2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第321話 思い通りに行かない海軍

 

「──報告します!」

 

 海軍の駐屯基地に二人の海兵が飛び込んできた。

 

「麦わらの一味のMs……ニコ・ロビンとダグラス・バレットが接触しました」

「っ、嫌な組み合わせだら」

 

 バスティーユ中将がいらだちを抑えきれずにため息を吐き出す。

 

「ほいで、やつらは……なんて?」

「それが、ウタが掴んだ情報で……七武海が全員この島にいると、ニコ・ロビンに伝えておりました」

 

「〜〜〜〜〜〜〜っ、女狐」

「いや、うちの大将に文句言わないでください」

 

 火拳のエースの船に、ロジャー海賊団の元クルーダグラス・バレット。そして配信で有名なUTAが乗った情報は既に海軍内で出回っている。

 当時『あのUTAが!!!!』『どうして!!!』と内部発狂を引き起こした事件だ。ダグラス・バレットの方が厄介極まりないと言うのに、年齢が若ければ若いほどウタの方にショックを受けていた。ジェネレーションギャップで中将達は頭を抱えていた。

 

 何はともあれ、そんな厄介者のいるスペード海賊団が麦わらたちと同じ島にいる。偶然、最悪だ。火拳なら必ず麦わらの味方になるだろうし、過去にも七武海と敵対している経験がある。

 唯一友好的だった七武海が海峡のジンベエ(現在麦わらの一味)と言う時点でもう陣営は決まったものだろう。

 

「なお、その後ダグラス・バレットとウタはニコ・ロビン達とは離れ、中央の方に。そちらは同じく女狐隊のベンサム軍曹が追いました。自分たちはニコ・ロビン達を」

「それで、その後、ニコ・ロビン、ロロノア・ゾロ、ネフェルタリ・ビビは緑地公園に向かい、姿を消しました」

「姿を消した?」

「はい。まるで……──木々が我々の行く手を阻むように動き。消えました」

「その後ですが、自分たちがこちらに向かう途中。ローと他の麦わらの一味の姿も見かけました」

 

 つまり、同盟はほぼ間違い無いことが確定したわけだ。

 

 スモーカー中将(経由の女狐)からの報告や新聞の情報を擦り合わせてもほぼ確実だったのだが。割と七武海の席が空くか空かないか問題に直結する。

 

 そして男たちは海賊の名前がずらりと乗った名簿を差し出した。

 

「こちら、あの飲み屋で見かけた海賊の一覧です。行方はほぼコロシアムですが」

 

「……よく集めたな」

「いえ、たまたま、張ってた場所に現れたものでして。──大将がいるとは思いませんでしたけどね?」

 

 男が視線を向ける先には藤虎。

 

 ()()()()()()は、最初から飲み屋に張っていた。コロシアムからそこそこ近く、大きめの飲み屋。彼らの仕事はこの飲み屋を通りかかったり利用しに来る海賊やの行方を調べることだ。

 数日前から変装を繰り返し待機していた彼らの手の中には海賊の名前と2つ名が大量に書かれている。

 

 その名前が書かれたものの殆どがコロシアムに向かったのだが、一部の例外が麦わらの一味とスペード海賊団。

 

「しかし、書いた我々が言うものではありませんが……。知らない名前が多いですね」

 

 ナインが口に出すが心のどこかで警鐘を鳴らしているのに気づかない。

 

 彼らは手配書ではなく、顔と、武器と、特徴を頭に入れた上で『お、こいつ有名な海賊団のやつだ』と書いた。つまり資料無しで作り上げた二人の『記憶の結晶』だ。

 

 二人の──覚えがない名前、というものは存在しないはずだ。

 中にいるメイナード中将からの報告でもリストを見た訳でもないのに。情報源が己の頭の中にしかないはずなのに。

 

 その違和感に気付かない。

 いや、気づけない。

 

 忘れたことすら、誰も違和感を持たないのだ。

 

「女狐大将がこの近辺に滞在している海賊の手配書をまるまる暗記する仕事を……」

「……馬鹿か。それ、できたのか?」

「いえ。流石に無理です。──でも、秘密兵器がありまして」

 

 ボムは変装でかけていた眼鏡を外した。

 

「失礼、バスティーユ中将。例のものは進んでるんで?」

「ああ、完璧だら…、余計なことするやつが居なければ」

 

 藤虎が言っているのは『国民の避難所の場所確保と誘導の人員配置』のことだ。

 

 海賊相手ではなく、守るべき国民のための配置。

 これは海軍史上、最も弱気で保守的な配置だ。

 

「聞いた時は驚きやしたが、何、良く考えれば合理的な命令……」

 

 藤虎が先輩の大将の小娘のことを誇るように微笑む。

 

 

 七武海は海軍と敵対しない、という前提条件で結ばれてあるルールだ。七武海が政府や国相手にやらかしている場合を除き、海軍は七武海と敵対することは認められていない。

 

 だから、あくまでも海軍は『ドフラミンゴ(の国の民)を守る』というポーズをとっているのだ。

 

 この国にいる無法者たちを怪しむ為に人員を配置し、七武海の国民を守るのであれば、ルール上何も問題無い。

 

 

「(何より、殺すべき相手より守るべき相手の数や場所に把握の重きを置く、守りの大将のやり方は革新的であっし好みのやり方……)」

 

 何。

 海軍が捕らえるべき海賊は、海賊で削り合わせればいい。

 

 バスティーユもその意図を読めている為、仮面の下で冷や汗を流した。

 

「(何が弱気なものか……こいつは、漁夫の利も狙う圧倒的に欲深い配置だら……。少なくとも、ダグラス・バレットとサー・クロコダイルは犬猿の仲。もしクロコダイルが本当にこの島に居るのであれば衝突は避けられない)」

 

 人を守りながら、両陣営が消耗した所を最小限の被害で海軍が押さえつける。

 この海軍の動きが、弱きなわけが無い。効率的に狡猾な手だ。

 

 

 

 

「さて、みなさんはあっしの後ろに──」

 

 藤虎は見えない目で王宮からくるおえらいさんを見た。

 

「お出ましでさぁ」

 

 

 

 ギョッと目を見開く海賊達。

 そこには、この国に滞在するにあたって避けられない海賊。

 

 

「おお、海軍じゃねぇか。」

 

 

 ──王下七武海、天夜叉ドンキホーテ・ドフラミンゴが居た。

 

 

 偶然の顔を装い、薄ら笑いを浮かべた男がそこにいる。全員、その圧力に息を飲んだ。

 七武海は海賊の中でも屈指の実力者だ。

 

「(さて、俺がやるべきは……)」

 

 ドフラミンゴは藤虎を見下ろし、一つの提案をした。

 

「七武海に楯突くやつを殺す。海軍も手伝え」

 

 別段問題ない提案だ。

 海軍の軍事力を利用することも七武海にはある程度許されている。もちろん直接動かす事は出来ないが、この場に海軍中将と大将がいるのなら問題ない。

 

 そしてその提案は……。

 

「──そいつぁ、聞けねぇ相談ってやつでさぁ」

 

 あっさりと、断られてしまった。

 フッフッフッ、と低い笑いを浮かべる男に藤虎は警戒心をグンと高める。

 

 

「……だと思ったよ」

 

 海軍は別に麦わらの一味とローを守ったわけでもない。ましてやドフラミンゴの肩を持った訳でもない。

 

 ただ、彼らには七武海よりも優先すべき立場のものが居る。

 

「──やはり、海軍だけは動かせねぇよな、女狐」

 

 予想通りの返答だ。

 

 交渉の決裂だというのに、ドフラミンゴは『敵対するべきときではない』と判断して親しげに藤虎の肩に手を置いた。

 

「『世界徴兵』で海軍大将に特任された藤虎、実力は緑牛と共に折り紙付きの化け物だと噂はよく聞いてるぜ……」

「こりゃどうも恐れ入りやす……」

「フッフッ!とぼけた野郎だ」

 

 ……そして。女狐が教育担当だということもよく聞いている。

 

「なぁ藤虎よ。お前、少しは賢いやつだと思っているんだ俺ァ。……ローと麦わらの一味の同盟は、海軍にとっちゃ敵対行動そのもの。あんたが動けば、多少はマシになる」

「はぁ、そいつぁ随分、あっしを買っていただけているようで……」

「麦わらの一味にとっての弱点。()()()()()()は、王宮で捕えている。人質がいる一味を相手に、海軍が──負けるわけがねぇよな?」

 

 バスティーユも。ボムもナインも。

 その名前に表情を崩しかけた。

 

 今、ドフラミンゴは『麦わらの一味の人質としてリィンを確保した』と宣言した。

 しかしそれをわざわざ言う必要など無い。

 

「(こいつ……っ!)」

 

 ドフラミンゴは麦わら達に向けての人質を取ったのでは無い。

 

 

 ──海軍に対して『女狐を人質に取った』と言ったのだ……!

 

 

「イッショウさん、これは」

 

 バスティーユが『協力関係を結ぶべきだ』と進言しようとした時。藤虎は間髪入れずに返事をした。

 

「──お断りしやす」

 

 ドフラミンゴの眉がぴくりと動く。

 

「あっしらは海軍。()()()()()()()()()のがあっしらの使命。それに七武海の縄張りに紛れ込んだ海賊を対峙するのは、天夜叉さん、あんさんの仕事でしょう。海軍は政治に不干渉で、ごぜぇやす」

「…………人質はどうなっても構わねぇ、と」

「?? 麦わらの一味の雑用を人質に取るのは僥倖。是非とも、ご自分の手で始末をつけてくだせぇ」

 

 藤虎は不思議そうな顔で首を傾げた。

 

 

 

 この男……──実はリィンが女狐だと知らないのである!

 

 手配書を見ても盲目ゆえに特徴が把握出来ておらず。堕天使リィンと直接あったことが無いため、同一人物だと把握していないのだ。

 

 

 

「……お前まさか。いや、流石に違うか」

 

 そんなことを知らないドフラミンゴは、まさかなと少し考えた後、頑固だというレッテルを貼り付け藤虎から離れた。  

 

「その人質はどうするんで?」

「ん、いやぁ、そうさなぁ……」

 

 ニヤニヤと笑ったドフラミンゴに、女狐と知っているものたちは警戒心を顕にする。

 

「今はクロちゃんの手によって血を吐くほど泣いているが、さて、次はなんの手を打つかな」

「……拷問でもかけてるんで?」

 

 

 さてな、とその疑問に答えたドフラミンゴは、興味を失ったように背中を向けた。

 

 

「あぁそうだ。お前ら」

「へぇ、なんでしょう」

 

「男嫌いの七武海は、男が視界に入るだけで不機嫌になるから気をつけるこったな」

 

 ご丁寧な警告。

 

 ……これで、海軍との敵対にはならない。

 

 

「〝メロメロメロウ〟」

 

 二人目の王下七武海が海軍に牙を向いた。

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