海上で次々上がってくる海賊船に、周辺の中将達はリーク通りの場所で大捕物をしていた。
「大量っスね」
「はた迷惑な量だ」
「言う!俺たちを解放したのは麦わらの一味だ!」
「──わかってるよバカ」
==========
王宮で宴が始まった。魚人島で暮らす人々からあれも食べろこれも食べろと大量の食事が送られてくる。10年前のオトヒメ王妃を救ったことも含めてお礼をさせて欲しいとの申し出だった。
消えたはずのノアが突然現れたことに一瞬話題になったが、魚人等自慢のお菓子やお酒、新鮮な魚に海獣の肉など、様々な料理が並ぶ。もちろん料理だけではなくケイミーさんを含めたマーメイドカフェの踊りやオペラなど出し物も多い。
「リィン様、楽しんでいますか?」
「しらほし姫様!はい、楽しむすてます!」
魚人島のお菓子は大好きなのでいっぱい食べてます。なんだかんだ言ってこう言った盛大なパーティーや宴は初めてだ。
「リィン様。今回も本当にありがとうございます」
「大したことはしてませぬよ?戦うしたのは仲間たちです」
「それでもリィン様にお礼を言いたいのです」
こちらこそ、大事な計画の前に麦わらの一味の実力を把握出来て助かった。強敵は居なかったけれど、異様なまでの大多数と戦っている状態が見れただけで役に立つ。
「リィン君、わしからもお礼を言わせて欲しいんじゃもん」
「んー。では、2つお願い事があるのですけど」
「む?なんじゃ?」
「まず1つ目は、アーロン一味の幹部の身柄です。麦わらの一味に譲渡すてほしきです」
「アーロンの、か?」
「はいです。悪いことしたらお巡りさんに、ですもんね」
1度ならず3度も大犯罪を犯してる海賊だ。ちゃんと海軍にないないしようね。
「それくらいなら構わぬが……」
「それともうひとつ。今後国交を結ぶにあたり有利になるとは思うですので、少しだけ」
私はネプチューン王にひとつだけ、今後のために依頼をした。
「…………それだけでいいのか?」
「はい。でも、絶大なダメージになるです。必ず、上陸はせぬようにお願いします」
「あいわかった」
少しだけ風穴を作ってくれるだけでいいんだよ。
簡単な内容ではあったので、ネプチューン王は快く引き受けてくれた。
宴も中盤に入り、ジンさんが麦わらの一味の勧誘に折れてやってきた。
「リィン」
「ジンさん!」
「……なんか、リーとジンベエ仲良いよな?」
お互いに顔を見合せて首を傾げる。
「そういうすれば、ジンさんが七武海加入したてくらいですたっけ、私と会ったの」
「うむ、たしか……?」
「もう覚えてないくらい前ですぞねぇ」
「そうじゃなぁ。七武海の中でもリィンは1番わしに懐いてくれとったか」
「いちばん安全!」
「確かにそう」
「「わっはっは!」」
笑い事では無いのだけど笑えてきた。他が物騒過ぎるんだよ。ド天然七武海のジンさんとはいえ、他の七武海の凶暴性は分かっている。私たちはお互い固く握手をした。
「──ドフラミンゴとクロコダイルのリィン争奪戦を横から掻っ攫った以上、わしは奴らの報復が怖い」
「──奇遇ですね、あれ、すこぶるウザいと思考すてますた。先手を打ちましょう、ジンさん、協力すてくれますね?でなければ貴方が危ない」
「任せい。…………うん?これわしはリィンに脅されてるのか?」
1回、殺られる前に殺っておかなきゃね。
「ジンベエは仲間になってくれるんだってさ」
「うむ、わしはルフィと共に世界を見たくなった。頂上戦争での活躍や、何よりあのリィンが海軍を辞めてまでルフィの所に行った。正直惹かれんわけが無い」
「にっしっし、照れるな。リーの1番なんだぞ、俺!」
「うん、1番」
そういえばジンさんは私が女狐だということを知らない人物だったな。
七武海の中で知らないのは新米2人と海賊女帝、そしてジンさんくらいか。
「そういえば、ルフィはリィンがおるから情報に関しては大丈夫そうじゃなぁ」
「俺は詳しくないけどリーに聞けば何かは返ってくるから大丈夫だと思うけど、リーに頼りすぎるのも良くないから教えてくれ!」
「船長としていい心構えじゃわい。そうじゃなぁ例えば赤犬と青雉の大喧嘩とか……」
「大喧嘩ァ!?」
ルフィ以外の人は知っている様で、チョッパー君でさえ知っていた。
はて、大喧嘩?
首を傾げれば、全員からぎょっとした顔を向けられてしまった。
「知らんのか?2年前の戦争の後、センゴク元帥が職をおり、次期元帥の座を争った事件じゃ」
「…………あぁ!」
情けない大人達による次期元帥押し付け合い事件か。
「普段はやる気など見せない青雉も、赤犬が元帥になるのは反対だったのか、とある島で10日にもわたる戦闘が繰り広げられた」
あってるよな、と言いたげに私に視線が向けられたのでひとまず頷く。
実際お互い『やりたくない、嫌だ!』って言い合っていたけど。
「結果、勝者は赤犬。両者深手を負い、青雉が殺されそうになった瞬間、勝敗を判決した女狐が全力の2人の攻撃を止め、青雉は命を繋ぎ止めた」
「女狐が……!」
「青雉は赤犬の下に着きたく無かったのか、海軍を辞めた。今何を考えておるのか分からんが、どちらにせよ海軍本部は大きな戦力を失うことになったの……」
私はロビンさんにちょいちょいの手で呼ばれた。ロビンさんの横に座るとコソコソと小声で問われた。
「実際はどうなの?」
「………………元帥押し付け合い合戦ですた」
「どういうことなの」
「女狐の上司である元帥になりたいと思う大将が居なかったってことです。あのクソ野郎ども」
まるで私を御するのが大変みたいに。
ロビンさんは虚をつかれたのかクスクスと笑った。
「ルフィ、海軍本部は青雉の抜けた穴を補い余る程の戦力を補充した。世界徴兵として新たに2人の大将も着いた。が、さらに海軍の話題を持っていったのは大御所女狐じゃ」
「…………女狐が何をしたんだ?」
「海軍本部は元々前半の海にあったが、ある日突然全軍艦と人員と物資が、突如マリージョアを飛び越え後半の海へ移動したんじゃ」
「それ、おれも新聞で見た!空を覆う軍艦の量凄かったな!」
「私も見たわ。正直、恐ろしいと思ったわ。あれが女狐の仕業だって書いてた」
海軍本部一斉お引越しね。
一時期新聞が大はしゃぎしたもんなぁ。私の指示で。
調子に乗っていた海賊達も、レッドラインを超える高度まで船を持ち上げられて海に落とされたらろくな事にならないと思い至ったのか大人しくなってくれた見たいで。
「思えばあの頂上戦争でも、雌雄を決することになったのは女狐の一声があったからじゃわい」
「確かに」
「女狐がやる気になれば戦争の結果は全てひっくり返っておったじゃろう。実際、海賊島と呼ばれる場所を、新しい七武海の死の外科医と共に女狐が制した」
私は別に倒してはないしなんなら事後説明段階で来たんだけど、まぁ流した噂通りの広まり方をしてくれている様で安心した。
時には他人から情報を聞くのも必要だなぁ。
「女狐、本当に分からね〜な。俺たちを捕まえたり、なのに助けてくれたかと思えば、すぐ敵対する。あと怖ぇし」
「結果的に女狐の損得で私達が振り回されてる気がするわ……」
失敬な。
私は麦わらの一味のために必死こいて頑張ってるんだけど。
「まぁ、概ねジンさんの説明と私が持つすてる情報は一致しますね。あ、あと七武海と言えばバギーが七武海になってますぞ」
「うわぁ」
とりあえず寝たいな。そんなことを思っていたら、王宮兵が突如慌てた姿でやってきた。
「──実は、先ほど白ひげ海賊団の船員が到着したと!」
「えっ??」
まじ?
==========
魚人島は女狐の保護があるが、実質的に治安を守っているのは白ひげ海賊団だ。
要するにナワバリってこと。
海軍は海賊の楽園である魚人島へリスクのある航海はできないため、政治的な補助という立場しか取れないのだ。
「よいよいー!!」
「マルコだよい」
白ひげ海賊団の使者はマルコさんとビスタさんだった。
「お久しぶりですビスタさん」
「リィンちゃん元気してたかい?」
マルコさんとはアラバスタで会ったことのある面々が何人か居るため、麦わらの一味はマルコさんに寄ってたかっている。
ビスタさんに挨拶を交わすと、大きな体を曲げて目線を合わせてくれた。
「元気です、すこぶる。今日は何用で?」
「見回りと、徴収だったんだけどな……」
あぁ、治安維持のみかじめ料を徴収することで白ひげ海賊団はナワバリ経営してるって訳か。
白ひげさん貧乏だし、というか村に宝与えすぎだし。
「そこで話があるんだけどよい、定期的に様子見にくる間に今回ホーディーやアーロンがやらかしてたんだろう?」
「そうなのです」
ナワバリ持ちからしたら微妙だよね。自分たちが即座に対応出来ないけれど、横から入ってきた海賊がマルっと解決しちゃうんだから。
マルコさんとビスタさんは顔を見合せた。
「ルフィ、いや麦わらの一味にひとつ提案がある」
マルコさんのその言い方になんだか嫌な予感がした。
「魚人島のナワバリ、持たないかよい?」
あ、胃が。胃が突然痛くなってきちゃった。
これまで目を背けていたナワバリ問題。後半の海に入ればナワバリは苛烈な争いをしてくるし、ルフィもいつかナワバリを所有する可能性があるとは考えていたけど!
ここかよ!!
「なんでだ?」
「……。魚人島の為に身体張れる海賊なら、任せてもいいと思ったんだよい」
マルコさんはカラッと笑ってルフィの質問に答えた。そしてそのオーソドックスな答え方を聞いて察する。
白ひげさん、そろそろやばいな。
恐らく、マルコさんたちはナワバリの引き継ぎ相手を探しているのだろう。突如白ひげの海賊旗が意味をなさなくなったとき用に。
暴動などが起きる前に影響力のあって信頼出来る海賊に任せたいという意図が見え隠れしている。
「んーーーー、いいぞ!」
「そいつぁ良かった」
ルフィは軽い調子で引き受ける。
「ビスタさん」
「……言うな」
止められてしまった。
白ひげさんの調子はどうなのか聞きたかったのだけど、そこを突かれると分かっていたらしい。
「ふむ!ルフィ君達なら安心じゃもん」
「ネプチューン王もそう言ってくれることだし、安心して任せられるねい」
マルコさんはホッとしたように呟く。
「本当はエースにでも頼もうかと思ったんだけどねい。あいつのところには今不確定要素が多くて」
あー、たしかに。
ダグラス・バレットに赤髪の娘だもんね。
確かに、そう言われるとエースの兄妹に任せるのならそこまで心配は……。
──プツリ
「おや、リィンさん。リボン落ちましたよ」
「……え?あぁ、ありがとう……ございます」
髪の毛に結んでた青いリボンが解けたようだった。
「それにしても随分古いリボンですね」
「確かに、もうかなり使い古してるな」
焦燥感に襲われる。
なんだか、何か上手くいくはずのピースが揃わないような奇妙な感情。
焦っている。冷や汗も止まらない。
「おいルフィ、どうしたんだ?」
ゾロさんの声にルフィの方を見れば、呆然とした顔をしていた。
「…………分からないけど、なんか、穴が開いたみたいで」
心臓をぎゅっと握りしめていたルフィが不意に顔を上げて私と目を合わせる。
「なぁリー」
「ルフィ」
「……そのリボン、誰があげたんだっけ?」
熱に浮かされたような奇妙な感覚が身体中を走り回った。
──おそろいだ。
そう思ったのは、なんでだっけ。