2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第294話 人質の存在意義

 

「そういえばマルコたちは?」

「あっ」

 

 忘れてた。

 ナミさんの言葉にビスタさんとマルコさんの二人の存在を忘れていたことに気付いた。

 

「うーん、ひとまず置くしておきましょう」

 

 よく考えれば麦わらの一味の司令塔でもあるルフィと、ゾロさんが2人とも居ない状態。私とゾロさんはニアピンだとしても、ここ……研究所側に居ないことは確かだ。

 

「ふぅ……これ、どうしましょう」

 

 

「顔色変だね?」

「ロボだ!」

「喋るたぬきー」

「ぐるぐる眉毛だ」

 

 閉じ込められていた部屋を抜けると巨人族の子供らしき子達が居て、私は浮かべた笑みがバレないように口元を隠した。

 

 

 

 

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 マグマエリアに進んだルフィ達はドラゴンを切り不思議な下半身を見つけ、海水の水溜まりの前で立往生をしていた。

 

「真ん中で分断されているとは聞いていたけど……。こう見ると赤犬と青雉ににらまれてるみたい」

 

 ロビンがそう言う。

 パンクハザードは赤犬と青雉決戦の地。リィン曰く、次期元帥押し付け合い合戦だったと軽く言っていたがこの爪痕を見ればそんな茶化して言えるようなおままごとじゃ無いのが分かる。

 

 海軍の最高戦力が天候を変える程の力で不眠不休で戦いあった10日間が茶番?笑い事ではない。

 

 

「つまり、あっちの青雉ゾーンにおっかねえ侍が居るってことだな」

「僕侍に会ってみたい!」

「メリーぃ!お前そんな恐ろしいこと言わないでくれよ……!」

「どちらにせよ、一旦船に戻らないとダメだろう」

「──いや、その必要は無いよい」

 

 ゾロのため息混じりの声に否定したのは空中だった。

 

「すまない、船が奪われた」

 

 白ひげ海賊団の幹部2人が空から飛んできた。ビスタはマルコの足にぶらさがっている。

 

「船に急に催眠ガスが撒かれたみたいでよい……。俺たち以外は全員眠った」

「まさか、リィンも!?」

「リィンはガスというより普通にガッツリ眠ってたな!」

 

 少なくともリィンが居るのであれば船側は心配することない。

 

「俺たちは戦っても利が無かったからな。泳がせる意味でもすぐに船から退避し行動を観察したが、殺さず船に乗せたまま外周を行った。恐らくこの、反対側だ」

 

 ビスタの報告で視線を向けたのは海水の先。

 雪山だった。

 

 

 ==========

 

 

 

 さて、閉じ込められていた場所を出ると、そこには薄着でおそろいの服を着て遊んでいた。

 大きさはバラバラ。巨人族の子供サイズから人間の子供サイズまで色々だった。

 

 このサイズ感を見ると羊の家とかセラフィムとか思い出しちゃうな。

 

「外から来たの!?ねぇ、僕たち病気治ったよ!助けて!」

 

 子供の声に保育園かと思って通り過ぎようとした一味が立ち止まる。

 

「モモの助はおらぬか!モモの助ー!」

 

 錦えもんさんの声が場違いに響く。騒ぎを聞きつけて黄色い防護服を来た職員らしき人物達が追いかけてくる。

 

「ガス弾の使用は最小限にとどめろ!ビスケットルームの扉が開いてる!」

「子供たちどいてねー、いい子だから。そこ行くのはこわい人だよー!」

 

 ガス使いの職員たち。

 病気というキーワードで閉じ込めた子供。

 

「知ってるよ!この建物から出たことないけど、この島何も無いんでしょ!?だから助けも来ない!お父さんとお母さんに会いたいよ!」

 

 私は口元を押さえた。

 

「アーロン、クロオビ、チュウ」

「なんだ下等生物が」

「今すぐ、追っ手、消す」

 

 私の命令に従わなければ、投げナイフの的になってもらおうかな。

 アイテムボックスからナイフを取り出し、不思議色でビュンと放り投げると地面に持ち手部分まで突き刺さった。え?もちろん、アーロンの足元ですけど。

 

「にゅ……。リィン、俺子供たち放っておけねぇよ」

「リィンちゃん私も」

 

 はっちゃんとビビ様がそう表明する。

 

「……私もです」

 

 麦わらの一味にはお人好しが多い。

 少しでも『わがまま』を言ってしまえば、叶えようと動く人達だ。

 

「子供に泣いて助けてって言われたら!背を向けられないじゃない!」

「と言うわけ故に、子供たちは貰っていくですよ」

 

 何を企んでいるのか、大雑把な事しか分からないけれどこれだけは分かる。

 

 ──治療すると見せかけて人体実験するのは、お前の十八番だろ。マッドサイエンティスト。

 

 

 

 ==========

 

 

 

──ほぼ同時刻。

 

 スモーカーは麦わらの一味を追ってパンクハザードに向かっていた。

 

 麦わらの一味を追いかけるため。いや、もう少し私情をぶっちゃけるのであれば厄介事に巻き込まれるであろうリィンのサポートをするため、だ。

 

「スモーカー中将〜!やべーってこの毒!パンクハザードって4年前のベガパンクのクソ親父の実験失敗で!この島って腐ってんだろ!?」

 

 スモーカーの所属するG-5の海兵は基本不良である。一見すれば海賊と見られてもおかしくない。

 

「……いや、毒ガスがある方がおかしいんだ。2年前、ここには氷も炎もないただの島だった。毒ガスや有害物質は一切感知されて無かった」

「今こんなにあるのに!?」

「あぁ。元元帥のセンゴクと大将の女狐が2人で確認した」

 

「(なんか、二人共毒効かなそうで情報の信頼性ないなぁ……)」

 

 スモーカーの部下である月組、海軍本部の優等生が口には出さないもののそんなことを考えた。

 

「月組ぃ!あの氷塊撃て!」

「いえっさー!」

「ガスマスクの用意も出来てます、全員体調不良等無しです」

 

 月組の砲弾で氷塊が割れると、河口が現れた。偶然ならまだしも、人為的な妨害と考えて良さそうだ。

 

「こんなガスだらけじゃ、麦わらの一味もいねぇって先輩達〜」

「いや、絶対いる」

「賭けてもいい」

「麦わらがこんな『面白そう』な島を見逃すわけが無い」

 

 もちろん海軍基準では、2人の元大将に睨まれているみたいで面白くも欠片も無いのだが。

 麦わらの一味の人となりはある程度分かっている。

 

 確信があるためどんどんばりばり進んで行く。

 

「島内は本当にガスがねぇ……」

 

 そして辿り着けば、巨大な研究所が広がっていた。不自然な程に静かで吹雪の音しかしない空間。

 G-5の海兵は律儀にブザーを鳴らした。

 

「出ないな……」

「俺には分かる、天使の気配がするって」

「やばいな」

 

 何がやばいって、精神性が。

 

 するとガコン、と大きな扉が開いた。扉に対して僅かな隙間から、1人の男が出てくる。

 

「……俺の別荘に、何の用だ白猟屋」

 

「と、トラファルガー・ロー!!???」

 

 王下七武海の一角の男が現れ、G-5は悲鳴に近い声を上げた。

 死の外科医と名高いこの男は、巷でドジっ子という不名誉な噂があるもののその残虐さで危険視されている1人。

 

「ここは政府関係者も含め立ち入り禁止だ、ロー」

「じゃあお前らもだな」

 

「たしかに。すげぇ、理不尽だと思うけどカウンター食らった気分」

「え?かえるの?」

 

 スコン、とアホ発言をした月組をスモーカーは殴りつけ、どういった会話をしようかと悩む。

 スモーカーは一息吐いて、ズカズカと近寄った。

 

「俺は海賊の関係性には詳しくないが、緊急信号のおかげでここに麦わらの一味が来ているという情報を入手した」

「……!まさか、ここには一人だ」

「今一瞬、嬉しそうな顔をしたな。そうかそうか……リィンか」

 

 麦わらの一味にはある程度分類分けされている。

 スモーカーは七武海にも比較的近しい海兵であるため、ローのようなタイプは計画を邪魔されることを嫌うというのは分かっていた。

 

 麦わらのルフィは典型的な作戦クラッシャー。

 対称的に、リィンは作戦立案だ。

 

「何を期待しているのか分からないが……。──資料探しに関係しているようだな?なぁ、ニコラス、クーバー、クレス」

「そうですねぇ」

「ま、リィンちゃん相手なら喜ぶのは仕方ないですけど」

()()()()()、元気してた?」

 

 月組の3人が名前を呼ばれ、対応する。

 その名前に聞き覚えが有り、ローはとてもとても嫌な顔をした。

 

「お前ら…………あの時の……」

 

 それもそのはず、実はローが1度目に海軍本部に忍び込んだ時、資料室でドフラミンゴの資料を探す手伝いをした海兵がこの3人だったのだ。

 

 ハイターという偽名を使っていたが、ここで呼ばれるとは。なかなかに性格が悪い。

 

「さて、ロー。お前が調べている範囲は把握している。純粋に別荘に選ぶわけが無い」

「──まァ、その通りですぞねぇ」

 

 全員の意識がその声に注目してしまった。

 

「いるじゃねえか、何が一人だ」

「本当にいるとは…………」

 

「今、監視あり?」

「……なし」

「把握しますた!全く、まったくまったく、まったく!」

 

 リィンだ。

 スモーカーも、たしぎも、ローも、月組も。その姿に沸き立つ心があった。

 

 巻き込まれたいと心から願うような何かが。

 

「リィンちゃん!」

「リィンちゃんだー!?可愛い!」

「えへへ!」

 

 キュートに笑う姿に状況がまだ把握出来ないものの、リィンの後ろからガヤガヤとした叫び後が聞こえてくるのが分かった。

 

 

「スモさん、緊急事態。2人とも協力要請。よろしく」

 

 よろしくってお前。

 簡単に言って退ける親友に、スモーカーはにやりと笑みを浮かべた。

 

「よろしくって、妹屋!」

 

 つまり、トラファルガー・ローも旧七武海とそこまで変わらない扱いでいいってことだ。

 

「白猟屋、お前海兵だろ!?止めろ馬鹿!」

「馬鹿とはなんだ馬鹿とは!第一こいつがそれで止まっ……──!!??」

 

 リィンはたしぎをとっ捕まえていた。

 

「あいつ!俺たちのたしぎちゃんを!」

「たしぎちゃん!逃げてくれぇー!」

「たしぎちゃんが居て撃てねぇ……!」

 

 たしぎが箒に無理やり乗せられ、上空へ舞い上がる。撃とうとした海兵も、紅一点のたしぎを人質に取られては為す術も無い。

 

「手っ取り早き故に誘拐します。追いかけてご覧なさい」

 

 そして送られたウインクひとつでG-5の海兵たちは心臓に矢が打たれた様に胸を押えた。

 

 つまりはまぁ、海軍が撤退出来なくなった理由と、ローが海軍追い払えない理由を同時に作ってしまったのだ。

 

「うわー!?リィンちゃんがたしぎちゃん誘拐してる!」

「海軍……!あ、やった、スモーカーさんの所」

「おお!スモーカーでは無いか。久しいのぉ。スマンが取り込み中で、後程説明するわい」

 

「ぎゃー!!!!元王下七武海!!」

「それに子供!?なんで!?」

「情報が、情報が多いよスモーカー中将〜!!」

 

 いや、うん。

 

「……それは俺も思ってる」

 

 海軍辞めようかな。場所が変われば見なくて済むと思うんだ、現実。

 

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