2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第293話 よりにもよっては重なればいつもの事

 

 燃える海の情報はデータにあっただろうか。

 アーロン達は『こんな船に乗ってられるか!』と飛び降りようとしたけど、いくら魚人族でもこの熱さなら煮魚になってしまう。ジンさんとはっちゃんに精一杯止められて、渋々船にとどまった。

 

「暑すぎる……俺……暑いのダメだ……」

「暑いというよりもはや熱いですね。肌が焼けるようです。私、焼ける肌無いんですけど!」

「すごい!僕が燃えた時みたい!」

「うぐ!」

「うがっ!」

「おいメリーやめてやれ、ルフィとフランキーがダメージ受けてる」

 

 揺れる波の中、悠々と箒に乗って乗り物酔いから回避していると突然船にいる電伝虫から緊急事態を知らせる音声が届いた。

 

「もしもし!俺は麦わらのルフィ!海賊王になる男だ!誰だ?」

 

 ガチャっと誰にも止められる暇なくルフィが速攻電伝虫を取った。

 

「おおい馬鹿かこの船の奴らは!」

「どういうこと、アーロン」

「海軍の常套手段だよ!救難信号で位置を特定するんだってのに、なぜ誰も止めねぇ!?ナミお前もだ!」

「なぁんだ海軍か」

「海軍かー……」

 

 皆が肩の力が抜ける。

 

「ふふ、アーロンさん。うちには海軍クラッシャーがいるからあまり心配しないでいいわ」

 

『──助けてくれぇ!あぁ寒い…!ジジ……ボスですか!?仲間たちが次々と!サムライに!』

 

 寒い?サムライ?

 電伝虫の向こうから聞こえて来る悲鳴には私の嫌な予感と疑問を吹き飛ばす言葉が出てきた。

 

『誰でもいいから助けて……!ここはジジッ──パンクハザード!!』

 

「「「「………」」」」

 

 切れた電伝虫と頭を抱えた私。

 それを見下ろす慣れた船員たち。

 

「リー、説明お願いします」

「まず最悪な点が二つ。一つ、SOSコールは本物ですが、海軍に盗聴ぞされてますね」

「わぁ最悪」

「後半の海に入って早々海軍ね」

「どこの部隊とか分かるのか?」

「まぁ何となくですが、位置特定すた故に3分の1の確率でなんとか出来ますぞり」

 

 本当は3分の3。つまりはこの近辺にいる海軍なら対処可能なのだけど、一旦過小評価工作をしておく。

 

「そしてもう一つ最悪な点、このパンクハザードは生物の生息不可能の無人のはずです」

「寒いってのは?」

「この島の反対側に氷エリアがあるです。このマグマエリアと氷エリアは島の真ん中でパッカリ別れるすてるです」

「……。ふむ、のうリィン、氷エリアの別の名称をもし付けるなら──ヒエヒエエリアか?」

「さっすがジンさん、詳しきですね!」

「つまりどういうことだってばよ?」

「暑かったり寒かったりするんだな?」

「赤犬と青雉が元帥決定戦で戦うすた土地、ということです。ちなみに約2、3年前まで毒ガスがこの島を支配すていた為生物の生息が一切無い土地ですた」

 

 頭は抱えないものの、麦わらの一味は渋い顔をした。

 

 そう、何を隠そうパンクハザードは割と縁のある土地。約12年前、毒に耐性があると分かった私の耐毒実験の施設でもあり、2年前に過去に飛んだ機械があった場所でもあり、1年前天変地異を起こす戦いを見守った場所でもある。

 うーん、複雑すぎて悪運を恨みたい。

 

「俺、冒険したいぞ?」

「救難信号を確認するべきであれば氷エリアに行くべきぞり。マグマエリアが見たきと?」

「おう!折角だし、赤犬の爪痕を見ておきたい」

 

 トキトキの実を食べさせた機械は元帥押し付け戦闘の後きちんと確認をしておいた。サカズキさん側に存在するように位置調節をしていたから尚更。

 だからマグマ側は探られても問題無いだろう。

 

「リーはどうする?」

「私留守番。眠たきぞ」

「魚人島来る前からずっと寝たい寝たい言ってたもんな」

 

 そうだよ。割と細々とした睡眠しか取れてないから睡眠時間が限界なんだよ。

 

 ミニメリー号という小舟がこの船には内蔵されているようで、ルフィ、ゾロさん、ウソップさん、ロビンさん、メリー号、ビリーの5人と1匹が参戦した。残りのメンツとアーロン幹部達は船にお留守番だ。

 

「いってらっしゃーい」

 

 寒いのは無理だけど暑いのなら何とかなる。ルフィ達を見送った後、私は遠慮なく垂れてくる汗を拭って甲板のベンチに横になった。室内派確実に蒸し風呂になるだろうから外の方が比較的涼しいだろう。

 

 

「おい」

「アーロン……?何です?」

「お前は、魚人が嫌いなのか?」

「……?強いて言うなら……」

 

 あ、眠い……。

 

「お前が……嫌い…………」

 

 長い付き合いであり元七武海のジンさんが居てくれる安心感もあるだろう。

 

 疲れも祟り、私は深い深い眠りに落ちていった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「リー!」

 

 明晰夢というやつだろう。

 私は夢のぼやけた輪郭の中にいる。

 

 思い通りに何もかもが動くこの世界。目まぐるしく時が戻っていく。

 

 頂上戦争──ヴェズネ王国──アラバスタ──ローグタウン──フレバンス──あの、山の奥。

 

 どんどん遡って、私は1歳くらいになった。

 

「リー?へぇ、お前リーって言うのか」

「リィじゃないのか?」

「だって最初にリーって言っただろ」

「絶対違うって。リィだよ」

 

 エース、リィンだよ。赤ちゃんの滑舌に期待しないでって。

 きっと当時の私も同じこと思ってたよ。

 

 ▉▉も苦笑いして……、誰?

 

 

 私は海兵だ。

 ルフィたちの海賊行為を揉み消せるなら揉み消して、こっそり逃がしたりしちゃったり。そうだそうだ。ブラコンって言われようとも表の道から助けようと思って。

 

 それと信じてたから。生きてるって。

 私は誰を探すために海兵になったんだっけ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「ー。……リ──!リィン!」

 

 夢から無理矢理起こされた感覚。

 

「起きたか!」

 

 ジンさんの顔がドアップだ。

 寝起きの不快感でぶん殴ろうと思っていた手をスっと閉じ込める。えへへー、とにっこり笑って誤魔化した。

 

「えっと、どこ?」

 

 キョロキョロと辺りを見渡すと102というナンバリングの振られた扉と壁。天井にスピーカー……いやガス噴射装置が付けられた部屋。扉は鍵が掛かってそうで非常に厳重だ。

 ひとまず噴射装置だけ氷で塞いでおこう。

 

 部屋の中にはジンさん、サンジ様、ビビ様、カルー、ナミさん、チョッパー君、フランキーさん、元アーロン海賊団幹部4人。

 うーん、多いね。ブルックさんのマグマエリア上陸組以外かな。

 

「状況は……?」

「どうやら催眠ガスを盛られたみたいなの」

「不甲斐ねぇ……もう少し気付くのが早けりゃ。お詫びにおかまになるわ」

「ならないで」

「ブルックさんがおらぬですけど」

「人攫いだから骸骨は関係ないんじゃないのか?」

「おめぇも人とは言えねぇだろ」

「クエー!?(特別意訳:お前もだろ)」

「カルーお前もだよ!」

 

 途端にコントになる麦わらの一味はなんなの?

 

「──お主達、はんものは好きか?」

 

 パズルの事だろう。声がする方向へ顔を向けるとバラバラになった顔がそこにあった。

 

 生きてるの?

 

 ビビ様が面白そうにワクワクと目を輝かせて組み立てようとしている。

 

「…………なんか、微妙に見覚えぞあるなここ」

 

 ものすごく嫌な予感がしてきたな。

 

「アーロン達、この扉か壁ぞ破るすてて」

「はぁ!?なんで俺たちが!」

「逆に聞くですけど、ここ、毒ぞ噴出されたら一網打尽ぞ?私は普通に寝てるすてたとはいえ、全員が例外なく眠るすた毒を持つ相手です。密室がまずき事くらい分かるでしょう?」

 

 ぐうの音も出ないのかアーロン、クロオビ、チュウの3人がガンガンと扉を叩き始める。

 

「──出来た!」

 

 出来た顔は明らかに侍だった。

 

 

 サムライ。バラバラになってもくっつく体。パンクハザード。

 

 私は再度頭を抱えた。

 

「リィンが頭抱えちゃったじゃない!何してくれんのよ!」

「なぁ!?女身空が拙者になんだその物言いは!女なれば男の三歩後ろ歩いて淑やかに物申せ!」

「うわぁ、今の時代に見合わぬ価値観ぞり……」

 

 私頭と目が合うようにペタンとうつ伏せになった。

 

「こんにちは!」

「こんにちは。うむ、良い子の返事だな」

「私、リィンって言うです。お侍さんすごきですねぇ!刀でなんでもスパーって切れるしちゃうんでしょ?」

「ほう!リィン、話が分かるではないか!」

「お侍さんの名前とこの島に来た目的ぞ聞くすてもいいですか?」

「拙者は錦えもんという!拙者はこの島に息子を助けに来た!」

 

 錦えもん。

 名前に聞き覚えがある。侍の顔つきは日本人に似ているおかげで判別しやすいのもあってすぐにどこで見聞きしたのかわかった。

 

「…………そう」

 

 こいつ、トキを連れてワノ国に上陸した時に居たやつだな。ワノ国で色々何が起こったのかを聞いたことがある。

 そして光月おでんの部下というか忠実な僕。

 

「リィンちゃん、俺たちは侍に襲われるって救難信号で上陸したようなもんだろ?危険だから近付かない方がいい」

「サンジさん。侍魂ぞ持つものは女子供に優しく、己の信念ぞ持つすて切るに値しない敵は切り捨てませぬ。きっと何かしら誤解があるかと思うです」

「おお……!外国ではなんと不思議な言葉を喋るのかと思ったが!リィン、お主は中々に見る目がある!」

 

 顔に喜びの感情を浮かべる錦えもんさん。

 私は彼を庇うように背中を向け、麦わらの一味に向けてニッコリ微笑んだ。

 

 純粋無垢な私に騙されて哀れですねぇ。

 

「侍……」

「侍さん……」

 

 さて、そろそろ脱出としましょうか。

 

「皆さん防寒着配るです。着るすてください」

「防寒着……?は!もしかしてここ、反対側!?」

「左様です!」

 

 私は錦えもんさんのちょんまげに紐を通して箒の持ち手部分に潜りつけた。これでよし。

 

「あの……少女……拙者を持ち運ぼうとする善意には感謝しておるが、侍としてこの持ち方はいささか不名誉というか……」

 

 運ばれるしかない生首の分際でやかましいな。敵将の首を討ち取った槍を箒に見立てる真似がなんだって?

 

「錦えもんさん!息子さんぞ助けるです!名前を教えてくれませぬか?」

「きょ、協力してくれるのか!感謝する!息子の名前は────モモの助という」

 

 箒を取り落としそうになり、グッと耐えて出口の方向へ向かう。

 

「モモの助君は、何歳位の子です?」

「8歳だ!まだ元服も済んでおらん」

 

 ……おっけー。把握した。

 

 トキ、何があったのかは知らないけど。

 ひとまず護衛対象を見失なった愚か者にはさりげなく罰を与えておくから任せてくれ。

 

「アーロン、クロオビ、チュウ。この扉、衝撃吸収扉故に打撃などの力技ではそうそう壊せませぬぞ?」

「「「なぁ!?」」」

「にゅー……アーロンさんたち可哀想に……」

「ことごとくリィンに転がされとるな」

 

 私は扉に手をかけて、外側にあるであろうロックを動かして無理矢理開けた。

 

「破壊活動もなし、知恵ぞ知恵」

「デタラメだ!」

「そうだ!悪魔が!」

「この鬼畜!」

「海賊に向かって何を言うされても……」

「何!?海賊!?」

 

 錦えもんさんが海賊という単語に反応して頭を動かした。

 

「拙者をここに置いていけ!拙者、吐くほどに海賊が嫌いでござる!」

 

 私はびっくりして思わず箒を落としてしまった。

 

「あいたぁ!?」

「あ、ごめんです!ワザトジャナキデスヨ」

 

 びっくりしたのは本当だ。

 

「海賊にも侍が居るのでびっくりすただけです。私のパパの海賊団にも侍が居た故に」

「ほう……?何と恥知らずな!侍たるもの賊になどなぬべきである!」

「分かるです分かるです。武士たるもの、ですもんね」

「おお!本当に話がわかるな!」

 

「──でも、背に腹はかえられぬのでしょう?大事な人でしょ、命より」

 

 私の発言に、錦えもんさんは苦渋の決断をしたかのように頷いた。

 己のプライドよりも優先すべきことがこの世の中には沢山ある。

 

「いやー、いい感じの言葉で丸めたな」

「リィンちゃん。感情的な人得意だものね……」

「交渉能力というか洗脳能力というか、流石私のリィンね」

「そこ!うるさきです!」

 

 さっさと脱出して状況把握した後に、回収するもの回収して逃げましょう!

 

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