2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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修行編下
第271話 大乱闘スマッシュドウキーズ


 

 涼しい海風が吹き、暖かな日差しが降り注ぐ今日。皆様はどうお過ごしでしょうか。

 

 いえ、島によっては麗らかな陽気の春。カラリと眩しい夏。肌寒さが心地いい秋。冷たい空気がツンと刺す冬。気候は様々かもしれませんね。

 

 海は轟々と唸り声を上げ、溢れ出た冷気が肌を突き刺し。寒暖差で荒れ狂う風は熱気を孕んで露出した肌の産毛がちりちりと音を立てる。

 

 もう少し分かりやすい表現をしましょうか。

 

 

 溢れ出た冷気(氷)が肌を突き刺し(物理)

 風は熱気(マグマ)を孕み肌を焼く(物理)

 

 

 今、私はパンクハザードの上空に居ます。

 

 海軍大将赤犬ことサカズキさんと海軍大将青雉ことクザンさんによって行われる、怪獣大戦争の上に。

 

 

 ……転職しよ。

 

 

 

 

 

 

 数日前。海軍本部。

 

 

「──あ、私元帥辞めるからな。お前ら次の元帥決めておけよ」

「「「「は???」」」」

 

 三大将+私が揃っている時、センゴクさんに古代兵器級の爆弾をぶん投げられてフリーズしたのは記憶に新しい。

 

 え?なんで急に?どうして?

 そんな疑問を読んでいたかのようにセンゴクさんは書類をトントンと揃えながら言い放った。

 

「引き継ぎ書類は出来とるぞ。まぁ、名目上は頂上戦争の責任」

「責任取るなら割と後片付けが終わるまで居てくれません?????」

「無茶を言うなクザン。私の胃が死ぬ」

 

 いい笑顔だった。本音はそっちか。

 

「ぶっちゃけ言うと政府に無茶効かせた戦争だったしの。老兵がいつまでも居座っておく訳には行かんな」

「わっし的にはまじで辞めて欲しい。いや辞めることをやめて欲しい。センゴクさん勘弁してください」

「だがなぁ、もう五老星にはその旨伝えとるし」

「くっそ抜かりねぇ!」

 

 大海賊時代の中でも割とごちゃごちゃうるさい時期に長年元帥として君臨した名君が脱退は色々新元帥への負担がヤバすぎる。

 それがわかってるのか全員必死だ。

 

「ちなみにインペルダウンの囚人脱獄を政府が隠蔽しようとするのでな。いやリィンが全てとコンタクトをその手も取れるならいいんだが」

「無理ですぞ」

「流石にそれは飲めない。だから私が諸々暴露した上で責任取って辞める」

「それは単に政府に詰められるのを避けるためでしょ!ふざけんなよコラ」

 

 これガチのヤツだ。

 しかもこれで海軍本部はまだ戦える老兵を失った原因となった政府に強く出れる。

 

 交渉力、海軍はちょっと弱いもんね。

 

「新元帥、決めておけよ。お前らの中で」

 

 3人の大将はお互いを見、そして嫌そうな顔をした後、真顔で私を同時に見た。

 えっ嫌ですよ、ボンド役。私は別に仲介役でもなんでもないので。

 

「リィンちゃんもなんとか言ってよ!」

「んー、でも私の案件は割と私判断で動くものばかりですし……。私が元帥に選ばれるわけでもなき故に」

「はいはいはいはい俺リィンちゃん推薦します!」

「ハッハッハッ、何をほざいてるですかクザンさん。私、名ばかり大将ぞ?我、名ばかりぞ?」

「はい決定今からリィンちゃんは名ばかりではありませーん」

「残念無念また来世〜!名ばかりったら名ばかりですぅ」

 

 選ばれるわけが、いやむしろ選べるわけが無いのだ。

 

「それに誰が元帥になろうが……」

 

 1番騒いでるクザンさん。嫌そうな顔をして全てを見ているリノさん。静かに眉間に皺を寄せているサカズキさん。うん。

 

「どうでもいいですね!」

「おい」

「だって皆さん──私利私欲のために海兵やってないじゃなきですか」

 

「……そりゃ、そうだけどねぇ」

「己の利益のみの人間にトップは任せられませぬが、誰かのために行動する事が出来る貴方達が上司であることを、私はこの上なく幸運だと思いますぞ」

「「「…………。」」」

 

 3人はお互い見合わせた。そうそう、誰であろうと私は割と安心している。

 

「それに別にセンゴクさん海軍を辞めるわけじゃないんでしょう?」

「は!?」

「お、バレたか。大目付という役になる予定だ。この時代に完全に隠居するにはなぁ。リィンも居ることだし、監視役だ監視役。私からすると──どいつもこいつも問題大アリだからな」

 

 センゴクさんは『元帥辞める』としか言ってないからね。今後も利用して利用される関係は続くだろう。

 

「もうめんどくさいからリィン、誰が大将やるか決めろ」

「えっ、私です!?」

「指名は責任が伴うだろうから、決め方を決めろ」

 

 まさかの指名に私は数秒悩んだ後、結論を出した。

 

「リノさんは元帥却下で」

「よっっっっっし!(爆音)」

「……ボルサリーノのこんなでかい声は初めて聞いたな。理由を聞いてもいいか?」

「リノさんって移動速度で言うと最速なのですぞ。故に実働に置いておきたいという意味と、その移動速度のせいで天竜人との関わりが最も深い。故に、割と気軽に天竜人に命じられる。──組織が傀儡になるのはちょっと……」

「ふむ、なるほどな」

 

 あと底が知れないというのもある。

 

「で、あとの残り2人は……2人に決めてもらうしましょう。拳で」

「「拳?」」

「負けた方が元帥。殺しても元帥。ね、簡単」

「勝った方が元帥、じゃないんだねぇ〜。いやそうなるとあいつら、負ける気満々だけど」

「元帥って現場に早々出れなくなるですし、強い方が現場で良いのでは?」

「……めっちゃ嫌なんだけどリィンちゃん。そもそも俺とサカズキがぶつかったら海軍島がなくなるよ???」

 

 クザンさんの嫌がる声に私はにっこり微笑んだ。

 

「──ありますよ、舞台」

 

 島に残る全てを跡形なく消し去りたいものがある場所がある。

 

 

 

 

 

 

「……それがパンクハザードだったのだけど」

 

 現実に戻った私は地上で繰り広げられているマグマと氷の大乱闘に遠い目をした。

 

「うん、ベガパンクの失敗作は消し飛んだからなぁ」

 

 私が過去に飛んだ原因であるトキトキの実を食べた無機物。私の手でも壊したんだけど、この島のどこにデータが残ってるか分からないから。

 一応全てサカズキさん側に置いてるから、重要度の低いもの以外は壊れたかな。

 

「はぁ……」

 

 なぜ私が大怪獣バトルを眺めているかと言うと、センゴクさんの一言が原因なのだ。

 

 

『リィン、決着を見届けろよ。あと殺しそうになったら止めてくれ』

 

 

 

 海軍の最高戦力の全力喧嘩を1人で?????

 

 もう三日三晩どころか10日くらい続いてるんだけど??

 流石にこんな環境で寝れてないんだけど??

 

 

 あの野郎、絶対私が非能力者だということを逆手にとって言ってやがる。

 

 こんなことになるなら素直にジャンケンとか提案してたのに!

 

 

 

 あ、ちなみにクザンさんの足は吹き飛んでおります。氷を義足代わりにして戦ってるところ。

 今のところサカズキさんが優勢なので、新元帥はクザンさんかなぁ。

 

「負けてくれよサカズキ!」

「断る!お前が負けろ!」

「俺は、あのとんでも女狐がいる限りぜっっっったい海軍元帥なんて胃痛ポジションになりたくねぇんだよ!!!」

「それは儂だって同じじゃアホンダラァあああ!!!」

 

 ……上から海水ぶちまけてもいい?

 

 

 

 ──結果

 

「よっしゃおらあああ!!!」

「ちぃっっっ!抜かった!」

「怖かった、怖かった、怖かった……」

 

 劣勢だと思われていたクザンさんの勝利。つまり──新元帥はサカズキさんということになった。

 

 

 

「うっうっ、この一瞬の為だけに死んだかと思ったぞり……」

 

 クザンさんが覚醒した。

 簡単に言えばこれに限る。どんだけ嫌なんだよ。

 

 マグマすら凍らせるクザンさんの氷がサカズキさんを飲み込む寸前、私が箒を走らせて両者に海楼石を掛けたのだった。

 

 空気から凍る冷気が私の腕まで飲み込んだ状態で。冷た過ぎて痛いです。

 

「サカズキお前炎に燃やされるし氷に凍らされるし弱ってるんじゃねぇの?」

「バカタレが……!おどれはそんなふざけた事抜かす前にリィンの氷どうにかせんか!」

「溶かすのはお前の仕事。ほら、『同期で殺し合うことになるとは、熱いモンが込み上げて来るわい……!』って言ってたじゃん。その込み上げてくるモンで溶かし……うっ、限界……」

 

 クザンさんはそのままフラフラと、元から青い肌をさらに青く染めたような顔をして後ろ向きに倒れた。

 

「ちょ、待つしてクザンさん、今痛みで能力不可故にせめて船までは」

「リィン、そいつは捨ておかんか。先に子供のリィンから、治癒、を……」

 

 バターン。

 これはサカズキさんまでもが倒れる音。

 

「このっっ!クソ大人共!!!!」

 

 この後自分の数倍の体格の大人二人を一生懸命海軍本部まで運んだ。

 

 疲労だけなので、二人を海楼石の錠で繋いで箒に吊り下げてきたよ。不名誉?知ーらない!

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 新元帥がサカズキさんに決定し、約10日続いた戦闘の疲労や怪我もあって両者+私には休暇が与えられることとなった。

 

 無断欠勤(別に勤務では無い)が続いてる海賊狩りグループ三つ巴にはなんて言い訳をしようか考えているのは余談である。

 

「いらっしゃいませです、サカズキさん」

「あぁ、邪魔をするわい」

 

 休暇中、新世界に存在する女狐の拠点兼パシフィスタの保管場所に、私はサカズキさんを招待したのだった。

 

「ママー!おかえりー!……このおじちゃんは?」

「ただいまバット。この人は私の上司ぞ」

「地位は同……いやこっちが上になるんか。はぁ、気が重い」

 

 サカズキさんはその風貌からは思いもよらないほど子供が好きだ。なのでセラフィムにあわせてみたのだが……。

 

「おじ様、抱っこして」

「おじさん、おんぶ」

「おっちゃんおっちゃん、ゲームしよ」

「サカズキおじさん、これ」

 

 うちのわんぱく盛り×4に大モテだ。

 

「シャーク、暴走し始めたら止めるすてぞ……」

「ぞ!……んめいの内にという事か?」

「存命はちょっと……怪我しない内にすて」

 

 シャークはサカズキさんの近くにいるけどお目付け役みたいな感じでそばにいる。1番優しい子なので。

 人見知りのバットとニコニコと眺めるのが好きなベアが私のそばで寛いでいる。モデルを考えたらさもありなんって感じだなぁ。

 

「見目はクソ七武海に似ておるが、表情の作り方はリィンと同じじゃな」

「まことです?」

「あぁ。儂が育てればこうはいかんじゃろ」

「ところでサカズキさんって威権チップは所有済みですか?」

「いや、まだじゃわい。海軍本部で持ってるのはセンゴクさんとリィンだけじゃろう。正式な運用通達はまだじゃしなぁ」

 

 私がリビングの椅子に腰掛けると、サカズキさんも向かい合わせになるように腰掛けた。サカズキさんにはワラワラとやんちゃ4人が絡みついている。

 受動的な受け答えや活動しかしないというセラフィムの初期設定は、今やインプットを重ねる度にどこかに追いやられているらしい。まぁ良しとしよう。

 

「──で、新海軍本部についての話じゃが」

 

 休暇なのに休みやしねぇ。

 サカズキさんに私が運んだ書類を渡して目を通した。

 

 

 海軍本部は私の予想通り、前半の海から後半の海に引越しとなる。サカズキさんの元帥着任とほぼ同時期に行う予定で、人員の移動も大きくなるだろう。なんせそのまま移動すればいいものでは無いので。

 

「重要度の低い備品や軍艦などはそのまま置いちょけばええが、人員や赤い土の大陸(レッドライン)を横断する途方もないコストがかかるんじゃ」

 

 新しい軍艦の製造や人件費や食費など、削れりたくとも削りにくい部分が多い。

 予算案と決算書を見比べながら頭痛のする頭を押えた。

 

「センゴクさんも派手な事を考える。四皇や超新星相手に睨みを効かせる、ってことじゃろう」

「そうでしょうね。サカズキさんの案ってことにするのでしょう?」

「概ねわしも同じことを考えちょったもんで。どうせリィンもじゃろう?」

「まぁ、はい」

 

 海軍本部が頂上戦争で海賊相手に敗北した。

 この事実が海賊を助長させるきっかけになっている。

 

「どんな形であろうが、四皇(トップ)の一角が海軍によって崩れれば助長は収まる、とは予想しちょるんじゃが」

「海軍の手によって、ってのがネックですね。海軍は組織故に、単独で四皇に喧嘩は売れぬですから」

「一応例外は居る。一応な」

 

 うーん。海賊の手を借りないで海軍本部の威厳を高める、っていうのはセラフィムが七武海モデルな時点で無理に等しい。

 だから海軍の手によってが完全に海軍依存にならない気がするんだよね。

 

「とりあえず人形使いますか」

「人形だと?」

「女狐です。女狐が海軍本部の引越しをします」

 

 具体的な方法は、軍艦に人やら物資やらを航海よできないほど大量に積んで、赤い土の大陸(レッドライン)を飛び越えて横断するものだ。

 これなら航海をするための費用や移動中に本部を空白にする時間も少なくなる。

 

「盛大に軍艦数台動かしましょう。バスターコールレベルで」

「可能なのか!?」

「可能かと言われるとあまりなきですけど、今燃料(シキ)も居ることですし。負担は分けます。島を複数浮かせ続けたシキであれば余裕でしょう」

 

 それをさも女狐の手柄みたいにする。

 私ひとりで出来なくもないけど、したくない。だからシキに弱味を握らせることにはならないだろう。

 

「そうなると空は覆い隠しますし、私の息がかかるすた新聞会社に盛大に取り上げていただきますか。それに、女狐の手柄にするとですねぇ、そんな新聞会社からこーーんな説が広がるのですぞぉ」

 

 ここで私の『やらかし』が挽回できるのだ。

 

「『頂上戦争で勝敗を決したのは女狐の一声があったからだ。海軍本部は海賊に負けたのではなく、あえて海賊が見逃されていたのだ』と、世間はそう気付くでしょう。これで、多少の抑止力になるのでは?」

 

 だって軍艦を数十隻浮かせる事が出来るんだもの。海賊なんてそもそも上陸させない。

 

「『海軍本部は何を企んでいる?』『なぜ敗北を装った?』真偽も目論見も分からぬ海軍が、女狐が移動したのは四皇の居る海。──さて、噂と恐怖心に踊らされるのは、どこの誰でしょうね」

 

 女狐は海賊の味方では?なーんて説も出てくるだろうけど。お前らの味方じゃねぇよと言わんばかりにセラフィム(海賊の姿)を出したらどうなるかなー。

 

 海賊さえも利用して、海賊を叩き潰すための合理的な判断。そう取られても仕方ないよね。

 

「って感じのシナリオはどうですか?」

「………………正直ドン引きじゃけぇ」

「何故ですぞ!!!」

 

 そう上手く物事は運ばないだろうけど、噂を操作すれば望み通りの印象は植え付けることが出来るだろう。

 そもそも女狐は常に存在しないものなので、狙われてもあまり痛くないのだ。

 

「予算削減、名誉回復、海賊減退、その手であれば問題ないじゃろう。その方向で進めるわい」

「ありがとうございます!」

 

 実はこれ裏にもうひとつ目論見があってね。

 

「──2年後、恐らく七武海と四皇の半分が速攻崩れ落ちるですから勢力図変化しますよ!」

「聞いとらん聞いとらん細かく言わんか」

「んー、簡単に言うとですねぇ。まず麦わらの一味が復活します」

「おい」

「その麦わらの一味は天夜叉を失脚させます」

「次はドフラミンゴか……っ!」

「ドフラミンゴは実はカイドウと取引をすてる故に、恨みは確実に麦わらの一味へ向くです。故に、四皇の一角も崩壊」

 

 ドフィさんが失脚するのであれば別に取引を失敗させてカイドウとぶつけるだけの簡単な方法はあるだけど。

 

 多分ローさんも青い鳥(ブルーバード)もそれを許しはしないだろう。自らの手で叩き潰したいはず。

 

「待てリィン、それには重大な欠陥がある。お前のその未来の中には、『麦わらの一味がドフラミンゴ又はカイドウに敗れる』という選択肢が度外視されちょる」

「やだなぁサカズキさん!私がさせると思うですか?」

 

 私はにっこり笑顔で微笑んだ。

 

「麦わらの一味は、いえ、未来の海賊王は私が傀儡にするです。悪を持ってして悪を叩く」

 

 サカズキさんの徹底的な正義とは反りが合わない方針だ。

 

「新元帥、女狐(わたし)は麦わらを海賊王にします。政府の腐ったところも、天竜人や五老星だって、海軍本部に牙をなす全ての腐ったところを、海賊の力を使って叩き潰すです」

 

 私ならそれが出来る。

 それだけの力はきっとある。

 

「だからサカズキさん。協力すてください。子供たちを守るために」

「〝守り抜く正義〟の目的は、己の兄弟を守る、っちゅうことか」

「最初はそうですた。でも、今は違います」

 

 海軍に大事なものが出来すぎてしまった。

 私は海賊でもあるので、己の欲望に忠実に行きたいと思います。

 

「あ、ちなみにセンゴクさんも普通に知ってますからね。これセンゴクさんにOK貰うすた情報です」

「今過去1センゴクさんに殺意が湧いたわい」

 

 サカズキさんは眉間に皺を寄せて唸っていた。

 あー、やっぱりダメ?ダメと言われても諦めるつもりは無いけど。

 

「──わしは、海賊が心底嫌いじゃ」

 

 そう言ったサカズキさんの眉間の皺を私はつついた。

 

「おいふざけちょるんか」

「私、あの一味は割と善だと思うですぞ?」

 

 過去で見た小さな少年と、サカズキさんの姿が被る。

 

「私だって海賊嫌いです。誰かを犠牲にして、道理の通らぬはずのものを無理やり通して。正直者が馬鹿を見るように、人に優しくした者が被害を受けて悪巧みをするやつが利益を得る」

 

 でもルフィは違う。

 

「でも『誰かを想える正しい人』を苦しめるのは、海賊だけじゃない。……貴方はそれをもう、ご存知でしょう?」

 

 革命軍の思想と同じような事を言ってるのはわかってる。根本的な考えだと、私はきっと革命軍と同類なのだろう。

 

 でも、正しくないと思う命令に従うほど素直に生きてやる事は出来ない。

 

「私は自分の手を汚したくなきです。だから代わりに海賊に、汚点を任せたいです」

 

 その手柄を女狐が奪い取る。

 罪は全て麦わらの一味に被ってもらう。

 

「海軍の力だけじゃ足りない。私は必ず、サカズキさんを越える偽物(かいへい)になってやる。そのためならなんでも利用するんです。私が望む未来のために必要な命を守り利用して」

 

 海賊王が死んで大海賊時代は幕を開けた。だけど、その分王という抑止力が無くなった海賊は荒れに荒れた。

 そんなロジャーのケツを拭くのは未来の海賊王だ。あいつ、余計なことばっかりしやがって。なーにが俺の財宝か?欲しけりゃくれてやるだよ。お前がちゃちゃ入れるから海賊の数が莫大に増えたんだろうが。

 

 内心ロジャーに中指を立てているとサカズキさんは目を見開いた。随分珍しい表情だった。

 

「つまり元帥になるっちゅうことか?」

「あ流石にそんな責任感は無いです」

 

 無理無理。胃痛で死にます。

 

「わしらはこの10年でリィンの敵対させない能力をよう知っちょる。海軍と敵対せんのでありゃあ、わしは目を瞑ろう」

「目を瞑られては困るです。もちろん協力していただきますぞ?私名ばかり大将ですもん、外敵に対する影響力はともかく、内部に対する発言権は無に等しきなのですから」

 

 何を言ってるんだこの人は。海軍最大権力者を味方に引き入れないでどうする?

 私、強欲なの。海賊の立場の兄をも守ろうとするほど。

 

「…………全ての物事を「名ばかり大将だから」っちゅう理由でねじ伏せてくパワータイプみたいなとこやめんか」

 

 そんなセンゴクさんみたいな事言わないでください。

 

「リー、子供ゆえにわかんなァい」

「リィンが子供であってたまるか」

 

 

 

 

 

 休暇から戻ると。

 ──クザンさんが海軍を抜けたという話題が飛び込んできた。




原作とは違ってリィンの胃痛持ち込み頻度のせいで誰からも嫌がられる新元帥昇格試験。
さて、後半戦やってまいりました。と言っても後半の章は10話もない予定です。早く魚人島行きたいね
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