイス)」

 

 海軍本部に響き渡る実力者の声って、端的に言って鼓膜を破裂するレベルですね。

 

 

 

 

──移動。

 

 

 

「はい、というわけで今日は海軍本部で主に星組の強化訓練をするです」

「また俺たちかよ!!!」

 

 海軍本部の訓練島。予約必須場所だが、今回は女狐隊で貸し切った。

 

 メンツはセラフィムとシキと+‪α‬。

 

「空組はどこ行ったんだい?」

「あいつらはシャボンディ諸島に上陸中の海賊を徐々に暗殺していくという任務がある故」

「物騒!」

 

 メイン業務の海賊狩り組織潜入。しばらく別のことを重要視したいので、組織が得る情報を増やして邪魔をしているのだ。

 一過性のものだと思うけど、一応隊服を来ていたから海軍が絡んでるだろうということで様子見。そういう結論が出ている。

 各々情報を集めたりしているのだろう。

 

「大将、ずっとツッコミたかったこと言っていい?」

「どうぞ、レモン」

 

 引き攣り笑いでレモンは私の背後にいる2人を指さした。

 

「なんで……金獅子のシキとセンゴク元帥もいるの?」

 

 私の後ろには巨大生物が2人居た。

 シキがいるのはもちろんなのだけど、今回の+‪α‬はセンゴクさんなのだ。

 

「センゴクさんは見学ですぞ」

「こんな殺気立った見学いてたまるかよ……」

 

 シキがぼやく。

 大丈夫だよシキ、センゴクさんが殺気立ってるのはお前じゃなくて私だから。

 

 センゴクさんに能力者じゃないと伝えると、それを確認したいと言ったので今回着いてきたのだ。

 海楼石で能力者じゃない、ということは確認し終えたのだけどね。

 

 それに伴い、星組の訓練内容も変わった。

 

 

 

「それで親友。あちし達はまず何をすればいいわけー?」

「逃げること」

 

 ベンサムが諦めたような目で私を見た。

 

「──私と、シキの攻撃から逃げること」

「「「「殺してくれ!!!」」」」

 

 大合唱である。

 

 センゴクさんに能力を見せなければならないので、私は『リィンバージョン』全開で行く。

 だから変装してないし、なんなら箒を片手に待機しているのだ。

 

 訓練島も私の拠点も、変装しなくていいの。楽だわ。

 

「生半可な覚悟じゃ私はともかくシキから逃れられませぬ。反撃するも良し、ですが私もシキも空からが可能。……全力で逃げるべしです」

 

 声なき悲鳴と共に、星組が島の奥へと逃げ出した。レッツ、スタート!

 

 

 ==========

 

 

 

「(リィンが能力者では無かった)」

 

 センゴクは空を見上げながら太陽の眩しさに目を細めた。

 

 午後一で告げられた過去一意味のわからないセリフ。

 過去に行く前に、訓練島で『〝真女狐〟幻のエース』の技を作り出した事を思い出す。

 

 リィンは能力重視の戦い方で、本人の身体能力等を鍛えない。というか鍛えることが嫌いなんじゃないか?とまで思っていた。

 

 だと言うのに。

 

「……詐欺だろコレは」

 

 リィンの戦い方は能力者そのもの。

 空を飛び、風を、火を、水を、岩を。どこかから取り出した武器を。それらを操り敵を追い詰める。

 

「クレイジーちゃん!?お前その武器どっから取り出した!?」

「ナイショ!ぞりー!」

「いやぁぁぁあああ!!掠った!掠ったって大将ぉぉおおお!」

 

 元クロコダイルの部下たちは気付いて無いが、リィンの攻撃は決して人に当てようとしてない。

 まぁシキはおそらく気付いているだろう。

 

 人を傷付ける事を良しとしない性格。

 と、言うより。自分の手を汚したくない性格。

 

 CP9を部下として迎え入れてから殺しの仕事が多くなったこともあり、自分が命令を出すことにおいて忌避感が無いのだろう。

 

 聖人君子と言うよりは自分本位だ。

 

 

「たんまたんま大将たんま!ベンサムが海に流れたから!!」

「泳いで拾ってこいよ。ベンサムも早々に意識を飛ばすなかれ」

「タイショー!?能力者にその考えは横暴よ!?」

 

 いやまじで横暴。

 センゴクは眉間のシワを伸ばした。

 

 自分が能力者のフリした非能力者だから海水が効かないのは分かるがそれを他の能力者に求めるんじゃない。まじで辛いんだぞ、海水。

 

「ほんとになんの能力なんだ……」

 

 思えば、海軍に来た4歳。いやガープがリィンを引き取ったわずか1歳の時から火種を発生させたことがある。もし悪魔の実を食べたのならそれ以前なのだと思っていた。

 あと戦神シラヌイ・カナエのやることなので。あの、ちょっと予想がつかない。離乳食に悪魔の実とか混ぜそうで嫌だった。奴ならやりそう。

 

 だが蓋を開けてみれば能力者じゃない?

 ふざけるな。デタラメにも程があるだろう。

 

「はぁ……」

 

 世界規模で長時間の単独行動ができ、様々な能力者の弱点を突け、更には欠点をサポート出来る。亜空間への収納能力もあり、肉体変化こそ出来ないものの、操れるものは殆どの無機物。錠や鍵をつけても外せると来た。

 

 

 ──海楼石だけが!唯一抑え込める手段だと思っていたのに!

 

 

 口も上手ければ頭も回る。見た目がいいから第一印象は良い方。

 ほんとにどないせえっちゅうねん(キレ気味)

 

「(知られれば、殺されただろうな)」

 

 今でこそセンゴクもリィンもお互いを信用しているが。昔であれば粛清対象になりかねなかった。

 

 このタイミングで良かったが、頭が痛くなる。センゴクは深い、それはもう魚人島に聞こえるんじゃないかという程深いため息を吐いた。

 

「(道理で悪魔の実の能力者嫌いの賞金稼ぎ組織に潜り続けられるわけだ……)」

 

 もう頭が痛くて仕方がない。

 

 リィンが悪魔の実の能力者だと自称しているのは、おそらく海水や海楼石が最大の弱点だと油断させるためであろう。あー、こういう所が厄介極まりないんだ。

 

 リィンを攻略しようとしても、中々攻略できない。海楼石が効かないということはそれこそ殺さなければ止められないだろう。くっそ厄介である。

 

「……まぁ、良しとするか」

 

 リィンの『能力者ではない』という最大級の切り札を知っているのは世界に殆ど居ないだろう。

 センゴクはそうを予想を立てた。

 

 そして、リィンが自ら口に出したのはセンゴクが唯一だろうということも。

 

 

「フッ……」

 

 その優越感にセンゴクは浸った。

 空から降り注ぐ天変地異の再現を眺めながら。

 

 

 ……いややっぱり詐欺だよなぁ。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 久しぶりにリィンとして不思議色の覇気を沢山使った。

 フゥ、と息を吐いて汗を拭う。

 

 いやー、やっぱり集中力が居るよなぁ。でも海賊稼業を始めてから集中力が上がった気がする。

 空を飛ぶのは最早当たり前になってきたけど、やっぱり見た目がド派手でわかりやすい物や理解しやすい物は再現が楽になってきた。

 

「で、大丈夫です?」

「ゲホッ、ゴホッ、ゲボッ!(意訳:これが大丈夫に見えんのかスットコドッコイ!)」

 

 地面に横たわっている星組。ナインとオカンは息があり、荒い呼吸をして私を睨みつけている。

 そして他のメンバーは総じて静かに眠っていた。

 

「クレイジーちゃん、海はねぇわ海は」

 

 帰りの船の上。

 シキが船を操作しながら海軍本部へ向かっている所なのだが、シキもセンゴクさんもドン引きの表情を私に向けていた。

 

「だつて、『海』軍ですぞ?海を足場とするのに、足場を使えねばどうするです」

「いやいやいやいやクレイジーちゃんも悪魔の実の能力者ならよーーーく分かるだろ!能力者に!海は!天敵!」

「天敵を何とかする術を持たずして何が特訓です?」

「──センゴクてめぇどういう教育してんだ」

「──私に聞くな」

 

 星組は例外なく海に放り投げた。

 

 海で活動出来るのは非能力者の3人(まぁパレットは体力がそもそも無いから倒れ伏してるけど)で、他は全て能力者だ。

 能力者が海に弱いのは知ってるけど、意識を失わせないようにするとか、頑張って貰わなきゃ。

 

「そう、気合いで」

「んなアホなことやってたまるか!!鬼畜か大将!!」

 

 そんな幼児の水嫌いじゃあるまいし……。

 

「じゃあ大将てめぇセラフィムにも同じこと出来るのかよ!」

「え、うん。可能ぞり?」

「人間じゃねぇ!!!」

「人造ですもんね」

「すみません違いますそこじゃないです大将あんたが人間じゃねぇ」

 

 ナインがMr.ツッコミモードに入ったらしい。話題のセラフィムは面白そうに見学してるよ。

 

「そういうされても。4、5歳で七武海討伐すてますし、私。年齢は私の中で論点にはならぬですぞ?」

「センゴク元帥!」

「センゴク!」

 

 あ、センゴクさんは顔を背けてしまった。

 いい意味でも悪い意味でも年功序列がない実力主義って、この世界の常識じゃないんですか?

 

 

 それにしても、ナインもオカンも泳ぎが上手いという程でも無い。

 意識の沈んだ能力者を何人も抱えて敵の攻撃を交わすことは不可能。2人、そしてパレットの水泳能力向上は優先度高めだな。

 

 うん。

 海の中の達人。魚人。

 

 

「……──欲しいなァ」

 

 

 ぽつりと呟いた瞬間、言い争いをしていたセンゴクさんとシキが同時に私を向いた。

 

「どうしたです?」

「……お前、時代が時代なら死刑だな」

「急に何事です!?」

 

 

 

 

 

「ただいまー…」

「おかえ……なんで殆ど死にかけてるんだ??」

「リィン分かんないぞり〜♡あ、向かいで着替えてくるです」

 

 海軍本部の女狐部屋に戻る。

 センゴクさんはシキを連れて元帥室に行ってしまった。

 

 夜部屋の中では月組が雑用をしていたので、星組を預けると、私は反対側の昼部屋に入っていった。

 部屋の違いはあまりないんだけど、日勤メインの部下が居る、と思っている。

 

 

「あぁー、疲れた」

 

 無人の部屋で1人、女狐の服を脱ぐ。仮面を片付けて汗やホコリで汚れた服を適当な場所に放り投げ、雑用服に着替えた。

 

 本当はシャワーを浴びたい所だけど、まだ仕事があるので後回し。書類片付けなきゃ。

 

 

 そうして髪の毛を雑に結び直した私に、ひとつ、災厄が訪れた。

 

「〝シャンブルズ〟……は?」

「んえ……?」

 

 白いモフモフの帽子をかぶった、刺青だらけの不健康そうな顔。

 

 

 あ、ダメだ。胃がキリキリしてきた。

 

 

「ここ海軍本部ですけど!?」

「こちらのセリフだが妹屋???????」

 

 

 その侵入者は、本来いるはずのない海賊が部屋に居たことに目を見開いていた。

 

 助けてセンゴ……。いや。

 この場合誰に助けを求めればいいんでしょうか。

 

 

 ==========

 

 

 

 元帥の部屋に、センゴク、そして三人の大将が集まっていた。

 その中央には金獅子のシキ。

 

 とんだ圧迫面接だな、とシキは1人思っていた。

 

「リィンがシキを師匠に選んだと聞いた時は聞き間違えかと思うちょったが、センゴクさん……。インペルダウンにおるはずのシキがここに居るっちゅうことは、確かな話で間違いないんで?」

「頭が痛いことにな」

 

 サカズキの確認に全員が渋い顔をする。

 

「『例の件』もあり、お前たちにもシキとのやり取りは共有させてもらう」

「まァー『例の件』が絡むなら確かに。だがまぁ、流石はリィンちゃん……。ちと想定外過ぎるがな」

「参ったねぇ……。そう簡単に伝説を墓の中から出されちゃ困るんだけど」

 

 センゴクの口に出した『例の件』という言葉にシキは耳をぴくりと小さく動かしたが、本人たちは漏らすつもりが無いのだろう。シキは普通に胡座をかいた。海楼石を身につけてるので多少のお行儀の悪さは勘弁してもらいたいものだ。

 

「それでぇ、シキを出すのにどんな対価を払ったんですかい?」

「インペルダウン修繕を女狐に」

「…………いやそれ自分の尻拭いじゃねぇか????」

 

 シキ思わず首を傾げた。

 うん、壁ぶち破って脱獄したのは知ってるし、その壁修理したってことは無かったことにしたも同然。

 

 なんか、いいように使われたな、インペルダウン。

 インペルダウンの獄長は女狐大将(影武者)の正体を知らないらしい。

 

「さて、シキ。今日のリィンを見て、またはインペルダウンやメルヴィユで関わってどういう方針で育てるつもりだ?」

「(過保護か???)」

 

 シキは4人の視線にちょっと引いた。

 

 センゴク(それとクザン)はリィンが『悪魔の実の能力者では無い』と言うことを知っており、力量を把握しておきたい所がある。

 サカズキは子供に甘いため、リィンが酷いことをされないかという心配を。

 ボルサリーノは『例の件』にリィンがガッツリ関わってくる為、将来の勢力図を把握したいがため。

 

 そんなことを知らないシキは『クレイジーちゃんに骨抜きにされてる海兵ヤベーな』とか思っている。まぁ、時間の問題だろう。

 

「クレイジーちゃんは現場には向いてねぇな」

「ほう?あれほどの能力のバリエーションを見ても、か?」

「あぁ」

 

 シキはセンゴクと似て『人を傷つける度胸が足りない』という結論を出した。

 

「クレイジーちゃんは王だ。王は玉座で指示を出すに限る。アレには戦略や戦術を学ばせるべきだな」

 

 海賊王に執着をし、海賊王の死に際に無策で駆けつける程の男。

 そのシキが王と言ったことなのか、真意は分からないが海兵達は内心驚いた。

 

「頭の回転もピカイチ。そしてだ、俺ァ思ったんだよ、『あぁ、最初に潰すべきだったのは麦わらでも黒ひげってやつでもなく、クレイジーちゃんだったな』と」

 

 シキはメルヴィユでの出来事を思い出して喉の奥から絞り出すような笑いをこぼした。

 

 底知れない新勢力。目立つ麦わらも目立たない黒ひげも。それら全部ひっくるめた上で、シキはただひとりの女を恐れた。

 

「クレイジーちゃんが動かすのは自分の体じゃねぇ。その手の先にある、何百、何千という戦力だ。『一匹の羊に率いられた百匹の狼の群れは一頭の狼に率いられた百匹の羊の群れに負ける』って言葉があるが、ありゃ間違いだな。荒くれ者という狼を従わせる羊がすごいのか、弱い羊でも優れたリーダーがすごいのか…………そうじゃねぇ」

 

 シキはゆるりと首を振って、その瞳に熱を宿した。

 

 

『……──欲しいなァ』

 

 ポツリと呟かれたリィンの鈴が鳴るような小さな声に、センゴクとシキはぞわりと背筋を這う寒気に襲われた。殺意なんて微塵もない。だが、ただの欲望に、危機感を抱く。

 

 たかが欲望に、だ。

 百戦錬磨のセンゴクとシキが、圧倒された。始末しなければならない気持ちに駆られる。

 

「狼に率いられた百匹の狼の群れが、強い」

 

 優れた頭脳に率いられる優れた能力。

 それこそが最強だ。

 

「えーっと、なんてったか。クレイジーちゃんって割と狼を引き寄せるだろ。四皇?七武海?挙句にベガパンク?そんな世の中の狼共が、誰しもが伺いたてる存在?」

 

 あれは生まれながらにして他者を支配する側の人間だ。

 張りぼての忠誠心を捨てさせ、いつの間にか相手の首に服従の証を巻き付けている、質の悪い女だ。

 

「(首輪をつけようとして付けられてるのは、お前らも同じなんだろ。海軍)」

 

 耄碌した頭が、彼女にペットと呼ばれた不愉快をあろうことか仄暗い歓喜だと訴えた。

 

 光の届かない深海で、イカロスは太陽の光を求めて飛んだのだ。蜜蝋の翼が溶け飛べなくなっても、その身を太陽で焦がしてもなお。イカロスは……シキは太陽を求める。

 

「クレイジーちゃんの能力行使の実力は既に世界最高峰レベル。頂上戦争で現れた女狐と、そう変わらねぇ。ありゃ狼だ。まぁ、体術センスはあってもそこら辺に関しては他と劣るがな」

 

 頂上戦争の女狐が純粋にリィンだと思っている大将三人は首を傾げたが、センゴクは小さく息を吐いた。

 たった一度の戦闘で同一レベルだと見破ったシキの観察眼。流石としか言いようがない。

 

 まぁ、だったら対処はある。

 真女狐(エース)に会わせなければいいだけだ。

 

 センゴクはにっこり笑った。シキはちょっと吐き気を催した。

 

「シキ、貴様の考えは理解した。概ね賛成だ。──お前の能力も不要な事だしな」

「あ゛っ」

 

 初歩的な、しかも己が微かにでも自由になる為のきっかけを無くしてシキは頭を抱えた。 

 

「あーぁ、こうなりゃクレイジーちゃんと盃交わして『師匠(パパ)♡』って呼ばせてやる」

 

 自称父親のセンゴクに対する負け惜しみを兼ねた嫌がらせ。

 だが、自他共に心から信頼しあってる胃痛親子の親部分は嫉妬心など浮かばず顎に手を当てた。

 

「……ふむ」

 

 センゴクはひとつ、悪巧みをする。

 2年後、麦わらの一味は集結する。それは海軍でセンゴクとリィンしか知らないことだ。

 

 麦わらのルフィを育てているのは、冥王レイリー。つまり集結の際に間違いなくちょっかいを出してくるだろう。

 

「それは、冥王と剣帝にとって最高の嫌がらせだな」

 

 父親と師匠だと相互認識出来てないレイリーとフェヒター。そんな昔からの付き合いの2人を押しのけてその座にシキが居座るのだ。

 

 面白いことこの上ない。

 

 センゴクはウンウンと頷いた。真顔で。

 

 

 

 

 後ほどレイリーとリィンの軋轢を知ったシキはこう言う。

 

 

「可哀想」

 

 何がって?全てが、である。




冒頭の方で言ったリィンの癖、というのは誤魔化したいことがあるとき情報量の暴力でぶん殴る方法である。
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