2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第290話 秘密をバラす時

 

「陛下!──終わりました」

 

 その日、魚人島は歓声に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「旦那たちぃ〜〜俺ァ人間の尊厳を失うかと思ってたけど〜〜旦那様様だ〜!」

「麦わらー!この恩は忘れないからなー!」

「天使……いや女神……?」

「兄貴〜〜!!!ありがとよ〜!!!」

 

 奴隷化していた人間の海賊たちが口々にお礼を言いながら魚人島から逃げ出していく。もちろんただ普通に逃がす訳には行かないのでこっそり本部の海兵に、海上に上がってくるだろう海賊の規模を伝え大捕物をしていただこうとチクった。

 

 さっさと逃げ出したかっただろうから魚人族にシャボンコーティングを頼んで皆で見送るようにさっさと島から出るよう誘導してね。

 

 

 

 

「で、なんで救世主殿は不機嫌なんだ?」

「……別に。ナミさんに後処理を禁止されるすたとか、そういうのは別に無きですぞ。えぇ。別に」

「何しようとしてんだ」

 

 ウソップさんのからかいに私は人の背中に隠れてナミさんに止められた魚人海賊団の後始末の計画について話した。

 

「まずアーロン達ぞ磔にします」

「まて」

「待たぬです。そして国民にこう言います。『小石1つ100ベリー!ナイフ1つ1000ベリー!魚人島の名前を貶めた悪逆人に正義の鉄槌を!よってらっしゃい』」

「もうろくなこと考えてないのわかった」

 

 金も稼げるし魚人島の一般国民も恨みを晴らせる。最高の案じゃん。

 

「目や急所に当たりそうであれば直前で止めるすて、『あぁ危ない。命までは取りたくないですからね……もう1回』と、慣れぬようにじわじわと恐怖ぞ増長させて」

「そんなアーロン達に同情する後始末なんて嫌じゃない……!」

「ナミよくとめた!」

「リィンお前……、本当にやばいな。何がやばいってもう仲間のはずなのにお前からの被害を守るために敵対者を庇わざるを得ないところが」

「ムキィ!心は!折れるまで!!!」

 

 かつてアーロンパークを制覇した組に色々言われてしまう。アーロンの心を折りたいだけなのに。

 仕方ないから別の方向で行こうと思う。うんうん、私は優秀だもん。次の手くらい余裕で思いつくはず。未来の私が。

 

「次は絶対誰の意見も聞かずに実行ぞすてやる」

「やめてやれ!未来の敵が!可哀想!」

 

 五七五で返さないで。

 

 

 さて、麦わらの一味も流石の人数相手に疲労困憊。お礼をしたいとのことなのでまだ魚人島の滞在が決まった。そうして欲しいね。今海上では海軍がうじゃうじゃいるので。

 

 国王軍は後始末として海底に沈んだアーロンやホーディやバンダー・デッケンを探しに向かった。

 広場で伸びている魚人海賊同盟は、幹部のみ牢獄に入れられ、他の魚人は王宮で服役するそうだ。

 

 魚人街は完全封鎖ということらしい。

 

「麦わらの一味には、感謝してもし足りんのじゃもん」

 

 王族が全員揃って広場で居座る私たちにお礼を言った。

 

「この後、宴をしようと思っている!とはいえ、準備に時間がかかるもんじゃもん……、魚人島を観光してはどうだ?」

「……なら、ポーネグリフを見てみたいわ」

 

 ロビンさんが控えめにだけども譲れないと言わんばかりにルフィに提案した。

 海賊王になるためには歴史の本文(ポーネグリフ)が必要になってくる。もし提案されなければ私が誘導しようと思っていたが、渡りに船だ。

 

「海の森ね。私が案内するわ」

 

 オトヒメ王妃が案内を買って出てくれたが、気になることがあるのかネプチューン王も共に来ると言ってくれた為、国王夫婦揃って一同は海の森に向かうことになった。

 

 

 

 

 

「…………リィン、読めたかしら」

「いいえさっぱり」

 

 ネプチューン王の前なのであくまでも過小表現をする。

 

「文法と言うより感情…?ゆえに、すこぶる分からぬぞり」

「端的に言えば、謝罪文ね。もう少し読み込んでもいいかしら」

「はいです」

 

 私とロビンさん以外は皆でジンさんの周りを囲っている。

 

「なー!ジンベエ!仲間になれよ!」

「うぐ、じゃがルフィ君。わしは元七武海のせいで政府に目をつけられやすくて」

「そんなの今更よ!」

「そうだぞジンベエ〜!それに元七武海なんて心強いし!」

「おうおう!それにリィンを止められる仲間が増えるのは歓迎だぜ!」

 

 どうやら仲間への勧誘らしい。

 満更でも無さそうなのであともう一押しがあればジンさんも頷くだろう。

 七武海唯一の良心なので私も反対はしない。

 

 

 私は歴史の本文(ポーネグリフ)の隣を横目で一瞬確認した。

 

「…………。少し、王家の方と話したいのだけど間を取り持ってくれるかしら」

「もちろんです。私は離席ぞしましょうか?」

「いえ、貴女もいて」

 

 ロビンさんの少し悪い顔色に、私は何を言おうとしているのか察した。

 

「ネプチューン王、オトヒメ王妃、少々よろしきですか?」

 

 ルフィ達と若干の距離を離し、相互的に聞こえない位置に来るとロビンさんは2人に簡潔に聞いた。

 

「『ジョイボーイ』って誰?」

 

 2人は目を見合せて、やはりと言いたげに頷いた。

 

「わざわざ歴史の本文(ポーネグリフ)を見に来たという時点で、察しておったんじゃもん。オハラの生き残りか」

「オハラを知ってるの?」

「一般的なことしか知らないわ。私たちは海の底の住民、海上の国と交易を行うことは少なかったから……」

 

 頑張ったのね、と言いたげにオトヒメ王妃はロビンさんの背中を摩った。

 ロビンさんは目を見開き、泣きそうに眉間に皺を寄せるとギュッと目をつぶって一呼吸おいた。

 

「ジョイボーイというのは、空白の100年に実在した地上の人物じゃもん。あの文章には当時この島におった人魚姫へ宛てた、約束を破ったことへの謝罪文だという……」

「約束……?」

「えぇ。内容はあまり伝わってないのだけど、いつか必ずジョイボーイに代わって約束を果たしに来るものが現れると。王家に伝わる言い伝えなのよ」

「うむ。じゃから我々はその日を信じ、ノアを見守り続けるという彼との約束がある。来るべき時、初めてノアは使命を授かるんじゃもん」

 

 あんな大きな船を動かすには並み大抵の動力では不可能。私はちょっとイレギュラーなので置いておくけれど。

 

「ジョイボーイはどうやってノアを動かすつもりだったか分かる?」

「伝説では。海王類がノアを引くと」

「……じゃあ質問をかえるわ。海王類は、ジョイボーイと人魚姫、どちらの力かしら」

「…………かつての人魚姫の方じゃもん」

 

 

「2年前、私は空島で古代兵器のありかを示した歴史の本文(ポーネグリフ)を読んだの。場所は確かにここをしてしていた。ジョイボーイと同じ時代に生きたその人魚姫はもしかしてこう呼ばれていたのではないかしら」

 

 息を飲むような緊張感が私に感じ取れた。

 王家は何かを隠したがっている

 

「古代兵器、ポセイドンと」

 

 さらにロビンさんは言葉を続ける。

 

「まだ、目覚めてないようだけど。……もしかしたらしらほし姫も、いつかそう呼ばれるんじゃないかしら」

「…………。えぇ、そうよ」

 

 世界政府側の人間である私をちらりと見たオトヒメ王妃は観念したように頷いた。

 

 ジョイボーイに代わる人物が今後現れるということは人魚姫も現れるだろうことは歴史の本文(ポーネグリフ)の文面を見れば分かった。

 

 古代兵器はそもそも、そこに存在するもの。

 1人の命で終わるだけならそれを伝承として残すのではなく伝説で終わらせるはずだ。

 

「しらほし以外の子供らには伝えておる。しらほしがもし、命の危険にさらされたり大きなショックを受けることがあれば海王類を呼ぶ力を目覚めさせるかもしれんのんじゃもん……」

「やはり……」

「知られれば海軍も政府も欲しがるでしょうね」

「……どうかしら」

 

 ロビンさんは少し考えたあと首を傾げた。

 

「確かに海王類を敵に回せば並み大抵じゃいかないのは分かっているし、古代兵器を欲しているのは分かりきっているけれど……。ノアを動かすための戦力くらいなら政府も、いえ海軍も持っている筈だわ」

 

 古代兵器が3つ揃えば相乗効果でなんか天変地異とか起これば恐ろしいけど。

 

 するとロビンさんの目は私を向いた。

 

「そうよね、リィン」

「えっ、あぁ、そうですね。海軍には現在戦争でも使われるすたパシフィスタもありますし、大将達の実力は折り紙付き」

「現在海軍のパワーは3大戦力の中でも大きく偏ってるわ」

 

 ロビンさんは目を逸らさずにギュッと手を握りこんで私に問い掛ける。

 微かな違和感と、疑念と、一致する能力と、立ち位置や会話から総合して見つけだした答えを。

 

「貴女もノアを動かす事は容易でしょう。海軍本部の転移であれだけ多くの船を浮かばせることが出来るんだから。リィン……──いえ、女狐さん」

「「……っ!」」

「…………。や、だなぁ、ロビンさん。私が女狐だなんて。ロビンさんも見たじゃ無きですか。2年前、私たちは女狐の手で壊滅状態に陥るすたじゃ無きですか!」

「えぇそうね。でもね、腑に落ちない点より腑に落ちる点の方が多かったの。何をどうしたのか分からないけれど、貴女が女狐だと仮定する方がしっくりくるのよ」

 

 ロビンさんは譲らなかった。

 

「…………はぁ」

 

 私は波の影響が無いようにアブソリュートで海水が来ないような保護をつけた状態で、少し遠くにノアをアイテムボックスから取り出した。

 

 急に現れた船にもちろん大波が現れるが、ルフィと試した波を無効化出来てしまうやべー技で防いだ。

 客観的に見れば超人的な能力だし、主観で見ても普通にやばい。

 

「おめでとうございます。言い当てるすたのは、ロビンさんが初めてですぞ」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 ネプチューン王とオトヒメ王妃には離席してもらい、私はロビンさんに改めて向き直った。

 

「信じられなきでしょ。私が女狐だなんて」

 

 私の一挙一動を警戒するようにロビンさんは目線を外さない。

 だから私は楽な体勢になるために適度な岩に腰掛けた。

 

「決定的に決め手になったのは、ネプチューン王があなたの実力がどうなのか聞いた時。貴女は年齢だけど答えたわ。海軍の雑用に年齢は関係ないと言うのに。ネプチューン王が過大評価かと疑って、歳で疑われる立場」

「……迂闊ですた」

「もちろん、これだけじゃ決定的にならなかった。でもそれを疑えば疑うほど、女狐とリィンの共通点が出てくる。そして女狐が居る場には必ず貴女はいなかった」

 

「……2年前のシャボンディ諸島以外、ですか?」

「えぇ」

 

 ロビンさんは震える手を隠しながら強気で私を断罪するように睨む。

 

「エニエスロビーで、貴女は私たちを助けてくれたわ。海列車に潜入した2人をかばい、手錠の鍵もナミに渡してくれたそうね。橋まで辿り着かせたのも貴女。裏切りと取られてもおかしくないのに」

「そうですたね」

「意図的に隠しているものもいくつかある。ロングリングロングランドでは青キジとさも初対面のやり取りを交わしていながら、その実同僚。でも彼を追い払ったのも、リィン」

「そんなこともありますたね」

「ねぇ教えて頂戴。──貴女は私達の、ルフィの敵なの?味方なの?」

 

 私は手をクルクル回しながら少し考えた。

 

 ロビンさんの目は断罪に見せかけ縋っているようだった。追い詰めているはずなのに追い詰められていて、私はクスリと笑みをこぼす。

 

「私は海軍に入る前から。ルフィを守るために入るとフェヒ爺と約束しますた」

 

 

 安心させるように微笑んだ私はアイテムボックスからマリンコードの入ったドックタグを取り出した。

 

「MC04444、海軍大将女狐。大それた名前ですけど、ルフィを、そして兄達を守るためにはちょうど良きですた」

「女狐の名前が世界に広がり始めたのは約10年前。信じられないと何度も考えたわ」

「はい、そうです。最近ようやく表立つ機会が増えますたが、私はお飾りで名ばかりの大将。……元は、血筋から海賊へ逃がさないように縛り付けるための枷ですた」

 

「…………元は?」

 

 私は真剣な顔で頷く。

 

「2年前、私は元帥と突如現れた女狐によって『己が影武者だ』ということを知りますた」

「……あれは、リィンにとっては予想外の出来事だったのね」

「はいです。というかまぁ、もとより私の正体って結構色んなところでバラすてましたし、海軍最大の裏切り者と言っても過言じゃ無きですぞ。てへ」

「ふざけないでちょうだい……」

「実際、ドラゴンさんも女狐……、分かりにくいので偽女狐と言いますが、私の偽女狐と取引ぞすてます」

「そう、だったの?」

「はい。そして2年前のあの忌まわしき女狐。あれを真女狐と呼びますね。真女狐が現れ、私は誓ったです」

 

 ぐっと拳を握りしめた。

 

「──あの真女狐とセンゴクさんを地獄に叩き潰そ、って」

「やだ、物騒」

 

 ロビンさんはようやくくすくすと笑い始めた。

 

「要するにまぁ……自分が影武者だと気付かないフリをすて、しれっと海軍に潜入してる状態、ってわけです。もちろんセンゴクさんには『センゴクさんがそういうことするはず無きですもんね、私を守るためだったんでしょう?』って言ってます」

「そういうことだったのね。……分かったわ、教えてくれてありがとう」

「いいえ。こちらこそ、証拠が無き故に信じてもらえるか。……信じるすてくれて、ありがとうございます」

 

 

 あぁ本当に──きちんと罠に引っかかってくれてありがとう。

 

 

 真女狐?私ですが?

 影武者?私ですが?

 

 主演:私

 助演:私

 監督:私

 カメラマン:私

 

 ぜーんぶ私産である。

 麦わらの一味の中で女狐バレしても大丈夫な説明役だったり、海軍からの情報源の入手経路把握役を1人作っておこうと思っていたから、罠を張らせていただきました。

 

 発言の違和感と、ノアをわざわざアイテムボックスに仕舞うという大立ち回り。海賊リィンは過小表現の能力のくせに、今回はわかりやすい実力を見せた。

 

 ロビンさん、同じくらい頭の回転が速い貴女ならちゃんと私の正体に気付いてくれると思っていたよ。

 

 私はバラすつもりが無かった、バラしたくないという演技をしたかったので、さり気ないヒントしか与しえられなかった。それをちゃんと拾い上げてくれただけでか最高だ。

 

「本当にありがとう」

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