2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第317話 最速で最悪の手

 

「──エース!!」

「ルフィ……?ルフィ!」

 

 コロシアムの中、Bブロックの試合が終わった。

 バルトロメオは親愛するリィンの仲間、ルフィの兄であるエースを前に勝利を譲った。

 

 そのため、エースは選手控え室に戻るとそこにいたルフィに飛びつかれた。

 

「エース!すげーな!俺が居ない間にまた強くなったんじゃないか!?」

「おう!今なら大将にだって負けやしねぇよ」

「俺、今から試合なんだ!だから、リーにはエースから謝っておけよ!」

 

「リー?」

 

 ルフィの言葉にエースは首を傾げる。

 

 ルフィがいるという事はリィンもいるという事。

 はてさて、自分は妹になにか謝るようなことをしたのだろうか。

 

 エースの反応を察したルフィはジト目になった。

 

「エースは兄ちゃんで、俺とずっと一緒に居たから『弟』の扱いは慣れてるのはわかるよ」

「オッ、オウ」

「でもさ、リーは『弟の俺』とは違って、『妹』なわけで。『同じお兄ちゃん』としてエースは妹の扱いがなってないと思うんだ」

「る、ルフィさーん?」

 

 冷や汗を流したエースに、やれやれと言いたげなルフィ。

 

「リーの事なんか忘れてたらしいぞ」

「げっ……」

 

 白ひげの船の上でリィンの存在を忘れて初対面として話しかけた覚えがあるエースはその言葉にめちゃくちゃ苦い顔をした。

 

「忘れちゃだめだぞ」

 

 ルフィはCブロックの出場選手が呼ばれているため向かわなければならなかった。

 その背中にエースは謝るように、確かめるように言った。

 

「分かってるよ……。──忘れない」

 

 俺たち3人は、兄妹なのだから。

 

 

 でもリィンは、エースの目の前にも、戻ってきたルフィの目の前にも現れなかった。

 そのことに気付くのはもう少し先の話だ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「うう…………こんなのってないよォ……」

 

 私は顔を覆うことも出来ずにとある男の膝の上でダラダラと涙を流していた。

 

「うぇん……」

 

 こんな辱めを受けるだなんて。

 

 私はこの世界に絶望した。

 

 

 

 

「──被害者面すんな」

 

 私の椅子になっているクロさんが文句を言った。

 

「ほれリィン。あーん、じゃ」

「んあ」

 

 目の前には海賊女帝がいて、口元にご飯を差し出してくる。

 私は死んだ目で食べた。

 

「美味しいか?」

「……うん」

 

 七武海サンドイッチ。私が具。

 

 なぜ私がサンドイッチの具になっているのかというと、簡単な話。悪さをしないように監禁(悪意ある言い方)されているのです。

 

 おまけに海楼石で能力を封じられ、常にクロさんの唯一ある手のひら(嫌味のある言い方)が私のどこかを触れてセクハラしている(悪意しかない言い方)しているため、私は乾燥と真隣にいるのだ。

 足が物理的につかない為、肉体言語での逃走も封じられ。

 

 目の前には海賊女帝がいる、ということはつまり同性だからとトイレに行って1人になることもできない。

 更に最悪なことに、七武海という種族は私のことに関して一切油断してくれない。

 

 今も海賊女帝とクロさんは冷静な目で私を見下ろしている。

 

「助けてにぃに……」

「──うわっ、何だこの状況」

 

 窓から入り込んできたピンクのもふもふが帰ってきたよう。

 

「……この際ドフィさんでも良きですから助けて」

「その状況作り出してるの俺な?」

「そんな……」

 

 ドフィさんは無慈悲にも私にそう言って椅子に座った。

 

「フッフッフッ、リィンちゃん。久しぶりだな」

「言うほどそこまで久しぶりでは無きですが??」

 

 私はこのドヤ顔フラミンゴ、略してドフラミンゴをこの世から抹殺することを今ここに誓った。

 

「いいじゃねぇか、王下七武海を椅子に出来るだなんて、そうそうねぇぞ?」

「なれば変わるすて」

 

 やばい。

 本当に胃が痛い。

 

 せめて椅子に座らせて欲しい。なんでずっとクロさんの上に座っておかなきゃいけないの。

 

 

 おもちゃのこと、まだ対応策考えきれてないのに──!

 革命軍のハックさんとコンタクトも取れてないから、彼らが何を企んでるのかよく分かってないし。

 

 

「フッフッフッ……!」

 

 ドフィさんの不吉な笑みだけが、私の胃を突き刺す様だった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 数日前。

 

 ドフラミンゴは、叩きつけられた喧嘩を買ったはいいが、ドンキホーテファミリーだけではリィンを相手取るには不足だと言うことに速攻気付いた。

 

「──七武海を呼ぶ」

 

 ドフラミンゴには友達が居ない。

 そこで呼び出されたのは『リィンの厄介さを知っている人物』であり『信用の置ける海賊』であり『海軍内部の情報も分かり、海軍との共闘や敵対を操れる』という条件で王下七武海が選ばれた。

 

 敵はロー、そして麦わらの一味。

 ローと同期のバギーとやらはリィンや麦わらの一味を知っているだろうが、信用は全くできない。そしてジンベエも七武海を辞めている為、海軍が敵対するかもしれない状況で『共闘』すれば不利になりかねない立場の男は捨ておいた。

 

 よって、集められたのは四人。

 "砂漠の王"サー・クロコダイル

 "鷹の目"ジュラキュール・ミホーク

 "海賊女帝"ボア・ハンコック

 "死者の王"ゲッコー・モリア

 

「もしもし!?俺だよ俺、今から迎えに行くから待ってろよ」

『詐欺かてめぇは!』

 

 偉大なる航路(グランドライン)を単独で渡れるものは少ない。その中でも唯一と言ってもいい特徴がある。それは『空を飛べること』だ。

 ドフラミンゴもある程度条件があるとは言え、ほぼ確実に空を飛ぶことができる。

 

 そのためほぼほぼ強制的に集められた四人は、ドフラミンゴの王宮で話を聞かされる羽目になったのだ。

 

「で、何の用だ?」

「──リィンが俺と敵対する。ローと共にな」

 

 その一言で自体の深刻さを察した四人は、文句を一旦下げて作戦会議に参加することになったのだ。

 

「どうするつもりだ?」

「無論叩き潰す。ま、俺たちのお気に入りのリィンちゃんの命は奪わないように、が条件だろうけど」

「当たり前だ。もし殺すだなんてのたまえばここで少なくとも3人はお前と敵対するだろうなぁ?」

 

 クロコダイルの質問に答えれば、ドフラミンゴは心得ているとばかりに頷いた。

 

「俺がやりたいことはただ1つ。──あのリィンちゃんをギャン泣きさせてギャフンと言わせたい」

「なんだぁそりゃ」

 

 モリアは元々七武海としての交流が無く、リィンとのコンタクトも少ない人物。

 疑問になるのは想定していた。

 

「リィンちゃんはまず、めちゃくちゃ悪知恵が働くというか、他者を貶めることに関して余念と手加減が微塵もない」

「あぁ」

 

 醜聞塗れにされた広告塔(サー・クロコダイル)、一秒の間もなく頷いた。

 

 亀甲縛りをされたボッチ(ゲッコー・モリア)も心当たりがあるのか、苦い顔をする。

 

「リィンちゃんが元海軍雑用だってことくらいは流石に知ってるよな?」

「あ、あぁもちろんだ。女ぎっ…………いやなんでもない」

「──女狐だってのも知ってるのか」

「──むしろなんでお前らも知ってんだよ」

 

 さもありなん。

 ちなみにハンコックもそれには頷いた。

 

「妾も、知ったのはつい最近じゃ」

「俺は2年前」

「俺もだな」

「キシシ、俺は1年くらい前だ」

「じゃあ、俺だけがかなり前から知ってたのか」

 

 ミホークは麦わらの一味の発足時にシャンクスから。クロコダイルはアラバスタ事変の際に。

 

「蛇ちゃんはいつ知ってたんだ?」

「む? あぁ、少々長くなるから妾のことは置いておくんじゃ。ただ、本人からでは無いとだけ。本人も知られていることは知らぬのではないか?」

 

 ドフラミンゴは顎に手を当てて少し口角を吊り上げた。

 

「まぁ、要は敵はただの海賊ではなく、海軍も操れる厄介な人物。んでもって伝手も規格外」

「伝手は何となくだが分かる…………」

 

「そんな一目置いてる海軍大将が、海賊の立場とは言え俺に牙を向いてきた。赤ん坊の頃からヘタレのクソ生意気な悪ガキンチョに──仕返しをしよう」

「(……。多分、リィンの方がやられてる率高いと思うし、こいつらの方が仕返しされる側だと思うんだが)」

 

 モリアは察したけど黙った。海賊であることを思い出したので。

 自己主義上等な種族である。

 

「まず、俺の考えが他の奴らの認識ともあっているかの確認をしたい」

 

 ドフラミンゴは状況説明と共にいくつかの推測を話した。

 

「1.リィンちゃんは様々な味方を使ってくる」

「「「間違いない」」」

 

 アラバスタ、頂上戦争、それらを見てきた上でやはり確定して言える。

 

「どこまで使ってくるかは分からねぇが、ここはアラバスタを参考にすべきだと思う。どう思うクロちゃん」

「あぁ、お前が最終的に諦めたアラバスタな?」

「ごめんって……」

「あの時、俺と敵対したのは麦わらの一味、反乱軍、国王軍。海軍。そして火拳のエースと不死鳥マルコ。さらに……確か革命軍」

 

 その言葉に顎に手を当てて考えた。

 

「革命軍は国王共の見極めで、それこそまさに『反乱』とも取れる立場の組織。黒幕まで至ったとはいえ、運が悪かったな」

「それより火拳の方だ」

「火拳から、芋づる式に白ひげ海賊団が出てきそうなんだよなあ」

 

 少なくとも、ドフラミンゴは『麦わらの一味だけではなく他の海賊や海軍を持ち出してくる』という結論は変わらない。

 

「2.海軍を利用する」

「「「「間違いない」」」」

 

 もう、それを利用しないで何を利用するというのだ。

 そして七武海という立場上、海軍と直接的な敵対はやりづらいため、手が出しづらい。

 

「ただ、俺は元天竜人で、政府や海軍の奴らも俺には手を出しにくい。そしてあくまでも『七武海』に攻撃する海兵は、()()()()()()()()()()()()難しい」

「ほう……?」

 

 それから、とドフラミンゴは3つ目を口に出した。

 

「3.リィンちゃんは自分で決めたがるし人を信じない」

 

 その言葉に、誰もが首を傾げた。

 

「具体的にはどういう事だ?」

「んー、言語化は難しいんだけど。リィンちゃんって最前線に立って戦うより、『人を利用して、操作して事象を変えること』の方が得意だとは思うんだよ」

 

 ミホークはその回答に納得するのか頷いた。

 

「実際の戦闘の実力はさておき、リィンちゃんの武器は人。だがその反面……『人の判断じゃなくて自分の判断を下しがち』だと思うんだ。それがなまじっか精度が高いから俺たちも他も油断ならないと思ってる」

「そうだな。それは海軍大将っていう特性上もあるし、センゴクが『命令を下す側』として教育を施したってのもある。それが厄介だろ?」

 

 特に七武海という立場の海賊たちは単純な武力ではなく知略に富んでいる事から、そこがたまらなくお気に入りの面なのだが。

 

「リィンちゃんは特に、未来のことを見据えすぎて足元が疎かになるタイプ。まるで望遠鏡で戦況を見すえてるみたいな……。フッフッフッ、詰めが甘いと言うよりは、未熟な所がある」

 

 モリアはそこで首を傾げた。

 

「要するにどういう事だ……?」

「ふむ、ドフラミンゴは『危機には陥るが、リィンの目で見てリィンが指示を出すからこそ対応出来た』と言いたいのじゃな?」

「おっ、蛇ちゃん大正解」

 

 リィンはアドリブ力がすごい。

 そのため、多少の胃痛じみた壁も、権力のパワーと悪魔の実と経験からの判断力で乗り越えてしまう。

 

「だから」

「む?」

 

 ドフラミンゴは強奪もとい、モリアから譲っていただいた海楼石の錠を机に置いた。

 

 なぜモリアが持っているのか、と言うと、彼が今囚人メインの影活動をしているおかげで海楼石の拘束具と縁があるためだ。

 

「──最初から、リィンちゃんを無力化させてしまえば。あとは烏合の衆だ」

 

 複数の組織を活用するからこそ、接着剤(リィン)が居なければ、指示役が居なければ。

 

「なるほど、四皇だろうと海賊だろうと海軍だろうと、いや、むしろ海軍なら尚更海賊と手を組まない。リィンが内密に手を組めるように指示を出していたとしても、そのリィンさえ居なければ無駄というわけか」

「それだけならともかく、陣営によってはリィンが居なきゃ敵対する」

「まっさきに潰すべきは麦わらじゃなくて堕天使だってのは流石に分かるぜ」

「妾も、海軍とはリィンがおらねば協力しようとは思わぬ」

 

 つまり、海軍を七武海側に付けるためにはリィンを行動不能にしなければならない。

 

「あちらの準備は不足気味。つい最近まで女狐業で忙しくしてた上に、魚人島との往復まで考えたらまともに休める時間すら無いだろう。パンクハザードでシーザーを奪われたこともあるしなぁ……」

 

 ドフラミンゴは、悪い顔を浮かべた。

 そう、クロコダイルに向かって。

 

「ここには、リィンちゃん最大の弱点がある」

「……なぜ俺が最大の弱点と?」

 

「ロリコンだから」

「苦手意識は抱いてるじゃろうな」

「明らかに動揺度が違う」

「何したんだ?」

 

「1人ずつ砂にしてやる。そこになおれ」

 

 冗談はさておき。

 クロコダイルにも自覚はあるので否定出来なかった。

 

「だから俺の最初の作戦はすっごくシンプルだ。リィンちゃんを誘き出して、1人になるタイミングでクロちゃんを当てる。対人戦闘も民意も活用できない場所で、最大の敵。リィンちゃんを沈めるには充分だろ?」

「影武者とかを用いなければ、まぁ、リィン個人の戦闘能力は微かだ」

「そこから──七武海交代でリィンちゃんが誰にも連絡を取れないよう、海楼石で能力も封じ込め、監視する。リィンちゃんを封じたあともお前らで戦況を乱してほしいが」

 

 ドフラミンゴの作戦はシンプルだが、誘き寄せやその後の対応など腑に落ちる部分が多かった。

 難易度も高くない上に、あちらの陣営は崩れやすい。味方の多さが仇になる。

 

「潰し合わせるつもりだが、他の四皇やどでかい組織が敵対者として来てもいいように余力は残す。だからお前らの戦力が欲しい」

「……なら、ドフラミンゴ」

 

 砂漠の王は、わるぅい顔をして顔を微笑んだ。子供がみたら泣くしリィンが見たら胃痛で悲鳴をあげるレベルの笑みだが。

 

「──リィンの監視、俺が一人でやってやるよ」

 

 七武海一人で世界最大の指し手を潰せるなら戦力的にも安いものだ。お釣りが来る。

 

 

 

 

 そしてドフラミンゴは、推測を裏付けするような情報をシーザーから得ることが出来た。

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