2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第318話 伝手の広さは世界一

 

「…………リィンちゃんがお外に出る時には、ぜーんぶ終わってるから、安心してクロちゃんに愛でられてな?」

「うっ、ううううううう!!!!」

 

 心底嫌です、という顔をしたリィンにドフラミンゴは愛しさを抱えて微笑みを浮かべた。

 

 嫌悪を剥き出しにしながらも歯を食いしばり、なお生き延びようと必死に計算を続けるちびすけ。その頭脳と執念があるからこそ、追い詰め甲斐がある。

 

 ああ、たまらねェ。

 こういう頭脳戦はよ。

 

「(ま、クロちゃんがどう思ってるのかは知らねーけど)」

 

 ただ、これだけは確定している。

 

 ──リィンは絶対に逃がさないし、逃げられないという事だ。

 

 丁重に丁重に扱って、思考の余裕も生み出さず。一秒たりとも視界から離さないようにし、物理的に精神的に封じ込める。

 

 クロコダイルは一度リィンにしてやられた。

 もう二度は油断しない。

 

 だからこそ、同じ手は食わないし、リィンも手を替え品を替え別の方法で攻撃してくるだろう。

 

 だから、リィンの監視と拘束はクロコダイル一人に任せた。他の誰よりも確実で、執念深く、そして容赦がないからだ。

 

 この戦いはもう、ただの殴り合いじゃない。情報と準備と人脈のぶつけ合いだ。勝つべくして勝つ者だけが生き残る。

 

「蛇ちゃーん、蛇ちゃんならさ、海軍対策出来るよな?」

「む?可能じゃ」

「フッフッフッ、派手に暴れる必要はねぇ。死なせずに止めろ。言い訳が通る程度に、だ。『やむなく反撃した』って顔を作っとけ」

 

 ハンコックは首を縦に振った。彼女は殺さずに行動不能へ追い込む手段を多く持つ。海軍との表向きの関係を壊さずに、最大の実力を出せる便利な駒だ。

 

 ハンコックの扱いが難しいが、そのぶん有用だ。なら配置は相性で決める。

 

「あ、それから。麦わらの一味のお船の上にジンベエが居た」

「なんじゃと……?」

 

 モリアとミホークは既に街の方向へ向かった。遅れながらハンコックを向かわせる。ハンコックは、身内に弱い。ジンベエや麦わらといった顔見知りとかち合うと寝返る可能性があるため、必ず嫌悪感しかない男のところに当てる他ない。

 

「ジンベエが居たら即時撤退」

「わかった」

 

 ハンコックが去った所で、ドフラミンゴは驚愕の表情を浮かべている子供に目を向けた。

 

「何故、ジンさん……」

 

 疑ってはいるものの、リィンの頭脳なら答えを探し出しているのだろう。

 焦りの滲む、予感を確信した表情。

 

 あぁ、そうだ。

 お前がジンベエを配置してまで守りたがったシーザーは、きちんと取り返したよ。

 

 ドフラミンゴ対策としてリィンはジンベエをそこに置いていた。

 

「(残念だったなぁ?)」

 

 だが、懸念はいくつかある。

 その程度で終わるはずがないという確信を。

 

「(お前が詰みを、俺が勝利を悟るまで、あと何手だ?)」

 

 まだ終わりじゃない。むしろ始まったばかりだ。

 

 お前がここで仕込んでる次の一手。見せてもらおうか。

 

 そう言わんばかりに、ドフラミンゴは静かに席を立った。

 本命の読み合わせ──すなわち、情報の答え合わせへと向かうのだった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「シーザー」

「おおジョーカーぁ!」

 

 麦わらの一味の船からシーザーを救い出してきた。

 メインの客室……もとい監禁室にはリィンがいる。そのため、違う客室にシーザーを入れた。

 少々人手も多くなっており、七武海用の客室の準備でここくらいしか空いてなかったがリィンのいる部屋からは1番離れているため良いだろう。

 

「シーザー、お前が経験したことを俺に教えてくれるか?」

「もちろんだ!」

 

 感謝の涙を流しながら時系列順にパンクハザードでの出来事を話し始めた。

 

「まず、ローだ。ローが突然俺のところにやってきた!」

 

 ローの訪れは予想していなかった事だが、モネが監視を買って出たこともあり、特別な問題は発生していなかった。

 

「ローは囚人達と動物を組み合わせて囚人の麻痺していた足の代用とした」

「ほう」

 

 オペオペの実の能力を上手く活用しているらしい。ドフラミンゴはひとつ頷くとローの能力についても細々聞いた。

 

「……なるほどな」

「そこで、急に麦わらの一味が現れた!おそらく6割くらいが船の上に居て、眠らせて実験室に入れた」

「……その時の細かい人数と名前を教えてくれ」

 

 シーザーが説明を省こうとした部分。ドフラミンゴはそれを細かく聞き取る。

 

 ひとつの情報漏れがないように。

 

「多分、幻じゃねえんだが……、一瞬、俺が麦わらに殴られて外で意識飛ばしてた時」

「ん?」

「白ひげのとこのマルコとビスタが居た気が、すんだよな」

 

 その言葉に『当たって欲しくない嫌な予感』がバッチリ当たったことにドフラミンゴは安堵の表情を浮かべる。

 

「(フッフッフッ、やっぱり来るよな……!四皇が!)」

 

 麦わらの一味をカイドウに恨まれても、麦わら側に四皇を置けば相手が引いたり防護壁になる可能性が高い。

 カイドウと白ひげの衝突……ワンチャン有り得る。が、白ひげだけでカイドウを押さえ込めるのか?それを海兵(リィン)が良しとするか?

 

 どの道、戦力の温存は必要だと頭の中で戦略をほんの少しだけ組み直す。

 

「……そういや、火拳もこの島に居たな」

 

 火拳の部下に、あのダグラス・バレットがいることには驚いたが。

 海賊王の一味の一員だが、はてさてどうするか。

 

「あ、それから。シーナと呼ばれる仮面のピエロと、はっちゃんと呼ばれる魚人が出航後にいたな。魚人の方は前々からいたが」

「シーナ?」

 

 知らない名前だ。

 

「金髪で……それから背が高くて……兄のようで親のようだった」

「身内……と、言うには幅が広いな」

 

 無限に兄姉親祖父母を作ってしまえる魔性の女だ。身内のように見えても血縁関係がないに違いない。※正解

 むしろ血縁関係の方が宜しくない。※正解

 

「それから船の上で、リィンが作戦を説明したのを聞いていた」

 

 会話の内容だ。

 図らずも、スパイとしてローたちの作戦を聞くことが出来た。

 

 さぞかし、渡したくなかっただろう。ジンベエレベルの男をシーザーの護衛に使ってたんだ。

 

 ドフラミンゴの顔が醜悪に染る。

 込み上げてくる笑い声にシーザーはゾッとしつつも、包み隠さず情報を明け渡した。

 

「主な目的は、ジョーカー、あんたが危惧している通り。カイドウとジョーカーをぶつけることだ」

 

 それほど予想外のことではなかった為、ひとつ頷いた姿を確認してシーザーは話を続ける。

 

 ・麦わら達だけじゃドンキホーテファミリーと相性が悪く勝てない

 ・シーザーの死守

 ・交渉の余地が無い

 

 1文字1句違わず、ということは流石にできないが、天才的な頭脳を持っているシーザーは記憶力にも優れている為、大きな勘違いなどなくリィンが危惧している点や策略の概要をきっちりは覚えていた。

 

「それから作戦だが……無計画だそうだ」

「は?」

 

 その状況状況に合わせて、リィンが指示を出す予定だったらしい。

 

 大筋はあるだろうが、戦況がどう転ぶか分からない状態。

 確かにリィンであれば、確実にベストを選べる作戦を常に更新し続け指せる。

 

 ──そう、リィンが動けるままであれば。

 

「フッフッフッ……!フフフフ!!」

 

 ドフラミンゴは額に手を当てて天井を見上げた。

 

「…………お前がこの程度で終わるわけ、ねぇよな?」

 

 リィン一人が封じられるのは確かに大きい痛手だろう。

 

 しかし、まだだ。リィンなら、まだ何か仕込んでいる。

 

 

 ドンキホーテファミリーの能力者や戦闘を分かっていて、玩具の仕組みも分かっていて、そして対策を打たないわけがない。

 海軍、海賊、賞金稼ぎ、はたまた政府かパシフィスタか。リィンが頼りやすぐ、今この場に適している頼り先はどこだ?

 

 

「若ーーーーッ!!!」

 

 突如、コロシアムにいたはずのデリンジャーが飛び込んできた。

 

「デリンジャー、どうした?」

「コロシアム!抜けてきてごめんなさい!でもでも、あたし早く若に知らせなきゃって思って」

 

 焦った様子の子供に、ドフラミンゴは視線を合わせて落ち着くように問いかけた。

 

「火拳のエースのとこの船員にウタって女がいるんだけどね!?」

「新入りだったか、そいつがどうした?」

「それがそれが、麦わらの幼なじみらしくて!」

 

 そもそも火拳は麦わらの兄弟。

 麦わらの一味に味方するのは火を見るより明らかだ。

 

 だが、それだけでは無い情報があるのだろう。

 

「それに、あの、赤い鼻の七武海が現れて」

 

 千両道化のバギーのことだろう。こちらから招待した覚えがないため、海軍、もしくはリィンの手引きだと考える。

 

 バレットと組むと厄介だな、と考えていたドフラミンゴに決定打の情報が降り注いだ。

 

「その女のこと!──赤髪の娘だって言ってんのよ!?」

 

 

 あぁ、解けた。

 

 赤髪と白ひげで、カイドウを迎え撃ち、いや、カイドウが手を出す余地を無くす方法か。

 

 流石のカイドウも四皇が二人と来れば麦わらに手を出すのも躊躇う。

 

 

 ミホークを呼んでいてよかった。

 クロコダイルを呼んでいてよかった。

 

 天敵たる七武海がいなければ、流石のドフラミンゴも肝を冷やした。

 

 

「フ、フフ、フフフフ」

 

 いや、肝は今も冷やしている。

 リィンならやるだろうという信頼があったからこそ覚悟が出来ていただけで。対策も何も打てない状態に陥ったら、どうすることも出来なかっただろう。

 

 

 四皇を味方に用いられたら、それこそ頂上戦争の再来だ。

 

 俺はそれが起こる前に降参せざるを得ない。

 

 

「やってくれたな」

 

 伝手をフル活用してきやがる。

 

 だが──おかしい。

 肝心の本人が、まだ一手も打っていない気がする。

 

 打とうとして確保されたから打てなかったか……?

 

「作戦の道筋は見えてきた、が、慎重に何かを隠してやがる。逆に言うと……見えすぎてる」

 

 ドフラミンゴは思考を止めない。

 油断をしないその戦略戦に、踊る心がどこかにあるのを感じつつ、強敵の戦術をなぞるのであった。

 

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