海軍本部にローさんが現れた。
そんな簡単な説明です決着が着くはずも無く。
……いや着くな?
「えっと、なにゆえここに?」
七武海は本来マリージョアで集合する。だけども前例の七武海のせいで海軍本部にちょくちょく集まるようにもなってしまったのだ。
だから現七武海のローさんが海軍本部に来ても、まぁ『いつもの事か』なんて思われるのが関の山……。
「だからこちらのセリフだ」
問題は『堕天使リィン』が海軍本部にいることなんだよな〜〜!!はー、くたばれ。
「ちょっと、情報かすめ取るしようとすてますた。幸い、地理地形も、内部協力者もいる故に」
焦る気持ちはちょっとだけ表面に出して、信用性を上げる。
知らないんですか?って顔をして、私が元海軍の雑用だと告げると『そういやそうだったな』って顔をした。麦わらの一味崩壊に少しとは言え巻き込まれてるもんね、ローさん。
「この部屋はこの時間帯に人が寄り付かぬので。……それで、ローさんは何故ここに?」
「あぁ、ドフラミンゴの情報を得たくて」
前回、七武海になる前に探っていた内容が七武海関連だったから予想は出来ていたけど、やっぱり。
この人、多分部下には伝えず独断なんだろうな。
下手したらドフラミンゴと確執がある事すら知らせなさそう……。
「ドフィさんの情報は私とサボが掴んでますけど?」
「……お前は他人が渡す情報をホイホイ信じられるか?」
「でもここで手に入れる七武海の情報も私が渡すた情報ですけど」
「えっ」
「えっ」
もしや私が七武海担当なの知らない?
七武海に関してはだけど、海軍本部の調査書は基本的に私が報告した情報を元に作られてありますけど。
「それで、何を探ってるです?」
ローさんはスッと目を逸らした。
「……ドフラミンゴが元天竜人だという情報の裏付け」
「まだ信じるすてなかったです!?」
「当たり前だろ!革命軍に頼んでも全然情報が出てきてないんだぞ!?それが本当ならもっと根回しとか必要になってくるだろ!」
「七武海本人を探るより天竜人の家系図を辿る方が早いのでは!?」
「そっちの方が難しいわ!!!もごっ」
うるさい。口の中に麩菓子を突っ込んだ。
ちゃんとドンキホーテ聖って本家筋が存在してるんだから、七武海とは言えど血縁でもない人間が同じ姓を使えるわけが無いじゃない。
まぁ、一般人が天竜人の家名を知るだなんてマリージョアに伝手でもない限り難しいけどね。
「というか、同じ七武海にせっかくなったのですから、取りいれば良くなきですか?」
媚び売れよ。媚び売って懐に入ってさらに情報掠めとれよ。もう私はかすめ取りすぎて逆にかすめ取られてるぞ。カッスカスだぞ。その麩菓子みたいに。
呆れた表情でローさんを見ると、本人はもっさもっさと麩菓子を飲み込みながら嫌そうに眉をひそめた。あ、はい。言わなくても分かります。死んでもごめん、ですね。
っかー、これだから海賊は。
目的を達成するためのプライドじゃなくて、その行動自体にプライドが絡んでくるんだからめんどくさい。
「水くれ」
「そんな都合よくあるとでも?まぁあるですけど」
「あるのかよ」
アイテムボックスから水袋を取り出して渡す。
「時にローさん」
「ん?」
「ローさんって実は私に死んでも死にきれないような恩が存在するのですぞ」
「…………は?」
覚えは無いだろう。
今はまだ言えないけど、ドフラミンゴが失脚した暁にはネタばらしをしてもいいと思っている。
「──四皇の一角を落とす、ご興味は?」
恩を返してもらおう。
あなたの恩人、ロシナンテを生きながらえさせた、私の功績を。
そしてこれから訪れるドフラミンゴ失脚の同盟者として。
「──……──、……──」
ローさんに依頼しようとしていた内容を伝えれば、彼は訝しげな顔をする。
「俺がすべきことはたったそれだけか?」
「えぇ」
「本当にそんな、むしろ真逆の行為で四皇を落とせるとでも?」
「はい。確信を持って」
ローさんに被害は被らない。むしろ真逆。
リスクが少ない事も、見ず知らずの『恩』という言葉もあってか仕方なさそうに頷いた。
「一応言っておくが、ドフラミンゴ失脚は同盟であって貸し借りじゃないからな」
「分かるすてます〜」
「あと、そうだ。──革命屋がお前に連絡が取れない、と憤慨していた」
「うっ」
電伝虫の弊害、ここにも。
まだ革命軍とはコンタクトが取れてなかったから……。
「しばらく麦わら屋の居る場所に滞在するそうだ。場所は分かるのか?」
「はいです……」
「……あんな事があったんだ、行きたくないのは分かるがタイミング見計らって行ってやれ」
怒られるの嫌だな、なんて思っていただけだったけど、どうやらローさんはレイリーと私の関係を気にした様だった。
そういやそんなこともあったな、なんて思っていたのはちょっと薄情すぎるので横に置いておこう。
「兄ってのは、いつまでも可愛い妹が心配な性分なんだ」
頭に手を置かれてパッと顔を上げる。そこには、『お兄ちゃん』の顔があった。
あぁ、なるほど。
ローさんって意外と簡単かもしれない。
さてさて。我らのフィールドでそう簡単に出歩かれても困るので、そろそろ退出願おうかな。
「ところでローさん」
「今度はなんだ」
「この時間、そろそろ女狐大将の部下がこの部屋に戻ってくる時間帯ですぞ」
「……っ!それを早く言え」
「だってここ女狐部屋ですもん。それでは」
海軍服に着替えて帽子を深くかぶり、先に退出した。
「じゃあね、オニイサマ♡」
「……っ!?」
あー、妹って簡単だ。
==========
「──リー!」
妹の名前で呼ばれる。
私は、大将でも海賊でもなく兄でも姉でもなく、ただ1人の妹だ。
女ヶ島の外れにある無人島。
ルフィはそこで修行を行っている。ローさんの情報からサボも、白ひげ海賊団の情報からエースもまだ滞在していることを知っていた。
「『エース』」
私は、彼の名前を呼ぶ。
頂上戦争からろくに話せてなかったことに気付いた。
戦争の後、エースの無事は確認した。怪我も無いし、精神的に不安定なところもなかった。強いて言うなら、纏う雰囲気が少し大人になった様な気がする。
でも、私は言えてなかったことがあった。
「あのなリー。俺、親父のとこ辞めてきたんだ。それでスペード海賊団を復活させて……」
「──歯ぁ食いしばれぇええ!!!!」
「ごフッ!!!!!!!」
「「えぇ……」」
ルフィとサボがちょっと離れた場所で引き気味に声を出した。
あのね、にぃに達。
私、色んなことがあったんだ。
「ずるいよ!ずるい!エースは、凄くずるい!」
カナエは10年以上インペルダウンに入ることになっても人生をかけて一点を変えるための賭けに出た。
ロジャー海賊団は遠くから今を生きるロジャーの息子を見守って、時には気付かれないように助けている。
ロジャーは宿敵のガープに頼んでまで、死後の息子を託す約束を交わした。
ルージュさんは己の命と引き換えにエースを世界から隠した。
白ひげ海賊団はどれだけ激しい戦いになろうと、命が失われようと、エースを奪還するために海軍本部に立ち向かった。
サボもルフィも、己の立場を気にせず、世界を敵に回してでも戦争に駆けつけた。
私は過去に遡って痛いほどわかった。
エースは、望まれて生まれてきた。
鬼の子であろうと、色んな海賊から愛情をそそがれて。あまりにも身勝手な期待を込めて。
ずるい。ずるいよ。
「愛されてるのに!!!」
私が欲しかった愛情を、全て持ってる癖に。
肉親からの愛も、環境からの愛も。全部もってる!
私も、愛されてみたかった!肉親に!
命をかけられるくらい!
私の欲しかったものを持ってるくせに、エースは小さい頃から自分の命に価値がないと思っている。生きていたらいけないんだとずっと思っている。
あぁ、なんて傲慢。ずるい。本当にずるいよ。
「──知ってるよ」
エースは凪いだような笑顔で微笑んだ。
「俺は、ずっとずっと愛されてた。とある女海兵が、海賊船って敵地に単身で乗り込んでお袋からの手紙を届けてくれた。その時から、ずっと知ってる」
「……!」
「俺はずっと昔から。生まれる前から愛されてるよ」
くしゃりと頭が撫でられる。
「リーが、俺の兄妹が教えてくれたんだ。生きてもいいって許可をくれたんだ」
しかも海兵に。
そう言わんばかりのイタズラ心を含んだような笑顔で、傲慢な長男は太陽みたいな熱いくらい暖かい手で私の頬を撫でた。
「愛してるよ、リー。生まれてきてくれて、本当にありがとう」
「…………それまた結婚しろ孕めとか言うやつ?」
「ばっっっっっっっかやろう!それは思ってないとは思ってないこともないけど!今のは!家族として!」
「ごめん私愛してる恐怖症ぞり」
「聞いたことねぇよ!!!!」
エースの黒歴史をほじくり返したら微妙に違う過去になってない反応が得られてしまった。そりゃそう、アラバスタから1年も経ってないんだもの。
「え、なに、エース。お前リーに何したんだ?」
「黙秘権を!行使させてください!」
「エース、今の時代それはセクハラっていうんだぞ?」
「ルフィに言われるとちょっと心に来る勘弁して……」
「あぁ……本当に良かった……」
4人で笑い合える未来があって。
手からこぼれおちた命。夢で見た最悪な未来。それを回避させてくれたのだと改めて安堵する。
「…………ありがとう、ロジャー」
身近になった存在に心から感謝をした。初めて。うん、初めて。いままでどっちかって言うと恨みよりだったからね。
思えば、個人的に兄達と会うのは1年ぶりくらいになる。
「なあエース。言っても意味無いけど危険になったら逃げてもいいんだ、分かるか?」
「俺の辞書に逃げると言う文字はない!
「ほかの文字も結構抜けてるでしょ」
サボの忠告に便乗してエースを責め立てる。わーい、やらかした男は圧倒的に不利な立ち位置になるんだぞー。
そんなことを思っていたらサボの顔はグリンと私を向いた。怖い。
「ところでリー……。ずっっっっと連絡取れてない兄ちゃんになにか言うことは?」
「電伝虫が寿命ですた!これ、新しい番号です」
「ごめんなさいは?」
「申し訳ございません」
「……謝罪だけすごく流暢」
失敬な、謝罪以外も流暢だろ。手をゴキゴキ鳴らした物騒なサボに拗ねたような顔をする。
謝罪はね、言うだけタダですから。
「ったく。くまの事でも聞きたかったのに」
「……くまさんの」
くま、という単語に即座に反応したのはルフィもだった。
「そうだよリー!七武海!これ七だ!」
「…………あのルフィ?『これ七』って何ぞり?すごくなんだか胃が引きちぎれそうなる言葉なのですけど意味を聞くすても?」
「『これだから七武海』」
「やだぁ!その言い方やだぞりぃ!!」
「でも七武海だろ?んでさ、俺が無事だったんだからみんな無事かなって。七武海だし」
「ルフィ、くまは七武海の前に革命軍だぞ」
「かくめいぐん……???」
七武海への信頼が厚い。
七武海の傍若無人さを舐めないで欲しいです。
「くまさんからの遺言がいくつか存在するです」
私は指を5本立てた。
「まず、麦わらの一味は全員無事です。情報の裏付けも取れますた。ルフィが新聞にてばら撒くすた2年後のメッセージはほぼほぼ全員理解すてるでしょう」
「良かった!」
さほど心配はしてなかったのだろうが、ルフィはそれでもほっとしたような顔を見せた。
1本指を下ろす。
「くまさんは政府及び海軍の科学者、ベガパンクによってパシフィスタという人造兵器とすて改造されますた。一応、本人の意向です。五老星も絡むすてます」
「なんだと……!?……っ、くまの意識はあるのか!?」
人格。
サボは専門外の知識ではあるものの、そのリスクに気付いた。私は無言で首を振る。
1本指を下ろす。残り3つ。
「まぁご存知とは思うですけど、引き継ぎはサボに。私と」
残った指は2本になった。
「革命軍、そして主に私宛に。ジュエリー・ボニーを守ってくれと」
これは後で調べる。くまさんとジュエリー・ボニーになんの関係性があるのか分からないけど、どうせ最悪の世代の担当は私になるんだ。効率がいい。
「最後……は、ルフィ」
「おれ?」
「──『借りは返した』」
私は最後の指を折り曲げて、ルフィを凝視した。
「何すた?」
「何もしてない!!!!!心外だ!!!!」
私の知らないところで何か問題を起こすのはやめて欲しい。海賊になってからはほとんど一緒に居たから、心当たりがあるとするのならばそれ以前。
そもそも、くまさんは革命軍だし、サボドラゴンといった重鎮と関わりがあるルフィには注目したりするだろう。
ただ、やらかしたレベルはルフィだと規模が違う。まじ、ほんと、世界レベルで。
昔はそんなこと無かったと思ってたのに。外海に放つべきではなかったんだ。
「ルフィなら何かしらやりかねない」
「まぁ……ルフィだしな……」
他の兄2人からの信頼度もこの通りだ。
よくわかっていらっしゃる。
うんうん頷いていると何故か『やりかねないのはお前もだぞ』という視線を全員から受けた。解せぬ。
こんなにも誠実に生きていると言うのに、眠らない海
「やらかしたのはエースもだろ?」
「「そう!」」
「ルフィ、リー、声を揃えるな。マルコも一緒にやらかしたみたいなもんだから俺だけのせいでは無いです」
エースは頭をガリガリかいた。
「黒ひげってやつが無茶苦茶な戦い方をして、俺とマルコは負けたんだ。黒ひげは、未だに名前が上がってないがマーシャル・D・ティーチって言ってヤミヤミの実の能力者で、そして──悪魔の実を無力化させる」
「そんなやつが……!」
「「知ってる」」
「そう、そんな奴が居て…………………………ルフィ?リー?なんて言った????」
「知ってるぞ、黒ひげ」
「うん、一時期同盟結ぶすたから」
「俺はお前たちが怖い!!!!!」
まとめないで欲しい!
シキのところで会っちゃってるんだもん。仕方ないじゃん。能力者の概要も把握したから一味には共有してるし。
「インペルダウンにも居たな」
「うん、マルコさんもご存知ぞ?」
「なんでインペルダウンに????」
インペルダウンの報告によると、収監された海賊及び犯罪者の死体の数が一致しないらしい。もちろん脱獄組が居たからなんだけど、10人前後。私の記憶外の人間がいる。
その中にはバレットも。
よって、脱獄組を含め足りない人間の手配書を再発行申請をしているところだ。これにまた時間がかかるというか、脱獄という欠点を世間に再度知らせることになるので……。渋るよねぇ。
黒ひげの所にバレットが向かったら正直キツイなんてものじゃないな。可能性は高いけど、性格的に考えると低い。これは幻のエース君の分析力ね。
「黒ひげ対策、早めに打つしなければ……」
何より内部の情報も全てシャットダウンされてるのがしんどい。黒ひげは私に全力警戒だし、出来ないことはないけど潜りたくないな。
「エースはこれからどうするんだ?」
「俺か?そうだな、まずスペード海賊団復活として船が必要だろ。んで、食料とか船に置く家具系を揃えねぇと」
「わぁ、リアルぅ。白ひげさんは援助すてくれなかったの?」
「申し出はあったけど断った。男の門出に親のスネ齧っておんぶにだっこじゃかっこ悪いだろ」
「確かに」
「一応海賊盃を割って返上したようなもんだしな」
不義理ではあるかぁ。
「というわけで有能な人材募集してます」
「俺は断るぞ」
「私も断るぞり」
「おおいサボ!リー!返事が早すぎるって!まだ誘ってもないじゃねぇか」
船長やるつもりがないのが私とサボの共通点。
ごめんねエース。No.2はモンキーさんの手綱を握るのに忙しいんだ。他を当たって欲しい。
「だってお前誘う気満々だっただろ?俺は革命軍としてやりたい事があるんだよ」
「エース、そんなに人材足りぬの?メンツと役職は?」
「んーっと、デュースが副船長兼船医だろ。スカルが情報屋、ミハールが航海士……。」
ガンリュウ、剣士
ウォレス、魚人
バンシー、お色気担当のオバチャン
コタツ、ペットのオオヤマネコ(食料調達係)
ふむふむ、なるほどね。元スペード海賊団は勢揃いって訳か。
「そんでコックとしてサッチ」
「んんん!?サッチさん!?」
「おう!だからキッチンの設備がしっかりした船が欲しいよな〜」
これは大事な情報だな。忘れようにも忘れられないけど、確実っぽいし裏取り早めにしておこう。
この前白ひげさんのところにいたのに。おかしいな。もしかして引き継ぎ最中だったんだろうか。船も何もない状態だし仕方ないか。
「まぁ大事なのは音楽家だな」
「分かるぞエース。大事だよな。うちにはブルックがいるけど」
私が脳内メモを取っているのを、サボが冷ややかな目で見ていた。
「…………なァに、サボ」
「……いいやァ?」
幸いお馬鹿2人が気付いて無いんだから。
「だからまぁつまり──ルフィ、俺は先に新世界に行く。海賊王になるのは俺だ」
「いーや、俺だね!」
将来、ルフィが海賊王になるにあたって、もしくは世界最強になるにあたって最大の強敵はエースとなるかもしれない。
今はともかく、未来ではそうだ。
お互い才能はピカイチ。天賦の才と、なんでも飲み込む素直さと、頑固さ。世界トップクラスの2人。
「はぁ、嫌なライバルぞ」
エースも最悪の世代に入るのだろうきっと。そして私に押し付けられる気がする。きっとそうだ。
余談なのだけど、私が海賊の担当を多く受け持ってるのって、『敵対して捕縛』じゃなくて『味方に成って操作』の方を優先されるから多いんだよね。手間は多いし危険も多いけど、同時に並行して出来るから担当人数が多くなる。
だから積極的に捕縛はしなくていいってわけ。他の担当海賊に取り入れなくなったら本末転倒だしね。情報回すだけ回してあとはほかの部署に放り投げるのだ。
ほんっと、私の望んでた形だ。
海兵として兄達のバックアップが出来る。
まぁ、小さい頃と比べて私には随分多すぎるほど大事なものが増えちゃったわけだけど。
「リー?」
「ん〜、なぁにルフィ」
「なんかお酒持ってねぇか?」
「そんな都合よくあるとでも?あるけど」
「やっぱり!」
ルフィは輝くような笑顔を浮かべる。
「──盃!交わそう!」
もう一度会えますようにと、願いを込めて身につけた青いリボンが風に乗って揺れていた。
「──……そういやリー。俺ひとつ不安なことがあってよ」
「ん?何事ぞ?」
「サニー号って、大丈夫かな?」
「……適任が1人いる故、頼んでおくぞり」
レイリーと交渉ができて、安心して任せられるであろう男を1人。
==========
「……麦わらの一味の船、サニー号」
ライオンのようなひまわりのような太陽のような、なんとも中途半端な船首を眺めた男が1人。
「おめー……この船に近寄るんなら容赦はしないだらっちゃ!」
「にゅ〜、デュバル無茶するなよ。お前の方が怪我はおっきいんだ」
金髪のライダースーツに身を包んだ男と、たこの魚人はボロボロで大小あれど怪我をしていた。
「なぁに、壊さしねぇよ」
そう、私である!
私というか、俺である!
「あれだよあれ、俺ァ麦わらの友達だぜ」
「……!なんだ、麦わらの友達だったのか!」
「おー。……素直すぎて心配になるな」
フードを深く被って、黒い髪をポニーテールに纏めた私は、なるべく気配は消したまま船に近付いた。
船と喋れるクラバウターマンが居る以上、無機物でさえ警戒しなければならない人生ほんとにクソだと思います。
「──嘘つけ。麦わら違いだろうが」
「にゅ〜〜!レイリー!」
「来たか、レイリー」
はっちゃんが嬉しそうに声を上げると、そこにはお目当ての男がいた。
「エース、この船に何の用だ」
「ひみつ」
ポンポン、とサニー号を撫でると水分が抜け駆けたシャボンコーティングの感触がした。
今更だけどシャボンの寿命は約1ヶ月ほど。魚人島には1日で行けるので妥当な期間だ。
「頂上戦争から数えて2年後、船をここまで届けてやる。この場に海賊やら海賊稼ぎやら海軍やら色々来てんだろ?」
「……そうだが、何を企んでいる?」
「俺は昔っから何も企んでねぇよ。面白い事が好きなだけだ」
あぐらをかいて座る。レイリーが見下ろして、はっちゃんやデュバルとか言う男が不思議そうな目で俺たちを見ていた。
「ロジャーの帽子がシャンクスに渡ったかと思えば、あいつも麦わら帽子を預けてるだろ?実の息子じゃなくて」
喉から声を殺したように笑う。
「この先の歴史は面白いんだろうなぁ?ロジャーもなかなか痛快だったが、それ以上に」
「エース、あのな。私たちみたいな老人が若い世代にちゃちゃ入れるんじゃ──」
「──ならお前より古い時代に生まれた俺はどうなんだよこのスットコドッコイ」
なんだったらお前より若いわボケ。
「悪いが俺は今もバリバリ現役なんだよ。傍観者になるつもりは欠片もねぇな」
立ち上がって船を持ち上げた。
不思議色の覇気です、えぇ。腕力だけでどうにもなるわけがないだろ。
船が上がった勢いで海水が波飛沫を建てる。
「はっちゃん、行くぜ」
「にゅ!?俺!?」
はっちゃんの服を掴むと、私はにっこり微笑んだ。
「おいエース!」
「……なぁレイリー。ロジャーは中々、
「っ!?なぜ、お前がその言葉を知っている!ロジャーの、最後の言葉を!」
「さーてな」
ロジャーの意思は脈々と続いている。
ジョリーロジャーの旗は、無くならない。
いやぁ、海軍としてはちょっと不服異議を申し立てたいし時空の狭間でぶん殴れるものならぶん殴りたい所存。
「あ、そういやロジャーの墓があまりにも厳重すぎてウケたんだけどお前も行く?」
「本当に行ったのか!??お前ほんとに大概にしろよ!?」
さーて、はっちゃんを誘拐するぞ〜!目標、
月歩風で飛んでくぞ〜!
「怖い!高い!魚人が空を飛んでる!怖にゅーーーーー!!!!スピードをあげないでくれーーー!!」
はっちゃんがいるからアイテムボックス使えないことに気付いてしまったのは割と取り返しのつかない場所に進んでからだった。
これで上が終わりました。次の話は現在の麦わらの一味の様子かな。書くなら。
そして下編が始まりますぞい。