2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第300話 海賊と海軍の隠れ蓑

 

「……で、どうするよ」

 

 ローとリィンが去った洞穴の中で一同は話し合いを続けていた。

 

 情報を多く握っている二人が去った今、彼らに渡された司令が二つ。

 

『子供の保護が最優先だな』

「シーザーをぶっ飛ばす!」

 

 スモーカーとルフィがほぼ同時に宣言した。

 

「麦わらの一味は、シーザーの捕獲の為に一度中まで入らなければ駄目ね」

「リィンちゃん取り返すためにも必要ってわけか」

「船は?」

「それもリィンだよ!」

 

 麦わらの一味はどの道危険度の高い場所に向かわなければならない。

 この過剰戦力パーティーであれば万が一なにかが起こっても大丈夫だろうという自信はあるが、案外搦手に弱い人物が多いためそこは気を付けなければならない。

 

 それに懸念点がひとつ。

 リィンがわざわざシーザーの動きを防ぎに向かったことだ。科学者であれば戦闘能力はそこまで無いだろう。しかし、潜入の為とは言えどわざわざ誘拐されに向かったのだから。

 

「魚人島の時とは違って、最初から観察ではなく警戒モードで動いてるのよね……」

「手っ取り早い、って節は?面倒くさがりだろ」

「それはあるかもしれないわ。でも、手綱を握っておきたいはずのアーロン達を手放して向かってるんだもの」

「てなるとォ?スーパーめんどくさい相手だってことは分かるな」

 

 リィンの行動ひとつで敵対戦力の推測にかかる。リィンがただ眠たくてシーザーのモルモット行きを選択したことは誰も知らない。

 今ごろ毒物を摂取しながらウトウトしてお菓子を貪っているところだろう。怠惰の極み。

 

「マスターを傷つけようって言うならこの茶ひげ様が相手だ!」

「ハイハイ」

 

 茶ひげという、ルフィ達マグマ組が偶然手に入れた乗り物が反発する。

 それを軽く流した麦わらの一味の様子に、電伝虫の向こう側でスモーカーがため息を吐いた。

 

『……元々この辺りの地区では行方不明者の通報が多かった。悪戯電話か、迷子か。結局本部には行方不明者としての届出は無かった』

「それがなんだって言うんだ」

『分からねぇか?』

 

 スモーカーのその説明で気付いた人間は数人。しかも、最悪なことが2点。

 

『たしぎ、子供の体調報告を』

「はい、スモーカーさん。子供たちは現在、堕天使がある程度毒素を吸収した、と言っていたせいなのかは分かりませんが元気です。現在も元気に話したり遊んだりしています。麦わらの一味の船医?曰く、健康体だそうですが、体に馴染みきった毒素を抜くには時間がかかるそうです」

『次、状況』

「はい。見かけた通り脱出できないような薄着で、病気だと言われていたようです。我々が来た際のシーザーの隠匿性。海軍への匿名の通報等、一切記憶にありません」

『だろうな』

 

 たしぎの冷静な状況判断に茶ひげは何が何だか分からなくなる。

 

『そっち側でわかったやつは』

「……私ね」

「俺もだよい」

「私も多分、分かりました」

 

 名乗り出たのはロビン、マルコ、そしてビビだった。ビビは少し不安げだったが、ロビンと小声で答え合わせをした結果、気分が落ち込む。

 

 分かったことは二つ。

 

 1.行方不明者がいるという通報は本当で、シーザーの手引きで誘拐している事

 

 2.海軍内部に裏切り者がいる

 

 通報を『無かったこと』にして問題を表面化させなかった人物が居るのだ。

 

「あーー。スモーカーよい」

『なんだ』

「……あんたじゃねぇよな?」

 

 ──裏切り者は。

 

 99%無かったとしても、間違った人物に子供たちを渡すわけにはいかない。マルコは割と善良な海賊なので心配したのだが、スモーカーは鼻で笑った。

 

『海賊らしからぬ言葉だな。安心しろ、違ぇよ』

 

「まぁそうよね」

「スモーカーさんだもの」

「ん?今、スモーカー疑われた?」

「あんまわかんねぇんだけど、スモーカーは良い奴だと思うんだよなぁ。リィンの友達だし……あ、待った、『リィンの友達』って一気に凶悪犯になる」

 

 麦わらの一味が状況も曖昧ながらスモーカーを庇い始めた。やんややんやと立場も気にせず好き勝手に言える海賊に、海軍はため息を吐いた。

 

「まぁ、俺もほぼ無いとは思ってたよい。アラバスタであんだけ無理やらかしてたんだからねい」

「あはは、本当にあの時は、スモーカーさんもマルコさんもお手伝いしてくれて助かりました。ありがとうございます」

「やだ、仲良し」

「ロビンー!お前はちったあ反省の色を見せろよ!」

「次はリィンに負けないようにしないと。認識の甘さを反省してるわ」

「いやそうじゃねぇだろ」

 

 お礼を言うビビと悪びれもしないロビンにマルコは苦笑いをうかべる他無かった。

 

『うちの船はおそらく破壊された。つまり、子供も乗れるくらいの船の確保は必要だ』

「私たちが乗っていた船じゃ、サイズが少し足りませんね」

『シーザーの船をパクるか。後は囚人共の確保……は、最悪後回しでもいいが』

 

 幸い、ローが目立つ下半身にしてしまっている。

 もしこの島から逃げ出しても目撃情報など簡単に集められるだろう。

 

 

『ス、スモーカー中将。あんた、なんでそんなに海賊なんかと和気あいあい話してんだ』

『そうだぜスモーカー中将……!まさかとは思うが海賊と繋がってたり……』

『──んなわけあるか馬鹿共!優先順位を考えろ!揉み消された子供の行方不明、少しでも海賊の機嫌が悪くなったり飽きられたらあそこにはたしぎしかいねぇのが分かんねぇのか!子供見殺しにする気か!?』

『ごめんよスモーカー中将!怒らねぇでくれー!』

『それに大体っ、だいっったい、麦わらの一味も白ひげ海賊団も七武海も、くそっ!死ね!』

 

 あ、最後の死ねは海賊に向かって言ったな。

 皆わかった。

 

 ちなみに、スモーカーが言おうとした言葉は『女狐の担当だろうが』だ。その場にリィンが居たのなら、七武海はともかく四皇の人は違います、と首を振った。

 

『とにかく、子供を引き渡せ』

「そりゃー、子供を保護してくれるんならこっちだってありがたいんだけどよ、ケムリン」

「ケムリン。」

『ケムリン……』

「リーがなんか悪巧みしてんだよ。何をかんがえてるの分かんねぇけど」

『……それが?』

「俺さ、リーの手のひらの上で転がるのはまぁいやではないんだけど、それはそれとして、リーに一泡吹かせたいと言うか、モヤーとするというか」

『癪なんだろ』

「そ!」

『あー。まぁ、誰を狙っているのか、つーならさっき分かったが。そうだな、リィンの指示を聞かないってのは、危ないだろ』

「そーなんだよ。リーは皆のこと好きだから、敵以外無事で済むように計画立てるんだよ。だから俺は下手に邪魔出来ないけど、船長としてチョット不服な訳でよー」

 

 ルフィの愚痴に付き合うスモーカー。ポジションが似ているのだ。

 ルフィは海賊としての隠れ蓑であり悪名の盾だ。スモーカーは海兵として、リィンの代わりに指揮官をやったり功績を得たりした。

 

 もちろん上も分かっているので、スモーカーの現在の地位は過剰ではなく実力相応。素行の悪さや謹慎という欠点をカバーする程度、だったのだがきちんと実力を示し中将へと昇格した。

 

 この2人の唯一の違いは。

 ──抗うか、従うか。

 

『無理だろ』

「いやー、海軍相手だったら無茶出来るんだけど、海賊相手はなー。リーの好きにさせた方がいいかなーとは思うんだよ」

『おい』

 

 それ遠回しに海軍相手なら作戦が適当でもなんとかなるって舐め腐ってる事言ってるだろ。

 

「ただ…………。んー……つまんねぇよな」

 

 冒険の物語を。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 研究所の入口まで海賊達と海軍は向かった。

 

「ケムリーーン!」

 

 電伝虫を繋いでいたせいもあるのでタイミングが全くおなじだった。

 

「てめぇら子供も連れてきたのかよ」

 

 スモーカーが難色示したのは、わらわらと現れた子供達がキャーキャー遊んでいる姿を見たからだ。

 無駄に海賊の数が居るくせに手分けせずにまとめてきやがった。

 

 唯一例外として、不死鳥マルコの姿だけ見えない。

 

「そうしたかったんだけど……」

「すみません。子供達の移動をお願いしたのは私です」

 

 たしぎだった。

 

「たしぎ」

「安全性を考えれば子供達はことが落ち着くまでどこかで匿うべきでした。ですが、この島に辿り着くまでに外周で毒ガスが発生しました」

「……なるほど、確かに外だと危ないかもな」

「はい。あくまでも野外です。もちろん研究所内や船を探す上でも危険性は高いですが、海軍の手の届く範囲にいる方が、よいかと」

 

 または肉壁。

 

 子供たちの無事は最優先だ。

 ガスの能力者相手にどこまで対抗出来るのか分からないが、少なくともリィンかロギアのスモーカーがいれば対抗しやすいだろうとの考えだ。

 

 麦わらの一味と白ひげがいれば。

 そして彼らは、はっちゃんを含めアーロン達が居ないことに気付かなかった。

 

「シュロロロロ!」

 

 突如、扉を蹴破ろうとした一同の前にシーザーが現れた。

 

「よぉ、酷い酷い海賊とお巡りさん諸君」

 

 その腕に、金色の少女を抱いたまま。

 

 

「リー!」

「リィン!」

 

 まさか、睡眠ガスで眠らされているのか。

 誰もが警戒心を一気に引き上げた。

 

「ぐぅ………………ぐぅ…………」

 

 単に睡眠不足で眠りこけていることは、シーザー以外知らなかった。よく寝るなこいつ。

 

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