2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第274話 慢性的な胃痛と一緒

 

「嫌だ!リィンちゃんと離れたくない!やだやだやだやだやだやだ!」

 

 海軍本部の奥深く。元帥室にも近い、一般海兵が近付けないような場所で、役職も何も無い普通の海兵が地面に仰向けになって手足を大きく動かしていた。

 

「ヤダーーーーーーーーッ!!!」

 

 いい大人が駄々をこねるな。

 

「ダメだよ」

「ワ、ワァ……」

「泣いちゃった」

「あーあ」

「防音なのと海軍の中でも奥の方だから大丈夫だと思うけど名前を大っぴらに出すなよ」

「元帥室の傍って大体お偉いさんしか来ない。つまりリィンちゃんのこと知ってるから平気。なんだったら交代で情報共有してるからこの時間でリィンちゃんバレして困る将校は居ない」

「(ドン引きの顔)」

「やだやだやだやだやだやだ!俺ずっと女狐部屋いるー!!!」

 

 相変わらず月組は連携力に優れてるよなぁ。強さはぶっちゃけ本当にゼロに等しいけど、将校相手でも交渉できる度胸とか人数を活かした人海戦術とか。

 

 月組は女狐派ではあるが直接の部下では無く、白猟のスモーカーことスモさんの部下なのだ。

 書類処理が追いつかないから借りていたのであって、そろそろスモさんの元に返さなければならない時が来た。

 

「なんというか、大将と月組って距離感近いよな」

 

 ニセキングがぽつりと漏らす。

 他の星組は事務処理をしながらも同意するように頷いた。

 

「そう?」

「間違いなくそうだと思うが」

「付き合いで言えば人生の半数以上を占めてますし、家族みたいなものだけど……」

 

 秘密が多いから隠し事も多いし、月組は隠し事を気付かないフリして踏み込まないようにしてくれてるから、心の扉って意味では開けっ放しになってないから……。

 

 ──そう思って月組を見ると滝レベルの涙を垂れ流していた。

 

 流石にぎょっとした。

 

「り、リィ゙ンぢゃん゙ががぞぐだっでぇ゙!!!」

「うおおおおいおいおいおいおいいきててよかっだあうおおおおおん」

「あっ死ぬ、死んじゃう、軽率に死んじゃう、心臓が、うっ、これはトキメキ……っ!」

 

「──人たらし(リィン)、お前簡単に褒めるな」

 

 グレンさんに肩を掴まれた。はい、すみません、気をつけます。

 

「タイショーったら小さい頃はこんなに可愛かったのね」

「全部視線がカメラに向いてないことを褒めればいいのか貶せばいいのか」

「……つまり隠し撮りって事ね?」

 

 星組女三人衆が手に入れたばかりのアルバムを眺めながらボヤく。仕事してるのかと思ったけど、なんだ私の写真か。

 

「隠し撮り………とは言いますけど、私気付いていた故に。果たして隠したと言えるでしょうか?」

「それなんだよなぁ。まさか気付かれてたとは」

 

 ここ最近慌ただしい日々が増えていたから過去を思い出すことが少なくなっていた。

 いやー、いい機会。

 

 過去と言えば、私は月組にひとつ聞きたいことがあったのを思い出した。

 

「あの、このブレスレットの事なのですけど」

 

 アイテムボックスから取りだしたのは紫色の珠々が連なった一見するとただのアクセサリー。ウォーターセブンにて貰ったものだ。

 

 しかし、その実態はある程度の速度で投げたり衝撃を加えると毒がばら撒かれると言う技術と威力の優れもの。これをどこで入手したのかずっと気になっていたのだ。

 シキのメルヴィユで試してインペルダウンでも試したが、本当に威力がバカ。一般的な海兵に入手出来るとは思わ──。

 

「(スイッ)」

「(フィッ)」

「ヒューヒュープ、プピュー」

「……目を逸らすなかれぞり」

 

 私は1人を見つめた。こういうのはね、ロックオンすると割ってくれやすいよね。

 月組は皆でひとつ。つまり全員同じ情報を持ってる。そうでしょ?

 

「うっ、そんな可愛い顔で僕を見ないでリィンちゃん………………。実はリィンちゃん宛に時々毒が届くのでそれを加工しました……」

「口割るのはやっ」

 

 なるほどね、何となく察した。

 私に喜んで複数種類の毒を渡そうとするのは1人しか今のところ居ない。いや、ギリギリ2人かな……。

 

 とにかく、こんな感じで厄介者を相手することの方が多いけど、潜入中ということもあって仕事の量は他と比べると少なめ。

 少ない人数で回し切れる量だ。

 

 月組をスモさんの元に返してもそろそろ仕事量的に大丈夫だろうと──。

 

「おい女狐!今すぐ海賊島行け!トラファルガーと黒ひげとコビーが海賊島で占領中じゃけぇ!」

 

 

 ……サカズキさん、難易度だけは考えてくれませんか?

 

 

 

「何故ぞり!??!!!」

「それが片付いたらモリアの所に行け。場所は分かるな?本題は本人に聞けそっちはそこまで急ぎじゃない」

「待つして待つして理解が追いつかぬ海賊島、え、何、コビー?黒ひげ?ローさん?は?」

「コビーは任務、黒ひげはたまたま、トラファルガーに至っては何を企んどるんかわかっとらん!王族も巻き込まれてる!貴様の出番じゃわい!」

 

「──王族は!勘弁してぞり!!!!」

 

 私は永久指針(エターナルポース)を取り出した。

 

「…………なんで持ってんだよ!」

「うるさいニセキング!」

 

 どこぞのスコッパー・ギャバンからもぎとったんだよ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「──だから、船を乗り間違えたんだって言ってるだろ」

「いやぁ、乗り間違え、ありますよね」

 

「正座しろ!!!!」

 

 女狐の姿のまま、私は咆哮した。

 

 

 海賊島にたどり着いた私が見た景色は客船であるロッキーポート号と逃げ惑う市民。そして海賊の心臓を握りしめて戦闘しているハートの海賊団と黒ひげ海賊団。

 

 黒ひげはとりあえず無視してローさんとコビーを引き摺り出して話を聞いたら、だ。

 

「関係者外秘なので詳細は言えませんが、任務で」

 

 コビーはまだいい。許す。

 

「乗り間違えたんだ、悪ぃか」

 

 悪いわボケ。

 

「目的がなんであれ、死の外科医、七武海ともあろう者がなぜ客船に乗り込んで海賊島にまで来た」

「…………ここには目的があってきた。密輸団の船に乗り込んだと思ったが、客船だったんだ」

「ドジっ子か!!!!!!」

 

 ドンキホーテ・ロシナンテ!

 お前のせいだぞ!!!!(責任転嫁)

 

「…………待て。乗り間違えたなら、なぜここにいる?行き先の違う船で、目的の島に何故?」

「………………黙秘を」

「……死の外科医、お前はよく分かってないらしいな。招集のタイミングを天夜叉と被せない気遣いを」

「船をジャックした」

 

 ゴンッッッッッ。

 これは石を手に持って脳天に振り下ろした時の音。

 

「ーーーーーーーッ!!!!」

 

 怒りに身を任せすぎて口から余計な言葉がこぼれでそうな所を必死に我慢する。

 地団駄と共にイメージに任せて地面を割れば超怪力がバカパワーで地面を破壊してるようにしか見えないだろう。

 

 あー、ほんっっっっとにさぁ。

 

「くたばっとけよクソが(ド低音)」

 

 コビーとローさんの肩がビクリと飛び跳ねた。

 

「死の外科医、責任もって船と市民を守れ。そして海賊を殺せ。コビーは変わらず、対面守れ」

「対面、ですか?」

 

 コビーなら素が良い人だから問題無いだろう。

 市民、王族、その他もろもろを海軍が守ったという功績がな!

 

 よりにもよって、王下七武海が客船をジャックしてるんだから……!

 これが王下七武海になる前なら良かった。前後関係逆だったら救いがあった。

 

 七武海の監督責任に関わってくるんだよこれが!!!!!!

 

「ふ、ふふ、ふふふふふ」

 

 そうかそうか。

 よろしい。

 

 

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 おめでとうお前の未来はとても面白くて愉快で死んでも死にきれないものになりました。

 

「ところで女狐さんがどうしてここに?」

「……赤犬の命令」

「サカズキさん、ですか!?うわ、わざわざ申し訳ないです!すみません、こちらから報告すべきだったのにそれどころじゃなくて」

「…………ん?」

 

 なんでコビーくん、何も知らないの?

 コビーから報告が無ければ海軍に連絡が行くはずないって言うのに。

 

 じゃあ、情報の出処は一体……。

 

「ゼハハハハハ!!!」

 

 私の思考を邪魔するかのごとく、聞き覚えのある笑い声が聞こえたかと思えば重くぶつかる音が聞こえた。

 

「女狐さんっ!ぐ、……っ!」

 

 コビーが黒ひげの攻撃に耐えた音だった。

 ごめんコビー、ありがとう。

 

「女狐ぇ!随分遅いお出ましじゃねぇか。えぇ!?」

「………………。」

「だんまりってわけか!ゼハハハハハ!」

 

 何が面白いのか黒ひげは大爆笑中。

 どうしようかなぁ。一応コビーの前だしローさんにキレ散らかしたし中身はリィンのつもりだったんだけど、絡むの面倒くさそうだなぁ。

 

 あ、でも。

 

 海賊側に『リィンが女狐の影武者として潜っている最中』って話題を流せるチャンスか。

 

 私は海賊に。

 ・女狐にはエース(ション)とリィンの2人がいる

 ・真女狐は海賊王のマブである

 ・偽女狐は海軍に潜入して利用している海賊

 

 この3つを知らしめたいのだ。

 今回はこの3つ目をしようってわけだね。

 

 

「コビー、退避」

「は、はい!」

 

 私はコビーを下げた。

 

 場に残るのはこれで黒ひげと私だけになる。

 

「あのさ、ティーチさん」

「………………んん????」

「邪魔しないでもらえるですか?」

 

 黒ひげはポカンとした顔になった。

 

「…………………………リィン?」

「名前を出すなぞこのスカポンタン」

「いや口調が何より特定要素なんだが????」

 

 それはそう。

 

 ひとまず、私は黒ひげの襟首に掴みかかって地面に押し倒した。

 

「ちょっと面子保つために寝転ぶすてて」

「お、おう?????」

「まず簡単な説明。私は女狐でした。本当の女狐だと思うすてましたが、残念無念、真女狐を『間に合わせる』ための時間稼ぎであり影武者であり捨て駒でした」

「『間に合わせる』……?」

「あ、そこは細かく聞くされても不明ですぞ。そしてですね、私は裏切られたことに気付かぬフリをして、こうしてまた海軍に……潜っています」

「ゼハハハハハ……なるほどなぁ?」

 

 よし、インペルダウンで出会った時と今の状況への表向きな説明はこれにてだ。

 

「本来であれば『海軍に従順な私♡』をティーチさんにも見せるべきなのでしょうけど、そんな簡単に騙されてくれないでしょうしマルっとお話しますた。……バラされても困りますしねぇ。真女狐に、私が偽物だと勘づいたことに」

 

 これは説明の裏付け。

 こういうアフターエピソードは無いと騙された感が出ちゃうからね。

 

 まぁ、騙してるんですけど。

 

「それでぇ、ティーチさんは、ここで何を?」

「喋ると思うか?」

「うーん、そう簡単に割ってはくれませぬよねぇ」

 

 この海賊島の頂点である王直を討伐。

 名声を高めようとしているのか、はたまたその裏に何か目的があるのか、それともこの海賊島を支配する利益か。

 

「いやぁ、なーんも分からぬですぅ」

「…………リィンお前怖いなぁ?」

「なんの事やら」

 

 にっこり笑って見せると黒ひげのあんちくしょうは引きつった顔をした。

 

「で、俺はお前のなんの邪魔をした?」

「……海兵の前で危うい発言をしようとした、ってことですぞ」

 

 仮面で見えないだろうけど私は精一杯睨みつける。

 

「コビーは女狐の部下です。私に直接話が来るならともかく、本物に下手な情報が渡ると困る。インペルダウンで出会ったティーチさんなら、『私が海軍に懐疑的である』ってことをバラされかねないので」

 

 従順なフリをしてるから、疑われる要素を作りたくないんだよね〜。

 と、言外に伝えてみる。

 黒ひげは馬鹿だけど阿呆ではない。厄介なことに頭が働くタイプの海賊だ。そして常識外れたことでも即決して動けちゃうタイプの脳足らず。

 

 敵に回すと厄介だからこそ、あえて弱点を晒しておきたい。

 私の欠点はここだよ、と。

 その欠点はカバー出来るし、もしそれを見抜けられたとしても他の欠点が利用出来なくなる。

 

 完璧だ……!

 

「……青雉はどうした?」

「急に何事ぞり!?」

「お前が女狐だって諸々の情報は黙っててやる代わりに俺にも海軍の情報を流せ」

 

 あっ、あー、なるほど。

 対価は考えてなかったなぁ。

 

 と言っても青雉クザンさん。何も事前の気配なく私の探索にも引っかからず大量の書類を残して引き継ぎも何もせず全部署の業務がストップするような去り方をして跡を濁しまくったクザンさん?

 

「…………次見つけたら殺す」

「裏切り者同士だろ?なんでそうなった」

「アイツのせいで……っ!仕事が……!奉仕したくない海軍に!なのに……っ!!!ううう!!」

 

 ビークールビークール。落ち着こ私。

 

「……あの人はサカズキさんと元帥対決をした後、片足を失いますた。元々対立気味ですたし、クザンさんは耐えられなかったのでは?」

 

 仕事を回される未来に。うん。

 元帥になりたくないとは言っていたけど、サカズキさん遠慮なく仕事回してくるんだもん。

 

 そう、今私が海賊島に居るように。

 

 あっ、殺意わいてきた。なんなんだあのドジっ子七武海。お前を女体化させてドジっ娘にしてやろうか。うん、そうなったらホルホルの実の能力の力を借りて……。

 

「おいリィン」

「は、ごめんです。聞いてなかった」

「じゃあもう一度聞くぞ。お前は何を企んでいる」

「嫌がらせぞ」

 

 私は七武海に嫌がらせするために生きていると言っても過言ではないから嘘ではないよね。

 

「センゴクさんが1番嫌がること、ご存知?特別に教えてあげるです」

 

 なぜ私が黒ひげにボロボロ情報を零したのか。私は海賊に目的がある。

 

「海賊王の復活です」

 

 私とセンゴクさんは麦わらの一味を海賊王に仕立てあげようとしている。それが海軍、センゴクさんへの復讐になると伝えた。

 

「私は可能なればルフィがいいですけど、センゴクさんが生きてる内に叶えてくれるのであればティーチさんに力添えするのも嫌ではなきです。ま、もちろん他の海賊にも言えることですけど」

 

 疑いの目がない訳では無い。けれど、黒ひげの中で納得は出来たのか飲み込んだ。

 

 ふっふっふっ、まさか出した情報全てが弱みにならないとは思うまい。

 

「長いこと睨み合ってても怪しいのみですし、手短に終わるさせるですね」

 

 ガチャン。

 

 

「……………………は?」

 

 私はティーチさんの手に海楼石の錠を掛けた。

 アイテムボックスから速攻取り出す早業はまるで虚空から元が生み出されたように見えただろう。

 

 予想が出来るわけが無い。

 

「リ、ィン?」

「やだなぁ、ティーチさん♡私、女狐ですぞ♡……タダで終わるわけねぇだろうがよ」

 

 私は黒ひげ海賊団からの追撃が来ないうちに下がった。

 

無名の海賊(・・・・・)が逃げ果せたって、世間は何も気にしねぇよ──手柄もーらい♡」

 

 これが漁夫の利ってやつですよ、黒ひげ君。

 

「リィンてめぇ!!!」

 

 はて、今海賊の名前を出されても女狐よくわかんないぞ。海賊同士潰し合いでもしたのかな?うーん、不思議だなぁ。

 

「海兵!王直の身柄を確保しろ!」

 

 七武海のやらかしを挽回するためには、『七武海と女狐が協力して凶悪な海賊を倒した』くらいの精算が必要なんだよ。許して欲しい。

 

 黒ひげの名前は世間に知らしめる必要、無いじゃん?

 その代わりと言ってはなんですが、海軍本部内で手配書出しておきますね。

 

 

 

 

「──ロッキーポートの乗客の皆様、安心を。この島の海賊は我々女狐率いる海軍と王下七武海の死の外科医が制圧します」

 

 黒ひげが悠々と私に雑談をしていたのは目下の脅威が既に去っていたということだ。

 ローさん、コビー、黒ひげ。この3人で行われた海賊島の覇権争いは黒ひげに変わり女狐が収めさせてもらおう。

 

 海楼石をつけた能力者ほど弱いものは無い。

 

 黒ひげは予想通り逃げ出した。そうだね、ここで私を殺しても鍵は外れないしね。

 

「で、でもこの船を脅して連れ回したのは七武海の奴だぞ!」

 

 ロッキーポートの乗客がローさんの仕業に悲鳴を上げている。私の胃も悲鳴を上げたよね。

 

「それに関しては本当に申し訳ございません。実はあの七武海は────ドジっ子なのです」

「……………はい?」

「彼はこの島に向かう密輸船とロッキーポートを乗り間違えたのです※事実」

 

 ザワザワと混乱する一同。

 信じられないだろう。ぶっちゃけ私も信じられない。

 

「彼はこの島に住む少女から手紙を預かり、正義感を胸に助けることを誓った。しかし、期限は今日の夕暮れ。それまでに助けなければ、少女は親の借金のカタとして殺されてしまう」

「……!」

「彼は乗り間違えていたことには気付きましたが、時間が何分ありませんでした。巻き込まれた皆様には大変なご迷惑をお掛けしてます。ただ、悪意を持って巻き込んでしまった訳では無いということはご理解をよろしくお願いします」

 

 義賊のような理由に別の意味で混乱が広がっていく。

 

「──女狐大将!」

 

 コビーとヘルメッポが乗客に説明する私に敬礼をした。

 

「市民の皆様の安全確保が終わりました!」

「よくやった……っ!」

 

 ナイスタイミング過ぎる。

 私は改めて乗客に向かった。

 

「皆様はこの島を救った英雄です」

「えい、ゆう?」

「我々海軍や七武海だけではたどり着けなかった。この島を仕切っていた海賊は口に出すのもはばかられることをこの島の善良な市民を利用して行おうとしていました」

 

 知らんけど。

 

「結果論とは言え、王下七武海の手助けをしていただいた高貴な、慈悲深く正義感の強い類まれなる賢者の皆様の協力なしでは、決してこの島は救われなかった!皆様にはご自身の偉業が分かりますか!?」

 

 秘技:褒め言葉で押して丸め込め

 

 混乱と恐怖のどん底に落とし込まれたロッキーポート号の人と海賊島の市民。彼らに『七武海の手助けをした客船の方々は無力な身でも己を顧みず市民を救った』というレッテルを貼り付ける。

 『すごい!』『流石!英雄!』だなんて褒められている状況で『いやあれは七武海のせいで巻き込まれたんだ』とは言えないだろう。

 

 補填として今回捕まえた海賊の懸賞金に見合った分け前と、賞状、そして情報を広める新聞。これがあれば上流階級はレッテルを重視するから否定も出来まい。

 

 くっくっくっ、こういう時はね、謝罪じゃなくて煽てるんだよ。

 叩ける隙を作るのではなく、よいしょするのだ。

 

「慈悲深い皆様にお願いがございます。どうか、この島の市民に直接、食事や施しをくださいませんか」

 

 直接顔を繋ぐことによってロッキーポートと海賊島に連帯感を持たせる。

 この光景を新聞に乗せたら、完璧だろう。

 

 市民は乗客に感謝し、乗客は名誉を得る。

 

「…………あとは裏付けだな」

 

 王直が悪いことを企んでいたという捏造証拠がいくつも欲しい。

 ──それとローさんがドジっ子だって噂もな!

 

 とりあえずこのすきに女狐の衣装を脱いで、変装をほどこして『王下七武海に助けを求めた少女』のフリをするか。

 

「コビー、ヘルメットあとは任せる」

「はい!」

「ヘルメッポ!!!!承知!」

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「──名無しのピエロおおおおお!!!!」

 

 青い鳥(ブルーバード)の本部。移動式カジノの上で私は一人の男を名指しで呼び出した。

 

「えっ、何うわ、お兄さんバージョンじゃん」

 

 私は黒髪を雑に結んで痩せこけたように見えるメイクをしていた。ギリギリ女の子に見えるナチュラルな化粧をしていたけれどとりあえず洗い流したよね。

 つまりエース君の姿ってわけだ。

 

「お前っ、お前のドジっ子が!!!このやろう!!!移すな!!!!!」

「生まれてこの方ドジっ子を人に移した記憶はないんだけど!?」

「──とりあえずローさんのドジっ子エピソード世界中にばら撒くぞちくしょう」

「オーナー、何があったんだ?」

 

 シーナに掴みかかっているとテゾーロもやってきた。私の荒れ果てた姿を見て……ポップコーンを片手に装備して。

 

 映画鑑賞か!!!

 

 とりあえず私は事件の全貌を語った。

 

「つまり、客船をジャックしたローと、女狐隊のコビーと、黒ひげが海賊島の王直を倒して」

「しれっと黒ひげの手柄を奪い取ったのを裏付けして」

「ローの失態をカバーもとい嫌がらせをするためにドジっ子の噂も流して」

「ロッキーポート号の乗客を美談に仕上げると」

「…………とりあえず笑っていい?」

「許可する」

「ぶふーーーーーーっ!!!!だはははははは!!!!!」

「フハハハハハハ!!!?!??なんでそんなことに!!!?!ハハハハ!!!!!」

「うわうるさっ」

 

 思わず耳を塞いだ。

 

「とりあえず2人に用意してもらうのは5つ」

 

 ・一連の情報を流すこと

 ・ローさんのドジっ子エピソードコラム

 ・王直の悪巧みの捏造証拠

 ・乗客の神聖化新聞

 ・黒ひげの動きの把握

 

「以上です」

「「イエッサー!」」

「ドジっ子と悪巧みは速攻よろしく」

 

──ビリリリッ!

 

 突如目の前に雷光が走った。

 

「やかましいな、貴様ら。神の前だぞ」

 

 長い耳タブの男がタコの魚人を小脇に抱えて現れた。

 

「エネルにはっちゃん。どうしたんだ?」

「ニュ〜!なっちゃん!」

 

 シーナとはっちゃんは幼なじみ。

 麦わらの一味の舟を持ち帰る時にはっちゃんも一緒に持ち帰って怪我が治るまでグランテゾーロに置いている。

 

 エネルはビリーと一緒にいた所を拾ったのだ。

 文化が違うからね、こいつから吸収できる知識は拾っておかなきゃ。

 

「なっちゃん、この前言ってた海賊についてエネルが気になること言ってたから来たんだ」

「え゛っ、あ、いや、後で聞く、後で聞くよ」

 

 一瞬にして動揺を見せたシーナ。

 私ははっちゃんに近寄った。

 

「久しぶりだなぁ、はっちゃん。お兄さんにどんな海賊の事か教えてくれるか?」

「にゅ、あんたになら教える!なっちゃんが言ってたの」

「──〝(カーム)〟!!!」

「……!?ーーーーっ!!!…!」

 

 シーナが隠したがる海賊ね。

 パクパクと口パクでなんで声が出てないんだと驚くはっちゃんに私は言った。

 

「口パクで言い方伝えてくれるか?」

 

 その言葉に頷いたはっちゃんは言った。

 

 

 ──ス ペ ー ド 海 賊 団 が

 

「……へぇ?」

 

 私はエネルに向かい直った。

 

「スペード海賊団について、なんか知ってんのか雷小僧」

「……。知らん。ただソイツらが数時間前に言っていた」

「ん?」

「我は雷。遠く離れた場所の音でも聞こえるのだ。確か……『スペード海賊団が鬼の跡目と交戦した』と。それを『オーナーには黙っていよう』とも」

 

 

 キリ。

 キリキリキリキリキリキリ。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(行き場のない咆哮)」

 

 この世をばクソです。




あと片手程度の話でこの2年間が終わる、はず。
早く魚人島行きたいね。ドジっ子ローはさすがに衝撃的だったぞSBS
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