2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第301話 優先事項の違い

 

 全員がシーザーの登場に場は騒然と成る。

 腕に抱かれたリィンがずっと眠り、人質と化している。

 

「シュロロロロ〜! さぁ、子供たちを返してもらうぜ」

 

 このままじゃ、毒ガスを使って外側の人間を毒漬けにすることも出来ないしな。

 シーザーはそんなわるぅい事を考えながら笑った。

 

「子供たち!戻ってくるんだ!飴ちゃんをあげよう!」

「マスター!」

「先生〜!」

「マスター、僕たちいつ帰れる?」

「病気が治っていい子にしてたらちゃあんと返してやるからなぁ!」

 

 ケラケラと嬉しそうに笑う子供と、その後ろで茶ひげが一安心したような表情になった。

 

「シーザー!」

 

 スモーカーとルフィが同時に殴りかかる。

 

「リー! 起きろ!」

 

 シーザーは体を動かし避けた、つもりだった。

 

「ぶっ飛ばす!」

 

 ルフィはシーザーのことを『誘拐』ではなく、『ぶっ飛ばす』と決めている。それはローが説明をサボったからであり、リィンが設定を省いたからだ。

 生け捕りにする必要の理解はあるがルフィは人を殺さないという謎の信頼がある。リィンはそれを知っていてわざわざ手加減する必要ないだろ、と考え逆に煽っていた。

 

「〝ゴムゴムの──〟」

 

 ルフィの眼光にシーザーは怯む。

 こいつはヤバい、と。

 

 逃げ出したいのに蛇に睨まれた蛙の様に 

 

「〝ルーム〟」

 

 その瞬間、膜のような空間が作られた。頂上戦争を経験した二人には経験がある。

 

「ロー!」

 

 シーザーとリィンがいたはずの場所に樽が急に現れた。

 ガタリと地面に落ちる音。

 

 気配がする方向を向けばシーザーをガッツリ掴んだローが窓の外枠に乗り出している姿が目に入ってきた。

 

 うわぁ、すごくシュールだ。

 

 シーザーもリィンを捕まえたままなのでローは2人分の体重を支えることになる。ちょっと厳しかったのか引っ張るように室内に押し込んだ。

 

「おいシーザー、簡単にやられそうになってるんじゃねぇよ」

「おォロー!正直めっちゃ怪しんでいたし手引きした可能性が何パーセントかあったからお前が助けてくれるとは思ってもみなかった!」

「正直だな」

「シュロロロロ……!助かった」

 

 ローは下の海賊と海軍を見下ろした。

 

「(何故シーザー狙いのはずのローは麦わらの攻撃を止めた?)」

 

 ロー、麦わらの一味、そして海軍。この3組が割と手を組んでいる状況。ローの真意が読み解けずスモーカーは睨んだ。

 

「シーザー、こいつらどうする。まだ子供がいるが、俺は両軍を相手には出来ねぇが」

「ん〜。まぁ、リィンがいるならもういい。子供もまた誘拐出来るしな」

「……そうか」

「それに、スマイリーは既に起こしてる」

 

 スマイリー?

 ローも含め全員が首を傾げる。その姿をシーザーは愉快だと笑った。

 

「マスター!」

「誘拐って……?」

 

 子供達が困惑する。その様子を見たシーザーは馬鹿にした様にぷぷーっと笑った。

 

「シュロロロロ〜!馬鹿な子供達だ。お前たちは俺のモルモットなんだよ!病気?嘘だねバーーーカ!」

 

 ベロベロと舌を出した『先生』の姿に子供たちは受け止められないのか涙をじわじわ浮かべ始めた。

 

「俺様の、偉大な実験に貢献出来たことを誇りながら……──死ね」

「シーザー・クラウン!」

「この最高傑作がいればジョーカーも喜ぶだろうよ!ここの実験物を全て手放してもお釣りが出るほどにな!まぁ所有権は渡さねぇが」

 

 ぐすぐすと泣き出す子供達。怒りを覚えたのは、全員だ。

 

「マスター!あんたは!あんたはそんなやつだったのか!俺たちを助けてくれたのも!全部全部!」

「……茶ひげぇ。お前は、とても使いやすいやつだったよ。こないだまではな!要らんゴミはゴミ処理場で処理するに限る」

 

 シーザーはお宝に触れるように眠りにつくリィンの頬を撫で、次に入れる毒について考えていた。

 もう実験体にも海賊にも海軍にも、興味は無い。

 

「ほら行くぞロー」

 

 もう既に眼下に無いのか、一瞥もせずにシーザーは背中を向けた。

 その背中を守るように経ったローが、見下ろす。

 

 その間はわずか数秒。

 ローも背中を向け、窓を閉めた。

 

「……うぅ、マスター」

「ますたぁ」

 

 迷子の様な表情で泣き崩れる子供たちをあやすのはナミやビビの優しそうな雰囲気の女性や、チョッパーやフランキーやカルーという男ウケ抜群の色物枠。

 

 そしてワタワタと焦ったG-5があやし始める。

 

「シーザーの野郎……」

「彼が入れ替えたのは、樽よね?」

 

 ロビンが指さして確認したそれ。ロビンはそのままサンジにお願いをした。

 

「サンジ、あれ壊せるかしら」

「もちろんですロビンちゅわん」

 

 バキ。

 愛の蹴りで壊された樽の中から、地図が出てきた。

 それはこの研究所の地図であり、赤い印がついている箇所は研究所を突っ切って辿り着く港であった。

 

「つまりはまあ、扉を斬り破ればいいんだな?」

「ヨホホ!ゾロさんの思い切りの良さ、痺れます!」

「リーを取り返して、シーザーぶっとばして、印のところに行く」

「サニーに会いたいなぁ。早くリィンを起こして船に乗ろうよ」

「メリー、頼むからお前は化け物になってくれるなよ……。リィンみたいになってもダメだぞ……」

「リィンの奪還が最優先じゃな。リィンの事じゃ、無策では無かろう」

「拙者はモモの助の救出を優先するが良いな?」

 

 血の気が多い一味である。

 

「…………厄介なことに巻き込まれたな」

「なんで巻き込まれると分からなかったんだ?」

「分かるかい」

 

 項垂れる客人のビスタに、スモーカーが哀れみの目を向けた。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

「にゅー、アーロンさん!あぶないって麦わらたちも言ってたじゃねぇか」

「うるせぇはち!人間なんかに指図されてたまるか!」

 

 アーロンは鬼の居ぬ間になんとやら、逃げ出して氷エリアの湖の前辺りまで戻ってきていた。アーロンについて行ったのは当然チュウとクロオビ。そして、いち早く気付いたはっちゃんだった。

 

「そうだぞ、アーロンさんの言う通りだ。麦わらの一味が気付かない内に逃げるべきだ」

「でも、どんな危険が潜んでいるか分からないし麦わら達と離れるのは」

「うるせぇよ!人間に媚び売りやがって」

「ちゅ♡熱い場所だろうが、1度海に出てしまえばこっちのモンだって」

 

「だいたい、あの小娘は偉そうに俺たちに指図してきやがって」

 

 実際偉いのだ。

 そんなことを知らず、予想より早く訪れた解放の瞬間にアーロンは鼻で笑う。

 

「そうだな、休む隙も与えず雑用雑用。サボればすぐに叱咤と暴力」

「あんなガキの暴力なんざ怖くないけど、なんでか痛いんだよ、ちゅ♡」

「にゅ〜……?」

 

 文句を言いながら湖に飛び込もうと身を乗り出した。

 そして──魚人達の前に、『自分、毒です!』と言いたげな巨大なスライムが現れた。対岸のマグマ側で蠢いている。

 

「…………あ、これはヤバいやつだ」

 

 人間には備わっていない野生の危機感というやつだろうか。

 

 魚には毒を持った種類も多く、見た目でなんとなく危険かどうか分かってくる。

 

 故に。

 魚人4匹が取った行動。

 

「──走れ!」

 

 戦略的撤退。それ以外考えられなかった。

 

 

「アーロンさんアレなんだ!?」

「わっっっかるか!」

 

 ダバダバと海中の遊泳速度を優に超える速度で走り始めた彼ら。それに向かってスライムは己の体を飛ばし始めた。

 

 あぁ、やばい。あれは危ない見た目をしている。

 触れるなと、食べるなと、脳内に訴える色味をしているし、何より湖の中にいたサメが落ちたスライムに当たり悲鳴を上げている。

 魚人はある程度の魚と対話できる。する価値も無いが、アーロンはサメの魚人であるためサメとの会話がしやすい。

 

『痛い!熱い!溶ける!』

『助けてくれー!』

 

 サメの悲鳴に、青白い肌をさらに青くした。

 生物的にやばい。

 

「チッ!下等生物たちの所に戻るぞ!一旦建物に避難すべきだ!」

「くそっ!」

「この情報を伝えて恩を売っちゃっおうぜ、チュッ♡多少は俺たちの境遇がマシになると思う!ちゅ♡」

「チュウ、ナイスだ!」

 

「(にゅ……アーロンさん達、そんなにリィンが怖いのかな)」

 

 さり気なく、機嫌を伺いたてるという行為が染み付いて来ているのに涙が止まらない。

 もちろん、はっちゃん的にリィンは『なっちゃん(友達)の家族』だし『レイリーの家族』なので、口を噤んだ。

 

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