「──来るのがおせぇよぉ!!!」
「ごめんて」
「しかもこんな夜も明けてない様な時間帯に来るな!」
「社畜舐めんなよこの時間しか暇がないんだ」
「えっ………………(ドン引き)」
私は今、スリラーバークに居る。
寝巻き着でナイトキャップを被ってフリルの着いたクッションを抱えたモリアと。
趣味可愛いな。もしかしてミホさんの所にいるペローナさんって人の趣味かな。
モリアの趣味って可能性もある。うちのセラフィムのバット(モデルモリア)に試してみようかな。
「で、依頼は?」
サカズキさんに言われていた『モリアの所に行け』という命令。具体的な内容は本人に確認するように言われてるからわざわざ忙しい時間を練ってやってきたのだ。
全く、スペード海賊団の手配書発行申請がまだ出来てないってのに。
あとラフテルを確認できてないんです!したいよ確認!
あ、あかん、胃が痛くなってきた。
とりあえず目の前のモリアに集中してしまおう
「キシシ、いいだろう。寛大な心で許してやる!えーっと、俺の能力は他人の影を奪う事が出来るんだ。その影をゾンビに使って死なない軍団を作る、っていうのが大体の戦闘スタイルで」
「あ、うん、ご存知。割愛して」
「……??? とにかく、影が欲しいんだ!海兵の影を奪って戦力にしてもいいが、それだと怒られそうでな」
あぁ、それでか。
確かに麦わらの一味が根こそぎ影ゾンビを倒して行ったから持ち主に影が戻されただろう。
数年かけて奪い続けた影が一気に無くなったんだ。戦力の暴落具合は、同じ境遇のクロさんと比じゃないだろう。
「奪った影の元持ち主は、太陽に当たったら死ぬんですたっけ」
「そうだが、詳しいな」
「──だって私リィンですもん。お前倒した張本人」
「……………………???????」
女狐の仮面を取ってモリアを見上げた。
「改めますて、女狐やってます。麦わらの一味の雑用兼七武海のお茶汲み係、リィンです。五老星に交渉してお前の命を救ってやった恩ぞ忘れるなよ」
「はぁあ???!!!??」
「さて、小舟貸すて。影、乱獲パーティしましょ」
「い、いやぁぁぁあああ助けてお巡りさん!!」
「私ですね」
「七武海辞めます!!!!!!」
──インペルダウン
「ここなら太陽の光も入らぬし脱獄防止にもなるし、影は確実に強い!」
「神よ!!!!」
小舟でインペルダウンに連れてきたら崇められた。
「いやはや、思っていたのですよ。インペルダウンの大脱獄劇は行政として二度と起こさないようにって」
「(あれ?お前のとこの船長が引き起こしたんじゃなかったっけ?って顔)」
小舟から降りるとインペルダウンのハンニャバル署長とマゼラン副署長が揃って出迎えた。
「いらっしゃいませ女狐大将!」
「急に来られると困るので、今後は事前に連絡をおし願いしたい」
「……すまない」
マゼランさんに軽く謝罪をして事情説明をする。
影を利用する戦闘形式なのだが、諸事情で影を使い果たしてしまった。影の持ち主は太陽光を浴びると消滅してしまう為、脱獄防止としても役に立つ。などなど。
「それは即決で実行しても良さそうですな!」
「うむ、俺も同意見だ」
「ではゲッコーモリア様はこちらに」
モリアはあくまでも七武海なので衣類のチェックなどに連れ回されていく。
さようなら、と一時的に見送ったあと、私はマゼランさんに向き直った。
「副署長、脱獄した海賊は」
「8割方の確保が出来たな。残り1割は七武海の傘下に、もう1割はレベル6からの脱獄であった為実力もさることながら難航している」
「あー。level6。……鬼の跡目はスペード海賊団に加入した情報は手に入った」
「…………何も聞きたくない」
組織のトップクラスって大変だね。
同情を込めて肩を叩いた。
現在『政府』『監獄』『海軍』の組織は頂上戦争の影響があり、政府の力が若干強くなっている。
『脱獄させるとはなんと情けない』『戦争に負けるとは嘆かわしい』と。
うるせぇ麦わらぶつけんぞ。
というかお前らの方が先に海賊に負けてんじゃん。
「それにしても、女狐大将のおかげでインペルダウンの機能が動き始めて良かった」
囚人、空っぽだったもんね。
壁、ぶち壊れてたもんね。
脱獄させたのも壁壊したのもまぁ私なのですが、知らない顔して全部の尻拭いをしますよ。もちろん。
「特に頂上戦争直後、油断したであろう囚人の情報を多く、しかも無償で提供してくれるとは……!」
「再発防止として影を奪う案は素晴らしい。海水だけでなく、太陽も敵となると。……しかしこう言ってはなんだが、インペルダウンは曇り空が多い。太陽光が差し込まないのだが、どうしたらいいと思う?」
「…………空に向かって、光線?」
「人間技では無いな」
「………………署長が武器を一振で空を覆う霧がはれ」
「出来ると思うか?素質はさておき」
「………。」
「な?」
無言で渋顔を作った。
素質はさておきと言うくらいだから、認めているのは認めているんだうけど。
まぁ今回は脱獄囚の行動制限とやる気を削ぐという方向でも十分脅威だろう。
「…………囚人に太陽に当たれば影が復活する、と説明しておけ」
そうすると正しく『希望の光』の様に太陽光に縋るだろう。
そして太陽に触れた瞬間、消えて溶けていく。救いと思った光に身を焦がす瞬間を目撃した囚人はどうなるだろうね。
間違いなく、脱獄囚人は居なくなるだろう。この世には。
「…………………………すまない正直ドン引きした」
「解せん」
政府の言い分くらい解せぬ。
==========
「──絶対に、断る」
場所は変わってここは世界政府。
応接室にて断固とした姿勢を保っていた。
「そうは言いましてもなぁ、女狐殿。そいつらは元々政府の人間ですが」
目の前の紫の役人が言うことはただ1つ。
『CP9、返せよな』
空組を政府に返せだ?何言ってんだこの脳足らずのスットコドッコイは。そもそも最初に罪を負わせて捨てたのはお前ら政府の方だろうが。
麦わらぶつけんぞ。
「なぁ?お前たちもそう思うだろ?なぁロブ・ルッチ」
私の後ろには空組が勢揃いで控えている。紫男は媚びへつらう様ににやりと笑った。
が、そうは問屋が卸さない。
──ガアンっ!
机を叩いて破壊(ハッタリ)をすると面白いくらいに肩が跳ねたあと視線が集中した。
「どうやら、お役人さんは、私を、雑用と、勘違いして、おられる」
上すっ飛ばして下に話しかけてんじゃねぇよ。上官の女狐を無視して話を進めていいと?
ほう、無視しても、よいと?
それはそれは、大層な教育をしておいでで。
そっちがその気ならこっちは奥の手出すぞ。
「──バスターコールの不正利用」
「(ビクリッ)」
戦争前ということも、海賊が絡んでいたこともあってなあなあで請求してなかったが。
ニコ・ロビンが攫われ政府に麦わらの一味が乗り込んで政府に喧嘩を売ったあの日あの時あの場所で。
政府は、放送で、盛大に、言ってたよねぇ。
バスターコールを間違えて呼んでしまった、と。
証人の『一般市民』の方々も、派遣されていた海兵も耳にしている事だし。いやぁ、口封じが遅かったねぇ。
調書?ちゃんと取ってるに決まってんだろ。
それを突かないで居たのは『女狐』という表に出したくない大将が絡んでたからってだけなんだぞ。
「うちの部下。以上」
他に意見はあるか?
そう言いたげに、そしてイライラが見えるように組んだ腕をトントンと何度も叩く。
「そこまでだ女狐大将」
拒否の姿勢を保っていたら後ろから声がかかった。
ロブ・ルッチだ。
「俺は政府に戻る。お前の下にいるのは懲り懲りだ」
政府の役人以外同じことを考えたであろう。
『お前が言うか?』と。
元CP9で構成された空組は、
その中でもルッチは『女狐の右腕は俺だ俺だ俺だ』みたいな、なんというか、こう、クソデカ感情をお持ちである狂人だ。
だから1番有り得ないのだ。喜んで女狐から離れる行為自体が。
カクなら、ぶっちゃけ有り得た。
「女狐の元だと育成ばかりで殺しの仕事も来やしない」
渡してるが。
「雑用書類ばかりで体も鈍るし」
始末書以外の書類任せたことないが。
「挙句に炊事だと、俺たちは武器だ。なまくらになるのはごめんだな」
お前炊事微塵もやったことないだろ。
「──で、俺たちはまたCP9に戻るのか?」
つまりこう言いたいのだ。『俺、政府にスパイしてきます!』と。
「っ、はぁ〜〜〜〜〜。あくまでも、貸し出し」
これに女狐は嫌々折れた。
このシナリオであれば疑われることは少ないだろう。2年ほどの短い期間でまさか海軍の大将に心酔するとは思うまい。
何がツボにささったんだろうなぁ……。
「坊や達はCP0に所属してもらうわ」
深いため息を吐いていると、部屋の奥から金髪のウェーブに仮面を被った女性が現れた。
「CP0……だと?」
「えぇ。殺しを専門とする、総監直下で動く諜報部隊」
あの、サイファーポール。
言っていい?
1〜8までが表で裏に2個も隠すのやめてもらっていいですか?隠しすぎです。
いつかサイファーポールアルファとか出てきそう、やだ。
「いいわね、女狐」
よろしくないです。
項垂れる気持ちを隠して深くため息を吐いた。すまん空組、ルッチの暴走に巻き込まれてくれ。
==========
場所も代わり時も変わった後半の海、海上。
「しかし、噂の女狐の正体が最悪の世代の麦わらの一味の一員だったとは」
戦桃丸と呼ばれたまさかり担いだ大男がせんべいをバリバリ食べながら言い放った。
1隻でバスターコールが起こせるこの戦艦。
乗船員は我々女狐隊+海軍中将というめまいがする程の面子。
私は『政府からの命令』により、新兵器の使い方を海軍中将達に指導する事になった。
──そう、パシフィスタである。
「まぁ、無名の頃に潜るすてたのでここまで名前が大きくなるとは思ってもみなかったのですけど」
戦桃丸さんはベガパンク側から派遣された方で、この度海軍徴兵との兼ね合いもあり将校地位としてパシフィスタ使用の副官として女狐の部下に入ってもらうことになったのだ。
「はーいじゃあ中将方集合すてくださーい」
私の集合の合図に集まったのは古参の中将。まぁ、要するに私を小さい時から面倒見てくれてたおじ様達。
船の雑用は女狐隊にお願いしてるので持ち場を離れてやってきた。
「…………立つと圧がすごいので全員座ってくださいぞ」
ちょっとね、私より遥かに巨体な方々がね、私を見下ろしてるのね、はっきり言って怖いよ。
私が純粋な女の子だったら泣いてた。
「まぁリィンチビだしな」
「仕方あるまい」
やれやれ感を出しつつ大きな体を窮屈そうに丸めて体育座りをし始めた中将にちょっとイラッとしつつ私は仁王立ちで書類を確認しつつ説明した。
「改めまして、今回ぱちふぃすた、パシフィスタの、担当をお前らに押し付けられますた、女狐です。隣にいるのは黄猿のリノさん推薦で、ベガパンク経由で派遣されますた金太郎です!」
「戦桃丸、な?」
「はい、戦桃丸さんですた。戦争にて使用された等身大くまさんのパシフィスタは記憶に新しいと思うます。また、新たな新型パシフィスタのセラフィムの紹介と指揮系統、そしてその戦闘力について今回は説明をします」
そういうわけで、パシフィスタの基本的な説明を戦桃丸さんにパスした。
「先程紹介された、わいは『世界一口の固い男』戦桃丸だ。海賊や海軍になんの因縁もないが、科学部隊の隊長を務めておる」
なんか余計な情報もいくつか入ってたな。まぁいいか。
「まずはプロトタイプの説明だ。頂上戦争で使用されたパシフィスタだが、あれは王下七武海のくまを改造した技術が転用されている。機能としては口と掌からレーザー、両目にモニターがついており交付されている手配書の判別、防御力は覇気を使っても攻撃は入らない。プロトタイプは基本的に前半の海で使用されるから、前半如きの海賊じゃ通用しねぇぜ」
高性能で機械みたいだけど、一応生物ではあるんだよね。
フランキーさんみたいな改造人間に近い。
「海賊には壊されない自身はあるが、中将達、ぜってぇ、ふざけて壊すなよ」
「くまさんモデルのパシフィスタ、軍艦一隻はくだらないですぞ」
ここで一旦話を区切って次の紙を捲る。
「次に、新型パシフィスタ、セラフィムについて」
「プロトタイプはわいがメインで指揮するが、セラフィムについては女狐がメイン調節、そんでもって指揮はちょいと複雑になっている」
「全員出てくるすて」
私の号令にセラフィム達が船室から出てきた。
「うわー…………」
おい誰だそこのドン引きの声をあげたやつ。
お前たちが私に押し付けたんだぞ。
「まだ微調節が済むすて無いのですが、後半の海ではこの7人のセラフィム達が動きます。彼らは個性があるので、戦闘に関しての詳細は後で説明します」
「威権順位というものがあり、命令は命令権を持っているものの順位を優先する。表を見てもらえばわかる通り、中将達は基本横並びでチップ所有者になる」
「次で戦桃丸さん、私、ベガパンク、そして五老星です。私は潜入中ということもあり基本的に戦桃丸さんが海軍内では優先的になると想定すてます」
命令権の何が不便って、意識を失ったら優先順位が吹っ飛ばされることなんだよね。
要するに、戦桃丸さんが意識を失ったら中将や政府の命令がどれだけ理不尽だろうと優先される。戦桃丸さんが倫理的にまともな命令をしていたとしても、だ。
いやー、命令権を巡って私や戦桃丸さんが狙われそうでヒヤヒヤしてるよ。まぁ女狐=リィンと認識してないと私は狙われないんだけど。
実はベガパンクの手により私の命令権は五老星より上にしてくれている。それは悟らせたくないから私は極力命令を使わないようにして、命令を使う時は戦桃丸さんに伺い立てる方針を取っているのです。
いやだって、ほんとに、もしもの手なんだもん。
五老星に歯向かう覚悟が出来てないと絶対命令使えないじゃん。矛盾起きたらどうするのよ。
「はいせんせー」
「先生ではなきですけど」
「なんで七武海の子どもの姿なのか聞いても?」
「えっと、元々五老星は『七武海の代わりとなる兵器』を作る予定だったらしきです。現在の王下七武海制度を撤廃して、セラフィム達を七武海の代わりにするという」
「……予定だった?」
「はい、過去形です。現在七武海は比較的言うこと聞くです。よって、まぁ、セラフィムは七武海の代わりではなく『七武海と同格の戦力をもつ新兵器』になったのですよね。つまり七武海もセラフィムも握る海軍、海賊に大幅リード」
やったね、とガッツポーズをするも微妙な顔をする中将達。
何が不満なんだね。
「七武海が言うこと聞くのは割とリィンちゃん限定だが」
「絶対海軍辞めんなよ小娘ぇ!」
「両方お前にくっついていったらガチでやばい事になる。両方押し付けた私たちが言うことじゃないが」
「それな」
「だってやりたくないだろ?海賊に媚び売ったり、そもそも我が物顔で歩いてる犯罪者が海軍本部やマリージョアに居るってだけで吐き気がする」
「わ〜〜。生粋の海兵大変そうぞり〜」
「リィンちゃんリィンちゃん、君も生粋の海兵だからね?」
たしかに4歳から海軍って単語だけ聞くとすごく生粋の海兵。
「幼少期から七武海に関わるすてたら嫌悪よりもいい大人が何やってんだって呆れの方が勝つですぞ」
親戚のおっちゃんみたいな存在だからね、七武海って。年1顔を付き合わせたり親戚の集まりで時々お菓子くれる何やってるかよく分からないおっさん。
「うちの子はそんな自分の快楽の為だけに努力を忘れて怠けたダメな子じゃ無きですから!そこんとこ!一緒にしないで!皆いい子!」
「七武海をナチュラルに見下してんのも生粋の海兵とも言うんだよ」
「ジンさんとくまさんは別!あれは割といい人!」
「両方既に七武海じゃねーんだよ!」
七武海の良心と言っても過言ではないよあの二人は。普通に好き。天然ボケ魚人とナチュラル暴言聖人だったけど、倫理観もあるし子ども好きだし市民被害ほぼ無いし。
元王国兵と革命軍ってだけある。
「女狐大将って、七武海と仲良いのか?」
「いえ全然(即答)」
「割と仲良いぞ」
「仲良いに入れていいのか微妙だけど悪くは無い」
私の即答に被せるように中将が悪しきフォローを入れてくる。
ムキィ!私は七武海嫌いなんだってば!麦わらぶつけんぞ!
「ところでリィン。お前潜入中で動けないと言ったな?」
モモンガ中将の鋭い指摘に私はにっこり微笑む。
「──麦わらの一味は復活します」
立っているのも疲れたので私は普通に座った。
「くまさんの最後の足掻き。というかくまさんの上司の息子がルフィ故に、独断で彼らを逃がしますた。そして、リィンにもコンタクトがありますて……。来る日、麦わらの一味は再び復活します」
今頃
シャボンコーティング完成を目処に、一味は続々と集まるはずだ。
ちゃんと集まれるかは、社畜のピエロと黄金が頑張って見張ってます♡私は動きません♡
「で、流石にそれに合わせて海軍本部が動くと非常に内通に気付かれる可能性があるので、別の案件で戦力を集めるです」
「なるほどな……」
「というわけで、まぁ、新体制を頑張るしていきましょう、ってことで。私は一足先に海に出ますが、この子達をよろしくお願いしますね」
1番近くに居たホークの頭を撫でると嬉しそうに目を細めた。
じいっと次の番を狙ってる他の子も順番に撫でた。あー、これでやっていけるのか本当に心配なんだけど。
「リィンお前、誑かすのも大概にせぇよ」
「それが武器なのに!?!!??」
「武器にすな!」
人の威を借りて生きていきたい。
詰め込み三本仕立て。
次回から、ついにとうとう、いなぁ長かった。魚人島編に参ります!