──数分前
「シャボンを突き破って直接広場に向かうだぁ!?何無茶言ってんだリィン!」
「いや、幸いサニー号はシャボンがコーティングされたまま私が持ってるわけじゃ無きですか」
私の計画を話せば無茶苦茶だとウソップさんやナミさんに猛反対された。
計画自体はシンプルで。麦わらの一味がアーロン一味の予想外の方向から広場に向かえば釣られて追いかけて来るはずだ、というもの。
その釣り餌として、王族(発言力のある目的の人物)とジンさん(兄貴分)が居ればアーロン一味は確実に釣れる。
「王族の発言の力が、正義のヒーローは麦わらの一味だと知らしめる必要はあるため、お忍びという形で民衆に知らしめる必要ぞあります」
「大々的に言う必要は──」
「ないです。黙認、位の接し方ぞ求めます。要は『解釈は民衆にお任せします』的な」
「作家都合の体のいい言い訳ね!分かるわ!」
「ビビ、分からないでくれ頼むから」
ウソップさん頼んだよ。この2年間で修行したツッコミの力を遺憾無く発揮してくれ。
とにかく、明言さえ避けてしまえば世界政府に対する言い訳が出切るってもんだ。というか私がそう報告するし。
というわけで表向きの『民衆へのアピール』と裏向きの『アーロンへの釣り餌』という二つの理由を元に、一体誰が着いてくるか、という問題になった。
「あの……私が行きます」
それに速攻名乗りを上げたのはしらほし姫様だったのでさすがにビックリしたけど。
「私は、その、家族の中では目立つ大きさをして。なので、皆に知ってもらうって意味では……適任なんじゃないかと。ふぇ、こ、怖いです、けど!」
「しらほしにそんな危険な目に遭わせる訳には行かない!ダメだ!」
「でっ、でも、あの。リィン様がいるから……」
私に全幅の信頼を寄せてくれているのは今後の生活においてとてもとても助かることだけど、的が大きくなるのはちょっとなぁ。
アーロン目敏いだろうし、船の上に居ても必ず見るはず。というか気付かなかったら攻撃して煽ったら大丈夫でしょう。
「しらほし姫様」
「は、はい」
「しらほし姫様はアーロンが居なくなってから来るすて欲しいです」
「で、でも。私もリィン様のお力になりたいです」
「もちろん気持ちは分かるすてますよ。大丈夫、しらほし姫様には……んー、オトヒメ様の様になって欲しきです」
象徴になって欲しいのだ。
市民と触れ合う機会は王子達が多いけど、姫様はあえて城で守られてる様な政治的立ち位置があると思うんだよね。
「危険な海を勇敢に進むのはネプチューン王や王子達が。オトヒメ様やしらほし姫様は魚人島を導く太陽であって欲しきです」
「太陽……?」
「まぁ、太陽だなんて照れるわリィンさん」
私はにっこりと丸め込む。
自然に、だろうけど王家の役割のバランスが良いんだよね。暴君にもなれるし仏にもなれる。家族仲もいいし善良だし。参謀系の魚人族が王家についたら良い素材を利用して上手く立ち回れるだろう。
「とにかく、危険な場です。極力、自衛が可能な王子達が良いのですが」
「なら私が行こう」
フカボシ王子は躊躇いなく手を挙げた。
「弟達は母や妹を守ってもらわねばならない。それに、説得力なら第一王子の私が行く方が深みが出る。そうだろう?」
あー、はいはいはいはい。
王族のブレーン、フカボシ王子だな。
お人好しな所は魚人族あるあるなのかもしれないけど、見られ方をよく分かっている。
「分かりますた。よろしくお願いします」
それを心配そうに見つめるのはネプチューン王だった。
「わしは君の性格や人間性は信頼しておる。だが、一つだけ君を疑うことを許して欲しいんじゃもん」
『君』と告げられた質問こ意図を察して私は頷いた。
「どこからどこまでが、
幼い、冗談みたいな海軍大将。発言力や守護の力はあれど、実態は霞のように掴めない。そんな人間に息子を任せるのは、息子の実力があったとしても不安だろう。
「──私が海軍本部や世界政府で受けた評価に問題点があるとすれば、それは年齢だけです」
「……任せるんじゃもん」
言う必要のない範囲まで私は答え、主語足らずの秘密の会話を交わした。
──そして今。
「リィンお前ぇええええええ!!!!」
「ウソップさんの悲鳴ぞ聞こえる……」
「何が!何が空を浮かばせるだよ!これはただの落下って言うんだよ!!!」
広場に向けて船を自由落下させているのだ。
つまり浮遊じゃない。
もちろん少し調節してますけどね。
「いやぁあああぁぁあぁ!!」
「うひょー!すっげぇ!リィンもっとスピード出せるか!?」
「フカボシ王子、っ、大丈夫?」
「かろうじて、手を離してない!」
「にゅーーーーー!!!!」
船から離れない様に手摺りに掴まる一同。船がシャボンを突き破る為にクードバーストを使った事もあって自由落下よりも若干速い。
ちなみにシャボンは激突のタイミングで大きいシャボンに吸収されてしまった為、風の抵抗を一気に浴びている。
あ、アーロン達がちゃんと確認出来るように無駄にゆっくりめにしておいたよ。自由落下と錯覚する程度に、たけどね。
「流石にシキみたく何隻もポンポン長時間浮かばせるが可能なわけ無きですよ。超人じゃあるまいし」
「ばかやろーーー!!!」
海軍本部のお引越しをやったことがある人間の嘘に騙されたウソップさんが悲鳴を上げる。
海軍の女狐は過大評価させがちだけど、その分海賊の堕天使は過小評価させないとね。
「一人だけ飛ぶのずるいじゃろう!」
ジンさんが手すりに掴みながら私に文句を言った。わ、私だけじゃないし。カルーもビリーも飛んでるし。
というかカルー飛べたんだ!?陸上生物だとばかり思っていたんだけど!
「クエッ!」
ドヤ顔のカルー。小憎たらしい。
「着きますよ!広場!」
「行けー!野郎ども!衝撃に注意しろー!」
「お願いだよリィン、サニーに負担はかけないでーー!」
ルフィの号令とメリー号の悲鳴と共に、私はゆっくりと落下を緩めて船ごと着地させた。
「ぐえっ」
「ぎゃ!」
「アゥ!」
「いてててて」
「目が、目が回る……」
麦わらの一味の悲鳴と共に土埃が晴れる。
ザワザワと周囲から『空から船が!?』とか『どこから落ちてきた!?』とか聞こえてくる。うんうん、上出来。
「怪我ひとつないのが腹立つ……」
「生きてた」
「身の毛もよだつような体験をしました……!私、よだつ毛無いんですけど!」
「この落下、空島を思い出すわね」
周囲を見渡すと、ギョゴルド広場の中央に降り立っていた。周りを取り囲むガラの悪い魚人族。
そこら中に逃げ惑う国民や王族の踏み絵が落ちている事から『人間よりの魚人族を炙り出し見せしめに殺す』『王族を支持する者は殺す』という思想が見えた。
誤算は恐らく王族の人質が一人もいない事。
だが、逃げ残った国民を餌にして王族を1人残らずおびき寄せ革命を企んでいる事は容易だ。
「王子!フカボシ王子だ!」
「王子が人間と一緒にいる!」
「誰だ……!?」
「あの人間は……俺たちの敵か?味方か?」
私はルフィの横に立ってわかりやすいシンボルになった。さぁ見ろ、誰が誰と一緒に居て、誰が国民たちを救い、誰がお前らをぶちのめすのか。
「──俺たちは麦わらの一味。敵か味方かは、お前らで決めろ!」