2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第285話 本日の料理は魚のプライド砕き

 

 

「麦わらァ!!!」

 

 空からアーロンが追いかけてくると国民はその恐怖に思わず目をつぶった。

 しかし、希望はあった。

 

 

 

 自分たちの平穏を突如奪われたクーデター。

 数体の怪獣と魚人街の荒くれ者達が突如王国兵や守衛達をなぎ倒し、ギョンゴルド広場へ続々と集まっていた。

 

『全魚人島民!おれは魚人街の〝新魚人海賊団〟船長ホーディ・ジョーンズだ。この国は一度崩壊しそして生まれ変わる!!そしてこの国の新しい玉座につくのは、アーロンさんだ!』

 

 人間との友好を拒む者は消えろ、オトヒメの署名に記入したやつは処分する、国王をおびき寄せ処刑する。

 

 などと散々な事を言うホーディ達。

 黙っていられる筈もなく、国民はもちろん反発したが、異様なまでに強い彼らを前に、兵だってたった1人にすら勝てなかった。

 

 恐怖は伝染する。

 だけど、己の命欲しさに大好きな王妃や国王を売るわけが無い。

 

 

 ──かつて、同じギョンゴルド広場でオトヒメ王妃の暗殺未遂事件が起こった。

 

 王妃は『まだ幼い、しらほしと同じ位の無力で小さな人間が命懸けで庇ってくれた』と何度も何度も言っていた。刷り込みにも近い、人間への希望。魚人島の救世主。

 

 『幼い子供たちが手を取り合って未来を歩もうと、他人を守ろうと頑張っているのに!私たち大人が躊躇っていては彼らに合わせる顔が無いわ!もう少し、もう少しなのよ』

 

 あの事件から、魚人島は本来よりもっとずっと良い方向に進んでいる。

 オトヒメは魚人と人間の輸血を禁止していた法律を取り消し、自ら人間への献血も希望した。国民もチラホラと。

 

 固定概念や怯えに縛られ鎖国的だった国は、海底で少しずつ変わっていった。

 

 妨害も、邪魔も、少なくない数あったけれど。

 

「誰か、助けてくれ……!」

「俺たちを、俺たちの大好きな彼らがこれ以上苦しまないように!」

「私たちを大事にしてくれる彼らのために!」

 

 膨れ上がった不満の目が爆発した。

 

 

 そして絶望の広場に、空から急に降り注いだ。船の船首に。光と見間違えるような暖かくて柔らかい太陽の色を放った救世主が居たからだ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「……って、思ってんだろなぁ」

 

 王子ー! 救世主ー!

 

 そんなコールが沸き立つ。

 

 『人間が反発する魚人族を倒す』というものではなく『魚人族を助ける人間』の図にしたくて策を練っていたのだけど。

 王妃様を助けたことがある、このたった一つだけで良かったらしい。

 

「リーが人気で、俺兄として鼻がウソップ!」

「鼻が高い、な?ルフィさーん?俺の鼻をものの例えにするのやめてくださーい」

 

 素早く現状を確認する。

 

 パッパグさんとケイミーさんは王宮に任せた為、あとから王族達と共にやって来ると予想している。

 ギョンゴルド広場には目算10万人程の魚人族と奴隷化した人間の海賊、避難が間に合わず取り残された一般国民と兵が残っていた。

 

 対する私たちは麦わらの一味とジンさんとフカボシ王子。

 

「皆さん、良きですか。逃げ遅れた人は、多少手荒でも良きです、広場の外かこの船の上に避難させてください。よろしくお願いします」

「船は誰が守護に付く?」

「基本私がしますので、どうぞ暴れるすてください」

 

 出来ればビビ様には船の上にいて欲しい所だけど、海底には海軍も居なければ監視の目も無い。

 そして私は『人を守る』というポジションで彼らの2年間の成長っぷりを確認出来るってわけ。敵を倒さなくていい、これに限る。

 

「覚えてる、覚えてる。救世主なんてふうに祭り上げられて!あの10年前!お前が!オトヒメが死ぬのを邪魔しなければ!邪魔なんだよ!人間と仲良くしようとするあの女も!お前も!」

 

 ホーディが私に強い憎悪を向けた。

 うーん、無自覚ではあったけど。魚人島や魚人族にとって私の行為は『余程』の事だったらしい。

 

「俺の作戦は10年前から始動している!今更救世主のガキ一人が出てきたって何も変わりゃしねぇ!俺にはアーロンさんも付いてる!しかも俺は!力を手に入れた!」

 

 私に指をさしてホーディは声を張り上げた。

 

「──10年前!あの時!ここでオトヒメを狙ったのは!俺だったんだよ!!」

 

 ざわり。と、国民からも敵からも動揺の気配が走る。

 

「知らなかったよなぁ!?お前はただ、俺の銃に撃たれて、そして気絶していただけのただの普通の下等生物だもんなぁ!?」

 

 ホーディは私が黙るのを図星だと考えペラペラと話し出す。

 

「俺は10年も計画を練っていた。力を手に入れ!バンダー・デッケンやアーロンさんと手を組み!ここに来る人間共を奴隷とし!ようやく決行の日に漕ぎ着けた!もう、お前らは手遅れなんだよ!」

「ホーディ……!言わせておけばっ!……!?」

 

 怒るフカボシ王子を手で制する。

 困惑したフカボシ王子は私を見て、ギョッとした。

 

 私は、笑顔を浮かべた口元を手で覆って隠す。

 

 数秒息を整えて、国中の視線を私に集めた。

 仕草ひとつ、間のとり方ひとつ。人を魅了して、聞かせる術は2年間で学んだ。

 

 ゆっくり手の位置を戻してゆっくり天使のように微笑むと、ようやく私は口を開いた。

 

「知ってます」

 

 あぁ、愚かだ。

 あの時、オトヒメ王妃はもちろんだがあの場に誰が居たと思っている!

 

「私も、王妃様も、知ってますたよ。ホーディ」

「なっ……!?」

「あの時人間の中で4本指に入る様な、血のように赤い髪をした男が共に居たのを覚えるすてますか?あの人は、もう、お前を捕捉してますた」

 

 ちょっとおかしなしゃべり方は理解するのに時間がかかるから、私の言葉を聞こうとするだろう。

 

「だから、お前は10年前。ネプチューン王国軍の兵士を解雇された。自主退職?いいえ、王家からの唯一の慈悲です。オトヒメ様は例えどんな相手だろうと……恨むなと」

「母上が!?」

 

 当時はどうでも良かった。シャンクスさんも見逃すほど弱い様な魚人族。ただ、犯人は告げなければとオトヒメ王妃に話していた。

 オトヒメ王妃はホーディをクビにするだけ。証拠もなければ証言も人間の海賊だけだった。

 

「知ってます。ホーディ、あなたが……アーロンを裏切る計画をも立てていることを」

「……!?」

「ホーディ!どういうことだ!」

 

 空を浮かんで聞いていたアーロンが私の発言に怒りを表し、ホーディを責め立てる。

 ホーディは焦ったような表情で必死に否定した。

 

「違いますアーロンさん!あんたこの下等生物の言うことを信じるってのか!?あんただってこの一味に恨みを買ってるじゃねぇか!だから適当言ってるだけだ!」

 

 おっ、大正解。

 まぁ身に覚えが無いことを言われたら否定するに決まってるよね。

 

 ただ、私がその発言に手を打ってないと思うなよ。

 

「──ホッ、本当だアーロンさん!俺を信じてくれ!」

 

 はっちゃんだ。

 私ははっちゃんにお願いをしていた。『私がアーロンについて言及したら、本当だと、私を援護して欲しい』とね。

 

 援護射撃してくれなかったら裏切りの計画をでっち上げて話して疑心暗鬼を加速させる方向で話を盛ろうと思っていたけど。

 

「ハチ!」

「にゅ〜!こんなことやめてくれアーロンさん!」

 

 はっちゃんは善良寄りなのでナミさんからの心象もいい方。私としてはシーナの友達でもあるので、アーロン一味に返したくは無いんだよね。

 彼の処遇については置いておき、はっちゃんへの視線を集中させる為に私は手拍子をひとつ放った。

 

 まだ、私のターンは終わってない。

 

「よいしょ」

 

 フワリと箒に飛び乗って地面に降り立つと、ゆっくりゆっくり歩く。

 

「王宮に、バンダー・デッケンの手により投げられた人間の証言です!ホーディ、あなたがアーロンを手下のように扱い、最終的に裏切るつもりだと!」

「そんな馬鹿な!」

 

 少し大きく声を張り上げると、ムカッと来たホーディは対抗して大きな声を上げた。

 

「俺は一言もそんなこと言って……!」

「へぇ?」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに私はにっこり笑顔を深めた。

 

「言って無き?って事は、計画はすてた。ってこと?ねぇ?」

 

 アーロンがギロッとホーディに対して睨む。実際考えてた感じかな。この手応えだと。

 証言をね、捏造すれば詐欺だと躍起になるよね。お前みたいな頭足らずは煽るのが1番だ。

 

「あんたはな、アーロンをバカにしてる。東の海で人間なんかに負けたから?当時無名の海賊に滅ぼされたから?」

 

 笑えてくるよ、本当に。

 

「うちの海賊団舐めんなよ。アーロンが敗北し、お前が今目の前にしてる海賊団は、世界に喧嘩を売れるすっごい海賊なの」

 

 少し声のトーンを小さくして、段々周辺に聞こえないようにした。

 ホーディの大きな体格を目の前にして私は見あげてにっこり笑った。

 

 手を伸ばせば届く距離。目と目があって、だから私は手を差し出した。

 

「馬鹿でよかった♡」

 

 ホーディにしか聞こえない声で呟けば、ホーディは顔をいきなり真っ赤にして憤怒に身を染めた。

 

──パァン!

 

 差し出した手は当然ながら払い除けられたし、手どころか体まで吹き飛んだ。

 

「──リー!」

 

 覇王色の覇気がホーディやその周囲に襲いかかる。

 

「お前!俺のリーに何すんだ!」

 

 ブワッと広がる殺意と覇王色に敵対していた海賊の約半数は泡を吹いて地面に倒れ伏す。

 

 想像以上の覇王色の覇気にめちゃくちゃびっくりしたんですけど。思わず身震いした。

 

「ルフィ、私平気」

「そっ………かぁ(察した顔)」

 

 心配そうに飛び込んできたルフィに大丈夫だと伝えると、苦虫を噛み潰したような表情。

 今キレてるから動きも分かりやすかったし、手の動きに合わせて避ける事は用意だった。とはいえ、地面に吹っ飛ぶ演技は骨が折れるかと思ったよ。

 

「──罪を犯したとて、手を取り合えたら未来は広がったのに!差し伸べられた手を振り払うだなんて!もう!話し合いは出来ないのね!」

 

 おんおんと泣き真似をするとルフィは死んだような表情に変わった。

 

「……リー?あの、俺の心配返して」

 

 これで『救世主の救いの手を振り払った自業自得の嫌われ者』の完成である。

 勧善懲悪って感じだね。

 

 いやぁ、ヒーローになるのって難しいなぁ!

 

「リィン、こっちは大丈夫よ!」

 

 ナミさんの声に船を目視すると、取り残されていた魚人族が困惑した表情を浮かべていた。

 

「ナイスです!助かりますた!」

 

 わざわざ私が視線を集めて、ペラペラ喋らせて、無駄にやり取りを増やした理由は避難の時間を稼ぐこと。

 

 さぁ、下ごしらえは終わりだ。

 

 今から正義を盾にお前をボコボコにします。

 大丈夫、ちゃんと冥土にお送りますからね。一人旅は寂しいでしょうから、お仲間も一緒にお送ります。

 

「お前の戦略も戦術も、おままごとしてるみたいに幼稚ですたねぇ」

 

 勝ち確の勝負を始めようか。

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