「──号外!」
新聞が世界中を舞う。
甲板の上で転がったシーナは、鼻歌混じりに海坂の風を感じている。
「おいおいおいおい」
麦わらの一味はニュースクーが運んできた新聞を掴んで、雁首揃えて内容を見た。
──
【号外】世界新聞
七武海 〝死の外科医〟トラファルガー・ロー〝麦わらの一味〟と異例の同盟を締結
新世界から衝撃の報が舞い込んだ。王下七武海の一角、死の外科医トラファルガー・ローが、超新星のひとりである麦わらのルフィ率いる麦わらの一味と手を組んだのである。七武海同士ではない同盟は極めて異例であり、政府の対応は未だ発表されていない。
関係筋によれば、ローが同盟を選んだ背景には「ドンキホーテ・ドフラミンゴのハラスメントに耐えかねた」という証言もある。だが、その真意は定かではない。
同盟の目的は何か
ローと麦わらの一味は、かねてより同期で頂上戦争では交流のある様子を見せてあった。今回の同盟は、単なる方便か、それとも七武海制度そのものを揺るがす大規模な動きの序章なのか。
ドンキホーテ・ドフラミンゴは現在、世界で唯一「王位を保持する海賊」として知られる存在である。もし彼が七武海を辞することになれば、即ち王位の返還を意味し、世界政府と加盟国の関係にも重大な変化が生じるだろう。
複数の大事件において、ドフラミンゴの影が取り沙汰されてきた。
アラバスタ王国での反乱事件、ヴェズネ王国で発覚した麻薬流通、パンクハザードでの爆発事故、魚人島における反乱。さらに、人身売買ネットワークや奴隷オークションの黒幕としての噂がある。今回の同盟がこれらの構造にどのような影響を及ぼすのか、注視が必要だ。
世界を揺るがす異例の同盟と、背後に潜むドンキホーテ・ドフラミンゴの影。
読者は最新情報に注意し、引き続き動向を追跡することを推奨する。
同時期に、キッド海賊団、オンエア海賊団、ホーキンス海賊団が同盟を締結したことも確認されている。
最悪の世代と呼ばれる若き海賊たちの連携は、世界の勢力図を大きく塗り替える可能性が高い。
海軍関係者はこう語る。
「複数の同盟が並行して成立している。世界規模での大戦争の予兆とも言えるだろう」
──
沈黙の中、私はのんびり箒で下る船と並走して飛び回って遊んでいる。
「……なんかおかしくねぇか?」
最初に口を開いたのはウソップさんだった。
「おかしいわね、耳が早いにも程があるし、ところどころ冤罪入ってるわよね?アラバスタとか、魚人島とか」
「ええ、うちの国との関係性は正直あまり無いはず……なのだけど、そもそもこの同盟とドフラミンゴを無理矢理紐付けた無理矢理感が」
私は新聞を見てないのでなんとも言えないが、ビビ様とロビンさんというアラバスタ王国の当事者が互いに顔を見合せた。
「この、ドフラミンゴに向かって『悪名を擦り付けてやっからな』って感じの書き方」
「にゅー?なんかよくわかんねぇけど、魚人島にドフラミンゴなんて人間は関わってねぇと思うけど」
ゾロさんやはっちゃんも不思議そうな顔をした。
「ロー、お前ドフラミンゴからパワハラ受けてたのか?」
「心当たりがない」
新聞を読み、疑問をそれぞれ口に出した麦わらの一味は──いっせいに視線を私に向けてきた。
そんなに見られたら照れちゃう。
「ねー、ローさん〜!シャンブルズ、すて」
「俺の能力は娯楽じゃないんだが?」
そんな私は彼らの視線を気にすることなく、ここ最近の恒例行事となった人格シャンブルズを強請った。
ローさんの能力は人の肉体と中身を入れ替えることが出来る技を持っている。
「特に能力者!チェンジすてください!」
「楽しそうだな……」
己が能力者のフリをしているけど、能力者じゃないので。悪魔の実疑似体験出来るのがすごく楽しい。ルフィはみょんみょん伸びるし本当に打撃が痛くない。シーナはそもそも視線が高くてフラフラして危ない。
流石3m、視界が違う。
「おいこら、遊んでないで説明しろ。どうせこの新聞お前だろ!」
「えー?私はしてませぬよぉ。そんな暇なかったでしょ?皆さんとずっと一緒にいますたし」(シーナの体)
「うっっっわ、シーナの声でリィンの不思議語飛び出てくるの気持ち悪っ」
「きゃぴっ♡」(ロシナンテボイス)
「この体ちっさ!!!!!やばい、全てがでかい!!!」
「シーナの表情初めて見たな……」
「ねぇシーナ、リィンの体のうちに『お姉ちゃん大好き♡』って言ってくれない?」
「お姉ちゃん愛してる」
「サービス精神旺盛で最高!でも笑顔は最悪。夢に出そう、もちろん悪夢」
キャッキャとある程度遊んで満足したので、サンジ様の一声でご飯になった。
侍とパン嫌いがいるため、本日のお昼はおにぎりらしい。
和食だ〜やった〜!
皆が並んで腰を下ろし、机に盛られたおにぎりを取りながら口を動かすお昼のひととき。
波の音が遠くに混ざる中で、ジンさんが私に向き直った。
「そういえばリィン。お主は昨日、仲間に耳打ちしていたじゃろう」
「はい。そうですけど」
「対ドフラミンゴの作戦の説明だと推測しておるんだが。儂には何も無いのか?」
大きな手で三角のおにぎりを摘み、慎重に食べていたジンさん。その問いかけに、彼の目は純粋な好奇心と、探りかけている色に染っている。
ジンさんは、正直馬鹿では無い。隠し事もできるし、世界情勢に合わせて己の立ち位置を変えられる政治的な視点を持っている。
だから私が何かしら指示をすれば、その意図をくんで臨機応変に対応してくれる。きっとそうだろう。
なので私は断言した。
「はい、無きです」
無いんですよ。貴方に出す指示は。
すると仲間はずれに思ったのか少し寂しそうな顔をした。
それがシャークとダブって見えて、堪えきれない笑いが零れてくる。
「あはは、今回、ジンさんも私もドフィさんと知己じゃなきですか。故に、顔に出やすきですぞ」
「そうか……?まぁ、確かにわしでさえリィンの嘘はある程度読み解けるしのう。なあ、リィン?」
意味深に名前を呼ばれ、視線がグサグサと刺さる。
無邪気な食卓に似合わぬその視線に私はスイッと視線を避けた。
「……ですよねー?」
どうやら、私の嘘にいくつか気づいている様子。
軽く返して、鮭おにぎりをもぐもぐ頬張る。
その横で、ローさんが低い声を洩らした。
「俺の作戦では、シーザーを餌にして交渉している最中にドレスローザのどこかにあるスマイルの工場を潰すつもりだった。いままで、どこにあるのか不思議と情報が出てこなく……」
「地下ですよ」
ごくひと頬張ったおにぎりを飲み込み、ローさんの疑問に答えた。
「は?」
「ですから、地下。武器の保管場所も、スマイルの生産工場も、地下です」
私は呆れた顔でため息を吐いた。
「ローさん、海軍に忍び込んで情報集めるすたって本当………………あ、いや、やっぱりなしで」
「妹屋?」
ローさんの忍び込んだ情報置き場は一般海兵が入れる情報だけしか置いてないところだった。
しまったしまった、私が知ってる海軍の情報は、さらに上のやつだった。
……なーんて小ネタを仕込みつつ卵焼きを頬張る。甘い卵焼き大好き。
「そういうすれば、ドレスローザにはコロシアムがあるですぞ」
「ころしあむ?」
「そう。強い人と戦うバトルロワイヤル舞台」
その一言で、ルフィの目がぱっと輝いた。
子供がお菓子を見つけたときのように、全身から行きたい!が溢れている。
「妹屋! 余計な事を言うな」
「へ? あっ」
麦わらの一味初心者のローさんでもまずいことに気付いたらしいが、止める声は手遅れだった。
ルフィはすでに拳を握りしめ、船を揺らす勢いで立ち上がった。
「──リー、行くぞ、コロシアム!」
絶対だ! と、意気込むルフィ。
私はすぐさまウソップさんに肩をガシガシ揺さぶられた。
「お前はルフィ初心者か!?隠密行動しなきゃならねぇ場所で、よりにもよってルフィが確実に食いつくワードを差し出すんじゃねぇよ!」
……えぇ。ルフィなら、必ず食いつくだろうね。
「2年間のブランクってきっと多分あるですぞ」
「あったら困るんだが!?」
私は過去の私と今の私、二人で作戦を練っている。私なら、きっと──。
「なぁそこの姉ちゃんや」
どこか芝居がかった声音。だが仮面の奥から射抜く眼差しは、冗談を許さない。
ずしりと頭に重みが乗っかって、金色の髪の毛が降ってきた。
ピエロの仮面が私を見下ろす。
「……止めるぞ」
それはもう存在しない海兵からの言葉だった。
「うん、必ず」
「そうそう、しーっかり働いてくださいませ〜?ご主人さ・ま♡」
「──必ずやあのピンクのもふもふを!死ぬよりも酷い目に合わせるです!」
「そうじゃねぇんだけどなぁ……そうなんだけど……」
静まり返った空気の中で、錦えもんさんが真剣な面持ちで口を開いた。
「お主たちはドレスローザに向かうのであろう。……頼みがひとつあるでござる」
「ん? なんだ?」
ルフィが首を傾げる。
「拙者たち、実はドレスローザに1人仲間を置いてきてあるのでござる」
皆の視線が錦えもんさんに集まった。
彼はゆっくりと事情を語り出す。
「ワノ国から侍3人とモモの助。しめて4人でゾウを目指したがあえなく遭難……。ドレスローザへ漂着したのは侍2人とモモの助」
「ゾウ……?」
「存じておるか!?」
「何から何まで奇遇だが、ドフラミンゴのことが終わればゾウを目指すつもりだった。そこに俺の仲間がいる」
へぇ、シャチさん達ゾウにいるんだ。確かミンク族の住処だったよね。
「まことか!で、では、そこまで拙者たちが同行する訳には……」
「いいぞ!ワノ国まで行こう!」
「おい…」
錦えもんさんは続きを話し始める。
ドレスローザでドフィさんに追い回され、モモの助がパンクハザード行きの船に乗ってしまったようだった。
さらに、錦えもんさんを逃がすために犠牲になった侍が居たそうだ。
「カン十郎を必ずや助けねば……!」
「…………カン十郎?」
「おなごよ、どうかしたのか?」
「いえ、不思議な名前だなぁって。10番目なのですかね」
一郎とか二郎とか太郎とか次郎とかいたりして。
私はもさりと3個目のおにぎりを頬張った。
「今日はよく食べるな、リィンちゃん」
「おいしき!」
「それなら良かった」
美味しすぎて血糖値爆上げだよ。