2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第273話 胃痛の威力は万年増加中

 

 

「──育成学校に行ってこい」

「今更!?」

 

 サカズキさんの言葉に女狐隊の月組星組、そしてスペシャルゲストは海兵育成学校に向かうことになったのだった。

 

 

 

 

「あぁ、待っていたぞ。新米海兵共」

 

 

 海兵になるためには3パターンの方法がある。

 

 1.スカウト

 最初から特例を言うけれど、今回海軍徴兵で集められた海兵たちはこのパターン。また、私の部下である者たちはほとんどがこのパターだ。

 

 2.海軍雑用

 給料を貰いながら雑用として起用され、昇進していくパターン。これは私や月組がわかりやすい例だろう。そして海兵の大部分はここからになる。

 

 3.海兵育成学校

 これは学費を払える人間が学校に通い戦闘や知識を身につけある程度の地位が保証された状態で入隊するパターン。本人の能力の差はあれどほとんどが将校になる。ただ、裕福でないと学ぶ機会はなかなか得られない。

 

 

 雑用出身者と学校出身者はペアにされることが多く、お互い不足しがちな実地知識または戦闘知識を補い合うという形を取っている。

 

 

 そして今回訪れた海兵育成学校。その教官は──元海軍大将、黒腕のゼファー先生だ。

 

「初めまして、四捨五入して女狐隊です。本日はよろしくお願いします」

「あぁ、センゴクのやつから聞いている。お前が女狐…………の、『雑用』だと」

 

 含みを持たせた雑用との間。

 なるほど、名ばかりや雑用が女狐本人だとかそう言った上層部が知っている事は知られてる様だ。

 

 

 ゼファーさんはセンゴクさんやおつるさんやジジの同期らしい。身内とも言えるほど馴染み深い人達との同期なので、勝手に親近感を抱く──。

 

 

「海軍が海賊の力を借りる状況を良しとし、海賊を親に持った人間。ともな」

 

 

 ──ことも無く。

 

 海賊アンチ型海兵VS海賊利用型海兵の構図がどうやったって起こっちまうのである……っ!

 

「あっはっはっ、そこに海賊船渡航歴があるのを加えてもらっても?」

「舐め腐ってるな名ばかりのクソガキが」

 

 しかも私の隊は海賊崩れが多い。

 相性が最悪なのである。

 

 黒腕のゼファー。

 約30年前、海賊からの報復で家族を殺害されたショックで現役を退任。海兵育成学校の教官へ。

 8年前、指揮していた演習艦が襲われ、片腕を切断。

 3年前、ベガパンクの開発した海楼石製のスマッシャーを装着。

 

 

 海軍大将の地位に登りつめたのは弱冠38歳。私というとんでも例外を除けば、歴代最年少だった。

 

 

 

 そして過去で、(エース)はゼファー先生と会ったことがある。

 女狐雑用バージョンで出来れば会いたくなかった相手の1人だ。

 

 

「割と尊敬できる方ではあるんだよなぁ……」

 

 聞こえない程度に独り言を呟く。

 すると私の後ろにいた2人が問いかけた。

 

 

「ねーちゃん、いやにーちゃんって言った方がいいのか?これどういう状況?」

「あっしらは割と何の説明も無く連れてこられたんですが、どういった任務でどういったことをすればいいんですかい?」

 

 はい。本日のスペシャルゲストその1、新大将の2人です。

 じつは女狐隊だけでは無く、後輩2人もいます。ちなみにその2は船に乗って燃料にされてます。

 

「完全な表向きの顔はここでは出せないから、俺は女狐のスカウトで入った補佐官雑用、ションとして扱って欲しい。めんどかったら雑用でもいい」

 

 とりあえず設定だけ2人に押し付けると、2人はそろって微妙な顔をした。

 

 

 サカズキさんに投げられた任務。

 表向きは『スカウト組の多い女狐隊に海軍を学ばせる機会を作った』というもの。しかし真の目的は『育成学校の孤立を防ぐこと』『教官及び生徒の思想を探ること』そして──『生徒の鼻っ柱を折っておくこと』の3つだ。

 

 

 サカズキさん曰く、『育成学校じゃぁある程度の戦闘技術によってクラス分けがされる。クラスの成績が上になると、さらに上のレベルに移動して最下位になる。クラストップで長くなった鼻を降り続けるのが流れじゃけ。しかしだ、稀に飛び級で上がって行く者もおる……。言いたいことは分かるな?』

 

 はい。下手に実力があった分鼻っ柱が折られることも無く海軍である程度の地位に付いてハチャメチャな方法で何かをやらかしちゃうんですね。

 

「ここでは座学で海軍の規律、船の構造、武器の構造。法律や各国王家の関連性などを学ばせている。実技では様々な武器の適性を測ったり、ひたすらに叩き上げて生存率をあげている」

「て、ワケで。大将のお2人は女狐大将からの命令により規律や構造などの基礎知識を身につけてもらいまーす」

 

 ゼファー先生の言葉に追加するように説明を加えて後輩に伝えると、イッショウさんはそのまま頷いたがアラマキさんは面倒くさそうという心情が現れた。

 

「えー、だけど雑用よぉ。それって必要かァ?天竜人が神様で、次に王様で、次に王族で、んでもって政府加盟国の住民。非加盟国は人権がねぇ。こんな感じだろ?」

「は?神は私だろ」

「……はい?」

「リピートアフターミー。神様は女狐」

「は、え、なんで????」

「言えよ。神様は女狐」

「か、かみさまは、めぎつね……?」

「あと10回繰り返しておけよ」

 

 ゼファー先生がめっっっちゃくちゃドン引きの表情で私を見てきました。

 ごめん、酔狂っちゃ酔狂何だけど、ちょっと天竜人を神と認識するスタイルは素で言ってそうなので強制的に認識を歪めようかと思って脳直で否定させちゃった。

 

「なるほど、女狐は神様でリィンちゃんが天使だと公式が言った」

「アホリック、ションの言うことは気にするな」

「いてっ」

 

 月組が小ボケを挟んだところでゼファー先生が眉間に皺を寄せたまま私に向き直った。

 

「女と聞いたが、その性格のままか?」

「……いや、もうちょっと柔らかいです。クザンさんとか剣帝モチーフにキャラ作ってます」

 

 潜入中ということも加味して小さな声で聞いてくれたので同じように対応する。

 好き好んで敵を作るのは嫌ですね。

 

 ゼファー先生はモデルの名前を聞いてすっっごい嫌そうな顔をした。

 

「不知火に似てるからか、いや、幻の方……まぁいい、とにかく気色が悪い」

 

 ば、バレた?バレてないよね?

 1回だけだもんね、会ったことあるの。それも50年以上も前なんだ。新米時代でしょ?覚えてないよね?

 

 眉間に皺を寄せたまま数秒の間が訪れる。

 

「……年齢を変えたらバレんか?」

「んえ!?いや、まぁ、そりゃそうだけど」

 

 エース(ション)=リィンにならない最大の理由が年齢及び時代である。だから、年齢に矛盾点があるのは最大の誤魔化しなのだ。

 

「……。アイン」

「はい、ゼファー先生!ここに」

 

 急に青髪の海兵が現れた。

 

「コレを若くしろ」

「はい」

「は!?」

 

 紫の可燃性のない炎がアインと呼ばれた海兵の手に宿り、それが私の体に触れる。

 

 

 

 

「か、可愛い〜〜!!!!リィンちゃんと出会った頃を思い出す!!!」

「大体4歳児くらいにはなったな。つまり逆算すると……お前15.6だったのか」

 

 私リィン、幼女になっちゃった……。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「あー、つまり、海軍本部の海兵と大将が見学に来た。気張るように」

「リーちゃん、よんさいでしゅ!おとしゃと来たの!」

 

 3歳の指をしながら4歳と言い放った黒髪のプリティガールに海兵育成学校の生徒はテンション上がり中だ。

 

「可愛い〜子供用の海兵服とかあるんだ!」

「少しおっきいけどちゃんと海兵服着れてよかったなあ」

「リーちゃんを抱っこしてる人がお父さんかな?先輩、俺も抱っこさせてください!」

「──はい、リーちゃんの握手及びハイタッチはそれぞれ5秒まで。はい次進んでー、はい次どうぞ〜」

「大きい体格の生徒はなるべく視線を低くして整列ー!」

「グレン、抱っこは五分で交代な」

「断るが?」

「おとうしゃんだからってずるいぞてめぇ!」

 

 月組はアイドルの握手会よろしく人の流れを作り、裏でお父さん役のグレンさんを殴り。

 

「心友の小さい頃……っ!可愛すぎるわよーう!?」

「センスがいいじゃん?そんなあなたに最近発売が開始された月組が誇るピックアップアルバム、ver.1。全60種類税込98,600ベリー」

「買うわ」

「買おう」

「これあの鬼相手に弱点になったりする?」

「残念ながらこのアルバムは張本人のチョイス」

「くそ、それなら俺はいいや」

 

 星組が月組の後ろでカモになり。

 

 

「……おい新米大将。なんであの一等兵達はついていけてるんだ?」

「いや、え、全然わからんわからん無理」

「あっしがあの方に初めて会った時は、割とあんな感じだったような」

「ギャップでついていけねぇぞ」

「俺ァマジで、会う度違うくて、混乱してる」

「最近の若いのはこれだから……」

「若いで片付けていい問題かこれ?」

 

 

 新旧大将達が混乱していた。

 

 

「まぁ、変わり身の速さと一切共通点を浮かばせない、みたいなところが能力だしな。ねー、リーちゃん」

「んぅ?うん!」

「よく分かってないのに頷いたな、今」

「くそ、写真が撮りたい……っ!」

「ダメだぞお前ら。俺の娘を撮るなよ」

「けち!ケチケチケチケチ!俺だって俺の娘って言ってみたい」

 

 月組が茶化してくれている間に私はグレンさんに思いっきりしがみついて耳元に口をやる。

 いやー、ちっちゃくなったから油断もさせやすいし、利点ばかりだよ。

 

「──そりぇで、どいちゅがおめがねに、かなったぞり?」

 

 まぁ、呂律と引き換えにだけど。

 

 おかしいなぁ。4歳の頃はもうちょっと呂律が回ってたと思うんだけど、ある程度成長してから一気に退化すると呂律は最悪になるんだなぁ。こんな学び知りたくなかった。

 

 

「……いや、悪いが性根は皆似たような感じだ。魂が終わってるやつは居ない」

「そっかぁ。まぁ、しかちゃない、よね。でも、みんにゃがあおって、おけげで……。おきゃ!げ!おきゃ、きぃ!」

 

 口が回らない!

 

 皆が海兵らしくない緩さを見せてくれているお陰で、生徒たちも油断をしてくれている。

 だからある程度、口も軽くはなっているけれど上官がいるから割らないなぁ。

 

「先輩は、階級はどのくらいですか?」

「俺たちは一等兵ですよ。あっちは3等兵です」

 

 生徒に聞かれて答えたのは月組の1人。

 

 月組は10年雑用をしていたわけで、階級としてはかなりひくい。伍長すらいないのだ。

 まぁ月組の上官はスモさんなので今後の階級に関してはスモさんに任せる形になるだろうな。グレンさんがまともさで頭飛び抜けて目立つけれど、戦闘技術やまとめ役として観察するなら他の人だし……誰が最初に伍長になるかな。

 

 なお、元七武海の部下だった星組は信用度の問題から三等兵だ。戦闘力で言ったら将校でも問題ないんだけどね。

 

 ……これが最大のトラップだ。

 

「へえ、俺たち生徒は卒業したら一等兵からなんですよ。部下として人を使うことも学ぶみたいな感じなんですかね?」

「おいヘリー、やめろよ。彼らだって先輩なんだぜ?」

「だがよお前、三等兵だぜ?」

「つーか、先輩も一等兵の割に学校で見ませんでしが、もしかして元雑用ですか?」

「あぁ、そうだぞ。10年雑用をしていた」

「はははっ、10年も?」

 

 随分バカにした姿を見せる生徒だ。

 明らかに下の階級だと馬鹿にしている。

 

「わかいにゃあ」

「お前が言うな最年少」

 

 グレンさんに小さく頭を叩かれた。

 

 

「さて、大将2人はこっちだ。ビンズ、彼らに座学を」

「はい先生!」

「せんせぇ?」

「ん?どうしたおチビさん」

「せんせぇ、いちたすいちは?」

「……2?」

「にーっ!2本!おっちゃうの!ぽきーっちぇ」

 

 ゼファー先生は、私の言いたいことが伝わったようだった。

 

 こ の 2 人 心 折 っ て い い ?

 

「せんせぇ、だっこぉ」

 

 さぁさぁ先生。実技の授業、だよね?

 

 

 

 ==========

 

 

 

「では、これより模擬戦を開始する。一等兵、前に出ろ」

「「「「はっ!」」」」

 

 月組は雑用とはいえ10……最早11年間海軍に従事している。敬礼、そして模擬戦への整列、そこらの海兵とは比べ物にならないほど統率が取れている。阿吽の呼吸もお手の物だ。

 

「せんせぇ、いっとーへー、は、ほかのやちゅ」

「ん?」

「さんとーへー、と、にゃま、なみゃ、なまいきっ!」

 

 ゼファー先生に抱かれた状態で小さめの声で指示を出す。

 舌が回らないのは仕方ないけど、月組は弱いので普通のやつらと対戦させてください。

 

 叩きのめすのは三等兵と舐め腐っている星組の役目だ。

 くっくっくっ、そのために月組の後ろに回して存在が薄くなるようにしてたんだよォ。

 

 

 

 ──結果ですか?

 まぁ言うまでもないよね。

 

 

 

「くそ、くそくそくそくそ!なんで三等兵如きに……!」

「あのさぁ、その下に見る根性どうにかしないと致命的だぞ」

 

 ボムが生徒の頭を踏みつけながら呆れたように声をかけた。

 

「例えばだけど、ほぼ無名の海賊で片手で足りるほどの人数で、こちらは100人。ホームグラウンドはこちらにあって海賊は航海で疲労してる……。しかも偉大なる航路(グランドライン)東の海(イーストブルー)から来たばっか。舐めてかかるだろ?でもな、その油断で負けるんだよ」

「そうそう、ボムの言う通り。脅しとかが得意な性格の悪い雑用の子供が1人いたせいで負けるんだ。数の暴力より知の暴力の方が厄介」

「巨大な会社だろうが七武海だろうが海軍だろうが、大きな権力が背後についてても負けるもんだぞ」

「どうしてだよ!俺は将校になる男だぞ!今は油断したけど、海賊になんて負けるもんか!」

 

 若いなぁ。

 

「──なめんなよ」

 

 一度の失敗で処罰されて死ぬ会社にいた男は懐から拳銃を取り出して額に突きつけた。

 

「その1回の油断で死ぬんだぞ」

 

 そう言い、引き金を引いた。

 

「やめっ!」

 

──ぷぅうう……

 

 焦ったような生徒の顔に撃ち込まれた『悪臭』が辺りに漂う。

 

「く、臭っ!!!ゲボ!ゲボ!」

「来るだろ、ニセキングの屁だ」

「俺のかよ!!いつの間に取ったんだボムてめぇ」

「夜勤中に爆音でかましたお前が悪い」

 

 生徒の超新星程度、女狐&金獅子の攻撃的指導に大きな怪我もなく耐えきれている星組のポテンシャルは高い。

 

「不思議な武器だな」

 

 持ち込み武器です。爆発人間の息を吹き込むんだけど、今回は殺傷性のないものを吹き込んでいたみたいだ。

 ボムに殺気が無いというのがわかっていたのか、ゼファー先生は1歩も動かずにいる。

 

 そもそも、こいつらは仮にも七武海の部下だったんだ。ゼファー先生がそれを知っているのかは知らないけれど、海兵にもなってない生徒相手に動けないわけが無い。

 

「………………あの鬼畜上司たちの攻撃に比べりゃ、赤子みたいなもんだよなぁ」

「やめろニセキング、思い出させるな」

 

 後で覚えてろよお前ら。

 

「せんせぇ、リーちゃんねむちゃい」

「あ、あぁ、よしよし、控え室で休むか」

 

 流石は元子持ち。子供扱いは手馴れている。

 大将になるには腕っ節だけではなく、判断能力や戦略も優れていることが多い。と言っても、ガープのジジみたいに脳筋だとそれを制御する人が傍に付けられることが多いけれど。

 

 ゼファー先生は前者。

 教員として指導できるほどには世界情勢や人間観察に優れている。

 

「──で、なんだ?」

 

 私がゼファー先生に話したいことがある、という真意は見抜かれていたのだ。

 

「さ、さいきんのちょーしは、どうですか」

「……は?」

 

 し、思想を探るって難しくない〜?

 

「いや、海軍ほんびゅ、ほん、ぶ、は!」

「海軍本部は?」

「ここ最近は、特に、かいじょくの利用ぞはげちくなっちぇ」

「……ここ最近海賊の利用が激しくなって?」

「そう!ぱちふぃすたとか、しちぶがいとか、かいじょくのパワーを武器にちゅてるで」

「ちょっと待て。──アイン!アイン来い!」

 

 あ、はい。

 私の言語が聞き取れなかったんですね。

 

 ……何も言うまいて。

 

 

 

「はい、これで元の年齢ですね」

「ありがとうございます」

「人払いは変わらずしておきますからご安心を」

 

「……アインさん、昔海軍本部でクロコダイルに能力使ったことあるです?」

「…………あり、ますね。かなり前ですが、ぶつかった癖に舌打ちしたみみっちい感じに腹立って」

「おい聞いてないが?」

 

 ガシリ。

 私はアインさんの両手を握りしめた。

 

「連れてきた一等兵に伝言ぞお願いします。『アインさんがイルくんの元凶です』と。これで伝わります」

「わ、私がイルくん?の元凶?分かりました……」

 

 

 ありがとうアインさん。

 月組が私の代わりに死ぬほど感謝してくれるはずだから。

 

「それでは失礼します」

 

 アインさんが退出したのを見て、私は再び椅子に座った。

 

「あー、で、続きだけどよ」

「その輩口調を辞めろ」

「はい。で、続きですが」

 

 設定がごちゃごちゃになると困るので、私は髪色も金色に戻した。

 

「最近海軍本部は海賊の力を利用してます。七武海はもとより、パシフィスタも」

「……その通りだな」

「過去にどれだけ非道なことをしていようと、現時点での影響力が高いのであれば利用する気満々です。たとえ四皇であろうと」

 

 王下七武海制度が無かった頃は海賊は総じて敵対関係だっただろう。しかし、利用できるとわかってしまえば筋が通ってなくても正義の剣を振るうポジションに海賊が置かれてしまう。

 

 元海賊でもなく、海賊のまま。

 

「パシフィスタは海軍ではなく海賊をモデルに作られるすてますし、ゼファー先生の心境が心配で」

 

 パシフィスタという新脅威に七武海を起用するという事は、『海賊は最強だぞ』って言ってるようなものだ。

 まぁ、もし海兵を利用したとして、負けたらイメージダウンに繋がりかねないからなぁ。リスクがあるなら海賊だよね。

 

「……。正直、いい気はせん」

「そうですよねぇ」

「そもそも、頂上戦争で海軍本部が負けた時点から、海賊相手に何を腑抜けでおるんだと思ったことか」

「あぁ、あれ政府の海軍縮小命令への反逆みたいなもんですぞ」

「…………ん?」

「海軍本部は、政府から『力をつけすぎ!弱体化しろ!』って命令が来たのを無効にするために比較的名前が大きい四皇相手に敗北した、ってのが真実です。……大将中将で知らないの私だけですた。クソがよ」

「口が悪……。ちょっと待て、後でセンゴクに確認しても?」

「もちろん!あの大目付せんべい親父に仕事を与えてください」

 

 なんか、大目付になってはっちゃけ始めてからセンゴクさん白髪増えたよね。

 溜まりまくってた苦労から解放されたのかな。一足先に。クソッタレ。

 

「わたし思うんですよ、政府より海賊の方が簡単でまだマシだなって」

「マシ……か?」

「複数岩じゃなきですし派閥はわかりやすいですもん。裏切りあっても所詮自滅ですし」

 

 ヒエラルキーも分かりやすいし、暴力で抑え込めるし、何より法が通用しないところがいい。

 

「何やっても海賊だから許されるのがいいですよねぇ……。四皇の頭を海に突き落としたとて七武海の援護とクルーの同情と幼子相手というプライドで報復も何も心配無いのですから」

 

 いくら知り合いとは言え、流石に相手は四皇。シャンクスさんを叩き落としたのだって根回しは既に終わってる状態。

 何があってもミホさんが守ってくれる。だって、シャンクスさんに味方した瞬間私と他の七武海が敵対するもんね。

 というか100、秘密を漏らしたシャンクスさんが悪い。

 

 いやー、七武海(1部)が世間相手に『女狐はリィンです!』って言わないでいてくれてるの地味にありがたいんだよ。

 あと言っても信じなさそう、ってのもあるだろうけど。シャンクスさんをご覧の通り、漏らしたら我が身が危ないっていう潜在意識があるのかな。

 

「女狐」

「は、はい!」

「俺は、今でも海軍の正義を信じている」

 

 ゼファー先生はメガネを外して優しい目をして言った。

 

「実はだな、海賊遊撃隊というものを作っていた」

「んん!?」

「演習兵達がもう二度と死なないように。本当はこの腕を切り落とされた8年前に、教官も辞めるつもりだった」

 

 衝撃の事実!

 なんでこのタイミングで言った???それ私相手でいいのか?

 

「影も形もない所から『女狐』とかいうクソほど怪しい海兵が現れなければな」

「アッ、ハイ」

 

 怪しいのは重々承知してますよ。泣いてないです。ぐすん。

 

「育てた覚えもないぽっと出の大将。洗脳か、徴兵か、怪しまないわけが無い。女狐のマリンコードも通達されていたことだし、存在はする。そんな怪しい存在を海軍に残したまま消え去れるか、と」

「ゴモットモデス」

「当時は怪しんでいた。そんな最大級の不穏要素を教え子だけに任せてはおれん。だから俺は個人的に、それこそアインやビンズを使って女狐を調べていた。──結果は、姿も見えなかったが」

 

 そりゃそう、幼い頃は外見のせいもあって女狐のが側すらも被れなかったんだから。

 ほぼ存在していないに等しい。

 

「だがな女狐。お前は着々と成果を上げた。七武海討伐、魚人島保護、七武海や四皇の情報も持ち帰ったと来た。七武海の担当も、見事に御せていた。なぜ?誰が?そんな実力者が?疑問は尽きない」

「は、はぁ」

「そうして辿っている内に、ついにこうして対面することになった」

 

 つまり、海軍最大級の謎を追い求めていたら海軍を辞めるに辞めれなかったと。

 

「歴代最年少の大将は、俺が片腕を無くしたハンデをものともしない……というかこんな片腕がハンデにならない位の幼子。──正気か?」

「分かる……正気じゃなき……」

「だが、会ってみてよくわかった。はっきり言って女狐自体は強くない。一瞬でひねり潰せる。が、周りが黙っていない。そんな海軍大将もあっていいだろう」

 

 ゼファー先生はサイボーグとなった片腕を握りしめて考え込んだ。

 

「先生?」

「……女狐。1番年若い海兵、お前にひとつ指導をする。人は必ず老いる。病は体を蝕み、死に至らしめ、怪我は決定的な弱点になる。老いは自然の摂理で、悪魔の実でもなければ克服できない呪いだ」

「それは……」

 

 この世界の愛すべき汚点、海賊王も病に蝕まれた。

 彼を誇り高い死へといざなった。

 

「若い兵が老兵のために死んではならん」

 

 

 そしてゼファー先生は言う。

 

「俺は余命1年だ」

「…………俺は余命1年だ!??!?」

 

 あっれぇ、なんか既視感あるな?

 

「どうせサカズキのやつに俺の思想や何やらを報告しなければならんのだろう?やつの考えそうな事だ。全く、己の師に向かって容赦も情けもない」

「余命の方に思考が持っていかれるすてるんですけどちょっと待って」

「あとは女狐と俺の顔合わせか。今後の連携……あぁなるほどなぁ。良いように使いくさりやがって」

 

 サカズキが狙っている事柄を素早く理解しているのかゼファー先生は顎に手を当てて思案顔。

 不服そうな、少し誇らしそうな微妙な顔だ。

 

「サカズキに伝えとけ。女狐が海軍として正しくある限りは海軍を裏切る気はない、とな」

「どうしてこの世の権力者は私に責任ぞ押し付けようとするんですかーー!!!!」

 

 せめて、ちゃんと権力持ってんなら、自分の責任にしてよ……!監督不行届みたいな汚名を……!被せないで欲しい……!

 ほんとに、マジで。

 

 胃がキリキリする。

 サカズキさんがわざわざ女狐隊を出した理由は、大将格の戦力を向かわせて牽制するレベルにゼファー先生を警戒していたから、でしょう!?

 

 やだよォ。

 最悪の世代とか七武海がやらかしても私のせいになるのにぃ。三大戦力は七武海だけで

 

「女狐」

 

 ゼファー先生は真剣な顔をして私を見据えた。

 

「海軍として正しい行いをしろ。お前は海のような大将になれ」

「海、ですか?」

「水みたいに掴みどころを無くし、時に大地を飲み込み、全てを知って、全てを包み込んで、能力者の弱点であるように、海賊にとっての弱点となれ」

「はい、ゼファー先生」

 

 

 とりあえず、私は七武海の弱みになりそうな写真を何枚も取り出した。

 亀甲縛りの七武海、女装した七武海、顔面パイの七武海、パラサイトで操られてる七武海、etc。

 

「──得意分野です」

「………人間の尊厳を破壊しろとは言ってない(ドン引き)」

 

 

 

 

 

「……ひとつ聞いていいか」

「はい?」

「女狐の噂が出始めたのは、約10年前だ。マリンコードの通達も、だ。…………まさかとは思うが当時の年齢は」

「……………………五老星が(遠い目)」

「………………五老星か(遠い目)」

 




ゼットが一体どの七武海の加入で海軍に見切りをつけたのか分かりませんが、この作品の現在の七武海新規者は、比較的無害な2名(バギーandロー)と変わらずクロコダイルなので決定打にならないと信じて。あともし仮にローとかがやらかしてても魔法の言葉女狐のせいを使って海軍に留めて起きましたわ。
皆さんハッピーハロウィンですよ(11/1)
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