海賊王ゴールド・ロジャー。
今この時代、大海賊時代を作った男。
儂は海軍本部のモンキー・D・ガープ。
ロジャーとは拳を幾度となく交わし、奴をずっと追ってきた。
奴が死んだ今でも、奴の仲間はまだ生きておる。
その1人を今日見つけた。その女は〝戦神〟と呼ばれた凶暴……とは少々言い難いがおかしな女であった。再会すると大事そうに腕の中の幼いガキを抱きしめている。
戦神は子を殺されまいと必死ににらみつけて来るが子供が何か口を開くと覇気が少し緩んだ。
「お前さんみたいな阿呆が海にのさばっておいてはいかんのじゃ!お前さんの言う通り餓鬼に罪は無いのは分かる!しかしお前さんは大人しくインペルダ…!」
その餓鬼から禍々しい気配を感じ思わずその場飛び退く。
──ボッ
すると、小さい上に威力も無いであろうが、何も無い所から火種が発生した。
普通は有り得ないがこの餓鬼に違いない。まさかこの歳で悪魔の実を食しているのか…!?
「リィン!」
戦神が意識を失った餓鬼に声を掛ける。力を振り絞ったのだろう。
なんという力じゃ、幼子が攻撃するという意識を持ちうるとは。さすがは戦神の娘と言うべきか。いや、関心しとる場合ではない、この子を鍛えればきっと素晴らしい海兵になるに違いない!ガープ、期待するぞ?
「ガープのじっちゃん……」
「誰がじっちゃんだそう変わらんだろ大馬鹿」
「あたしはインペルダウンに行くよ。でもさ、この子はガープのじっちゃんが見てくんないかな…」
「お前さんの子を…?」
「───船長の息子みたいに」
「!!」
あまり知られん事実だと思っておったがやはりクルーは情報を掴んでいたか 。
ロジャーの息子であるエースを引き取った事に後悔は無いが、果たして戦神の娘と引き合わせて良いのか迷うが…。
「これも、お前さんの運命というわけか」
丁度いい機会。この子の運命を見てみたいとも思った。結局どちらに向けて言ったのか自分でも分からんが自然と口から言葉が零れた。
戦神はただ微笑んでその娘の額に唇を当てると泣きそうな声で〝ごめんね〟と呟き儂に渡してくる。何故、こいつらはわしに預ける。何故、海賊という存在はこうも潔く意地汚い。
「ガープのじっちゃん。あたしは、どうせ死ぬんじゃない?インペルダウン?今の海軍があたしを、いやロジャー海賊団の存在を残しておくとは思えない。良くて幽閉。悪くて処刑」
戦神は経験則ではね、と呟いてさらに言葉を続けた。
「もう、悪魔の実の影響で私自身寿命も短いし、私は出来るならこのまま海賊王のクルーとして死ぬ。その子、リィンにはこの血を継がせたくない。任せてもいい?」
訴えるその目は海賊の目でもなく我が子の将来を想う母の目、のように見えた。母にしてはギャンブルをするような、預けるだけでは不安と言いたげな目に見えたが。失敬な。
ひとまず儂は一つ頷いた。
この子はルフィの妹として育てる。
その気持ちを込めて。
戦神はそれに満足したのか儂の腕で眠る娘を撫でて光を与えた。
「これが幸と出るか不幸と出るかは、この子次第。じっちゃん。ありがとう」
手から注がれる優しい光が消えた途端、戦神は身体の力がすべて抜けたように倒れ込んだ。まるで能力者が海に浸かった時の様に。
「っ!」
思わず手を伸ばそうとしたがその手を止める。儂は甘い、と。ただそう思った。戦神の目は『さっさとしろ』と言いたげに睨みつけてきた。
「……っ、センゴク!居るか!子供を拾った!戦神は虫の息じゃ!さっさと錠を持ってこい!」
「ガープ!貴様と言う奴は……少しは自分で持って行かんか!」
「断る!!」
「それに子供を拾ったなど……………は?」
バタバタと音がしたと思ったら慌てた顔したセンゴクが飛び込んで来た。おぉ、息が切れておるわい
「………」
状況を確認してある程度察したのだろう、深々とため息を吐くと頭を押さえた
「何故、こうも厄介事ばかり………っ!」
「この子は儂の孫にすると今決めた!決めたからの!」
「ガープ…………いい加減にせんか…ただでさえお前はドラゴンの子という厄介者を抱えておるというのに海賊王のクルーの子にまで手を出すか!」
「決めたことじゃ仕方ない」
「戦神…選択肢を間違えたようだな」
そう聞くと戦神はカクンと意識を手放した。
ホントに失敬な奴らじゃな!!!
腕の中で気持ちよさそうに眠る幼子を見て、センゴクも苦笑いを浮かべる。
立派な海兵に育てんといかんなぁ。
ガープさんがモノローグ的なのをつらつら喋るイメージがまっっっったくと言っていいほど思い浮かばなかったので吐血する勢いで短めにしました。いやぁ、壁は高い
そして母親の口調少し変えました。