2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第281話 政治的に考える海賊とは

 

「お、おまたせしました……」

 

 そう言いながらおずおずと現れたのは昔会った時よりも遥かに大きくなった桃色の髪の麗しい人魚。

 顔の判別がつきにくい私でさえ、絶世の美女という言葉が脳裏にチラつく。

 

 麦わらの一味が思わず歓声をあげた。

 

 まぁ、The人魚姫だからね。

 

「しらほしと申します。あの、海賊は怖いですけど……リィン様のお友達なら……。ぐすん、お、大きな声とか、怒ったりとか、なさらないでください……」

 

 しらほし姫様はぐずぐずと大粒の涙を溜めて泣き始めた。泣き虫は昔から直ってないようだ。

 

 子供をあやすの苦手なんだけど、どうしよ。

 そう思っていた時、ビビ様が前に出た。

 

「リィンちゃんいい?」

「あ、先に紹介ぞさせてください」

 

 私は王族各員に目を合わせ、ビビ様を紹介した。

 

 

「こちらアラバスタ王国の王女、ビビ様です」

「リュウグウ王国の輝ける太陽達に挨拶します。アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビでございます」

「これはこれは。あのコブラ殿の娘さんじゃもん。世界会議では彼にとても世話になった。ゆっくり、とは言ってられないかもしれないが、寛ぐんじゃもん」

「寛大なお心に感謝します。アラバスタ王国としましては、ぜひリュウグウ王国と交易を重ねていきたいと思っています」

「ほう!具体的には?」

「我が国では香水が有名でして、魚人族の方々にはぜひ香りから楽しんで欲しいと思っていますの。香水は空気中で皮膚や服などにつけるものなのですが、ぜひ海でも、後に陸に移住したとしても使えるように」

「…………コホン。ビビ様」

「あっ、失礼しました」

 

 話が脱線し始めたので軌道修正をするとビビ様はネプチューン王に締めの挨拶をした後、しらほし姫様に向き直った。

 

「しらほし姫様。改めましてアラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビです。同じ王女同士、そしてリィンちゃんの幼なじみ同士、お友達になってくれませんか?」

 

 優しく微笑むビビ様に、しらほし姫様は少し躊躇った後、ビビ様の手を取った。

 

「も、もちろんです……!」

「しらほし姫様、ビビ様の国のアラバスタは砂漠という乾燥した地域の国なのです」

「はい、本で読んだことあります……。熱くて、カラカラしてて、太陽に最も近い国だと」

 

 王女2人が挨拶しているのをみて、麦わらの一味は顔を付き合わせて食っちゃべっていた。

 

「……そういやビビって王女だったか」

「なんか普段の気狂い具合から意識外にいってたけど、礼儀作法とか多分しっかりしてんだろーな」

「ちせいをかんじる!」

「あんたに知性が無いだけよルフィ」

「一人っ子だから妹っぽい子好きって言ってたぞ」

「人魚姫様まさにそうですもんね。我が一味の妹ポジリィンさんとは真反対の魅力があります」

 

 謁見の間で雑談すな。

 

 幸い国王陛下も王妃様ニコニコ微笑ましそうに見ているしジンさんも笑顔だから良いけど。

 

「時に陛下」

「うん?」

「人間の海賊の上陸数の現象について門兵に言伝を頼んでいたのですが」

 

 私が口火を切ると、国王陛下は心得たように頷いた。

 

「麦わらの一味に頼みたいことがある」

「……はい?」

「リュウグウ王国は魚人街と呼ばれる治安の悪い場所があり、そこで革命の兆しが見て取れる」

「革命とは言うがなルフィ、お主の兄の様なものだと思うなよ」

 

 ジンさんが『革命』という言葉に顔を上げたルフィを諌める。分かってた反応だ。

 

「今、新魚人海賊団という奴らが人間の入国を制限しておるんじゃ。お前さんらが入国する時にも妨害が入ったじゃろう」

「はい、ジンさん。質問が」

「む?どうしたリィン」

 

「ジンさん、私達が襲われるって分かるすてて迎えにも来なかったですぞり?」

「うっ」

「どーせ、どーーーーせ。他の七武海からも冥王からも、麦わらの一味ならこれくらいに魚人島着くだろ。みたいな情報ぞ共有されておいて?」

「な、なぜそのことを……!」

「ジンさんが王宮にいる事が麦わらの一味の動向ぞ掴むすてた一番の証拠でしょーが!」

 

 ジンさんは明らかに時期を狙い撃ちして王宮で待機していた。クロさんか、ドフィさんか、ミホさんか、海賊女帝か分からない蹴れど、麦わらの一味の動向を把握出来る七武海は多い。情報を横流しされて待ち構えてたに決まってる。

 そして、会話の節々から新魚人海賊団が妨害することも分かっていた、と言うのに。

 

「何故助けに来ぬです!?」

「いや……リィンが居るなら何とかなると思って。インペルダウンの大脱獄もしたし」

「あれは金獅子とクロさんとカナエさんの手柄でしょーが!」

 

 私の責任にしないで!

 頼むから!王族にとって私はまだ海軍大将なんだからさぁ!せめて責任者カナエにして!死んでる人間に責任押し付けて!

 

「まぁ、とにかくじゃ。ルフィ達に頼みたいことは、一緒に新魚人海賊団を共に倒して欲しい」

「…………だってルフィ」

「俺嫌だぞジンベエ」

「だそうですぞジンさん」

 

 ルフィは腰に手を当ててプンスコしていた。王族の願いをジンさんが代弁してくれている形だからまだ強制力は少ない。

 それは断れるようにという心遣いでもあったのだろう。

 

「なんつーか、新魚人海賊団?は魚人島にいじわるするから助ける為に俺たちが倒せってんだろ?」

「う、む、それはそうじゃが」

「それってつまりヒーローになれってことじゃんかよ!いいかジンベエ、ヒーローってのは皆に肉を分け与えるやつの事を言うんだ。俺は海賊だ、肉を食いてぇ!」

「ううーん」

 

 理にかなっているような無いような。

 物事の根本を捉えているようで微妙に違うね。

 

「じゃあ肉をやるから戦え!」

「おう、いいぞ」

「良くなきぞ???」

 

 お人好しの魚人族しか居ないので、私はひとつ警告をする。

 

「人間が魚人を倒したら迫害、ですぞね?」

「そうじゃな。実際はどうであれ、魚人島に暮らす国民からすればそう思うのも必然じゃろう」

「だから魚人と人間が力を合わるすて倒せばいい、と思うすてるって?」

「うむ!話が早いなリィン!」

「で、戦力は?」

「ネプチューン王と王子達がルフィらに協力してくれるそうじゃ。無論わしも力に──」

「このあんぽんたん!」

 

 だーーーと思ったよ。

 自分の尻拭いを自分でしようと思うようなお人好しの塊だもんね!ジンさんしかり!

 

「さて問題です。リュウグウ王国を地上に住まわせるか否か迷うすている世界政府に対して、『王族が海賊と共闘して戦争をした』となれば……。どうなるでしょうか?」

 

 はい。やばい事になります。ただでさえ『人外的な生物』という偏見があるのに、海賊という犯罪者と一緒になって暴れれば。

 

 『見ろ!これが野蛮族だ!』『こんな恐ろしい生物、地上に一緒に暮らすなんて恐ろしいザマス!』『見て!あれ鬼みたいだよ!』『しっ、見ちゃいけません!』

 

 なーんて事が起こりかねない。

 というか間違いなく起こる。どんな感動的ストーリーが起ころうと、魚人族の意識が変わろうと。世界から見られる目はより一層の悪化をたどる。

 それこそ、フィッシャー・タイガーが行った事のように。

 

 味方からは称えられても世界はそれを認めない。

 

「故に、王国として新魚人海賊団と戦うのであれば、協力する先は海賊ではありませぬ。大人しく海軍に協力要請をするか、他の同盟国を作るかです」

「だがリィン、ここは深海で並大抵の人間では辿り着け無いんじゃよ」

「そうです、それは問題です」

 

 だから、つまり。

 王族は黙って見とけ、という事だよ。

 

 

「新魚人海賊団と戦って魚人島を救うのは王族ではありませぬ。王族は世界と戦い、海賊と戦うのは」

 

 私はジンさんとルフィをみた。

 

「ヒーローになるのは、ジンさんとルフィと……、くっ、私ですぞり」

 

「「「「「ええぇえぇええ!???」」」」」

 

 麦わらの一味は驚愕の大合唱を響かせた。うわ、うるさ。

 

「り、リィンが目立つポジションに立つだなんて」

「今までの航海の中で1番驚いてる……」

「だってリィンちゃんよ!?暗躍こそ花道だと思ってるリィンちゃんよ!?」

「驚くほど動かしてるのに驚くほど名前が残らない人間が、つーかそうさせてるお前がわざわざヒーローに名乗り出るとか」

「ははーん、さては偽物」

「それです!そうとしか思えませんねぇ」

「クエ!クエクエクエクエー!」

 

「失敬ぞ貴様ら!!!!!」

 

 概ね正解だけど第三者から言われるんじゃ不服が止まらない。

 

「だって私もう既に魚人島の救世主ですもん……」

 

 魚人族を守り魚人島を守った功績持ちの象徴を利用しないでどうする。

 

 ジンさんはそもそも人徳あるし、ジンさんの願いに協力した友人の海賊と、その仲間達。

 

 魚人族から見れば『兄貴や救世主が悪い奴らをやっつけてくれた!今回も頼むぜ!』になるし、世界政府から見れば『元七武海と海賊が、魚人の海賊と争った』だけ。

 1番ダメージが少ない。

 

「待ってくださいリィンさん」

 

 フカボシ王子が私の意見に待ったをかけた。

 

「新魚人海賊団はとても強い。とあるドーピング薬を使っている疑惑があります。人間は海の中で呼吸も出来ないし、あまりにも危険が……」

「え〜っと……」

 

 人間が海で戦うのは確かに向いてない事なのはすごく分かるよ。分かるけど。

 

「フカボシ王子。──私の仲間って、強いんです」

 

 確信をもって、彼らは新魚人海賊団に勝てる。

 新魚人海賊団の実力は分からないけれど、そんなやわな2年間を過ごしたわけが無いんだ。

 

 

「……信頼、されてるんですね」

「………………うーん」

「悩むなおめーは!」

 

 王族は大人しく民でも守ってくださいな。

 新世界に負けないための2年間だったんだから。

 

 

「分かった。リィンの案が有効じゃな。それでいいかルフィ?」

「よく分かんないけど海軍は絡まないんだよな?」

「出てこんぞ?」

「それならいいや!」

 

 ふと、ジンさんの表情が暗いことに気付いた。

 

「……ジンさん?」

 

 ジンさんは深刻そうな顔をしてナミさんやはっちゃんを見た後、深いため息をついてその理由を教えてくれた。

 

 

 

 

「新魚人海賊団には──アーロンもおる」

 

 ちょっとそれは聞き捨てならないですね。




2025年3月20日
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