2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第316話 七武海なら命令を守れ

 

 船の上では、皆が警戒をしながら武器を片手に持っていた。

 

「怖ぇ〜!だってよ、だってよ」

 

 半泣きのチョッパーが訴える。

 

「──シーザーを取り返しに刺客が来るかもしれねぇんだぞ!?怖ぇよぉ!」

 

 そう。

 ドンキホーテファミリー最大の狙いが船の上にあるからだ。

 

「シュロロロロ、いいことを教えてやろう」

 

 シーザーは偉そうにドヤ顔で口を出した。

 

「お前たちが狙われない方法は──俺を今すぐ逃がすことだ!錠を外せーー!!!」

 

 手を掲げる。

 それもそのはず、シーザーの手にはご丁寧に海楼石の錠が付いていた。

 

 シーザーは心臓を奪われている上に能力も奪われている最悪な状態だ。

 

「私たちだって出来ればあんたみたいな人として最低で「げふっ」最悪で醜悪で「ごはっ」生まれたことすら意味が無いような「ふげぇっ」変態科学者なんかこの船に載せたくないわよ!」

 

 ナミが半ギレでシーザーを見下ろす。

 出来れば放り投げて視界にすら入れたくない。人格否定はいくらでもできるが、不快感は募って仕方ないのだ。

 

「仕方ないじゃない!リィンの考えだもの!」

 

 一緒の船に乗っている以上、シーザーは『打倒ドフラミンゴ』の作戦を聞いているし麦わらの一味の戦力や情報を把握している。

 正直、シーザーやナミにとってはどれが致命的な情報でどれが不必要な情報なのかは分からない。たった一言が大事な情報だったりする。

 

 だから、逃がせないのだ。渡せないのだ。

 

 

 

 

 その時、強い気配が走り、誰もが背筋を凍らせた。

 

「……っ!」

 

 まっさきに反応したのはジンベエだ。

 当然の事ながら、元王下七武海。戦闘能力は一味の中でもトップレベルを誇る。

 

 そして、リィンと並んで七武海のことをよく知る人物だ。

 

「──ジンベエ!なぜ、その船にいる!?」

「ボス直々に来おったか」

 

「ジョ〜〜〜〜〜〜カ〜〜〜〜〜〜!」

 

 シーザーの歓喜の声を背景に、最大の敵が現れてしまったことを察する。

 

 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。

 ナミはその姿を見たことがあったため、小さな悲鳴が喉から絞り出された。

 

「皆さんっ、身を守ることを第一に!」

 

 モモの助を庇うように立つナミとチョッパー。そんな彼らを守るように前線に立ったブルックとジンベエ。

 

「行くよビリー!」

「クォ!」

 

 ビリーに乗ったメリー号が、クラバウターマンの木槌を大きくして真っ先に飛びかかった。

 

「ニセモノは邪魔だ」

「ぎゃあ!」

 

 軽い体重のせいか、メリー号もビリーもコロコロと船の上を転がされてしまう。

 

「……ジンベエ、俺とお前の仲だ、今すぐシーザーを渡してくれ。お前は知ってるだろ、俺が家族に手を出されることを嫌うのを」

「無論、知っておる。だがドフラミンゴ、お前をわしを知っておるだろう。仲間に手を出されて身を引くような男では無い事を」

 

 お互い知っているからこそ、戦闘は避けられないことは分かった。

 

 

 ……言ってしまえば。

 

 船の上に残っている船番のメンバーは戦闘が不得意である。生き残る、ということに焦点を当てれば強いのかもしれない。

 

 消失から蘇ったメリー号。

 飛行能力のあるビリー。

 医者であるチョッパー。

 航海士のナミもいるため、サニー号で緊急脱出も出来る。

 モモの助の戦闘力は無いとはいえ、ドフラミンゴは子供にはあまり手を出さない。

 

 そう、それぞれ得意分野もあり、防衛にはうってつけではある。

 

 

 だが、この場においては正面戦闘。

 

「くっ……」

「フッフッフッ、ジンベエ──お前は守り慣れてねぇなァ?」

 

 ジンベエが船長をしていた魚人海賊団は船員のほとんどが戦闘派。

 しかし、今の一味のメンツはブルック以外ろくに戦えないし避けれない。

 

「〝掠り唄 吹雪斬り〟」

 

 劣勢だ。

 

 そう、言ってしまえば。

 ジンベエ以外の仲間は──足でまといだ。

 

 

 

「シーザーを返しなさい!」

「ランブル!カンフーポイント!ホアチャ!」

 

 ナミとチョッパーが必死に攻撃を放つが、ドフラミンゴは楽しげに避け、糸で絡め取る。

 

「(しぶといな)」

 

 殺すつもりで来た。

 リィンには嫌われるだろうが、ひとりやふたり失っても構わない──そう思っていた。

 

 だが、ジンベエがいる。

 その一撃一撃が、わずかに攻撃を遅らせる。

 

「(殺しは後回しだ。シーザーさえ取り戻せばいい)」

 

「待て、ドフラミンゴ!」

 

 ジンベエが焦りを隠さず叫ぶ。

 本気で止めに入っている──その姿は虚勢ではなかった。

 

 よほどシーザーを渡したくない様子。

 

 釣り上がる口角は、見るもの全てを怯えさせるものがあった。

 

「じゃあなジンベエ。リィンちゃんによろしく……()()()()()よ」

「……な!?」

 

 麦わらたちの手の内も、カイドウからの攻撃も、シーザーさえいればドフラミンゴには恐るるに足らない。

 

「(リィンちゃんの手を、2、3個潰させてもらおうか)」

 

 風が吹いている。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 一方その頃。

 

 陽の光が石畳を反射して眩しい街角。人々が笑いさざめき、通りには音楽と香ばしい匂いが混ざる。だが、彼らの目的は観光ではない。

 

「しっかし、地下の工場なんてどう行きゃいいんだか分からねぇな」

 

 フランキーが頭の後ろで腕を組んで唸ると、ローは無言で頷いた。

 地上に目標はない。工場破壊と侍捜索──目的は単純だが、行き先は見えない。足取りはどうしても重くなる。

 

「それを探すのも仕事のうちだろ?」

 

 ウソップの言葉はごもっともで、そのために錦えもんがいると言っても過言では無い。

 

「ドンキホーテファミリーに変装して探し出すのが一番いいだろう」

「なるほど、拙者がいるのはそのためか。カン十郎も敵に捕らえられている可能性が高い」

 

 錦えもんは真剣な表情で頷く。その瞬間だった。

 

「やぁやぁお客人。麦わらの一味とお見受けする」

 

 通りの端から、ひとりのおもちゃが歩み寄ってきた。

 陶器の体がカラン、と乾いた音を立てる。片足で器用に立つ姿は奇妙で、どこか哀愁を帯びている。

 

「……誰だ」

「何、しがないおもちゃだ。君たちが新聞でドフラミンゴと敵対していることを知った」

 

 その声は不思議と落ち着いていて、表情は動かないはずなのに微笑んでいるように感じられた。

 

「我々は今日、ドフラミンゴに刃を向ける。君たちが私たちの力に、そして私たちが君たちの力になれると思うのだが、話を聞いてみてはもらえないだろうか」

 

 

「……。信じていいのか?」

 

 ウソップが小声で尋ねた視線は、自然とローに集まる。

 

 ローは短く息を吐き、答えを考える。──いや、答えは決まっている。ただ、今後の手順を頭の中で慎重に並べ直していただけだ。

 

 彼はホビホビの実の能力をよく知らない。

 おもちゃが生息しているというのは知っていたし、リィンの言葉と実際にドレスローザの土地に来てみて人口に対するおもちゃの割合がかなり高い事を知った。彼の中でひとつの結論に至らせていた。

 

 おもちゃの存在は、ドフラミンゴを揺さぶる最大の材料になり得る。

 

「……俺が妹屋なら、ホビホビの実とおもちゃの関係性は必ず手を出す。話だけでも聞くべきだろう」

 

 確信して言える。

 しかし、いや、だからこそドフラミンゴも能力者への警護を強めているだろう。最大の難所だ。

 

「それは良かった!……だが、私『は』おもちゃの解放ではなく、工場に囚われている同胞を救い出したいと計画を立てている」

「何から何まで都合がいい。俺達も工場を探していた。破壊するつもりだ」

 

 おもちゃは『こっちへ』と言い、路地裏の方向へ向かっていく。

 狭い通りの奥に、ひっそりと隠された抜け道があるらしい。

 

「リィンに連絡入れておいた方がいいよな?」

「あぁ」

「悪い兵隊、今から行くところに電伝虫とかはあるか?」

「あるにはあるが……」

 

 しかし、何度かけてもリィンには繋がらなかった。

 ノイズ混じりの沈黙だけが返ってくる。

 

 街の喧騒の中、緊張がじわりと張り詰めていった。

 

 

 ==========

 

 

 ロビンはゾロとビビを連れて、人気の少ない裏通りの飲み屋へ足を踏み入れていた。

 外観は年季の入った木造、昼間だというのに店内は薄暗く、燻った酒の匂いが鼻をつく。

 

「ロビンさん、ここは?」

「……リィンが私に頼んだことのひとつに『この場所へ迎え』と」

 

 辺りを見渡してみれば、なんて事ない飲み屋だをしかし、ゾロはその見聞色で『気配』を感じて刀に手をかけていた。

 

「おい、誰だ」

「ど、どうしたの」

「化け物が2人。……それからこっちのこと観察してるやつもいやがるな」

 

 つまり敵まみれということ。

 それを3人でどうにかしろ、とリィンは考えていたのだろうか。

 

 緊張が高まったその時、奥のテーブルから明るい声が響いた。

 

「あっ、きた?おーい、こっちだよ!」

 

 手を振っているのは、赤と白が混じった鮮やかな髪の人物だった。

 活発そうな笑顔で、まるで旧知の友人に呼びかけるようにこちらを招いている。

 

「君たちが、ルっ、えーっと、目の下に傷をつけた帽子の男の仲間、だよね?」

 

 人懐こい声。だが、ゾロは気を抜かない。

 この店の空気はまだ張り詰めたままだ。

 

「……どなたかしら」

「私たちはスペード海賊団!私は音楽家の──ウタだよ」

 

 ウタはそう自己紹介をして2人の手を引いた。

 ゾロは向かう先のテーブルにいる大男の方が気になった。

 

 両方とも、気配が尋常じゃない。

 

 劇場版のラスボスにでもなりそうな人物の2人に、警戒は解けない。

 しかし、『スペード海賊団』という名前に聞き覚えがあったロビンは顎に手を当てた。

 

「もしかして、火拳のエースがこの国にいるの?」

「えっ」

「は!?」

「そう!うちの船長だよ。いやぁ、我が船長が自分の幼なじみの兄貴だとは流石に知らなかったけど、偶然ってすごいよねぇ」

 

 ビビもゾロも、アラバスタでエースに会ったことがある。ロビンも一応無くはないのだが、アラバスタでは敵対していた為あくまでも噂話程度でしか知らない。

 

「こっちはバレット。うちの…………戦闘員?」

「居候」

「仲間だよ!役職名は募集中」

 

 バレットはひとことそう言って不機嫌そうに目を閉じた。

 

「さて、ちょっと簡単に説明するね。今、船長はコロシアムに行ってて不在。まぁそっちはそっちで熊のおもちゃさんに任せてるから置いておき」

 

 よっこいしょ、と共通の話題を横に置いた。

 

「私たちは妖精に連れられてここで君たちを待ってたの」

「妖精?」

 

「うん。この国には昔から妖精が出るって言い伝えがあるんだって。詳しい話はあとで。──先に妖精からの情報を言うね」

 

 そして声をさらに落とし、衝撃的な事実を告げた。

 

「──この国には、今、王下七武海が全員そろってるらしいよ」

 

「「「はい!?」」」

 

 三人の驚愕の声が、薄暗い飲み屋に響いた。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「おうちに返して……」

「ダメだ。海軍に従ってもらおうか」

「いやだって!おま、お前、俺の足を見ろ!めちゃくちゃ震えてるだろ!?」

「……そういえば、この島にはダグラス・バレットが居たと大将に教えられて」

「よぉし、なんでも海軍の力になっちゃうぜ俺ァ!だから守ってくれ!!!!」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 コツコツと廊下を歩く音がする。

 

 人の気配のない静かな廊下を進む。

 

「……。」

 

 私を抱える右手は大きく、一歩ごとの振動は大きいが、体幹のせいかあまり揺れない。

 

「む、帰ったか」

「あぁ、ちゃんと回収してきた」

「ドフラミンゴはまだ戻ってないが」

 

 客室なのだろう。

 扉を開けた先から声が聞こえた。

 

「気絶させたまま連れてきたのか」

「……お〜」

 

 クロさんは私を持ち上げ、顔に寄せた。

 

「おはよう、たぬきちゃん?」

「…………おはよう」

 

 私は目を開けた。

 思ってたより近くでびっくりした。

 

「大方寝たまま情報集めてやろうっていう魂胆だろうが……」

 

 クロさんはにっっっこり笑顔でさらに私に顔を近づけた。

 

「今から、お前は俺達七武海に誘拐されて監禁される。クハハ!一瞬たりとも、逃しやしねぇよ」

 

 くるりと周囲を見渡せば、クロさんだけでなくミホさんと海賊女帝とモリアまでいることに心底驚いた。

 

 ミホさんはまだギリギリ分かるよ、でも、あの、後者2人は流石に予想してなかったかなぁ〜〜〜。

 

「嘘でしょ……」

 

 王下七武海揃い踏みじゃん……。

 私、海軍としてバギーもここに呼び寄せてんだけど。

 

「ドフィさんは」

「さぁな?」

 

 鼻で笑うクロさん。

 

 どうやら私は、ドフィさんの戦略によって七武海にガッツリ固められて身動きが取れなくなるようだった。

 ドフィさんは外出中で、クロさんがわざわざ私を誘拐しに来た、と。

 

 

 私がいたら、邪魔だろうね。

 邪魔は入るだろうとは考えていたけど……。

 

「あ、じゃあ牢屋にでも入れるすてもらって」

「その牢屋から抜け出す経験があるやつを放置するわけねぇだろ」

 

 クロさんは私の袖をグイッと捲りあげた。

 そのまま私の腕を掴むと、容赦なく後ろ手に捻った。

 

「いっ…!」

 

「ミホーク」

「あぁ」

 

「よっこいしょ」

 

 冷たい金属の感触が背中越しに落ちる。

 

──ガチャン。

 

 海楼石の錠が、手首にかかった。

 完全に腕が固定される

 

 その上、クロさんは私を抱えたあとソファに座り、私を膝の上に載せた。

 

 ……なんか、中将たちが私に余計な真似をさせないようにマイルドな拘束する時と同じ香りがするな。

 

「えっ、えっ、は!?」

「どうした?」

 

 流石に膝の上はあんまりにも胃によろしく無さすぎて動揺が止まらない。

 そんな心情を知ってか知らずか、いじめっ子はすーーーーっごく楽しそうにニヤニヤ見下ろしている。

 

「あの、クロさん外、外行くすた方が良きかもしれませぬぞ!?ほら、あの、宿敵とかいるかもしれませぬよ???」

「お前が一番の宿敵だが?」

 

 ぐうの音も出ねぇ。

 アラバスタの企み潰したの私だしな……。

 

 いや、バレット、バレットが居るんだって!

 

「も、モリア!ヘルプ!」

「……俺は何も見てない」

「海賊女帝……っ」

「妾、クロコダイルの拘束は少々甘いと思うのじゃが」

「ミホさぁん!」

「七武海でこうも結束出来るとは思ってもみなかった。貴重な機会を感謝する」

 

「ここは頂上戦争じゃねぇんだぞ!!???上官命令!!!!!」

「「「海賊に何言ってんだ」」」

 

 い、嫌だ!四六時中クロさんと一緒にいる羽目になるのはすっっっごく嫌だ!!!

 

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