2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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ドレスローザ編
第312話 女狐隊の新入り=新たな犠牲者


 

 麦わらの一味の出港を、まぁまぁ友好的に見送ったスモーカー部隊。

 そんな彼らがまっさきに行ったこと。子供たちのケア?アーロンたちに命令?ヴェルゴに悪態を吐く?それとも島に残った囚人達の確保?

 

 否──。

 

「月組!」

「「「承知しました!」」」

 

 それぞれが電伝虫や紙を取り出した。

 

「こちらG-5、パンクハザードにて行方不明の子供たちを無事保護しました。早急に医療班および家族照会の支援を要請します」

「スモーカー中将命令に基づき、子供に関する失踪・誘拐関連通報を一括再調査。通報主の出所も確認してください」

「こちら月組。女狐隊に通達、至急センゴク相談役またはサカズキ元帥への接続を依頼」

 

 報告一択である。

 

「麦わらの一味の動向について報告します。パンクハザードにてトラファルガー・ローと共に行動を確認。構成員のほぼ全員が揃っており、白ひげ海賊団元隊長格2名を同伴。次の進路はドレスローザと推測されます。増援をお願いします」

「グレン、新しい大将派遣しとけ。どっちでもいい」

「指示ですか?」

「おう」

 

 スモーカーは流し読みをしていた文書をあらためてじっくり読む。

 

────

 

【機密海軍報告書:麦わらの一味・戦闘力分析および警戒指針】

 

報告責任者:女狐

報告日:X日

宛先:海軍本部 元帥・大将・情報局

 

〝麦わら〟モンキー・D・ルフィ

 ……武装色・見聞色・覇王色の覇気を修得。魚人島で10万の敵兵を一蹴。冥王らに鍛えられた為、戦闘能力は新世界の猛者たちに並ぶ大海賊級へ。

〝海賊狩り〟ロロノア・ゾロ

 ……武装色・見聞色の覇気を修得。三刀流を基盤に「飛ぶ斬撃」も常用。修業を経て、斬撃の精度・破壊力が飛躍的に強化。後半の海の船長クラス。

〝黒足〟サンジ

 ……武装色・見聞色の覇気を修得。月歩を取得し攻撃速度と精密性に長ける。脚力による火力強化「ディアブルジャンブ」は段違いに強度があがっている。情に厚く、非戦闘民や女性相手には基本的に戦わない主義。1人でも中将と渡り合えるだろう。

〝泥棒猫〟ナミ

 ……天候棒を改良し、天候操作の精度が向上。直接火力は控えめながら広範囲雷撃や撹乱戦術が可能。同じく情に厚いが、冷静な戦術判断も見せ、指揮官的立ち位置も担う。

〝狙撃の王様〟ウソップ

 ……種を主軸にした植物兵器を駆使する戦術型狙撃手。見聞色やや覚醒気味。遠距離・間接戦闘の巧妙さは健在。攪乱が得意。突発的な成長力も高い。

 

その他:詳細別紙参照。

元王下七武海〝海侠のジンベエ〟も正式に加入

【特記:魚人島の勢力図変化】

・魚人島の縄張り権限の変更。旧:白ひげ→新:麦わらの一味へ

・事実上の縄張り移行と認識すべし

 

 

【同盟情報】

同盟相手:トラファルガー・ロー(王下七武海)

同盟形態:対等関係。目的はドンキホーテ・ドフラミンゴの失脚。

同盟動機:ローの個人的復讐心が強く、麦わらも協力。

同盟継続の公算:高

対等な同盟であるため、七武海の称号剥奪は避けられないだろう。

 

【ドフラミンゴ失脚の前情報】

・革命軍側にも同調する動きあり。

・情報操作が進行しているが、政敵・経済敵の同時連携、新聞社への情報が確認されたため、失脚は高確率。

・現地に協力者(情報屋等)あり。

 

【市民対策や海軍の動き】

・ドレスローザへ、緑牛または藤虎を事前投入すること。

・市民保護に関しては、潜伏海兵を通じ保護拠点を増設。従来の方法で対応可。

・避難経路については女狐隊を通じ整理中。

 

【同行者の扱い】

・民間人:最優先保護。アーロンらに子供の保護の意志あり。また、薬物投与の疑いがあるため経過観察が必要。(毒物はある程度抜いておきました♡)

 

・アーロン、クロオビ、チュウ:女狐隊による監視下で刑務。リーダーボム。

・ヴェルゴ:つる中将行き。詳細スモーカー中将が作成。

・モネ:海楼石の拘束ありで女狐隊による監視。

 

 

────

 

 スモーカーは最後の一文にまで目を通し、煙を吐き出した。

 

「……麦わらの一味とローが組んでドフラミンゴを潰す、か」

 

 仕事が早すぎるって女狐さんよ。

 おかげでてんてこ舞いだ。

 

「たしぎ、目を通しておけ」

「……いいんですか?」

「あぁ」

 

 月組にはあえて報告文書を見せていない。あくまでも、ただの一等兵でしか無いからだ。だが、まぁ、内容をある程度察しているため、驚くG-5を尻目にサクサク作業が進んで行った。

 

「あ、あの〜〜〜。スモやん中将……」

 

 恐る恐る、G-5のひとりが声をかけた。

 

「なんだ?」

「……こんなの、海兵の俺たちが言っちゃいけないことだってのは。重々承知してるんだけどさ」

 

「麦わらの一味、死なねぇよなあ!?」

 

 それは他の海賊の手によってか、それとも海軍の手によってか。

 どちらを危惧しているのか分からないが、確かに危惧してはならない考えだった。

 

「子供たちをさぁ、守るアイツらが、俺にはどうしても他の海賊みたいに思えなかったんだよ……」

「だって、ヴェルゴ中将……ヴェルゴだってさ、ずっと俺たちを騙してて、でも、スモやん中将守ったのってグルまゆの兄ちゃんだったじゃんか」

「それに子供たちも、あのオレンジのねーちゃんに懐いてて」

 

 言い訳のようにワタワタとし始めるが。スモーカーには麦わらの一味の人柄を好きになっちまった、ということがヒシヒシと伝わってきていた。

 

「はんっ、死なねぇだろ」

 

 アーロンが子供たちにつつかれながらも仁王立ちで耐え、バカにしたように笑った。

 

「麦わらの一味は、そもそもリーダーが船長じゃねぇ。あいつが裏で企んでる限り、そうそう死なねぇだろ」

「どういうことだ……?」

「あの小娘だよ。金髪の、ふたつ括りの」

 

 アーロンは嫌な顔をする。

 

「はぁ?何言ってんだ?あんな病弱でか弱い女の子に向かって」

「弱いフリして、隙を伺って。逃げてるフリして、気味が悪いくらいに観察して。あの女、傍観者や無関係扮っておきながら手ぐすね引いて破滅を待ってるような奴だろ」

 

 スモーカーはちょっとだけ『わかってんじゃん』って思った。ちょっとだけ。

 世間的に、『〝堕天使〟リィン』の悪名は高くない。むしろ出ないと言っても過言では無い。全ての事件において、表立つ名前は別の人物だ。

 

 あの麦わらの一味にいながら。

 

 東の海(イーストブルー)でも、アラバスタでも。エニエスロビーでだってそう。政府を襲撃した一味にリィンだけは居なかった。シャボンディ諸島の一件も、頂上戦争も。リィンはいたはずなのに居なかった。

 スパイと疑われかねない状況を上手いこと回避するスキルもだが、己を目立たせないスキルは寧ろ尊敬に値する。

 

 特に、今回のパンクハザードだってそう。もし公表されるのであれば──リィンはただシーザーに囚われていただけ。

 麦わらの一味として大まとめにされることはあれど、一味の雑用程度のネームバリューだろう。

 

「(黒幕、って言葉がこれ以上にないほど似合う女だ)」

 

 アーロンはひとり、その片鱗を味わった為寒気がする。ホーディーとの連携に不和が生まれた海中戦。麦わらにしてやられたのではなく、麦わらも魚人たちも全て利用して武器にしたあの女こそが。

 1番恐ろしい存在だということに気づいた。

 

 だから、奴隷扱いされようと強硬手段を取れなかった。

 

「(だが、これで終わりだ)」

 

 アーロンは海軍に引き渡された。

 あの気味の悪い女から受ける圧政も、これでおしまいだ。たった数日だったが、理不尽の塊すぎてアタマがおかしくなりそうだったので好機。

 

 刑務だろうとなんだろうと、今ならよろこんで出来るであろう。

 

「アーロン、お前は子供たちの世話をしろ。本部で子供たちの経過観察の護衛をすることになる」

「そうかよ」

 

 

 

 

 

──本部

 

 

「ようこそ女狐隊へ!!!」

 

 輝かしい笑顔と共に出迎えられたアーロン、クロオビ、チュウの3人は動揺を顔にうかべた。

 

「女狐大将から聞いてる。元海賊だろうと仕事は振りまくるからよろしく頼む。ボムだ」

「キャハハ!レモンよ!ようっっっやく、新しい人員が増えて助かる〜!」

「あぁ、しかも魚人と来たもんだ。……これで海に放り投げられても生き残れる」

「うん……うん……!」

 

 感涙。

 

 

 

「交代で休憩を回せる……?」

「仕事が終わったら褒めて貰える?」

「理不尽に殴られない……!」

 

 魚人3人は、ボロ雑巾のように船で扱われて感覚が麻痺していた。

 仕事量はえげつないものの、正当な扱いを受ける事が出来るし、同僚は皆優しい。

 

 女狐大将って、どんなやつなんだろうな。

 

「ここの夜食代は女狐大将の給料から引いてるらしい。食べ過ぎはもちろんダメだけど、食事を疎かにしたら倒れるからな。昼食べられなくとも夜は食っとけよ」

「新しい本部になって、仮眠室とか部屋が増設されたから泊まり込み楽なのよう!あ、もちろん家もあるわよーう?」

「だいたい泊まりになるけどな!でもアーロンたちの宿舎も用意しなきゃだよな、夜組が使ってた部屋に一旦泊まるか」

「許可は?」

「んー。まぁいいだろ。センゴクさんに聞いてみるよ」

 

 アーロン達は、いつか女狐に会える日を夢見て(笑)、雑用に励むことになるのだった。会えるのが二重の意味で楽しみなのである。合掌。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「妹屋ぁ!」

「わ、何、何です」

「あのクソピエロ!どうにかしろ!」

 

 ローさんが甲板から食堂で書き物仕事していた私のところに駆け込んできた。

 

 こちらパンクハザードから離れて海上。

 特に追加の追っ手等もなく、私の予定通りの運びとなっていた。

 

「シーナ、何したです?」

「なぁんにも」

「嘘だ!このピエロ、何が面白いのか分からないが俺を見て転げ回るくらい爆笑していたんだぞ!?虫唾が走る!」

「なにゆえ??」

 

 シーナが麦わらの一味の船に乗り込む事は流石に予想していなかったけど、シーナがドレスローザに向かう必要はあった。その為、手っ取り早いから合流したんだと思っていたんだけど。

 どうやらローさんで遊んでいる模様。

 

「シーナ?」

 

 激おこのローさんの後ろでシーナはにっこにっこしてる雰囲気を出している。

 

「本当にこいつや麦わら屋みたいなヘラヘラしたやつ!本当に相性が悪い!なんとかしろよ妹屋。お前の身内だろ」

 

 そいつ、どっちかと言うとローさんの身内……。いや、私の方が長いけどさ。

 

 ちなみにローさんがいないタイミングで聞いたところ、パンクハザードでは分からなかったけど全身の刺青がえぐくて笑っちゃったらしい。『俺、とんでもなく愛されてないか?』と。ハートの海賊談の名前の由来がコラソンだってことに気付いたのだろう。激重だよね、分かる。そりゃ笑うよ。

 

 

 

 

「で」

「で?」

 

 シーナを追い払ったローさんは私の対面に座った。

 

「ヴェルゴが言ってたことに関して聞きたいんだが」

「あー、『女狐がリィン』だとかどうとか?」

 

 私が聞けば、ローさんは頷いた。キッチンで食事の仕込みをしているサンジ様が『これ、俺聞いていいやつ?』って顔をしている。

 まぁサンジ様ならいいだろう。

 

 サンジ様を呼び寄せてローさんの隣に座らせた。

 

「えっとですね、まず、これは既にロビンさんもご存知だってことを前提です。その上で、私が元海兵だっていうのも前提条件」

 

 ふぅ、と一息吐いて、私は頭を下げた。

 

「先に、謝ります。私は、騙されていたとはいえ、麦わらの一味にとって不利益な存在ですた」

「不利益……では無いと思うんだけど。むしろ利があると言うか」

 

 サンジ様が困った顔で頬をかいた。

 

「手っ取り早く言うとですね。──私、女狐の影武者なんです」

「は…………」

「もちろん、幼い頃の私はそもそも『影武者』という存在ぞ知らず。私はホンモノの女狐大将だと思って、海兵をしてきました。……シャボンディ諸島で『本物』が現れるまで」

 

 お涙頂戴!

 マネマネのスペシャリスト、ベンサムの変装で女狐に化けていたとは言え、麦わらの一味はベンサムの存在を知っている。つまり、私の演技力にかかっているのだ……!

 

「私は、4歳頃から海軍雑用ぞすてました。でも、両親が海賊の私は海軍にとって処分対象。そんじょそこらの海賊ならともかく、相手は冥王と戦神。……私の処分方法は、内密に、しかして必然的に。進められて行ってますた」

「そんな……」

「故にシーザーです。私を殺せれば良かった。でも、私は死ななかった。次は、七武海の担当。機嫌を損ねれば海賊の手によって殺すされてた。でも私は生き残りますた。だから──次にくだされた命令は海賊への潜入」

「ま、待ってくれ」

 

 サンジ様は手を出してとめた。

 

「それが、まさかこの船か?」

「はい。と、言うすても。その頃から若干の不信感がありますて、確信には至らずですが。私が潜入する船を選べるようにしますた」

「それで、君は2番目に加入したって訳だ」

「はい。半分ほど逃亡ってところですね。だって当時は無名で、名前も上がるすてないルフィの、兄のところに逃げ込む形ですから」

 

 海軍的にも下手に四皇に入るよりは無力な海賊に入ってくれた方が潰しやすいと思ったのだろう。と、蛇足を加える。

 

「でも……ルフィは強かったです。私の見込み通り。故にセンゴクは強硬手段に及びますた。青雉を偶然一味に出会わせたり、政府に潰させようとすたり」

 

 ちなみにクザンさんはガチの放浪だった。ボコボコにされて欲しい。仕事を増やすな。

 

「……そうだ。あの時、エニエスロビーで出会った女狐って!」

 

 私は申し訳なさそうに微笑んだ。

 

「蹴って、ごめんなさい。酷い目に合わせるすて、ごめんなさい。監視があった故に」

「そっ、かぁ」

「あ、もっと早い証明方法ぞありますたね」

 

 私はパッとアイテムボックスから女狐の仮面を取り出した。ぎくりと揺れるのは苦手意識のせいだろうか。

 もっとも、……情に厚いサンジ様なら、恩を感じているだろう。

 

 ゾロさんならまずかった。でもサンジ様なら、まだ私に甘い。

 絶対ゾロさんはケジメつけさせようとしてくる、怖いよぉ、あの人が1番怖いんだから。どっちかと言うとヤクザや軍人の規律っぽい考え方するんだもん。

 

「で、まぁ、シャボンディ諸島で現れるすた。本物。あの男が……眠ってた?間、私が影武者として扱われるすて。で、その噂をわざと流すすて海賊やスパイを釣り上げ、そのタイミングで私を処分してしまえるなら処分しておこう、という考えです」

「……良く、わかんなくなって来たな。えーっと、つまり今のリィンちゃんは?」

「はい、正真正銘海賊です。海軍に私の席はありませぬ」

 

 ローさんは少し訝しげな顔をして私を見た。

 そうだよね。修行期間、私とローさん、海軍本部であってるもんね。

 

「……時折。月組みたいに、私が未だに海兵やってる、もしくはホンモノの女狐ぞ知らない海軍相手に、偽物の権力振りかざすすてまぁす」

「そういうことか、合点がいった」

 

 納得したローさんの声に私は頷きで返す。

 

 

 

 

 

 まっ、全部嘘なんですけどね?

 

「妹屋が本部で隠れてた理由がわかったな。あれの内部で助けてくれる人間ってのは、未だに真実を知らない海兵相手か」

「女狐……いったい誰が……ん?ちょっと待っていまさっき男って言わなかった?」

 

「はい、女狐、男ですぞ。名前の先入観で誤魔化されるしますぞねぇ……」

 

 私は遠い目をした。

 誰が信じられるかよ、(エース)が過去まで遡ってた、だなんて。はぁ。

 

 甲板では錦えもんさんとモモの助の声がうっすらと聞こえてきた。

 

 

 とりあえず目先の敵はドフラミンゴ一択。

 長年の恨み、ここで晴らすのだ。えいえいおー!

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