2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第31話 らしくない

 

 

「っはぁ、はぁ、はぁ」

 

 夜風が身体を冷やしながら家々の名前を確認してサボの家を探す。あぁくそっ!サボの名字を知らない!

 でも何もしないよりずっといい!

 

 仕方ないので窓から確認して、誰かの姿が無いか見て、いなかったら諦める。

 今は深夜、人々は寝静まっている。こんな夜中に子供がウロウロしてるのを見つかると警備の人達が怪しんでしまうかもしれない。

 

 人に見つかればゲームオーバー。

 家を探せれなければゲームオーバー。

 朝が来たら多分ゲームオーバー。

 サボを見つけれればゲームクリア。

 ただし説得出来なかったらゲームオーバー。

 

「難易度…高き……」

 

 しかもこちらは高町の広さを子供の足1人で回る。時間と手が圧倒的に足りない。そして痛む背中と高熱の身体。

 

 サボならどう行動する?何をする?奴らは何を企んでる?

 

 無理ゲーじゃん。

 

「……っ!」

 

──ゴォッ!

 

 突風が吹く。今日は風が強いから身体が冷えて体力削られるし火の手はきっと大きくなる。

 エースとルフィ、逃げ出せると良いんだけど。

 

 今は人のこと心配してる暇は無い。サボを探さないと。

 

「サボ……」

 

 大声を出すことも不可能。そもそもその元気が無い、か。

 

 明日の朝になれば世界貴族、天竜人がやって来る。やっぱりその時間までには見つけ出したい。

 

 

──クラッ……、ドンッ!!

 

 

 バランスが崩れそうになったので足で地面を大きく踏む。

 

 ええい!倒れるのは後にしてくれ!

 

 

 

 生まれて初めてこんなに無茶する気がする。何かいい案を。サボの行動を予想したい。しかし私の熱に侵された頭は正常に動いてくれないようだった。

 

「くそっ!」

 

 悔しいとしか言いようがない。でもまだ大丈夫、見つけれるから、この胸の嫌な予感は黙ってて。何かの警報なのか、酷くズキズキと痛む。

 いや、背中の痛み?それとも頭の痛み?胸の痛み?もう分かんないし吐きそうだし。

 

「諦めて、たまるか…」

 

──ズキン… ズキン… ズキン… ズキン…

 

 得体の知れない不吉な塊が胸いっぱいに広がり、目の前を真っ暗に染め上げる。

 

 

 

 

『……──…っ!』

『言うな…!』

『サボォォ!!』

 

 あ、あの時の夢…。

 去りゆく背に向けて叫ぶ子供──

 

 

 叫んでいるのはもしかしてエース?背を向けるのはサボ?泣いてるのはルフィ?

 

 ──そして燃え盛る炎の海

 

 待って、やめて、止まって、この夢、嫌だ、何が起こるの、この夢の続きは、

 

「はぁ、はぁ、はぁっ!」

 

 連れていかないで。

 

 やめて。

 

「っ、ゔ、あ、っ…ゲホッゲホッ!」

 

 吐き気がする。頭が痛い。痛い。止まるな足。見つけろサボを。

 

 

 

 

 

「……大丈夫か…?」

 

 悲鳴を上げなかった自分を心から褒めたい。

 

 

 

 

 

「ゔぁ、だ…れ……」

 

 誰か知らない声が耳に入った。マズイ、見つかった。

 

「旅人だ。何があった」

 

 旅人、旅人か。この町の、国の人間じゃ無いのか。良かった。旅人さん、助けて、サボを見つけて。

 

 視線をそちらに向けるとマントを被った刺青(いれずみ)の男の人とその後ろにでかい顔の女…男?の人?人?え、人なの?

 

「サ……──っ、ゲホゲホッ!」

 

「お、おい……」

 

「ダメ……だ……」

 

 サボと言って分かる人はきっと居ない、旅人なら尚更。意味の無い。それに知っていたらどうせ向こう側。貴族の手下。喋る気力があるくらいなら足を動かして自分で探す。ごめんなさい、気にかけてくれたのに。私は話すどころか挨拶する気力も無いみたい。今度お礼はします、気にかけてくれてありがとう。

 

「……っはぁ、はぁ」

 

 足がしっかりしないけど再び歩き出す。乗ってもきっとすぐ落ちる。集中なんか出来ない。

 

「……」

 

──ズキッ!

 

「っ、う…」

 

 背中に激痛が走る。

 

「……………お前…、背中に傷があるな?船に来い、手当をしてやる」

「ふよ、ぅ…」

 

「ヴァナータ!そんな無茶をしてどこに行くっチャブル!?」

 

 手当をする暇があれば私は歩くから。見つけるから。探すから。

 無茶をしてでもサボをの元に行くから。今世紀最大の努力をする。

 

 

あの女の人?男の人?性別不明の人の喋り方も顔も存在も今世紀最大に気になるけど。

 

 もう、ほんとになんでこんなに無茶してるんだっけ、思考能力落ちた。絶対に。

 

「来い………このままだと危険だ」

「不要、と!申して!るぞ!………っ、邪魔、する、なかれ!」

 

 しつこく心配してくれる刺青さんの様子に思わず叫んでしまう。ごめんなさい。せっかく心配しているのに、酷い事言ってしまって。

 

──ボンッ!

 

「能力者か…!」

 

 ああ爆発が起こってしまったのか。ごめんなさい。ごめんなさい。当たってしまったんですね。痛いですよね。相手の腕のマントが所々焦げてそこから見える皮膚(ひふ)から血が出ている。でもごめんなさい。

 

「っ!」

 

 私はその隙に駆け出した。

 

「待て!危険だ!」

「…く、ぅ…ふっ!」

 

 箒に飛び乗り高く飛ぶ。どうか向こう側の道まででいいから飛んで。

 

「謝罪、刺青の人……」

 

 ああ、もう、運が悪い。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 視界がグラグラするんだよ。足元だっておぼつかないんだよ。

 

 

 

 でも、ギリギリまで……っ!

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「何だったんだあの娘は…………」

 

 血の(にじ)んだ服。真っ赤な顔。乱れた呼吸音。タンの絡まる咳。もたつく足元。

 

 健康な人間では無いことはひと目でわかった。

 

 

 あの少年もだが、この国は気になる人物が多い。

 

 

 あの2人の子供のまっすぐ先を見据(みす)える目は気に入った。子供だからこそ、(ゆが)みのない目で世の中を見れる。欲しいな、革命軍に。

 

 特に少年の思想は我々と似ている。

 

 ──この町はゴミ山よりもイヤな臭いがする…!!

 ──人間の腐ったイヤな臭いが…!!

 

 

 ──俺は貴族に生まれて恥ずかしい!!

 

 悔しいだろうな。辛いだろうな。この国は必ず我等がなんとかして見せないといけない。

 

 

 

──プルプルプル……ガチャ

 

「…なんだ」

『ドラゴンさん!あなた達今どこにいるんですか!』

「高町だ。そっちの様子はどうだ」

『───ちょっと変われ。…あー…ドラゴンさん…聞こえますか?』

「聞こえている」

『そちらに船をギリギリまで寄せているので急いできてください。風が思ったより強いです…』

「了解した。イワンコフ、先に行って火を消しておけ。すぐに向かう」

「人使いが荒いのよヴァナータは!」

「すまないな」

 

──ブツっ

 

 イワンコフの説教は長引く。早々に電伝虫を切り船に向かう。

 

 海軍が来ぬ内に終わらせなければならない。

 

「まだ、力が足りない……」

 

 

「あの少女…一体何をするつもりなブル…」

「分からん。──だが、ただならぬ信念は感じた」

「ええ…」

 

 今はまだ(なげ)くだけしか出来ないが、力をつけた日には必ず革命してみせる。この腐りきったゴア王国を。

 

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 もう無理もう無理限界歩けない。動けない。

 

「はっ、はっ、ふっ、はっ……」

 

 へたりこんでその場に(うずくま)る。

 

 もう、昼も近いんだ。日が昇った。照りつける太陽が恨めしい。逃げも隠れもしてくれない太陽がじっとこっちを見ているみたいで…悔しい。すべて知ってるぜ、みたいな顔をしてさ。やかましい、お前はさっさと雲に隠れていろ。

 

「サボォ………」

 

 なんで会えないんだようー…。あんなに探し回ったのに。

 

「ごめん、なさ、い。エース…ルフィ…」

 

 ごめんなさい、サボに会えなかった。もう動けない。何度も何度転んでも立ち上がっても飛んでもどうにもならなかった。

 

──ポタポタッ

 

「み、ず…」

 

 違う、涙か。

 

 エース達は火事から逃げれたかな、サボは今何をしてるのかな、熱が下がったらもう1度探そう。うん。そうしよう。このまま諦める事は絶対にしてやらない。

 

 だからもう今日は倒れてもいいかな。

 

「リー……?」

「っ、サ、ボ!」

 

「オメーどうしてこんな所にいるんだ?アジトにいるんじゃ二ーのか?」

 

 サボをだと思って顔を上げたけど、ドグラだった。ドグラはどうしてここにいるの?アジトにいるんじゃ無かったの?

 なんでサボじゃないの……。

 

「そ、それよりも…!!リー…っ、聞けっ、…サボが……」

 

 サボ?サボがどうしたの?

 見つけたの?ドグラナイス。

 

 でもどうしてそんな辛そうな顔をしているの?

 

「───殺された……」

 

 

 

 

 

 

 

「………え」

 

 聞こえない。耳が受け付けない。

 心臓の音だけがうるさく耳に届く。

 

 ドグラは今なんて言った?

 

「だから、サボは殺されたんだっ!」

 

「ダレ、ニ……サボ、を、……え、サ、ボがしん、だ…?」

 

 壊れたレコードみたいに繰り返すしか出来ない。

 

「天竜人が乗る船を、サボが乗る船が横切った時に。ッたれたんだ!」

「サボが…………」

 

 死んだ?

 

「落ち着くだよリー!オメーフラフラじゃ二ーか!どこに行くつもりだ!?」

「サボは、死んで無き……」

 

「この目で見たんだ!サボは──」

 

 もう、それ以上言わないで。

 

「──死んだんだ!」

 

 無情にも聞きたくない言葉はすんなりと自分の中に侵入しきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌ぁあぁあぁああっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ねぇ堕天使。あなたの付けてしまった〝災厄吸収〟って何?私に災厄が降り注ぐの?もしかして、さ。サボが居ないのはこのせいなの?私の〝幸せ〟は〝災厄〟に塗りつぶされてしまうの?

 

 要らないよ、魔法も要らないから、お願いだからサボを返して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが私の運命ならばとりあえず鼻フック背負い投げをテメェに食らわせるからな、覚悟しとけよ畜生。タンスに小指をぶつけて悶え死ね!

 

 




ドラゴンさんの流れとしてはサボに会った後にリィンに会ったという流れでした。
そしてリィンは結局サボに会えずじまい
そうそう簡単にあの規模で見つけれるなんて言う幸運は持ち合わせておりませんでした。少しでも体調が良ければ、少しでもドラゴンさんに協力を要請していたら、そう考えるとキリが無いですがこれも彼女の災厄です。

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